• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1252341
審判番号 不服2008-23775  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-17 
確定日 2012-02-17 
事件の表示 特願2004-336542「化粧料並びにヘアケア用化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成18年4月27日出願公開、特開2006-111607〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年11月19日(優先権主張 平成15年11月21日、平成16年9月17日)の出願であって、その請求項1ないし3に係る発明は、平成20年3月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項3に係る発明は、引用した請求項1の内容を加えると、次のとおりのものである。

「フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム二水塩,コハク酸、ユビキノン(CoQ若しくはビタミンQ)及びアルミナを含む、シャンプー、トリートメント等の頭髪用化粧料。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物とその記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された以下の刊行物1(原査定の引用文献4)、刊行物2(原査定の引用文献1)、刊行物3(原査定の引用文献10)、刊行物4(原査定の引用文献12)、刊行物5(原査定の引用文献14)及び刊行物6(原査定の引用文献6)には、以下の事項が記載されている。下線は、当審で付加した。

(1)刊行物1:特開平4-108721号公報
(1a)「1.トリカルボン酸サイクル関連物質と直鎖又は分枝状不飽和脂肪酸エステルとを併用してなることを特徴とする細胞賦活剤組成物。」(特許請求の範囲第1項)

(1b)「本発明は、細胞賦活剤組成物に関し、特に、毛髪に対して優れた生長促進作用を示し、養毛剤等として好適に用いられる細胞賦活剤組成物に関する。」(第1頁左下欄10?13行)

(1c)「ここで、本発明の細胞賦活剤組成物の第1の必須成分であるトリカルボン酸サイクル関連物質としては、アスパラギン酸、アデノシン5’-三リン酸(ATP)、アセチルヒドロコハク酸、イソクエン酸、オキザロコハク酸、オキザロ酢酸、グリオキシル酸、グルタミン酸、クエン酸、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、α-ケトグルタル酸、コエンチームA(CoA)、アセチル-CoA、CoA-SH、コハク酸、シトリル-CoA、スクシニル-CoA、ニコチンアミド-アデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミド-アデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、フマル酸、シアノコバラミン(ビタミンB_(12))、ビオチン(ビタミンH)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸、メチルマロニル-CoA、L-リンゴ酸、リボ酸、ジヒドロリボ酸等を挙げることができ、これらの1種を単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。これらトリカルボン酸サイクル関連物質の配合量は、適応部位、適応症状により変化し得るが、組成物全量に対し0.001?10重量%であることが好ましい。」(第2頁左上欄11行?右上欄13行)

(1d)「本発明の細胞賦活剤組成物は、常法に従って、養毛剤、スキンクリーム、ヘアクリーム、ヘアトニック、ヘアローション、シャンプー、リンス、浴剤など種々の形態として用いることができる。」(第2頁右下欄5行?8行)

(1e)「本発明の細胞賦活剤組成物の上述した必須成分以外の成分は、通常、これらの製造に用いられる慣用のものでよく、例えば、基剤として蒸留水、アルコール類、多価アルコール類、界面活性剤、油脂類などが配合され、更に必要に応じ、薬効成分として、ビタミン類、ホルモン類、血管拡張剤、アミノ酸類、抗炎症類、皮膚機能亢進剤、角質溶解剤などの他の細胞賦活剤をも同時に配合し得る。」(第2頁右下欄9行?17行)

(1f)表-4には、コハク酸を用いた試験No.4が、育毛効果について著効であることが示されている。(第3頁右下欄 表-4)

(1g)「[実施例1] 育毛剤
ペンタデカン酸グリセリド
(モノグリセリド:99%、
ジグリセリド:1%) 3.0(重量%)
酢酸トコフェロール 0.1
コハク酸 1.0
リノール酸プロピル 3.0
ヒノキチオール 0.05
モノラウリル酸ソルビタン 5.0
イソプロピルメチルフェノール 0.1
香料 0.4
99.5%エタノール 残部
計 100.0」
(第4頁右上欄10行?左下欄1行)

(1h)「[実施例9] トリートメント
N-ステアロイルグルタミン酸 0.5(重量%)
イソステアリン酸 0.5
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.0
リシノール酸エチル 1.0
プロピレングリコール 5.0
フラビンアデニンジヌクレオチド 0.2
精製水 残部
計 100.0」
(第5頁右上欄12?22行)

(2)刊行物2:特開昭63-183518号公報
(2a)「(1)下記〔I〕式で示される基本骨格を有する化合物、フラビンアデニンジヌクレオチド及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の核酸関連物質を含有することを特徴とする毛髪用組成物。(化学式省略)」(特許請求の範囲第1項)

(2b)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、頭皮に外用することにより、毛根のメラノサイトを活性化し、メラニン生成を促進して白髪を防止、改善することができる毛髪用組成物、例えばヘアトニックなどに関するものである。」(第2頁右上欄2?7行)

(2c)「FAD及びその塩
FADは、酸化還元酵素の補酵素として、生体内で有機化合物の酸化全般に関与する重要な物質として知られている。・・・
現在、FADは工業的に醗酵法または合成法で製造されており、容易に入手することが可能である。尚、FADの塩も本発明では使用可能であり、具体的にはFADナトリウム塩(FAD・2Na)、FADカリウム塩(FAD・2K)などが例示される。」(第9頁左上欄15行?右上欄6行)

(2d)「〔発明の効果〕
本発明によれば、頭皮に外用することにより、優れた白髪防止、改善効果を発揮し、皮膚に対する安全性が極めて高い毛髪化粧料が提供される。本発明によれば、養毛・育毛効果も上記効力に加えて、発揮される。
従って本発明の毛髪用組成物は、毛髪に適用するための種々の形態、例えばヘアトニック、クリーム、ローション、乳液、軟膏、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー等の毛髪化粧料等、外用できる剤型のものとして種々の形態で幅広く使用できる。」(第10頁左下欄2?13行)

(3)刊行物3:特開昭58-180410号公報
(3a)「1.化学式(式省略)
で表わされる補酵素Q_(10)(化学名ユビキノン)を配合することを特徴とする化粧料。」(特許請求の範囲第1項)

(3b)「本発明者らは、人体及び高等動物にのみ存在し、ミトコンドリア中にて重要な生理活性作用を担う補酵素Q_(10)に着目し、化粧料への配合について鋭意研究の結果、美肌作用及び皮膚賦活作用の優れた効果を見い出したものである。
補酵素Q_(10)を体内に投与した場合の生理活性については、例えば細胞活動の為のエネルギー供給面、即ち呼吸の維持回復、ATP産生促進の作用及び過酸化脂質の低下作用面、即ち細胞膜の損傷、異常の抑制作用等の働きを有することが知られており、又、臨床面については、虚血性心不全に極めて有効であり、補酵素Qの中では本品補酵素Q_(10)のみが治療薬として認められ市販されているものである。」(第1頁右下欄2行?15行)

(3c)「即ち、経皮吸収された補酵素Q_(10)は皮膚細胞のミトコンドリア中にて電子伝達酵素として細胞のエネルギー蓄積、換言すればATP産生に不可欠の機能を賦与し、結果的に、皮膚細胞の新陳代謝が活発化し、恒常性の保全作用が飛躍的に向上すると予測される。」(第3頁右上欄9行?14行)

(4)刊行物4:特開平9-249539号公報
(4a)「【請求項1】(A)酸性染料または天然色素 0.01?2重量%(B)有機溶剤 0.5?50重量%(C)グリコール酸アンモニウム 0.1?20重量%(D)育毛成分 0.001?10重量%を含有し、pHが2.0?4.5であることを特徴とする頭髪化粧料。」

(4b)「【0017】本発明の頭髪化粧料の(D)成分である育毛成分としては、ビタミン類(レチノール、レチナール、ビタミンA_(1)酸、ビタミンA_(1)酸エステル、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、β-グリチルレチン酸、チアミン硝酸塩、チアミン塩酸塩、チアミンジスルフィド化合物、リボフラビン、フラビンヌクレオチド、フラビンテトラブチレート、リボフラビンテトラニコチネート、ジカプリル酸ピリドキシン、塩酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン、シアノコバラミン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、パントテン酸、パントテン酸塩、パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、ビオチン、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸エステル、ビタミンD類、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ユビキノン、プラストキノン、ビタミンK類等)、コリン、必須脂肪酸(リノール類、リノレン酸、アラキドン酸)、エイコサトリエン酸、女性ホルモン、副腎皮質ホルモン、抗高血圧剤(ミノキシジル、ジアゾキサイド等)、TCA回路関連物質(c-AMP、コハク酸、クエン酸、ATP、FAD、NAD、NADP、L-リンゴ酸、メチルマロニルCoA、フマル酸、サクシニルCoA、コエンザイムA、GDP、GTP、ADP、AMP、オキザロ酢酸、アセチルCoA等)、上記植物エキス以外の植物抽出物(ヒノキチオール、アロエ抽出物、サンショウ抽出物、アカヤジオウ抽出物、人参抽出液等)及び合成薬効成分(塩化カルプロニウム等)を挙げることができる。」

(5)刊行物5:特開平5-58850号公報
(5a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、育毛剤組成物に関するものである。」

(5b)「【0033】本発明の組成物には、育毛成分の効果を増強させるために、必要に応じ、細胞賦活活性を有する化合物を好ましく配合することができる。このようなものとしては、例えば、ビタミン類(レチノール、レチナール、ビタミンA^(1)酸、ビタミンA^(1)酸エステル、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、α-カロチン、β-カロチン、γ-カロチン、リコペン、チアミン硝酸塩、チアミン塩酸塩、チアミンジスルフィド化合物、リボフラビン、フラビンヌクレオチド、フラビンテトラブチレート、リボフラビンテトラニコチネート、塩酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン、シアノコバラミン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸、パントテン酸塩、パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、ビオチン、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸エステル、ビタミンD類、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ユビキノン、プラストキノン、ビタミンK類等)、コリン、必須脂肪酸(リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸)、エイコサトリエン酸、女性ホルモン、副腎皮質ホルモン、抗高血圧剤(ミノキシジル、ジアゾキサイド等)、TCA回路関連物質(c-AMP、コハク酸、クエン酸、ATP、FAD、NAD、NADP、L-リンゴ酸、メチルマロニルCoA、フマル酸、サクシニルCoA、コエンザイムA、GDP、GTP、ADP、AMP、オキザロ酢酸、アセチルCoA等)、植物抽出物(ヒノキチオール、チョウジ抽出物、アロエ抽出物、カンゾウ抽出物、サンショウ抽出物、アカヤジオウ抽出物、センブリ抽出液、ホップ抽出液、ローズマリー抽出液、セージ抽出液、タイム抽出液、人参抽出液等)および合成薬効成分(塩化カプロニウム等)を列挙することができる。」

(6)刊行物6:特開2003-137750号公報
(6a)「【請求項1】アルミナ粉末を含有することを特徴とするシャンプー。」

(6b)「【0007】アルミナ粉末などのアルミナ系セラミックスからは、波長8?14μmの遠赤外線が放射される。このような遠赤外線が人体に照射された場合、皮膚下40?50mmの深さまで到達して身体を内部から温めるとともに、毛細血管の拡張、血液循環の活性化、新陳代謝の増加等の作用が行われる。
【0008】従って、アルミナ粉末を混入したシャンプーを使用した場合、アルミナ粉末が放射する遠赤外線により皮膚下において上記作用が行われ、頭皮・毛髪或いは全身皮膚に対する上記コンディショニング効果が期待できる。」

(6c)「【0010】
【実施例】本発明に係るシャンプーの一実施例を説明する。まず、通常の製法に従ってシャンプー基材を製造する。シャンプー基材には次のような成分が含まれる。水、ココイルグルタミン酸TEA、ラウリルベタイン、コカミドプロピルベタイン、オレフィン(C12-14)スルホン酸Na、コカミドDEA、ココイル加水分解コラーゲンK、(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマー、(C12-14)パレス-12、BG、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-10、イソプロパノール、ウイキョウエキス、ホップエキス、カミツレエキス、セイヨウノコギリソウエキス、メリッサエキス、セイヨウヤドリギエキス、エタノール、香料、フェノキシエタノール。」

3 対比・判断
刊行物1の上記記載事項(特に(1a)(1d))から、刊行物1には、
「トリカルボン酸サイクル関連物質と直鎖又は分枝状不飽和脂肪酸エステルとを併用してなる細胞賦活剤組成物を含む、養毛剤、ヘアクリーム、ヘアトニック、ヘアローション、シャンプー、リンス等の毛髪用組成物」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願発明と刊行物1発明とを比較する。
(ア)刊行物1発明の「トリカルボン酸サイクル関連物質」は、刊行物1(上記(1c))に、トリカルボン酸サイクル関連物質として、コハク酸、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)が記載されているから、本願発明の「フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム二水塩,コハク酸」とは、トリカルボン酸サイクル関連物質である点で共通する。
(イ)刊行物1発明の「養毛剤、ヘアクリーム、ヘアトニック、ヘアローション、シャンプー、リンス等の毛髪用組成物」は、本願発明の「シャンプー、トリートメント等の頭髪用化粧料」に相当する。
(ウ)本願発明は、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム二水塩,コハク酸、ユビキノン及びアルミナ以外の成分を含むことを排除していない。

そうすると、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)
トリカルボン酸サイクル関連物質を含むシャンプー、トリートメント等の頭髪用化粧料である点。

(相違点1)
トリカルボン酸サイクル関連物質が、本願発明では、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム二水塩及びコハク酸であり、さらにユビキノン(CoQ若しくはビタミンQ)を含むのに対して、刊行物1発明では、トリカルボン酸サイクル関連物質を具体的に特定せず、ユビキノン(CoQ若しくはビタミンQ)を含まない点。

(相違点2)
本願発明は、アルミナを含むのに対して、刊行物1発明は、これを含まない点。

そこで、上記相違点について検討する。
(相違点1について)
刊行物1(上記(1c))に、トリカルボン酸サイクル関連物質として例示されたもののの中に「コハク酸」及び「フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)」が含まれており、「これらの1種を単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。」ことが記載されている。そして、実験例として、コハク酸の育毛効果が著効であることが示され(上記(1f))、実施例1(上記(1g))には、「コハク酸」を単独で用いた育毛剤が、実施例9(上記(1h))には、「フラビンアデニンジヌクレオチド」を単独で用いたトリートメントが記載されている。さらに、刊行物2には、フラビンアデニンジヌクレオチド及びそのナトリウム塩(上記(2c))が、頭皮に外用すると毛根を活性化し白髪を防止することとともに、養毛・育毛効果も加えて発揮されることが記載されている(上記(2b)(2d))。そして、フラビンアデニンジヌクレオチドのナトリウム塩が水和物としても同様に用いられることは技術常識である(例えば、特表2001-515846号公報【0033】参照。)。
そうすると、刊行物1発明において、刊行物1に、2種以上を組合せて用いることができるとして例示されたトリカルボン酸サイクル関連物質の中から、育毛効果が顕著なコハク酸、及び頭皮に外用すると毛根を活性化し育毛効果を有することが知られているフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)をフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム二水塩として併用することに格別の困難性があるとはいえいない。
さらに、刊行物3には、ユビキノン(補酵素Q_(10))は、ミトコンドリア中で重要な生理活性作用を担う補酵素であり(上記(3b))化粧料へ配合されること、経皮吸収された補酵素Q_(10)が皮膚細胞のミトコンドリア中で電子伝達酵素としてATP産生に不可欠の機能を細胞に賦与し、結果的に、皮膚細胞の新陳代謝が活発化し、恒常性の保全作用が飛躍的に向上すること(上記(3c))が記載されているところ、刊行物4(上記(4a)(4b))には、頭髪化粧料中に含有させる育毛成分として、ユビキノン、TCA回路関連物質(コハク酸、FAD等)が例示され、刊行物5(上記(5a)(5b))には、育毛剤組成物中に効果を増強させるために細胞賦活活性を有する化合物を配合することが好ましいことが記載され、この化合物として、ユビキノン、TCA回路関連物質(コハク酸、FAD等)が例示されている。
そして、刊行物1(上記(1e))には、細胞賦活剤組成物に「他の細胞賦活剤をも同時に配合し得る」と記載されていること、及び類似の効果を有する活性成分を、複数種類併用して効果の増強を狙うことは、化粧料の分野では常套手段であることを勘案すると、刊行物1発明で細胞賦活剤組成物の活性成分として、トリカルボン酸サイクル関連物質に加え、皮膚細胞の新陳代謝が活発化し、恒常性の保全作用が飛躍的に向上することが知られ、刊行物4、5に、細胞賦活活性を有する育毛剤の活性成分として、コハク酸やFAD等のTCA回路関連物質(トリカルボン酸サイクル関連物質と同義)とともに例示された、ユビキノンを併用することは、当業者が容易になし得たことといえる。

(相違点2)
刊行物6には、アルミナ粉末を含有するシャンプーが記載され(上記(6a))、アルミナ粉末が、毛細血管の拡張、血液循環の活性化、新陳代謝の増加等の作用を有し、頭皮・毛髪或いは全身皮膚に対する上記コンディショニング効果が期待できることが記載されている(上記記載(6b))。さらに、刊行物6((6c))には、ホップエキス等の成分を配合することが記載されている。そして、ホップエキスは、刊行物5(上記(5b))で、細胞賦活活性を有する化合物として例示された、ホップ抽出液に相当することから、刊行物6には、アルミナ粉末に細胞賦活活性を有する成分を併用することが示唆されていることも勘案すると、刊行物1発明の細胞賦活剤組成物に、頭皮・毛髪に対するコンディショニング効果が期待できるアルミナを含有させることは、当業者が容易になし得たことといえる。

(本願発明の効果について)
平成20年10月17日付け手続補正書により補正された明細書(以下「本願明細書」という。)の段落【0013】に記載された、皮膚や頭皮を構成する細胞の代謝を活性化でき、皮膚、頭皮、頭髪のコンディションを改善できるという効果は、刊行物1ないし6の記載事項から予測し得るものである。
そして、効果の顕著性について、請求人が請求の理由において、本願明細書の段落【0045】?【0056】、【図7】及び【図8】の実験から、4成分を併用した場合、1ないし3成分の場合よりもミトコンドリア内での酸素消費量が顕著に増大し、より多くの酸化還元を行い自由エネルギーの変化が顕著に大きいことから、本願発明の画期的な効果を実証している旨主張するが、刊行物1(上記(1c))に、コハク酸やFADがトリカルボン酸サイクル関連物質、つまりミトコンドリアにおける呼吸関連物質であることが記載され、刊行物2(上記(2c))に、FADが酸化還元酵素の補酵素であることが記載され、刊行物3(上記(3b)(3c))に、ユビキノンが、ミトコンドリア内で呼吸の維持回復、ATP産生促進の働きを有することが記載され、刊行物4(上記(4b))及び刊行物5(上記(5b))に、コハク酸、FAD及びユビキノンが、細胞賦活活性成分であることが記載され、刊行物6(上記(6b))に、アルミナ粉末が、血液循環活性化、新陳代謝増加の作用を有することが記載されていることからみて、予想外の格別顕著なものということはできない。

4 むすび
以上のとおり、本願請求項3に係る発明は、刊行物1ないし6に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-02 
結審通知日 2011-12-05 
審決日 2012-01-06 
出願番号 特願2004-336542(P2004-336542)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上條 のぶよ松浦 安紀子  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 関 美祝
▲高▼岡 裕美
発明の名称 化粧料並びにヘアケア用化粧料  
代理人 吉井 剛  
代理人 吉井 雅栄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ