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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1252253
審判番号 不服2010-12055  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-03 
確定日 2012-02-15 
事件の表示 特願2004-379849「高密度磁気記録用の長さ対幅の比が大きいスライダ、ディスクドライブおよびスライダの形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月27日出願公開、特開2005-302262〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年12月28日(パリ条約に基づく優先権主張2004年4月14日,米国)に出願したものであって、平成21年9月9日付で通知した拒絶の理由に対し、同年12月11日付で手続補正されたが、平成22年2月9日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年6月3日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明について
(1)本願発明
本願の請求項1乃至22に係る発明は,平成21年12月11日付で手続補正された特許請求の範囲の請求項1乃至22に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「1.0mm以下の幅と、0.85mmより長く且つ3.0mmより小さい長さと、0.23mm以下の厚さと、を有する本体と、
スライダを可動のデータ記憶ディスク上で浮上させるエアベアリング面と、
を有することを特徴とする高密度磁気記録用のスライダ。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である、特開平7-21717号公報(以下、「第1引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

「【請求項1】中心軸を有するエア・ベアリング・スライダにおいて、
全体として平らな本体から延び出た前部パッドおよび後部パッドと、記録媒体に対面する支持面とを有し、上記前部パッドおよび上記後部パッドは上記エア・ベアリング・スライダの飛翔高さよりも大なるギャップによって分離されており、上記支持面は互いに平行ではあるが同平面にはないように配置され、上記前部パッドおよび上記後部パッドの各々は前縁および該前縁よりも短い後縁、ならびに閉じた台形状の支持面をなすように上記前縁および後縁と接続する側縁を有して成る、エア・ベアリング・スライダ。」
「【0055】上に示したように、パッド22および24は長さ方向距離dだけ離隔している。従ってパッド22または24の何れかの動揺は専らギャップの変動を生じるが、エア・ベアリング・スライダ20に対するピッチ角には殆ど何等の変化ももたらさない。このためパッド22及び24は結合されてエア・ベアリング・スライダ20が実質的なピッチ安定性を呈することを可能にする。更に具体的にいうと、何れのパッドにおいてもギャップ変化はピッチ角変化の安定を失なわさせる効果を上回る。しかしながら、パッド22および24は十分なピッチ剛性が得られるように互いに十分な距離だけ離れていることが必要である。この距離dはエア・ベアリング・スライダ20の長さの約半分であることが望ましいが、これはおおよそのことであって、これを広い範囲にわたって変えることは当業者にとって可能である。例えば、エア・ベアリング・スライダ20の長さが約2.5ミリメートルである場合、距離dは約1.25ミリメートルとなる。」
「【0061】スライダ50の下面から後部接触パッド60が突出しており、これはヘッド52を記録表面から正しい間隔に保つように作用する。接触パッド60は、高剪断力条件下では通常のニュートン法則の挙動をしないことのある潤滑剤によって生じる圧力から支持力を得る。接触パッド60の寸法は後部飛翔パッドよりも線形寸法において大体1桁小さい大きさとなっている。スライダの本体が長さ約2ミリメートル、幅役0.5ミリメートルである場合、接触パッド60の長さおよび幅は約100x100ミクロンとなる。」

上記記載事項を総合勘案すると、上記第1引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「記録媒体に対面する支持面を有し、
スライダの本体が長さ2乃至2.5ミリメートル、幅0.5ミリメートルである、エア・ベアリング・スライダ。」

(3)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「エア・ベアリング・スライダ」が「高密度磁気記録用」の「スライダ」であることは明らかであるので、引用発明の「エア・ベアリング・スライダ」は、本願発明の「高密度磁気記録用のスライダ」に相当するといえる。
また、引用発明が「エア・ベアリング・スライダ」に関するものであることから、引用発明の「記録媒体」が「ディスク状」をしており「可動」(回転する)であることも明らかであるので、引用発明の「記録媒体」、「記録媒体に対面する支持面」は、それぞれ、本願発明の「可動のデータ記憶ディスク」、「スライダを可動のデータ記憶ディスク上で浮上させるエアベアリング面」に相当する。
引用発明の「スライダの本体が長さ2乃至2.5ミリメートル」は、本願発明の「0.85mmより長く且つ3.0mmより小さい長さ」「を有する本体」を満足する。
引用発明の「スライダの本体が」「幅0.5ミリメートルである」は、本願発明の「1.0mm以下の幅」「を有する本体」を満足する。

そうすると、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。

<一致点>
「1.0mm以下の幅と、0.85mmより長く且つ3.0mmより小さい長さと、を有する本体と、
スライダを可動のデータ記憶ディスク上で浮上させるエアベアリング面と、
を有する高密度磁気記録用のスライダ。」

一方、次の点で相違する。

<相違点>
本願発明は、「本体」の「厚さ」が「0.23mm以下」に限定されているのに対し、引用発明は、「スライダの本体」の厚さが限定されていない点。


(4)判断
「スライダの本体」の「厚さ」として「0.23mm以下」の値は周知である(必要であれば、特開2001-6141号公報の【表1】の「フェムトスライダー」の「長さ」の欄および段落【0006】の記載、本願の発明の詳細な説明の段落【0006】の記載、を参照。)。
本願発明において「本体」の「厚さ」を「0.23mm以下」としたことにより、そうでない場合と比較して当業者に予測不可能な格別顕著な効果が奏されていることを確認することができる具体的な記載(データ)を発明の詳細な説明に見いだせないことも勘案すると、所望に応じて単に「スライダの本体」の「厚さ」を「0.23mm以下」とする程度のことは当業者であれば容易になし得ることである。
したがって,本願発明は,第1引用例に記載された発明ならびに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,第1引用例に記載された発明ならびに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-14 
結審通知日 2011-09-20 
審決日 2011-10-03 
出願番号 特願2004-379849(P2004-379849)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石坂 博明  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 月野 洋一郎
関谷 隆一
発明の名称 高密度磁気記録用の長さ対幅の比が大きいスライダ、ディスクドライブおよびスライダの形成方法  
代理人 鶴田 準一  
代理人 青木 篤  
代理人 小林 龍  
代理人 伊坪 公一  
代理人 榎原 正巳  

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