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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1252232
審判番号 不服2008-30501  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-01 
確定日 2012-02-15 
事件の表示 特願2004-202661「積層基板及び半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月29日出願公開,特開2005-268740〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成16年7月9日(パリ条約による優先権主張2004年3月19日,韓国)の出願であって,平成20年4月30日付けの拒絶理由通知に対して,同年8月6日に意見書が提出されたが,平成20年8月25日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年12月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日付けで手続補正書が提出され,その後,平成22年10月5日付けで審尋がされ,平成23年1月12日に回答書が提出され,さらに,当審において平成23年4月13日付けで拒絶理由が通知され,同年7月14日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。

2 当審の拒絶理由の要旨
当審において平成23年4月13日付けで通知された拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の要旨は,本願の請求項1?18(補正前)に係る発明は,引用例1に記載された発明及び引用例1?12に記載された周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 本願発明の内容
平成23年7月14日に提出された手続補正書によれば,本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】
絶縁基板と,
前記絶縁基板上に位置し,0を超過し300MPa以下の引張応力を有するモリブデン膜又はモリブデン合金膜からなる導電膜パターンと,
前記導電膜パターン上に位置し,200MPa?400MPaの圧縮応力を有するシリコン窒化膜又はシリコン酸窒化膜と,
を含み,
前記導電膜パターンは,3000?7000Åの厚さを有することを特徴とする,積層基板。」

4 本願発明の容易想到性について
4-1 引用文献の記載と引用発明
(1)引用文献の記載
当審拒絶理由において引用例1として引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2001-255831号公報(以下「引用文献」という。)には,図1?2とともに,次の記載がある(下線は当審で付加。以下同じ。)。

「【0008】図1及び図2に示すように,液晶表示装置は,アレイ基板100と,アレイ基板100に対して所定の間隔をおいて対向配置された対向基板200と,アレイ基板100と対向基板200との間の所定のギャップに保持された液晶組成物を含む液晶層300とを有している。
【0009】アレイ基板100は,透明な絶縁性基板,すなわちガラス基板101上に配置された複数の走査線103,これらの走査線103に直交するように配置された信号線105,走査線103と信号線105との交差部近傍に配置されたスイッチング素子としての薄膜トランジスタすなわちTFT110などを備えている。また,アレイ基板100は,走査線103及び信号線105によって区画された画素領域に設けられているとともに,TFT110を介して信号線105に接続された透明導電性部材としてのITOによって形成された画素電極120を備えている。この画素電極120は,画像を表示する表示エリアにマトリクス状に配置されている。この表示エリアの周囲は,遮光膜によって遮光された外周エリアによって囲まれている。
【0010】走査線103及び信号線105の配線部は,アルミニウムやモリブデン-タングステンなどの遮光性を有する低抵抗材料によって形成されている。
【0011】TFT110は,ガラス基板101上に配置された,チャネル領域112C,ソース領域112S,及び,ドレイン領域112Dを有するポリシリコン薄膜112と,ゲート絶縁膜113を介して走査線103からチャネル領域112C上に延出されたゲート電極114と,ゲート絶縁膜113及び層間絶縁膜115を貫通してポリシリコン薄膜112のソース領域112Sにコンタクトするとともに信号線105と一体に形成されたソース電極116Sと,ゲート絶縁膜113及び層間絶縁膜115を貫通してポリシリコン薄膜112のドレイン領域112Dにコンタクトするドレイン電極116Dと,を備えている。
【0012】また,アレイ基板100は,層間絶縁膜115上,及びTFT110などの配線部上に,窒化シリコン(SiN)によって形成されたパッシベーション膜119を備えている。さらに,アレイ基板100は,パッシベーション膜119上における各画素領域毎に,赤(R),緑(G),青(B)にそれぞれ着色されたカラーフィルタ層130(R,G,B)を備えている。これらのカラーフィルタ層130は,例えば,各画素列ごとに赤,緑,青の順にストライプ状に配列されている。画素電極120は,このカラーフィルタ層130上に配置されている。
【0013】カラーフィルタ層130上に形成された画素電極120は,カラーフィルタ層130に形成された第1コンタクトホール118A,及び,パッシベーション膜119に形成された第2コンタクトホール118Bを介して,TFT110のドレイン電極116Dに電気的に接続されている。アレイ基板100の表面には,カラーフィルタ層130や画素電極120を覆うように配向膜160が設けられている。
【0014】図2に示すように,対向基板200は,透明な絶縁性基板,すなわちガラス基板201上に配置された透明導電性部材としてのITOによって形成された対向電極203を備えている。対向電極203の表面は,液晶層300に含まれる液晶組成物を基板に対して垂直な方向に配向する配向膜207によって覆われている。
【0015】これらのアレイ基板100及び対向基板200は,図示しないスペーサによって所定のギャップを形成した状態で図示しないシール材によって貼り合わされる。液晶層300は,このアレイ基板100と対向基板200との間に形成された所定のギャップに封入される。
【0016】また,アレイ基板100及び対向基板200の外表面には,偏光方向が互いに直交するように配置された偏光板170,210がそれぞれ配置されている。」

以上を整理すると,引用文献には次の事項が記載されている。
・【0009】から,「アレイ基板100」は,「ガラス基板101上に配置された複数の走査線103,とこれらの走査線103に直交するように配置された信号線105」を備えることが記載されている。
・【0010】から,「走査線103及び信号線105の配線部」を,「モリブデン-タングステン」で形成することが記載されている。
・【0012】から,「アレイ基板100」は,「配線部上に,窒化シリコン(SiN)によって形成されたパッシベーション膜119」を備えることが記載されている。

(2)引用文献に記載された発明
上記(1)によれば,引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ガラス基板101と,
前記ガラス基板101上に配置された,モリブデン-タングステンで形成された配線部と,
前記配線部上に窒化シリコン(SiN)によって形成されたパッシベーション膜119と,
を備えている,
アレイ基板100。」

4-2 本願発明と引用発明の対比
本願発明と,引用発明とを対比する。

・引用発明における「ガラス基板101」は,本願発明における「絶縁基板」に相当する。
・引用発明における「前記ガラス基板101上に配置された,モリブデン-タングステンで形成された配線部」は,本願発明における「前記絶縁基板上に位置し,モリブデン膜又はモリブデン合金膜からなる導電膜パターン」に相当する。
・引用発明における「前記配線部上に窒化シリコン(SiN)によって形成されたパッシベーション膜119」は,本願発明における「前記導電膜パターン上に位置するシリコン窒化膜又はシリコン酸窒化膜」に相当する。
・引用発明における「アレイ基板100」は,「ガラス基板101」「配線部」「パッシベーション膜」(本願における「絶縁基板」「導電膜パターン」「シリコン窒化膜」に相当。)を備えるものであるから,本願発明における「積層基板」に相当する。

そうすると,本願発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりとなる。

<一致点>
「絶縁基板と,前記絶縁基板上に位置し,モリブデン膜又はモリブデン合金膜からなる導電膜パターンと,前記導電膜パターン上に位置するシリコン窒化膜又はシリコン酸窒化膜とを含むことを特徴とする,積層基板。」である点。

<相違点1>
本願発明では,「モリブデン膜又はモリブデン合金膜からなる導電膜パターン」が「0を超過し300MPa以下の引張応力を有」し,前記導電膜パターン上に位置する「シリコン窒化膜又はシリコン酸窒化膜」が「200MPa?400MPaの圧縮応力を有する」のに対し,引用発明では,「モリブデン-タングステンで形成された配線部」及び「窒化シリコン(SiN)によって形成されたパッシベーション膜119」が有する応力について,教示がない点。

<相違点2>
本願発明では,「導電膜パターンは,3000?7000Åの厚さを有する」のに対し,引用発明では,「配線部」の膜厚が特定されていない点。

4-3 相違点についての判断
(1)相違点1について
ア 導電膜と絶縁膜が積層された積層基板において,導電膜の引張応力と絶縁膜の圧縮応力を調整して全体の応力が緩和されるようにし,基板の反りや膜のクラックを防止する技術は,次の周知例1?2に記載されているように,当業者にとって周知の技術である。
・周知例1:特開昭64-42840号公報(当審拒絶理由通知書の引用例2)
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例1には,次の記載がある。
「本発明においては,金属ケイ化物層108形成による引張応力はプラズマナイトライド109の圧縮応力により緩和される。(第2頁右上欄第9行?第11行)
「以上述べたように発明によれば高融点金属ケイ化物形成の際に発生した引張応力は,プラズマナイトライド等の圧縮応力により緩和され,基板の平面性は保たれる。
これにより後工程での微細加工の精度が向上することは言うまでもなく,さらに基板のそりに帰因する半導体素子の特性劣化等も回避できるという多大な効果を有する。」(第2頁左下欄第2行?第9行)

上記によれば,周知例1には,引張応力を有する高融点金属ケイ化物層と圧縮応力を有する絶縁膜を組み合わせることにより,応力を緩和し,基板の反りを防止する技術が記載されている。

・周知例2:特開平2-211672号公報(当審拒絶理由通知書の引用例3)
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例2には,次の記載がある。
「上述したようにゲート絶縁膜を含む積層膜を,内部応力が引張応力を示す膜と圧縮応力を示す膜とを組合せると,引張応力と圧縮応力とでは力の作用する方向が反対となるので,各膜F_(i)の内部応力が相殺し合い,ゲート絶縁膜を含む積層膜全体の合成された内部応力は小さくなる。」(第2頁左下欄第9行?第14行)
「同図に見られるように本実施例は,ガラス基板1上にゲート電極GとしてTi膜8を形成し,その上にゲート絶縁膜としてSiN膜2,動作半導体層としてa-Si層3をこの順に積層し,ソース・ドレイン電極S,D部は,コンタクト層としてのn^(+)a-Si層4と金属膜としてのTi膜5を積層した。即ち,Ti膜8が第1の膜,SiN膜2が第2の膜,a-Si層3が第3の膜,n^(+)a-Si層4が第4の膜,Ti膜5が第5の膜に相当する。
本実施例ではゲート電極Gとソース・ドレイン電極S,Dの金属膜に用いたTi膜が引張(テンシル)応力を示し,プラズマ化学気相成長(P-CVD)法で形成した他の膜は,成膜条件によって応力値は異なるが,すべて圧縮(コンプレッシブ)応力を示すように形成した。」(第2頁右下欄第12行?第3頁左上欄第8行)
「以上の如く2つの実施例はいずれも,ガラス基板1上の積層膜が,どの部分においても全体の応力σは零に近くなり,従ってクラックは発生せず,薄膜トランジスタの特性劣化がなく,信頼度並びに製造歩留りを向上させることができる。」(第3頁下から6行?2行)

上記によれば,周知例2には,絶縁性基板上に薄膜トランジスタを構成する積層膜を形成する際,引張応力を示す膜(ソース・ドレイン電極を構成するTi膜等)と圧縮応力を示す膜(ゲート絶縁膜や保護膜としてのSiN膜等)の応力と厚さの組み合わせを選択することにより,積層膜全体の内部応力を見かけ上ほぼ零とする技術が記載され,当該技術によりクラックが発生せず,薄膜トランジスタの特性劣化を防止する技術が記載されている。

イ また,モリブデン-タングステンの応力を約-1000MPa?1000MPa(ここで,応力の符号は,正を引張応力,負を圧縮応力とする。以下同じ。)程度の範囲で調整できることは,次の周知例3から周知の事項であり,シリコン窒化膜の応力を約-1000MPa?1000MPa程度の範囲で調整できることは,次の周知例4?5から周知の事項である。
・周知例3:特開平6-317814号公報(当審拒絶理由通知書の引用例4)
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例3の図4によれば,Mo-W合金におけるW含有率を約30?80原子%の範囲で変化させると,応力が約+10^(10)?-10^(10)dyn/cm^(2)(すなわち+1000MPa?-1000MPa)の範囲で変化し,W含有率を約0?30原子%の範囲で変化させると,応力が約+10^(9)?+10^(10)dyn/cm^(2)(すなわち+100?+1000MPa)の範囲で変化することが見て取れる。また,上記周知例3の図5によれば,Mo-W合金のW含有率が0,30,50,70,100原子%の各場合において,スパッタリング時のアルゴン圧力を変化させることにより,応力が約-10^(10)?+10^(10)dyn/cm^(2)(すなわち-1000MPa?+1000MPa)の範囲で変化することが見て取れる。

・周知例4:特開平4-299570号公報(当審拒絶理由通知書の引用例7)
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例4の図8によれば,窒化シリコン膜の総結合水素密度を約15?40原子%の範囲で変化させると,窒化シリコン膜の応力が約-10×10^(9)?+5×10^(9)dynes/cm^(2)(すなわち-1000?+500MPa)の範囲で変化することが見て取れる。

・周知例5:特開平4-345069号公報(当審拒絶理由通知書の引用例8)
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例5には,次の記載がある。
「【0018】ここで,シリコン窒化膜をプラズマCVD法で形成する際,シリコン窒化膜の内部応力は,その成膜条件によって,プラスマイナス1×10^(10)dyne/cm^(2)程度の範囲で,すなわちこの範囲で引張応力或は圧縮応力に,変化することが知られている。」

ウ さらに,モリブデン-タングステン合金膜又はモリブデン膜の引張応力が過大になれば,剥離による不良発生率が高くなることは,例えば,次の周知例6?7にも記載されているように,当業者の技術常識である。
・周知例6:特開2000-196100号公報
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例6には,図4とともに,次の記載がある。
「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は,絶縁膜と,この絶縁膜上に形成されこの絶縁膜を基準として圧縮方向を-,引張方向を+としたとき,応力値が-3×10^(9)dyn/cm^(2)ないし+2×10^(9)dyn/cm^(2)の範囲で形成された金属薄膜とを具備したもので,絶縁膜と金属薄膜の密着性が向上し,金属薄膜が絶縁膜から剥離することを防止する。」
「【0015】さらに,多結晶シリコン膜2上にはシリコン酸化膜のゲート絶縁膜6が形成され,このゲート絶縁膜6の多結晶シリコン膜2の上方にはモリブデン(Mo)およびタングステン(W)の合金のゲート電極材料の薄膜金属のゲート電極7が形成されている。・・・(以下略)」
・図4には,ゲート絶縁膜を基準にしたゲート電極の引張応力の増大に伴い,剥離による不良発生率が増加していることが見て取れる。

・周知例7:特開2001-358342号公報
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例6には,図5とともに,次の記載がある。
「【0023】図5に記載される試験は以下のように行った。・・・(省略)・・・一般に,スパッタリング時のArを少なくするほどMo膜は引張り応力から圧縮応力へと変化する。図5において,Mo膜の内部応力はMo膜圧縮応力をマイナス,引張り応力をプラスとして示す。・・・(省略)・・・
【0024】図5において,クラック・剥がれレベルは光学顕微鏡またはSEM(電子顕微鏡)を用いて観察した。内部応力が-1.10×10^(9)?1.56×10^(9)dynes/cm^(2)の場合はクラック・剥がれは共に測定されず(○),内部応力が1.56×10^(9)?1.00×10^(10)dynes/cm^(2)の場合,クラックが測定されるものの,剥がれは小さく,かつ,量は少なかった(△)。内部応力が1.00×10^(10)dynes/cm^(2)以上の場合,クラックが測定され,剥がれは大きく,かつ,量も多かった(×)。」

エ そうすると,引用発明において,「モリブデン-タングステンで形成された配線部」の引張応力と,「前記配線部上に窒化シリコン(SiN)によって形成されたパッシベーション膜110」の圧縮応力とを,積層構造全体の応力をほぼ零に緩和するように調整することは,上記アの周知技術に照らし当業者が容易に想到し得たことである。
また,上記の積層構造の応力調整は,具体的には,上記イで示した,各層が通常とり得る応力の数値範囲内で,引張応力及び圧縮応力の数値範囲を適宜設定することにより実現されるものであるところ,クラック防止という上記アの目的からみて,上記ウの技術常識をその前提として考慮することは当業者にとって自然なことであるから,上記の具体的な数値範囲の設定に当たり,モリブデン-タングステン膜の引張応力を所定値以下としつつ,上記イの範囲から,構造全体の応力をほぼ零にする数値範囲を「モリブデン-タングステンで形成された配線部」の引張応力を「0を超過し300MPa以下の引張応力」と設定し,「窒化シリコン(SiN)によって形成されたパッシベーション膜110」の圧縮応力を「200MPa?400MPaの圧縮応力」と設定することは,当業者が普通になし得たことである。
さらに,上記の数値範囲に設定することによる,クラックや膜剥がれのような不良発生の減少といった効果は,上記周知技術から当業者が普通に期待できる効果であるから,本願発明において上記数値範囲を選択することによる効果は,上記引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものであって,格別の技術的意義を有するものとはいえない。
したがって,引用発明において相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
配線層の膜厚は,回路設計上要請される配線抵抗を元に,配線材料の抵抗率や配線幅を勘案しつつ適宜設定すべき当業者の設計事項であり,3000?7000Åとの膜厚も,次の周知例3,8に記載されているように,モリブデン-タングステン配線層の膜厚として普通に用いられている程度のものである。したがって,引用発明において相違点2に係る構成とすることは,当業者が普通になし得たことである。
・上記周知例3には,さらに次の記載がある。
【0014】
・・・(省略)・・・
ガラス基板11上には,Mo-W合金またはMo-Cr合金を厚さ300nmでスパッタリングしてパターニングすることによりゲート電極(制御電極)12,アドレス配線,およびCs線19を同時に形成する。」

・周知例8:特開2000-12542号公報
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である上記周知例8には,次の記載がある。
「【0012】
【発明の実施の形態】(実施形態1)図1に本実施形態の配線を基板に形成した場合の断面図を示す。ガラスからなる絶縁性基板101の上に,MoWN膜102aとMoW膜102bの2層構造からなる配線102が形成されている。MoWN膜102aは膜厚300Å,MoW膜102bは膜厚4000Åで形成されている。」

5 結言
以上のとおり,本願発明は,従来周知の技術を勘案することにより,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって,他の請求項について検討するまでもなく,本願は,拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-16 
結審通知日 2011-09-20 
審決日 2011-10-03 
出願番号 特願2004-202661(P2004-202661)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 充雄  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 小川 将之
近藤 幸浩
発明の名称 積層基板及び半導体装置  
代理人 萩原 康司  
代理人 亀谷 美明  
代理人 金本 哲男  
代理人 アイ・ピー・ディー国際特許業務法人  

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