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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E06B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E06B
管理番号 1252262
審判番号 不服2010-18663  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-19 
確定日 2012-02-15 
事件の表示 特願2000-225064「高気密性横型ブラインド」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月 6日出願公開、特開2002- 38849〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成12年7月26日の出願であって,平成22年5月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月19日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである,
その後,平成23年9月7日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年11月10日付けで回答書が提出された。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成22年8月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容・補正後の請求項1に係る発明
平成22年8月19日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする補正事項を含むものである(補正箇所に下線を付した。)。
(補正前:平成22年2月5日付け手続補正による)
「【請求項1】
ラダーコードによりスラットを支持して角度調節を行ない、昇降テープによりボトムレールを昇降させるとした横型ブラインドであって、該スラットの後縁寄りにスラット長手方向に細長の昇降テープ挿通孔を設けると共に室外側の前縁には該昇降テープ挿通孔とはスラット長手方向にずらした位置にラダーコード直径より僅かに広幅のラダーコード挿通用細長切欠を設けて、ブラインド水平姿勢時スラット前縁側(室外側)がラダーコードより所定突き出しするものとして、スラット全閉時上位のスラットの該突き出し部が下位のスラットにラップする態様に当接して下位スラットの昇降テープ挿通孔を覆い、かつ、上位のスラットのラダーコード挿通用細長切欠は下位のスラットの実板面で覆われるようにしたことを特徴とする高気密性横型ブラインド。」を,
「【請求項1】
ラダーコードによりスラットを支持して角度調節を行ない、昇降テープによりボトムレールを昇降させるとした横型ブラインドであって、
該スラットの後縁寄りにスラット長手方向に細長の昇降テープ挿通孔を設けると共に室外側の前縁には該昇降テープ挿通孔とはスラット長手方向にずらした位置にラダーコード直径より僅かに広幅のラダーコード挿通用細長切欠を設けて、ブラインド水平姿勢時スラット前縁側(室外側)がラダーコードより所定突き出しするものとして、
スラット全閉時に、内、外に直に短絡する通路を形成させないため、スラット全閉時上位のスラットの該突き出し部が下位のスラットにラップする態様に当接して下位スラットの昇降テープ挿通孔の全てを覆い、上位のスラットのラダーコード挿通用細長切欠は下位のスラットの実板面で覆われ、かつ、下位スラットの昇降テープ挿通孔を隠蔽するように、下位スラットの挿通孔下方の実板面に上位スラット前縁を当接させたことを特徴とする高気密性横型ブラインド。」と補正する。

上記補正事項は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「上位のスラットの突き出し部が下位スラットの昇降テープ挿通孔を覆」う状態について,「昇降テープ挿通孔の全てを覆」うものに限定するとともに,その状態について「下位スラットの昇降テープ挿通孔を隠蔽するように、下位スラットの挿通孔下方の実板面に上位スラット前縁を当接させた」ものであり,かつ「高機密性」について,「スラット全閉時に、内、外に直に短絡する通路を形成させない」ものであることを明確にしたものであるから,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。

そこで,上記本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,すなわち,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしているか,について以下に検討する。

2 独立特許要件の判断(特許法第29条第2項違反)
(1)刊行物
刊行物1:実公昭32-4178号公報(査定における引用文献1)
刊行物2:特公昭62-6072号公報(同引用文献3)
刊行物3:特開平9-177452号公報(同引用文献4)

(1-1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である上記刊行物1には,以下の記載がある(以下,下線は当審で付与。)。
(1a)「本案は弯曲せしめた翼板1に穿設した引上紐挿通孔2を一側縁に偏倚せしめその幅広の側縁3に冂型切欠部4を前記引上紐挿通孔2対応する如く切設している。尚図中5は引上紐、6,7は吊テープ、8は押えテープ、9は受テープを示す。
本案は上記の如き構造であるので第3図に示す如く吊テープの一方を引き上げて翼板1の傾斜を大にすると受テープ9は翼板1に設けた冂型切欠部に嵌合し上下の翼板が前記冂型切欠部の幅だけ深く重なるので一方に偏倚せしめた引上紐挿通孔の作用と相俟って外部の光線を完全に遮光することが出来るので構造簡単にして有用な考案である。」(実用新案の説明)
(1b)「図面に示す如く適宜に弯曲せしめた翼板1に穿設した引上紐挿通孔2を一側縁に偏倚せしめその幅広の側縁3に冂型切欠部4を前記引上紐挿通孔2に対応する如く設けたベネシアンブラインド用翼板の構造。」(登録請求の範囲)
(1c)第1図には,ブラインドの翼板1がほぼ水平姿勢の状態を示す次の図面が記載され,引上紐挿通孔2は,翼板1の幅方向に細長であること,冂型切欠部4は,吊テープ6,押えテープ8及び受テープ9より広幅であること,翼板1の側縁3が,吊テープ6,押えテープ8及び受テープ9より突き出すこと,上位の翼板1の冂型切欠部4と,下位の翼板1の冂型切欠部4とは,翼板1の長手方向にずらした位置に設けることが示されている。

(1d)第2図には,翼板1を示す次の図面が記載され,引上紐挿通孔2は,翼板1の一側縁に寄りに設けられること,冂型切欠部4は,前記一側縁と対向する側縁3に,引上紐挿通孔2とは翼板1の長手方向にずらした位置に設けることが記載されている。

(1e)第3図には,翼板1の全閉状態を示す次の図面が記載され,冂型切欠部4は下位の翼板1と重なり,下位の翼板1の実板面で覆われること,上位の翼板1の弯曲した側縁3は,下位の翼板1に当接する状態となることが記載されている。


刊行物1記載のベネシアンブラインドにおいて,引上紐5がボトムレールを昇降させるものであることは技術常識である。
したがって,刊行物1の上記記載事項及び技術常識によれば,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。
「吊テープ6,7,押えテープ8及び受テープ9により翼板1を支持して角度調節を行ない,引上紐5によりボトムレールを昇降させるベネシアンブラインドであって,
該翼板1の一側縁寄りに翼板1の幅方向に細長の引上紐挿通孔2を設けると共に,前記一側縁と対向する側縁3に,引上紐挿通孔2とは翼板1の長手方向にずらした位置に,吊テープ6,押えテープ8及び受テープ9より広幅の冂型切欠部4を設けて,ブラインド水平姿勢時,翼板1の他側縁3側が吊テープ6,押えテープ8及び受テープ9より突き出すものとして,
翼板1の全閉時に,上位の翼板1の突き出し部が下位の翼板1に重なる態様で当接して,上位の翼板1の冂型切欠部4は下位の翼板1の実板面で覆われた,ベネシアンブラインド。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(1-2)原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である上記刊行物2には,以下の記載がある。
(2a)「1 主として水平の位置と主として垂直の位置との間に回動可能の多数の薄いスラツトより成るベネシヤンブラインドにおいて、スラツト1を垂直に回動するために設けられた相対する垂直のコード3の1本は、スラツトの縦方向側縁の中下方の側縁から、スラツトの反対の上方の側縁に配置された他のコードに向かう方向に細長くのびる様に各スラツトに形成された凹所5の中に位置させ、上記の他のコードは、スラツトのほゞ垂直位置で、スラツトの上記の上方の側縁に上記凹所と相対して設けられこの凹所と同方向でスラツト外方に突出する突出部分8に当りこの衝合力で以つて上記垂直の位置に於いて上記スラツト間がぴつたりと密着する様に構成した事を特徴とするベネシヤンブラインド。」(特許請求の範囲)
(2b)「 本発明は二重ガラス窓の中に取り付けられ、開位置においては窓を通して殆んど障害のない視界を与え閉位置においては大なる熱絶縁効果を与えるベネシヤンブラインドに関するものである。」(2欄12?15行)
(2c)「本発明は最も広い特徴として、スラツトの回動のために配置された相対する垂直コードの1方が、スラツトの1方の縦方向側縁からスラツトの他方の縦方向側縁に配置された他方のコードに向かう方向に或る距離だけのびる様に各スラツトに設けられた凹所内に位置している事を特徴とする。
スラツトを回動するための垂直コードがスラツトの側縁に配置されている従来のベネシヤンブラインドとは異なり、この凹所はベネシヤンブラインドの垂直位置においてスラツトの間で所望のぴつたりとした衝合を得る事を可能にする。
・・・スラツトの間でぴつたりと衝合しているため、スラツトの間の空気の通過は防止される。」(3欄34行?4欄8行)
(2d)「図示のベネシヤンブラインドは通常のように、スラツト1と、スラツトを引き上げるコード2と、スラツトを水平位置と垂直位置の間に回動する2本のコード3とを備えている。更に、スラツトをその水平位置に保持するためにコード3の間にコード4が設けられる。
第1図に示す様にスラツトの縦方向側縁の1方に外方に向けて開いた凹所5が設けられ、コード3の1つがこれらの凹所の中に位置する。他方のコード3は各スラツトの反対側の縦方向側縁に形成された隆起又は突出部8に衝合する。この衝合はスラツトを相互に押しつける力を発生する。この実施態様においてはスラツトを引き上げるためのコード2は既知の如くスラツトに形成されたスロツト9の中に入れられる。」(6欄14?28行)

(1-3)原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である上記刊行物3の【図2】には,昇降テープ孔11を,スラット長手方向に細長とすることが記載されている。

(2)対比
本件補正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「吊テープ6,7,押えテープ8及び受テープ9」は,全体として,本件補正発明の「ラダーコード」に相当する。
刊行物1記載の発明の「翼板1」は,本件補正発明の「スラット」に相当し,翼板1の「一側縁」,「一側縁と対向する側縁3」は,それぞれ,スラットの「後縁」,「前縁」に相当する。
刊行物1記載の発明の「ベネシアンブラインド」は,本件補正発明の「横型ブラインド」に相当する。
刊行物1記載の発明の,「引上紐5」と本件補正発明の「昇降テープ」とは,「昇降コード」である点で共通し,同様に「引上紐挿通孔2」と「昇降テープ挿通孔」とは,「昇降コード挿通孔」である点で共通する。
刊行物1記載の発明の「冂型切欠部4」と,本件補正発明の「ラダーコード挿通用細長切欠」とは,「ラダーコード挿通用切欠」である点で共通する。
さらに,刊行物1記載の発明において「翼板1の突き出し部が下位の翼板1に重なった態様」とは,本件補正発明における「スラットの突き出し部が下位のスラットにラップする態様」に相当する。

したがって,両者は,次の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
「ラダーコードによりスラットを支持して角度調節を行ない、昇降テープによりボトムレールを昇降させるとした横型ブラインドであって,
該スラットの後縁寄りに昇降テープ挿通孔を設けると共に前縁には該昇降テープ挿通孔とはスラット長手方向にずらした位置にラダーコードより広幅のラダーコード挿通用切欠を設けて,ブラインド水平姿勢時スラット前縁側がラダーコードより所定突き出しするものとして,
スラット全閉時上位のスラットの該突き出し部が下位のスラットにラップする態様に当接し,上位のスラットのラダーコード挿通用切欠は下位のスラットの実板面で覆われる横型ブラインド。」

[相違点1]
「ラダーコード挿通用切欠」が,
本件補正発明では,ラダーコード直径より僅かに広幅の細長の切欠であるのに対し,
刊行物1記載の発明では,切欠が冂型であって細長い形状ではない点。

[相違点2]
本件補正発明は,スラット全閉時に,上位のスラットの突き出し部が「下位スラットの昇降テープ挿通孔の全てを覆」うものであり,「下位スラットの昇降テープ挿通孔を隠蔽するように、下位スラットの挿通孔下方の実板面に上位スラット前縁を当接させる」ものであるのに対し,刊行物1記載の発明では,上位のスラットが,昇降テープ挿通孔の全てを覆っているか否か,すなわち,下位スラットの昇降テープ挿通孔を隠蔽するように、下位スラットの挿通孔下方の実板面に上位スラット前縁を当接させるものであるか否か不明である点。

[相違点3]
本件補正発明では,「昇降コード」が「昇降テープ」であり「昇降コード挿通孔」が,スラット長手方向に細長の昇降テープ挿通孔であるのに対し, 刊行物1記載の発明では,「昇降コード」が「紐」であり,「昇降コード挿通孔」がスラットの幅方向に細長い孔である点。

[相違点4]
本件補正発明では,スラットの前縁が室外側であるのに対し,刊行物1記載の発明では,前縁が室外側か室内側か不明な点。

[相違点5]
本件補正発明は,「スラット全閉時に、内、外に直に短絡する通路を形成させない」,「高機密性」のものであるのに対し,刊行物1記載の発明は,スラット全閉時に遮光性のものであるが,内、外に直に短絡する通路を形成させない高機密性のものであるか否か不明な点。

(3)判断
ア 相違点1について検討する。
刊行物2には,スラットの閉位置において熱絶縁効果を与えることを目的として,ラダーコードの挿通部を細長い切欠とし,スラットをぴつたりと密着させる発明が記載されていると認められる。
ここで,「熱絶縁効果を与える」とは,スラット全閉時に,スラットの間の空気の通過を防止することであるから,刊行物2には,ラダーコードの挿通部用切欠を細長いものとして,切欠からの突き出し部を長くすることで,スラットをぴつたりと密着させ,スラットの当接部分の長さを長くして,空気の通過を防止することが示されている。
そして,熱を遮断することは,遮光とともに,カーテンやブラインドに求められる周知の課題であり,刊行物1記載の発明においては,ラダーコードがテープ状であり,切欠が細長い形状ではないが,閉位置において熱絶縁することをも目的として,ラダーコードを断面略円形の紐状とし,挿通用切欠を,細長の形状として,上位のスラットの突き出し部が下位のスラットにぴつたりと密着するよう当接させることは,刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に想到しうることである。
そして,切欠の幅が狭いほど,上下のスラットの当接部分の長さが長く,熱遮断効果が高くなることは容易に予測できるから,切欠の幅をラダーコード直径より僅かに広幅とすることも適宜なしうることである。

イ 相違点2について検討する。
刊行物1記載の発明は,スラットの傾斜を大にしたときに,外部の光線を完全に遮光しようとするものであるから,昇降コードの挿通孔からも外部の光線が漏出しないようにすることは,当業者が容易に想到しうることである。
そして,昇降コードの挿通孔から外部の光線が漏出しないように昇降コード挿通孔を上位のスラットで覆うことは,本願出願前周知であり(例えば,審尋で例示した実公昭33-265号公報参照),下位スラットの昇降コード挿通孔の全てを上位のスラットで覆うようにすること,すなわち,下位スラットの昇降コード挿通孔を隠蔽するように、下位スラットの挿通孔下方の実板面に上位スラット前縁を当接させることは,当業者が容易に想到しうることである。
そして,上記「ア」で検討したとおり,ラダーコード挿通用切欠を細長の切欠とすることは当業者が容易になしうることであり,その結果として,昇降コード挿通孔の全てを覆う部分を,上位のスラットの「突き出し部」(細
長の切欠の端部より前縁側)とすることも適宜なし得ることである。

ウ 相違点3について検討する。
昇降コードを広幅の昇降テープとし,昇降コードの挿通孔を,スラット長手方向に細長の挿通孔とすることは刊行物3に記載されているように本願出願前周知であり,刊行物1記載の発明において,昇降コードをテープ状とし,挿通用切欠をスラット長手方向に細長のものとすることは当業者が容易になしうることである。

エ 相違点4について検討する。
スラットの前縁を室外側とするか,室内側とするかで,スラットによる遮蔽機能に差異はないものの,前縁側からの外観は,昇降コードが見えない等の長所があるから,刊行物1記載の発明において,室外側からの外観を重視する場合に,スラットの前縁を室外側とすることは,当業者が適宜なしうることである。

オ 相違点5について検討する。
本件補正発明において,「全閉時に、内、外に直に短絡する通路を形成させない」,「高機密性」とは,上位のスラットの突き出し部が下位のスラットに当接すること,及び下位スラットの昇降テープ挿通孔の全てを上位のスラットで覆う構成による作用を示していると認められるところ,上記ア,イで検討したとおり,このような構成は,刊行物1ないし3記載の発明から当業者が容易になしうることであり,相違点5は,刊行物1ないし3記載の発明から当業者が容易になしうる,下位スラットの昇降テープ挿通孔の全てを上位のスラットで覆う横型ブラインドが有する作用にすぎない。

なお,請求人は,審判請求の理由及び回答書において,刊行物1ないし3には,「全閉時に、内、外に直に短絡する通路を形成させない」との問題意識がないと主張するが,刊行物2には,「熱絶縁効果を与える」すなわち,空気の流通を防止するとの課題が示されている。
そして,空気の流通を防止することも,光を遮断することも,「全閉時に、内、外に空気や光が直に短絡する通路を形成させない」点で共通するものであり,遮光や,熱絶縁を目的として,本件補正発明の相違点1ないし4に係る構成に至ることが当業者が容易になしうることである以上,相違点5に係る事項が当業者が容易になしうることでないとすることはできない。

カ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果である,気密性を充足することができ,高度の遮光を得るとの効果は,刊行物1,2記載の発明に示される,上位のスラットを下位のスラットに当接させて光や熱を遮蔽するとの効果,光を完全に遮蔽する刊行物1記載の発明や昇降コードの挿通孔をスラットで覆う周知技術から予測できることであり,本件補正発明の効果は,全体として,刊行物1ないし3記載の発明から予測できることであって格別顕著なものとはいえない。

したがって,本件補正発明は,刊行物1ないし3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていないものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明
1 本願発明
平成22年8月19日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項1ないし3に係る発明は,平成22年2月5日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち,請求項1に係る発明は,前記「第1 1(補正前)」に記載した事項により特定されるものである(以下,請求項1に係る発明を,「本願発明」という。)。

2 刊行物
刊行物1:実公昭32-4178号公報(査定における引用文献1)
刊行物2:特公昭62-6072号公報(同引用文献3)
刊行物3:特開平9-177452号公報(同引用文献4)

原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された,上記刊行物1ないし3には,上記「第2 2(1-1)ないし(1-3)」に記載したと
おりの事項が記載されているものと認める。

3 対比・判断
本願発明は,前記「第2」で検討した本件補正発明から,「昇降テープ挿通孔の全てを覆う」,「下位スラットの昇降テープ挿通孔を隠蔽するように、下位スラットの挿通孔下方の実板面に上位スラット前縁を当接させた」との限定事項を省いたものに相当する。
そうすると,本願発明を特定するために必要な事項を全て含み,さらに他の限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記「第2 2(3)」に記載したとおり,刊行物1ないし3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1ないし3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
したがって,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。


(付言)
尚,請求人は,回答書において,請求項1の補正案を提示し,請求項1の構成を明確にするとともに,「昇降テープ挿通孔を前後のラダーコード中央部に位置させて水平状態でボトムレールを中央吊りとした」との限定を付加しようとしているが,昇降テープ挿通孔を前後のラダーコード中央部に位置させて水平状態でボトムレールを中央吊りとすることは,横型ブラインドにおいて,周知の技術であり(例えば,実願昭60-186471号(実開昭62-27195号)のマイクロフイルム参照),回答書の補正案によっても,進歩性があるとすることはできない。
 
審理終結日 2011-12-01 
結審通知日 2011-12-06 
審決日 2011-12-19 
出願番号 特願2000-225064(P2000-225064)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E06B)
P 1 8・ 575- Z (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻野 安人  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 鈴野 幹夫
仁科 雅弘
発明の名称 高気密性横型ブラインド  
代理人 渡辺 一豊  
代理人 渡辺 一豊  

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