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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1252227
審判番号 不服2008-17900  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-14 
確定日 2012-02-15 
事件の表示 特願2000- 64728「リードフレームとその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月22日出願公開、特開2000-232196〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成 9年 2月 3日に出願した特願平9-20613号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成12年 3月 9日に新たな特許出願としたものであって、平成20年 4月 2日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年 7月14日に拒絶査定不服の審判請求がされるとともに、同年 8月12日付けで同一内容の手続補正が2回なされ、平成22年 7月 6日付けで当審によって拒絶理由の通知がなされ、平成23年 1月27日(受付日)付け及び平成23年 1月28日付けで、同一内容の意見書がそれぞれ提出され、平成23年 2月21日付けで当審によって拒絶理由(以下、「第2回目当審拒絶理由」という。)の通知がなされ、平成23年 8月11日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?8に係る発明は、平成20年 8月12日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】銅又は銅合金層からなり選択的にエッチングされたアウターリードと、このアウターリードより薄い銅層からなり選択的にエッチングされたインナーリードと、このインナーリードと上記アウターリードとの間に設けられたニッケル系金属からなる金属層とによる三層構造を有することを特徴とするリードフレーム。」

3.引用刊行物及び周知例の記載
(1)引用刊行物について
第2回目当審拒絶理由に引用された、原出願の出願日前に頒布された刊行物である、特開平3-148856号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、「リードフレームの製造方法」(発明の名称)が記載され、図面とともに、以下の記載がある。

(引ア)「(G.実施例)[第1図乃至第7図]
以下、本発明リードフレームの製造方法を図示実施例に従って詳細に説明する。
(a.第1の実施例)[第1図、第2図]
第1図(A)乃至(E)は本発明リードフレームの製造方法の一つの実施例を工程順に示す断面図、第2図(A)、(B)はその実施例を工程順に示す斜視図である。
(A)第1図に示すように三層構造の金属板をリードフレーム材1として用意する。該リードフレーム材1は、エッチングストップ層(厚さ2?30μm)2を、42合金あるいは銅合金からなる例えば100?250μm程度の厚い金属層3と銅箔からなる10?50μm程度の薄い金属層4によってサンドイッチ状に挟んだ三層構造を有している。厚い金属層3はアウターリードとなって機械的強度を確保するためのものであるのに対して、薄い金属層4はインナーリードとなるものであり、微細なパターンを形成できるように薄く形成されているのである。
エッチングストップ層2は金属層3、4に対するエッチング液、例えばH_(2)O_(2)/H_(2)SO_(4)系のエッチング液にエッチングされない金属であるアルミニウムが材料として選ばれ、後において金属層3と4の互いに一方に対するエッチングによって他方がエッチングされることを阻む役割を果たす。
(B)次に、第1図(B)に示すように金属層3及び金属層4の表面にフォトレジスト膜5a及び5bを選択的に形成する。厚い金属層3表面に形成されたフォトレジスト膜5aはリードフレームのインナーリード以外の部分を構成するパターンを有し、薄い金属層4の表面に形成されたフォトレジスト膜5bはインナーリード及びガイドホール6近辺等肉厚を特に厚くすべき部分を成すパターンを有している。尚、フォトレジスト膜5の開口部の幅は通常最小10?20μmにするが、ガイドホール6近辺等厚肉部分に関してはサイドエッチング量を考慮にいれて開口幅を設定する必要がある。
(C)次に、H_(2)O_(2)/H_(2)SO_(4)系のエッチング液をスプレー装置に投入し2Kg/cm^(2)の圧力にてリードフレーム材1の厚い金属層3の表面に対してエッチング液のスプレー照射を3分間照射する。すると、第1図(C)に示すように金属層3が選択的にエッチングされリードフレームの母体たるアウターリード7が形成される。
(D)次に、上記エッチング液のスプレー照射を2Kg/cm^(2)の圧力にて2分間薄い金属層4の表面に行う。すると、第1図(D)に示すように金属層4が選択的にエッチングされ、インナーリード8と、ガイドホール6の形成された厚肉部9が形成される。金属層4が例えば厚さ18μmの銅箔の場合、実際に約40μmピッチのインナーリード8、8、・・・を形成することが可能であり、著しく微細化することができ、ビン数の増加の要請に応えることができる。
その後、溶剤によってフォトレジスト膜5a、5bを除去する。このフォトレジスト膜5a、5b除去後の状態を示す斜視図が第2図(A)である。
(E)次いで、例えばアルカリ溶液(Na_(2)CO_(2)、NaOH又はKOH)によりエッチングストップ層2を除去する。これによって、第1図(E)に示すように、金属層3と金属層4のエッチング後に残存する部分の間にのみエッチングストップ層2が残存し、それ以外のエッチングストップ層2は除去された状態になり、リードフレームが完成する。第2図(B)はリードフレーム完成後の状態を示す。
尚、必要に応じてリードフレームの表面を錫、金、半田(鉛10%、錫90%)等により全面的ないし部分的にメッキするようにしても良い。この場合、アルミニウムからなるエッチングストップ層2の残存部分の表面はメッキしにくいのでメッキ前に亜鉛Zn置換をして活性化してメッキ性を良くしておくことが好ましい。」(4頁左上欄3行?5頁左上欄1行)

すなわち、引用刊行物には、「アルミニウムからなるエッチングストップ層2を厚さの異なる2層の金属層3、4によりサンドイッチ状に挟んだ三層構造のリードフレームであって、厚い方の金属層は42合金あるいは銅合金からなり、薄い方の金属層は銅箔からなるものであり、厚い金属層3が選択的にエッチングされアウターリード7が形成され、薄い金属層4が選択的にエッチングされインナーリード8が形成される、リードフレーム」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2)周知例1について
第2回目当審拒絶理由に引用された、原出願の出願日前に頒布された刊行物である、米国特許第5108541号明細書(以下、「周知例1」という。)には、「Processes for electrically conductive decals filled with inorganic insulator material(無機絶縁材料が充填された電気的導電デカルの製法、英文の後の()内は当審による訳、以下、同じ。なお、当該訳は、特開平4-355086号公報を参照した。)」が記載され、図面とともに以下の記載がある。

(周1ア)「This invention describes the structure and various methods of making electrically conductive decals.
The solid circuit patterns discussed in this patent application are referred to as decals, which are defined as pictures, designs or labels printed on specially prepared material to be transferred to another material. These electrically conductive decals will also be referred to as electrical connection members.(この発明は、電気的導体のデカルを製造する構造や種々の方法を開示する。この特許出願において議論されている固体電子回路は、デカルと呼ばれている。これは、特別に製造された材料上に印刷された像、設計図、ラベルを他の材料に転写するものとして定義される。これらの電気的導体のデカルは、電気的接続部材と呼ばれる。)」(7欄27?34行)

(周1イ)「FIG. 1, illustrates a tri-metallic structure referred to as a work piece or a decal base 5. The decal base 5, is a three metal layer sandwich with the middle layer being an etch barrier or an etch-stop layer 11, surrounded by two electrically conductive metal layers 13 and 15. The etch barrier or etch-stop layer 11, is an electrically conductive material, and it is any material that will allow the preferential etching of the other two metal layers 13 and 15, that are cladding or sandwiching the etch-stop or the third layer 11. The purpose of the etch barrier 11, will be described later in this section. The etch-stop layer 11, should be of sufficient thickness to prevent the permeation of undesirable etchants. Suitable materials for the etch-stop layer are materials that are selected from a group comprising aluminum, chromium, copper, gold, molybdenum, nickel, palladium, platinum, silver, titanium, tungsten or alloys thereof.

The two outside layers of electrically conductive material 13 and 15, may be of the same or different material, depending on the end result that is desired. Suitable materials for the electrically conductive metal layer 13 and 15, are materials that are selected from a group comprising aluminum, copper, gold, iron, molybdenum, nickel, tungsten or alloys thereof. Similarly, the two outside layers 13 and 15, may be of the same or different thickness, again this would depend on how these layers are going to be utilized in the end package. For the purposes of illustration only it is being shown that the metal layer 15, is of a thin material, and the metal layer 13, is of a thicker material, but any variation in the top to bottom thickness can be used to achieve the desired decal profile. (図1はワークピースまたはデカルベース5と呼ばれる三層構造を示す。デカルベース5は三層構造で、中間層はエッチング障壁すなわちエッチングストップ層11であり、その周囲は導電金属層13および15である。エッチング障壁すなわちエッチングストップ層11は、導電物質であり、エッチングストップ層すなわち第3層11を被覆または挟んでいる他の2つの金属層13及び15に対して選択的なエッチングを可能にする任意の材料である。エッチング障壁11の目的は、後に説明する。エッチングストップ層11は、十分な厚さを持ち、不所望のエッチング液の浸透を妨げるべきである。エッチングストップ層に適切な物質は、アルミニウム、クロム、銅、金、モリブデン、ニッケル、パラジウム、白金、銀、チタン、タングステン、またはそれらの合金を含むグループから選択される。
2つの外部層である導電物質13および15は、所望の最終結果に応じて、同じかまたは異なる物質とすることができる。導電物質13および15のための適切な物質は、アルミニウム、銅、金、鉄、モリブデン、ニッケル、タングステン、またはそれらの合金を含むグループから選択される物質である。同様に、2つの外部層13および15は、同じかまたは異なる厚さであり、厚みは、これらの層が最終パッケージにどのように利用されるのかによる。図によると、金属層15は薄い物質からなり、金属層13はそれより厚い物質からなるが、所望のデカル厚みを作るために、上下の厚さは任意のバリエーションが可能である。)」(8欄8?39行)

(3)周知例2について
第2回目当審拒絶理由に引用された、原出願の出願日前に頒布された刊行物である、特開平3-71696号公報(以下、「周知例2」という。)には、「抵抗体内蔵の回路基板の製造方法」(発明の名称)が記載され、図面とともに、以下の記載がある。

(周2ア)「〈実施例〉
当該回路基板において絶縁支持体として厚さ1.6mmのガラスエポキシ材、高導電材料層に厚さ35μm電解銅箔(日本鉱業社製)、中央に挟まれた抵抗材料層に厚さ0.4μmのNi-P合金を用いた抵抗体内蔵基板を作製した。その後第1図(a)?(h)に示すような工程に沿って目的とする回路基板を作製していくわけだが、第1図(b)?(c)の工程でエッチング液は塩化第2鉄液を用い、スプレー方式で行った。エッチング温度は40℃、エッチング時間は約2分であった。この時使用したフォトレジストはドライフィルム(デュポン社製)である。第1図(c)?(d)のエッチングは、第1図(b)の所定のフォトレジスト膜をそのまま介して硫酸銅と硫酸の混合液にて抵抗材料層たるNi-P合金をディッピングにてエッチング除去した。エッチング温度は90?95℃、エッチング時間は約3分であった。その後、第1図(b)で使用していたフォトレジスト膜を剥離し、第1図(f)に示すような所定のフォトレジスト膜を設け、本発明のポイントである硫酸アンモニウム・硫酸銅(2価の銅イオン濃度が20?40g/l)及び水酸化化合物からなるpH7.5?9.5の範囲の液で抵抗材料層上の高導電体層であるところの銅のみをスプレー方式でエッチングを行った。表1の条件で銅のエッチングを行ったがエッチング後のNi-P合金の溶解状況は約0.01μm程度侵されただけであった。」(3頁左上欄9行?右上欄15行)

(4)周知例3について
第2回目当審拒絶理由に引用された、原出願の出願日前に頒布された刊行物である、特開平8-25822号公報(以下、「周知例3」という。)には、「凹版印刷版」(発明の名称)が記載され、図面とともに以下の記載がある。

(周3ア)「【0008】図1に例示した本発明の凹版印刷版(以下、単に凹版と云う)は、所要の側の表面平均粗さが0.02μmRa以下に研磨されたフェライト系の適宜のステンレス鋼、例えばSUS430からなる基板1の片面に、ニッケル合金のエッチング停止層2を介して溝状のインキセル5を囲繞形成する銅めっき層3を設け、この表面を硬質クロムめっき4によって薄く被覆したものである。
【0009】上記構成の本発明になる凹版は、以下に示す方法によって形成される。例えば板厚が3?10mm程度の市販のSUS430の片面を、例えば硝酸-アルミナ粉系の研磨剤液(上村工業(株)製のメカノックスCB-1など)を用いて、表面平均粗さが0.02μmRa以下になるようにケミカル・バフ研磨する。
【0010】上記性状に調整した基板1の研磨面を除く部位を非導電性部材、例えばPETフィルムなどによってマスキングし、組成が例えば硝酸ニッケル300g/l、ニッケリン(B-1)200ml/l、pH1.4であるめっき浴に浸漬し、電流密度2A/cm^(2) 、めっき浴温度60℃の条件で電解めっきを行い、3μmの厚さのニッケル-リン合金(リン10重量%、残部ニッケル)からなるエッチング停止層2を基板1の平滑な面に形成する。
【0011】さらに、エッチング停止層2が上記のようにして片面に形成された基板1を、組成が硫酸銅200g/l、硫酸55g/l、塩素70ppmのめっき浴に浸漬し、電流密度2A/cm^(2) 、めっき浴温度25℃の条件で電解めっきを行い、厚さが10μmの銅めっき層3をエッチング停止層2の上に形成する。
【0012】そして、銅めっき層3の上にそれ自体は従来周知の図示しない感光性樹脂(例えば、東京応化(株)製のPMER N-HC40など)を塗布し、マスク露光と現像を行って耐食性のレジストを所望のパターンに残存形成した後、塩化第二鉄液(ボーメ濃度40度、温度35℃)に浸漬して銅めっき層3の露出部をエッチングし、後に凹版のインキセル5となる深さ10μmの凹部を形成する。
【0013】この銅めっき層3の塩化第二鉄液によるエッチングは、銅めっき層3の下側にニッケル-リン合金からなるエッチング停止層2が配設されているので、前記凹部が銅めっき層3の膜厚の10μmより深く形成されることはない。
【0014】そして、表面に溝状の凹部を有する上記板状部材を組成が無水クロム酸250g/l、硫酸2.5g/lのめっき浴に浸漬して、電流密度10A/cm2 、めっき浴温度50℃の条件で電解めっきを行い、硬質クロムめっき4を全面に薄く、例えば3μmの厚さの形成すると、本発明の凹版が形成される。」

4.対比
(1)本願発明と引用発明とを比較する。
本願の明細書には、以下の記載がある。
(明1)「【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、リードフレームの製造に用いる三層構造のリードフレーム材の中間層を成すエッチングストップ層として特定の材料の金属層を採用することにより、・・・(略)・・・この知見に基づいて本発明を完成するに至った。」

(明2)「【0010】上記アウターリードとインナーリードとの間に介在する上記ニッケル系金属層は、銅又は銅合金用のエッチング液にエッチングされない金属層であり、本発明のリードフレームの製造過程において、これを挟む金属層の一方に対するエッチングによって他方がエッチングされることを阻む役割を果たすものである。」

これらの記載から、本願発明において、「アウターリードとインナーリードとの間に介在するニッケル系金属層」は、エッチングストップ層であり、銅又は銅合金用のエッチング液にエッチングされない性質を有する金属層であることは明らかである。

また、引用発明の「厚さの異なる2層の金属層3、4」において、「厚い金属層3が選択的にエッチングされた」ものが「アウターリード」であり「薄い金属層4が選択的にエッチングされた」ものが「インナーリード」であるから、引用発明の「厚さの異なる2層の金属層3、4によりサンドイッチ状に挟んだ三層」の「アルミニウムからなるエッチングストップ層」は、本願発明の「インナーリードとアウターリードとの間に設けられた金属層」に相当し、両者は、
「銅合金層からなり選択的にエッチングされたアウターリードと、このアウターリードより薄い銅層からなり選択的にエッチングされたインナーリードと、このインナーリードと上記アウターリードとの間に設けられた金属層とによる三層構造を有するリードフレーム。」で一致し、以下の点で相違している。

(相違点)
インナーリードとアウターリードとの間に設けられた金属層が、本願発明では、ニッケル系金属からなるのに対し、引用発明では、アルミニウムからなる点。

5.当審の判断
銅又は銅合金をエッチング液によってエッチングする微細加工の技術分野において、銅又は銅合金用のエッチング液にエッチングされにくい又はエッチングされない金属層として、ニッケル系金属(Ni-P合金、ニッケル-リン合金等)からなる金属層が用いられることは、周知例1?3に示されるように周知である。

すなわち、周知例1の上記記載事項(周1イ)には、導電金属層と、エッチング障壁すなわちエッチングストップ層とを有するものにおいて、導電金属層として銅又は銅合金を採用し、エッチングストップ層としてニッケル又はニッケル合金を用いることが例示されている。

また、周知例2の上記記載事項(周2ア)の、特に、「第1図(f)に示すような所定のフォトレジスト膜を設け、本発明のポイントである硫酸アンモニウム・硫酸銅(2価の銅イオン濃度が20?40g/l)及び水酸化化合物からなるpH7.5?9.5の範囲の液で抵抗材料層上の高導電体層であるところの銅のみをスプレー方式でエッチングを行った。表1の条件で銅のエッチングを行ったがエッチング後のNi-P合金の溶解状況は約0.01μm程度侵されただけであった。」(3頁右上欄7?15行)という記載を参照すると、銅のエッチングにおいて、Ni-P合金の溶解が少ないことが示されている。

そして、周知例3の上記記載事項(周3ア)の、特に、「この銅めっき層3の塩化第二鉄液によるエッチングは、銅めっき層3の下側にニッケル-リン合金からなるエッチング停止層2が配設されているので、前記凹部が銅めっき層3の膜厚の10μmより深く形成されることはない。」(段落【0013】)という記載を参照すると、この「エッチング停止層」とは、エッチングを停止させる層、すなわち、エッチングストップ層であるから、周知例3には、銅のエッチングにおいて、銅のエッチング液にエッチングされないエッチングストップ層として、ニッケル-リン合金からなるエッチングストップ層を設けることが示されている。

一方、引用刊行物において、「エッチングストップ層2は金属層3、4に対するエッチング液、例えばH_(2)O_(2)/H_(2)SO_(4)系のエッチング液にエッチングされない金属であるアルミニウムが材料として選ばれ、後において金属層3と4の互いに一方に対するエッチングによって他方がエッチングされることを阻む役割を果たす。」(4頁右上欄5?11行)と記載され、H_(2)O_(2)/H_(2)SO_(4)系のエッチング液にエッチングされない金属としてアルミニウムが例示されているものの、エッチングストップ層2の材料がアルミニウムのみに限定される旨の記載はなく、引用発明において、エッチングストップ層2の材料がアルミニウムに限定されるものでないことは明らかである。

そして、エッチングストップ層の材料を何にするかは、エッチングストップ層として作用効果を奏することが周知の材料の中から、当業者が適宜選択すればいいものであって、そのような、作用効果が同等の均等物による置換は、当業者の通常の創作能力の発揮と言えるものである。

そうすると、銅又は銅合金のエッチング液によるエッチングストップ層として、ニッケル系金属からなるものを用いることは周知なのであるから、引用発明におけるインナーリードとアウターリードとの間に設けられたエッチングストップ層の材料として、アルミニウムに代えて、銅又は銅合金に対するエッチングストップ層として同様な作用効果を奏する周知のニッケル系金属からなるものを採用し、本願発明のようなリードフレームとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2011-09-12 
結審通知日 2011-09-20 
審決日 2011-10-03 
出願番号 特願2000-64728(P2000-64728)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 拓也坂本 薫昭  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 川端 修
田中 永一
発明の名称 リードフレームとその製造方法  
代理人 有原 幸一  
代理人 尾川 秀昭  
代理人 尾川 秀昭  
代理人 松島 鉄男  
代理人 松島 鉄男  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 尾川 秀昭  

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