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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1252158 |
審判番号 | 不服2011-3952 |
総通号数 | 148 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-02-22 |
確定日 | 2012-02-09 |
事件の表示 | 特願2008-159949「画像形成システム、画像形成装置、画像形成方法、および画像形成プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月 7日出願公開、特開2010- 3028〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成20年6月19日の出願であって、平成22年11月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年2月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年6月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「印刷ジョブを複数の画像形成装置で分割して実行し得る画像形成システムであって、 前記複数の画像形成装置のうちの一の画像形成装置において印刷の中断に関するユーザの指示を受け付ける指示部と、 前記指示部により前記指示が受け付けられた場合、前記複数の画像形成装置のうちの前記印刷に対応する印刷ジョブに基づいて印刷処理を実行中の他の画像形成装置に印刷処理を中断させるための命令を、前記一の画像形成装置から発行する発行部と、 前記指示部により前記指示が受け付けられた場合、前記一の画像形成装置及び前記他の画像形成装置のそれぞれによる印刷の中止に関するユーザの選択結果を、前記一の画像形成装置において受け付ける選択部と、を有し、 前記発行部は、前記選択部により受け付けられた前記選択結果に応じた処理を前記他の画像形成装置に実行させるための命令をさらに発行することを特徴とする画像形成システム。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-234339号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 1つのプリントジョブを共通の通信回路に接続された複数のプリンタで分散処理するタンデムプリントが可能な印刷システムにおいて、 前記各プリンタは、 ジョブ処理の順位操作を行うための操作手段と、 ジョブ処理の順位操作の内容に関する信号の授受を行う通信部、及び、受信したジョブ処理の順位操作の内容に従ってジョブ処理の順位を管理する管理部、を有するジョブ処理制御手段と、を備えていることを特徴とする印刷システム。 【請求項2】 前記ジョブ処理の順位操作は、割込み指示であることを特徴とする請求項1記載の印刷システム。 【請求項3】 前記ジョブ処理の順位操作は、待機中のプリントジョブの先頭への割込み指示であることを特徴とする請求項1記載の印刷システム。 【請求項4】 前記ジョブ処理の順位操作は、待機中のプリントジョブ内でのジョブ処理順位の繰上げ指示であることを特徴とする請求項1記載の印刷システム。 【請求項5】 何れかのプリンタにおいて既に指示されているジョブ処理を中止もしくは中断する操作に連動して、他のプリンタにおけるジョブ処理が中止もしくは中断されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の印刷システ ム。」 (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、複数のプリンタが互いに通信可能な環境下に設置されている状態にて、1つのプリントジョブを複数のプリンタに分散させて印刷処理するタンデムプリントが可能な印刷システムに関する。」 (ウ)「【0024】 (5)何れかのプリンタにおいて既に指示されているジョブ処理を中止もしくは中断する操作に連動して、他のプリンタにおけるジョブ処理が中止もしくは中断されることを特徴とする。 【0025】 このシステムにおいては、複数のプリンタに対して分散処理を指示した後 で、何れかのプリンタにおいて、プリントジョブの処理を中止もしくは中断するための操作を行えば、その操作に連動して、他のプリンタにおけるジョブ処理を同時に、中止もしくは中断することができる。」 (エ)「【0061】 (5)複数のプリンタに対して分散処理を指示した後で、何れかのプリンタにおいて、プリントジョブの処理を中止もしくは中断するための操作を行えば、その操作に連動して、他のプリンタにおけるジョブ処理を同時に、中止もしくは中断することができるため、利便性が向上する。」 したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「1つのプリントジョブを共通の通信回路に接続された複数のプリンタで分散処理するタンデムプリントが可能な印刷システムにおいて、 何れかのプリンタにおいて既に指示されているジョブ処理を中止もしくは中断する操作に連動して、他のプリンタにおけるジョブ処理が中止もしくは中断されることを特徴とする印刷システム。」 4.対比 プリンタは画像形成装置と、印刷システムは画像形成システムといえるから、引用発明の「印刷システム」は「印刷ジョブを複数の画像形成装置で分割して実行し得る画像形成システム」といえる。 引用発明は、「何れかのプリンタにおいて既に指示されているジョブ処理を中止もしくは中断する操作」とあることから、本願発明の「前記複数の画像形成装置のうちの一の画像形成装置において印刷の中断に関するユーザの指示を受け付ける指示部」と同様の機能を有するものである。 引用発明は、「何れかのプリンタにおいて既に指示されているジョブ処理を中止もしくは中断する操作に連動して、他のプリンタにおけるジョブ処理が中止もしくは中断される」とあることから、本願発明の「発行部」の「前記指示部により前記指示が受け付けられた場合、前記複数の画像形成装置のうちの前記印刷に対応する印刷ジョブに基づいて印刷処理を実行中の他の画像形成装置に印刷処理を中断させるための命令を、前記一の画像形成装置から発行する」機能と同様の機能を有するものである。 したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致する。 「印刷ジョブを複数の画像形成装置で分割して実行し得る画像形成システムであって、 前記複数の画像形成装置のうちの一の画像形成装置において印刷の中断に関するユーザの指示を受け付ける指示部と、 前記指示部により前記指示が受け付けられた場合、前記複数の画像形成装置のうちの前記印刷に対応する印刷ジョブに基づいて印刷処理を実行中の他の画像形成装置に印刷処理を中断させるための命令を、前記一の画像形成装置から発行する発行部と、 を有することを特徴とする画像形成システム。」 また次の点で相違する。 相違点 引用発明は、「何れかのプリンタにおいて既に指示されているジョブ処理を中止もしくは中断する操作に連動して、他のプリンタにおけるジョブ処理が中止もしくは中断されることを特徴とする」だけであるのに対して、本願発明は、「前記指示部により前記指示が受け付けられた場合、前記一の画像形成装置及び前記他の画像形成装置のそれぞれによる印刷の中止に関する ユーザの選択結果を、前記一の画像形成装置において受け付ける選択部」を有し、さらに、「前記発行部は、前記選択部により受け付けられた前記選択結果に応じた処理を前記他の画像形成装置に実行させるための命令をさらに発行する」ものである点。 5.相違点に対する判断 ユーザの操作に対して、その操作に基づく処理を進めるか、その操作をやめて操作前の状態または処理に復帰または再開するかを選択させるための ユーザインターフェースは、よく知られたものであり、画像形成装置においても以下のように周知のことにすぎない。 周知例1.特開2003-348277号公報 「【0071】また、図9に示すように、「印字処理キャンセルキー」が操作された場合には(ST29)、印字処理を中断する(ST20)。その 後、中断処理が完了すると(ST21)、操作パネル7の表示部7Aに処理選択メッセージが表示される(ST22)。この状態を図10に示す。この処理選択メッセージは、現在、一時的に中断させている画像形成動作をこのまま終了させるのか、それとも再開させるのかをユーザに確認するためのものである。」等と記載されている。 周知例2.特開2006-103341号公報 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 …… この制御手段は、複写モードの選択中であって、画像出力手段による画像形成動作の実行中に操作キーによる中止の指示がなされると、その画像形成動作を中断し、その処理動作を中止するか否かを確認するメッセージを出力する一方、 ……構成となっていることを特徴とする画像形成装置。」 そして、引用発明は「何れかのプリンタにおいて既に指示されているジョブ処理を中止もしくは中断する操作に連動して、他のプリンタにおけるジョブ処理が中止もしくは中断されることを特徴とする」のであるから、上記のような中止に関する処理を選択させるためのユーザインターフェースの選択結果が連動することは当然であるから、周知のユーザインターフェースを採用することで相違点を本願発明のようにすることに困難な点はない。 なお、審判請求書には、 「(3)本願発明と引用文献に記載の発明との対比 …… また、引用文献1に記載の発明は、親機におけるジョブ繰上げ/割込みに連動して子機におけるジョブ繰上げ/割込みを実行させることを本来の目的としています(段落「0010」等)。そのため、ジョブ繰上げ/割込みのために親機において処理中のジョブが中止(キャンセル)された場合、子機において処理中の同一ジョブはユーザの選択結果を受け付けるまでもなく当然に中止されるべきであると考えられます。したがって、仮に引用文献1に記載の印字システムに上記「選択部」に相当する構成を付加したとしても、それにより得られる発明が技術上の意義を有するとは言いがたく、引用文献1に触れた当業者が上記「選択部」を有する本願発明の構成に導かれることは想定困難であります。 …… なお、本願発明において「中断」とは印刷設定の間違いに気付いたユーザが印刷を一時停止させることを意味する一方で、「中止」とは中断後のユーザの選択結果に応じて印刷をキャンセルすることを意味することから、両者は互いに相違する概念を表しているといえます。しかし、引用文献1において「中断」及び「中止」は同義に用いられており、上述したような概念上の相違点は何ら考慮されておりません。よって、本願発明に係る「指示部」のように印刷の「中断」に係るユーザの指示を受け付ける構成は厳密には引用文献1には記載されていないものと思料します。」 等と記載されている。 しかし、引用発明は「中止もしくは中断する操作」とあるように、ジョブの繰上げまたは割込みによる「中止もしくは中断」ではないし、上記(ア)等に記載されたように、引用例にはジョブの繰上げまたは割込みと連動し て、「中止もしくは中断する操作」が行われることが示されているわけではない。 本願発明においても「前記指示部により前記指示が受け付けられた場合、前記一の画像形成装置及び前記他の画像形成装置のそれぞれによる印刷の中止に関するユーザの選択結果を、前記一の画像形成装置において受け付ける選択部」とあるように、「他の画像形成装置」に関する選択結果のみを受け付けるわけでなく、「前記一の画像形成装置及び前記他の画像形成装置」に関する選択結果を受け付けるものであり、図4のように、中止する選択が受け付けられると(S13)、「一の画像形成装置」に相当するプリンタ21は印刷を中止し、引用例の子機に対応する「他の画像形成装置」に相当するプリンタ22、23は、ユーザの選択結果を受け付けるまでもなく、プリンタ21に連動して中止される(S15-S18)。 また、上記のような周知のユーザインターフェースを用いて、ユーザに選択をさせることで、操作の確認ができるので誤操作が防止され、引用発明に用いた場合にも技術上の意義が認められる。 さらに、引用例において、「中断」及び「中止」の具体的な定義はなされていないが、「中断」及び「中止」が同義であることが示されているわけではない。本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲には、 「【請求項1】 印刷ジョブを複数の画像形成装置で分割して実行し得る画像形成システムであって、 前記複数の画像形成装置のうちの一の画像形成装置において印刷の中断または中止に関するユーザの指示を受け付ける指示部と、 ……」 と記載されており、引用例において、「中断または中止に関するユーザの指示」と記載されているだけで、「中断」及び「中止」が同義であるとはいえない。 仮に、引用発明の「中止もしくは中断する操作」が、本願発明でいう「中断」のことだけであるとしても、「中断」したままで、終了することである「中止」も処理の再開もなされずに放置されることはないから、その「中 断」に続く処理がなされるのは当然のことであり、前記のような周知のユーザインターフェースを用いて、それに続く処理が選択されるようにすることに、困難な点はない。 また、仮に、引用発明の「中止もしくは中断する操作」が、本願発明でいう「中止」のことだけであるとしても、前記のような周知のユーザインターフェースを用いて、ユーザに選択をさせることで、操作の確認をして誤操作を防止することに困難な点はないといえる。 したがって、仮に、引用発明の「中断」及び「中止」が同義であるとしても、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 以上のとおりであるから、審判請求書の主張は採用することができない。 6.むすび 上述のように、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-08 |
結審通知日 | 2011-12-13 |
審決日 | 2011-12-27 |
出願番号 | 特願2008-159949(P2008-159949) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中田 剛史 |
特許庁審判長 |
加藤 恵一 |
特許庁審判官 |
板橋 通孝 古川 哲也 |
発明の名称 | 画像形成システム、画像形成装置、画像形成方法、および画像形成プログラム |
代理人 | 八田国際特許業務法人 |