• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16G
管理番号 1252108
審判番号 不服2010-15670  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-13 
確定日 2012-02-06 
事件の表示 特願2000-198404「低騒音ローラチェーン」拒絶査定不服審判事件〔平成14年1月18日出願公開、特開2002-13596〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年6月30日の出願であって、その請求項1に係る発明は特許を受けることができないとして、平成22年3月26日付けで拒絶査定がされたところ、平成22年7月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1に係る発明は、平成22年1月18日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
ローラリンクとピンリンクが交互に繋がって構成されるローラチェーンにおいて、ローラリンクのブッシュには金属製のローラとウレタンやゴム等の弾性ローラを対にして嵌め、該弾性ローラの幅率は13?45%とし、スプロケット歯に噛み合った際の潰し代を5?25%とし、さらに弾性ローラを所定の長さにわたって千鳥状に配置し、この所定長さに配置される弾性ローラの千鳥状配列順序を交互に入れ替えていることを特徴とする低騒音ローラチェーン。」

2.原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1:特開平7-83290号公報
(2)刊行物2:実公平5-586号公報

(刊行物1)
刊行物1には、「ローラチェーン」に関して、図面(特に、図1?5を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(a)「この発明は、緩衝材を組み込むことによって、走行騒音を小さく抑制することができる低騒音形のローラチェーンに関する。」(第2頁第1欄第19?21行、段落【0001】参照)
(b)「ローラチェーンの走行騒音は、ローラチェーンがスプロケットに噛み合うときに、各ローラがスプロケットの歯底に繰り返し激突することに起因する部分が少なくない。そこで、かかる走行騒音を緩和するために、ブシュに対し、ローラの両側に環状の緩衝材を組み込む技術が知られている(実開昭62-843号公報)。
各緩衝材は、断面矩形の弾性材料からなり、ローラの外径より大径となっている。また、各緩衝材は、ブシュに対して回転自在であり、各ローラの両側において、内リンクプレートとの間に介装されている。ローラチェーンがスプロケットに噛み合うとき、緩衝材は、ローラより大径であることにより、ローラが歯底に到達するに先き立って歯面に当接することができ、その後、ローラは、緩衝材が弾性変形することによって歯底に到達する。そこで、このものは、ローラが歯底に直接激突することを防止し、そのことに起因する金属性の走行騒音を効果的に緩和することができる。」(第2頁第1欄第23?40行、段落【0002】及び【0003】参照)
(c)「この発明の構成は、ピンを介して内リンクプレートと外リンクプレートとを交互に連鎖してなり、各ピンには、ブシュを介して環状の緩衝材をローラの片側に装着し、緩衝材は、ローラより大径に形成し、ブシュに対して回転自在とすることをその要旨とする。
なお、緩衝材は、各ローラに対し、同一側に配置し、または、交互に異なる側に配置することができる。」(第2頁第2欄第18?25行、段落【0008】?【0009】参照)
(d)「各ローラに対し、交互に異なる側に緩衝材を配置するときは、ローラチェーンがスプロケットの歯に順次噛み合う際に、ローラと緩衝材との配置関係を交互に変化させることができるので、スプロケットに対するローラチェーンの片寄りを防ぐことができる。」(第2頁第2欄第37?41行、段落【0013】参照)
(e)「ローラチェーンは、各ローラ15の片側に環状の緩衝材16を装着してなる(図1、図2)。
ローラチェーンは、共通のピン11、11…を介し、各一対の内リンクプレート13、13、外リンクプレート14、14を交互に連鎖することによって形成されている。各ピン11は、ブシュ12に挿通されており、ブシュ12には、ローラ15、緩衝材16が回転自在に装着されている。なお、一般に、内リンクプレート13、13と、その両端のローラ15、緩衝材16付きのブシュ12、12は、一体のローラリンクを形成し、各ローラリンクは、外リンクプレート14、14と、両端のピン11、11とからなるピンリンクを介して連結されている。
緩衝材16は、ローラ15の外径より大径の断面矩形の環状に形成されている。また、緩衝材16の内径は、ブシュ12の外径より僅かに大きい。緩衝材16の幅W_(2)は、内リンクプレート13、13の間隔W_(1)、ローラ15の長さLに対し、W_(2)<W_(1)-L、L+W_(2)≒T_(2)に設定されている。ただし、T_(2)は、スプロケットSの歯底S_(2)の有効幅である。また、緩衝材16の幅W_(2)は、緩衝材16をブシュ12と歯底S_(2)との間に有効に挟み込むことができる限り、必要最小限に設定するものとする。
スプロケットSは、所定数の歯S_(1)、S_(1)…を有し(図2、図3)、図示しない回転軸に装着されて、図3の矢印K_(S)方向に回転している。スプロケットSの各歯底S_(2)には、両側から面取りS_(3)、S_(3)が施されており、したがって、歯底S_(2)の有効幅T_(2)は、スプロケットSの板厚T_(1)より小さくなっている。なお、図3において、内リンクプレート13、外リンクプレート14は、ピン11とともに、その外形が省略して図示されており、ローラ15、緩衝材16は、その外形のみが図示されている。また、ブシュ12は、図示が省略されている。
このようなローラチェーンは、スプロケットSが図3の矢印K_(S)方向に回転するとき、同図の矢印K_(C)方向に進行し、ローラ15、15…がスプロケットSの歯S_(1)、S_(1)…に噛み合うことにより、スプロケットSとともに、スプロケットSの外周に沿って進行する。そこで、各ローラ15が歯S_(1)、S_(1)の間に進入するに際し、外径の大きい緩衝材16が、まず、スプロケットSの前後の歯面S_(1a)、S_(1a)に当接し、このとき、ローラ15は、対応する歯底S2に対し、ギャップdを介して対向することができる。
その後、ローラチェーンがスプロケットSのまわりに進行するに従い、緩衝材16がブシュ12と歯底S_(2)との間に挟まれて弾性変形し、ローラ15が歯底S_(2)に到達する(図3、図4)。すなわち、緩衝材16は、ローラチェーンの走行速度が大きい場合であっても、それ自体が弾性変形することより、ローラ15が歯底S_(2)に向けて進入する速度を小さくすることができ、したがって、ローラ15が歯底S_(2)に激突することを有効に防止することができる。なお、緩衝材16は、ローラ15が歯S_(1)、S_(1)の間に進入する際、前後の歯面S_(1a)、S_(1a)から異なる力を受けることにより、ブシュ12のまわりに回転することができるから、その摩耗や損傷は、極く少ない。
緩衝材16、16…は、ローラ15、15…に対し、交互に異なる側に配置することができる(図5)。緩衝材16、16…は、ローラチェーンがスプロケットSに噛合するに際し、歯S_(1)、S_(1)…に対する相対位置が左右に交互に変化するので、ローラチェーンがスプロケットSに対して片寄ったりするおそれがない。(中略)
以上の説明において、緩衝材16は、ウレタンゴムやニトリルゴムなどの各種の合成ゴム材料や、適度の弾性を有するMCナイロンなどの合成樹脂材料を使用することができる。」(第2頁第2欄第49行?第3頁第4欄第25行、段落【0016】?【0024】参照)
(f)「この発明によれば、環状の緩衝材を各ローラの片側に装着することによって、ローラの長さは、内リンクプレートの間隔内において、1個の緩衝材の幅によって制約されるに過ぎないので、高速大荷重運転に対しても、必要十分な耐久性を容易に実現することができる上、ローラを分割する必要がないから、部品点数の増加も最少に抑えることができるという優れた効果がある。」(第3頁第4欄第27?34行、段落【0025】参照)
(g)図2?4から、緩衝材16の外径はローラ15より僅かに大きく成っている構成が看取できる。
ローラチェーンにおいて、ローラを金属製とすることは普通のことである(上記摘記事項(b)の「金属性の走行騒音」の記載を参照)し、また、「緩衝材16、16…は、ローラ15、15…に対し、交互に異なる側に配置することができる(図5)。」(上記摘記事項(e)参照)の記載から、緩衝材16が千鳥状に配置されていることは明らかであることから、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
【引用発明】
ローラリンクとピンリンクが交互に繋がって構成されるローラチェーンにおいて、ローラリンクのブッシュ12には金属製のローラ15とウレタンゴム等の緩衝材16を対にして嵌め、該緩衝材16の幅率を所定の設定値とし、さらに緩衝材16を千鳥状に配置した低騒音形のローラチェーン。

(刊行物2)
刊行物2には、「サイレントチェーン」に関して、図面(特に、第1?3図を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。なお、拗音及び促音は小書きで表記した。
(h)「本考案は、オートバイ用のドライブチェーン等に使用されるサイレントチェーンの改良に関する。」(第1頁第1欄第14?16行)
(i)「本考案に係るサイレントチェーンは、ローラチェーンを構成するそれぞれのブシュに装着するローラ体及び弾性ローラをピッチごとに変化させてローラリンク間に配設したので、ローラチェーンがスプロケットの同一箇所に当接することなくランダムに当接することとなるので、スプロケット歯の摩耗を抑止することができるものである。」(第2頁第3欄第19?25行)
(j)「図において、1,1,1,…はピンリンクプレートであり、該ピンリンクプレート1,1,1,…の内側にはローラリンクプレート2,2,2,…が配設され、これらピンリンクプレート1,1,1,…及びローラリンクプレート2,2,2,…の多数がそれぞれの端部をピン3によって交互に連結され無端状に構成されている。4は前記ピン3に遊嵌されたブシュで該ブシュには、スチールローラ5とウレタン等の弾性ローラ6とが前記したローラリンクプレート2,2間に配設されている。
そして、本実施例においては、前記したスチールローラ5と弾性ローラ6との配列を1ピッチごとに変化させて構成しているものであり、例えば第1図に示すように、弾性ローラ6を中央にしてその両側にスチールローラ5,5を配列したもの、上部より弾性ローラ6、スチールローラ5,5の順に配列したもの、上部よりスチールローラ5,5、弾性ローラ6の順に配列したもの、スチールローラ5を中央にしてその両側に弾性ローラ6,6を配列したもの等を1ピッチごとに配設して無端状のローラチェーンを構成している。
また、前記のスチールローラ5,5が重合状態とされたものの代りに幅広のスチールローラとしてもよいし、弾性ローラを幅広とする等前記したそれぞれのローラの形状及び配列は無数のものがあり、使用条件等により変化させるのがよい。
本実施例は、上記のように構成されるので、無端状のローラチェーンが一周する間にスプロケット歯面全体にてスチールローラが噛み合うことになるので、スプロケット歯面が凸状に摩耗することを防止でき、これにより弾性ローラへの損傷は軽減され、その結果、減音効果は従来のものと何ら変らずにローラチェーンの、耐久性を改善することができた。」(第2頁第3欄第28行?第4欄第19行)
(k)「本考案に係るサイレントチェーンは、ローラチェーンを構成するそれぞれのブシュに装着するローラ体及び弾性ローラの配列を1ピッチごとに変化させてランダムに構成したものであるので、無端状のローラチェーンが一周する間にスプロケット歯面全体にてスチールローラが噛み合うこととなるので減音効果はそのまゝでスプロケット歯の摩耗を歯幅に対して均等に進行させることが可能となるもので、その結果、弾性ローラの損傷は軽減され、ローラチェーンの耐久性を向上させることができたものである。」(第2頁第4欄第21?31行)

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「ブッシュ12」は本願発明の「ブッシュ」に相当し、以下同様にして、「ローラ15」は「ローラ」に、「ウレタンゴム」は「ウレタンやゴム」に、「緩衝材16」は「弾性ローラ」に、「低騒音形のローラチェーン」は「低騒音ローラチェーン」に、それぞれ相当するので、両者は下記の一致点、及び相違点1?3を有する。
<一致点>
ローラリンクとピンリンクが交互に繋がって構成されるローラチェーンにおいて、ローラリンクのブッシュには金属製のローラとウレタンやゴム等の弾性ローラを対にして嵌め、該弾性ローラの幅率は所定の設定値とし、さらに弾性ローラを千鳥状に配置した低騒音ローラチェーン。
(相違点1)
前記弾性ローラの幅率の所定の設定値に関し、本願発明は、「13?45%とし」たのに対し、引用発明は、数値範囲が不明である点。
(相違点2)
本願発明は、前記弾性ローラが「スプロケット歯に噛み合った際の潰し代を5?25%とし」たのに対し、引用発明は、そのような構成を具備しているか不明である点。
(相違点3)
本願発明は、前記弾性ローラを「所定の長さにわたって」千鳥状に配置し、「この所定長さに配置される弾性ローラの千鳥状配列順序を交互に入れ替えている」のに対し、引用発明は、そのような構成を具備していない点。
そこで、上記相違点1?3について検討する。
(相違点1について)
刊行物1には、「緩衝材16は、ローラ15の外径より大径の断面矩形の環状に形成されている。また、緩衝材16の内径は、ブシュ12の外径より僅かに大きい。緩衝材16の幅W_(2)は、内リンクプレート13、13の間隔W_(1)、ローラ15の長さLに対し、W_(2)<W_(1)-L、L+W_(2)≒T_(2)に設定されている。ただし、T_(2)は、スプロケットSの歯底S_(2)の有効幅である。また、緩衝材16の幅W_(2)は、緩衝材16をブシュ12と歯底S_(2)との間に有効に挟み込むことができる限り、必要最小限に設定するものとする。」(上記摘記事項(e)参照)と記載されている。
緩衝材16のローラ15幅に対しての幅率を、良好な衝撃緩和作用が得られるように、適切な数値範囲とすることは、当業者が通常に採用する設計変更の範囲内の事項にすぎない。
してみれば、引用発明の緩衝材16の幅率を13?45%として、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
(相違点2について)
刊行物1の図2?4の記載から、緩衝材16の外径はローラ15より僅かに大きく成っていて、スプロケットSの歯S_(1)に噛み合う際には緩衝材16が最初に接することが看取できる。緩衝材16の外径がローラ15の外径よりも僅かに大きいことにより、緩衝材16がスプロケットSの歯S_(1)に噛み合う際に、噛み合い時の衝撃が緩和されることは技術的に自明の事項である。
そして、緩衝材16の潰し代を、良好な衝撃緩和作用が得られるように、適切な数値範囲とすることは、当業者が通常に採用する設計変更の範囲内の事項にすぎない。
してみれば、引用発明の緩衝材16がスプロケット歯に噛み合った際の潰し代を5?25%として、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
(相違点3について)
刊行物1の図5には、左から奇数個(例えば、3個)ずつ区切ると、緩衝材16を所定の長さ(3個)にわたって千鳥状に配置し、この所定長さ(3個)に配置される緩衝材16の千鳥状配列順序を交互に入れ替えている構成が記載されている。
一方、引用発明及び刊行物2に記載された技術的事項は、ともに低騒音ローラチェーンに関する技術分野に属するものであって、刊行物2には、「本考案に係るサイレントチェーンは、ローラチェーンを構成するそれぞれのブシュに装着するローラ体及び弾性ローラをピッチごとに変化させてローラリンク間に配設したので、ローラチェーンがスプロケットの同一箇所に当接することなくランダムに当接することとなるので、スプロケット歯の摩耗を抑止することができるものである。」(上記摘記事項(i)参照)、「本実施例においては、前記したスチールローラ5と弾性ローラ6との配列を1ピッチごとに変化させて構成しているものであり、例えば第1図に示すように、弾性ローラ6を中央にしてその両側にスチールローラ5,5を配列したもの、上部より弾性ローラ6、スチールローラ5,5の順に配列したもの、上部よりスチールローラ5,5、弾性ローラ6の順に配列したもの、スチールローラ5を中央にしてその両側に弾性ローラ6,6を配列したもの等を1ピッチごとに配設して無端状のローラチェーンを構成している。
また、前記のスチールローラ5,5が重合状態とされたものの代りに幅広のスチールローラとしてもよいし、弾性ローラを幅広とする等前記したそれぞれのローラの形状及び配列は無数のものがあり、使用条件等により変化させるのがよい。」(上記摘記事項(j)参照)、及び「本考案に係るサイレントチェーンは、ローラチェーンを構成するそれぞれのブシュに装着するローラ体及び弾性ローラの配列を1ピッチごとに変化させてランダムに構成したものであるので、無端状のローラチェーンが一周する間にスプロケット歯面全体にてスチールローラが噛み合うこととなるので減音効果はそのまゝでスプロケット歯の摩耗を歯幅に対して均等に進行させることが可能となるもので、その結果、弾性ローラの損傷は軽減され、ローラチェーンの耐久性を向上させることができたものである。」(上記摘記事項(k)参照)と記載されている。
上記記載から、刊行物2には、無端状のローラチェーンがスプロケットの同一箇所に当接することなくランダムに当接するようにして、ローラチェーンが一周する間にスプロケット歯面全体にてローラが噛み合うようにする技術手段が記載又は示唆されている。
してみれば、引用発明の緩衝材16に、上記刊行物2に記載された技術手段を適用することにより、緩衝材16を所定の長さ(奇数個、偶数個に拘わらず任意の一定個数)にわたって千鳥状に配置し、この所定長さ(任意の一定個数)に配置される緩衝材16の千鳥状配列順序を交互に入れ替えるようにして、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。

また、刊行物1及び2の記載からみて、引用発明に刊行物2に記載された技術手段を適用したものは、騒音抑制効果とローラの耐久寿命が両立可能なものであるから、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び刊行物2に記載された発明が奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「本発明(注:本審決の「本願発明」に対応する。以下同様。)の『低騒音ローラチェーン』は、弾性ローラを所定の長さにわたって千鳥状に配列し、この千鳥状配列形態を交互に入れ替えている。従って、スプロケット歯数が如何様でも、すなわち偶数のスプロケット歯数の場合であっても、弾性ローラ及び金属製ローラは全てのスプロケット歯に対して均等に当り、スプロケット歯が偏摩耗することはなく、スプロケットの寿命並びにローラチェーンの寿命は向上することに成る。
実公平5-586号公報(注:本審決の「刊行物2」に対応する。)に記載している『サイレントチェーン』は、ローラを3分割して弾性ローラを各ピッチごとに変化させて配列することで、スプロケット歯に均等に当るようにした目的は本発明と共通するが、上記の通り、ローラチェーンのピッチ及びスプロケット歯数によっては均等に当らず、偏摩耗を発生する。
しかも、弾性ローラを各ピッチごとに違わせるといった考えと、本発明の千鳥状配列順序を交互に入れ替えるといった思想はその基本が異なっています。」(「F.」の項を参照)と本願発明が奏する作用効果について主張している。
しかしながら、上記(相違点1について)?(相違点3について)において述べたように、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、審判請求人が主張する本願発明が奏する作用効果は、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものにすぎず、本願発明の構成を備えることによって、本願発明が、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものとは異なる、相乗的で予想外の作用効果を奏するものとは認められないので、審判請求人の主張は採用することができない。

4.むすび
結局、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-03 
結審通知日 2011-08-23 
審決日 2011-11-16 
出願番号 特願2000-198404(P2000-198404)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 芳枝  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 常盤 務
所村 陽一
発明の名称 低騒音ローラチェーン  
代理人 平崎 彦治  
代理人 平崎 彦治  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ