• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07B
管理番号 1252368
審判番号 不服2008-32870  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-26 
確定日 2012-02-16 
事件の表示 平成10年特許願第170590号「有機基質の酸化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月21日出願公開、特開平11-349493〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、平成10年6月2日の特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりである。

平成20年 6月24日付け 拒絶理由通知
平成20年 8月22日 意見書・手続補正書
平成20年11月28日付け 拒絶査定
平成20年12月26日 本件審判請求
平成21年 1月19日 手続補正書
平成21年 2月 5日付け 手続補正指令(方式)
平成21年 3月11日 手続補正書(審判請求理由補充書)
同日 手続補足書
平成21年 4月 9日付け 審査前置移管
平成21年 5月 8日付け 前置報告書
平成21年 5月15日付け 審査前置解除
平成22年12月10日付け 審尋
平成23年 2月10日 回答書
平成23年 9月14日付け 拒絶理由通知
同日付け 手続補正の却下の決定
平成23年11月11日 意見書・手続補正書
(なお、平成21年1月19日付け手続補正は、平成23年9月14日付けで決定をもって却下された。)

第2 平成23年9月14日付け拒絶理由通知について
当審は、平成23年9月14日付けで拒絶理由を通知したが、その拒絶理由通知書の内容の概略は以下のとおりのものである。

「第1 平成21年1月19日の手続補正について
平成21年1月19日の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、この拒絶理由通知と同日付けの補正の却下の決定により、却下されることとなった。
その理由は、以下のとおりである。
・・(中略)・・
3.独立特許要件について
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討すると、以下のとおり、本願補正発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1、2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、また、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(1)刊行物及び記載事項
この出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記刊行物1?3には、次の事項が記載されている。

刊行物1:J.Chem.Soc.Perkin.Trans.II, 951-956(1989)
刊行物2:Chem.Parm.Bull.,35(7),3078-3081(1987)
刊行物3:特開平9-327626号公報
(前置報告書で引用された「引用文献2」と同じ。)
・・(中略)・・

第2 本願発明について
平成21年1月19日の手続補正は、上記のとおり却下されたから、この出願の発明は、平成20年8月22日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのもの(以下、「本願発明1」?「本願発明4」という。)である。

第3 拒絶の理由
本願発明1?4は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物1、2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(1)本願発明1、2
・・(中略)・・
イ.刊行物3について
本願発明1、2と引用発明3(上記「第1 3.(4)ア.」参照)を対比すると、上記「第1 3.(4)イ.?エ.」と同様のことがいえるから、本願発明1、2は、刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
・・(後略)」

第3 当審の判断
当審の上記拒絶理由通知に対して、指定期間内に意見書及び手続補正書が提出されたので、その補正された本願につき上記「第3 拒絶の理由」と同様の理由が存するか否か再度検討を行う。

1.本願に係る発明
本願に係る発明は、平成20年8月22日付け及び平成23年11月11日付けの各手続補正により補正された明細書(以下「本願明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、当該請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。

「下記式(1)
【化1】


(式中、R^(1)及びR^(2)は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R^(1)及びR^(2)は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、nは1?3の整数を示す)
で表されるイミド化合物と金属化合物としてのV、Mo、Co、Mnから選択される金属元素の有機酸塩の存在下、有機基質としてのシクロアルカン又は芳香族性環が第3級炭素原子を有する脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素を分子状酸素により酸化して対応する酸化生成物を得る方法であって、有機溶媒中、反応温度30?80℃、金属化合物の量が有機基質に対して0.0001?0.25モル%の条件下で有機基質と酸素とを接触させる有機基質の酸化方法。」
(以下、「本願発明」という。)

2.引用例に記載された事項
上記拒絶理由通知で引用した本願出願日前に頒布された刊行物である上記「刊行物3」(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

(a)
「【請求項1】下記式(1)
【化1】


(式中、R^(1)及びR^(2)は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R^(1)及びR^(2)は互いに結合して二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、nは1?3の整数を示す)で表されるイミド化合物と、周期表2A族,遷移金属,および周期表3B族からなる群から選択された元素を含む助触媒(ただし、リンバナドモリブデン酸を除く)とで構成されている酸化触媒系。
・・(中略)・・
【請求項23】下記式(1)
【化4】


(式中、R^(1)及びR^(2)は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R^(1)及びR^(2)は互いに結合して二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、nは1?3の整数を示す)で表されるイミド化合物と、周期表2A族,遷移金属および周期表3B族からなる群から選択された元素を含む助触媒とで構成された酸化触媒系の存在下、基質(ただし、基質がベンジル位にヒドロキシル基を有する芳香族化合物であるとき、助触媒はリンバナドモリブデン酸ではない)と酸素とを接触させる酸化方法。
【請求項24】助触媒が、酸化物、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、錯体、およびヘテロポリ酸又はその塩から選ばれた少なくとも一種である請求項23記載の酸化方法。
【請求項25】基質が、(a)シクロアルカン類、(b)シクロアルケン類、(c)環の構成単位としてメチリジン基を含む多環式炭化水素類、(d)芳香族性環の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する芳香族性化合物、又は(e)共役化合物である請求項23記載の酸化方法。
・・(中略)・・
【請求項38】助触媒の使用量が、基質1モルに対して0.0001?0.7モルである請求項23記載の酸化方法。」(【特許請求の範囲】)

(b)
「このようなイミド化合物は、酸化活性が高く、温和な条件であっても、特定の基質の酸化反応を触媒的に促進できる。さらに、前記イミド化合物と助触媒との共存下で種々の基質を酸化すると、転化率及び/又は選択率が向上する。そのため、本発明では、特定の基質については、前記イミド化合物で構成された酸化触媒の存在下で酸化し、基質に対応するケトン類,アルコール類,アルデヒド類やカルボン酸類を生成させる。また、本発明では、前記イミド化合物と助触媒とで構成された触媒系の存在下、基質を効率よく高い選択率で酸化し、基質に対応するケトン類,アルコール類,アルデヒド類やカルボン酸類を生成させることができる。」(【0039】)

(c)
「[助触媒]
助触媒としての共酸化剤には、金属化合物、例えば、周期表2A族元素(マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウムなど)、遷移金属化合物や、ホウ素化合物などのように周期表3B族元素(ホウ素B、アルミニウムAlなど)を含む化合物が含まれる。助触媒は、一種又は二種以上組合わせて使用できる。前記遷移金属の元素としては、例えば、・・(中略)・・5A族元素(バナジウムV、ニオブNb、タンタルTaなど)、6A族元素(クロムCr、モリブデンMo、タングステンWなど)、7A族元素(マンガンMn、テクネチウムTc,レニウムReなど)、8族元素(鉄Fe、ルテニウムRu、オスミウムOs、コバルトCo、ロジウムRh、イリジウムIr、ニッケルNi、パラジウムPd、白金Ptなど)・・(中略)・・などが挙げられる。好ましい助触媒を構成する元素には、遷移金属の元素(例えば、ランタノイド元素、アクチノイド元素などの周期表3A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素、7A族元素、8族元素、1B族元素、2B族元素)、3B族元素(ホウ素化合物など)が含まれる。特に、前記式(1)で表されるイミド化合物と組合せたとき、Ti,Zrなどの4A族元素、Vなどの5A族元素、Cr、Mo、Wなどの6A族元素、Mn,Tc,Reなどの7A族元素、Fe、Ru、Co、Rh、Niなどの8族元素、Cuなどの1B族元素を含む化合物は、高い酸化活性を示す。
助触媒は、前記元素を含み、かつ酸化能を有する限り特に制限されず、金属単体、水酸化物などであってもよいが、通常、前記元素を含む金属酸化物(複酸化物または酸素酸塩)、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、前記金属元素を含む配位化合物(錯体)やヘテロポリ酸(特にイソポリ酸)又はその塩などである場合が多い。なお、前記式(1)で表されるイミド化合物との組合せにより構成される酸化触媒系において、周期表5A族および6A族元素を含む化合物のうちリンバナドモリブデン酸は除かれる。」(【0040】?【0041】)

(d)
「(前略)・・有機酸塩としては、例えば、酢酸コバルト、酢酸マンガン、プロピオン酸コバルト、プロピオン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸マンガンなどのC_(2-20)脂肪酸塩、チオシアン酸マンガンや対応するCe塩、Ti塩,Zr塩,V塩,Cr塩、Mo塩,Fe塩、Ru塩,Ni塩、Pd塩、Cu塩,Zn塩などが例示され・・(中略)・・る。・・(後略)」(【0043】)

(e)
「これらの助触媒は基質の種類などに応じて単独で又は二種以上組合わせて使用でき、助触媒の種類によっては、例えば、次のような特徴的な機能が発現する。
1.助触媒を構成する遷移金属化合物において元素の原子価は特に制限されず、2?6価程度であってもよいが、二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物、二価のマンガン化合物など)を助触媒として用いると、酸化活性を向上できる。例えば、三価の遷移金属化合物に代えて、二価の遷移金属化合物を前記イミド化合物と組合わせた触媒系では、酸化反応生成物を短時間にしかも高い選択率および収率で誘導できる。また、二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルトなどの周期表8族元素を含む化合物)を助触媒として用いると、低温(例えば、10?60℃)、特に室温(15?30℃程度)であっても、基質(例えば、メチル基が置換した芳香族性化合物など)を定量的に酸化でき、対応する酸化物(例えば、カルボン酸など)を生成できる。
2.周期表4A族元素(Ti,Zrなど)、6A族(Cr,Moなど)、および7A族元素(Mnなど)のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を助触媒として用いると、反応条件が厳しくても、触媒(特にイミド化合物)の失活を大きく抑制できる。そのため、工業的に有利に基質を酸素酸化又は空気酸化することができる。
3.周期表4A族元素(Ti,Zrなど),5A族元素(Vなど),6A族元素(Cr,Moなど),7A族元素(Mnなど)および8族元素(Fe,Coなど)を含む化合物を助触媒として用いると、酸化活性が大きく向上し、基質を有効に酸化できる。例えば、周期表5A族元素(Vなど),周期表7A族元素(Mnなど)や周期表8族元素(Coなど)を含む化合物を助触媒とする触媒系は、活性が高い。また、周期表7A族元素(Mnなど)や周期表8族元素(Feなど)を含む化合物を助触媒とする触媒系は、基質(例えば、シクロアルカン類など)に対して高活性であり、高い選択率で対応する酸化物(例えば、ケトン類やジカルボン酸類など)を生成できる。特に周期表5A族元素(Vなど)を含む化合物を助触媒として使用すると、基質の複数の部位[多環式炭化水素類(アダマンタンなど)の橋頭位や接合位など]を効率よく酸化でき、複数のヒドロキシル基が導入された生成物(例えば、フダマンタンポリオールなど)を得ることができる。
4.式(1)で表されるイミド化合物と、周期表1B族元素(Cuなど)を含む助触媒との組合わせで酸化触媒系を構成すると、酸化反応において選択率を大きく向上できるとともに、イミド化合物の失活を抑制でき工業的に有利である。
5.式(1)で表されるイミド化合物と、周期表7A族元素を含む化合物(マンガン化合物など)と、周期表8族元素を含む化合物(鉄化合物など)とを組み合わせて酸化触媒系を構成すると、触媒活性がさらに向上し、高い転化率および選択率で、有効かつ効率よく酸化物を生成させることができる。・・(後略)」(【0047】?【0052】)

(f)
「なお、助触媒の量が増加するにつれて、イミド化合物の活性が低下する場合がある。そのため、酸化触媒系の高い活性を維持するためには、助触媒の割合は、イミド化合物1モルに対して、有効量以上であって0.1モル以下(例えば、0.001?0.1モル、好ましくは0.005?0.08モル、さらに好ましくは0.01?0.07モル程度)であるのが好ましい。
酸化反応(換言すれば、ケトン類,アルコール類,アルデヒド類やアルコール類の製造方法)において、前記式(1)で表されるイミド化合物の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、基質1モルに対して0.001?1モル(0.01?100モル%)、好ましくは0.001?0.5モル(0.1?50モル%)、さらに好ましくは0.01?0.30モル程度であり、0.01?0.25モル程度である場合が多い。また、助触媒(共酸化剤)の使用量も、反応性および選択率を低下させない範囲で適当に選択でき、例えば、基質1モルに対して0.0001モル(0.1モル%)?0.7モル(70モル%)、好ましくは0.0001?0.5モル、さらに好ましくは0.001?0.3モル程度であり、0.0005?0.1モル(例えば、0.005?0.1モル)程度である場合が多い。・・(後略)」(【0055】?【0056】)

(g)
「[基質]前記イミド化合物で構成された酸化触媒、又はイミド化合物と助触媒とで構成された酸化触媒系を用いると、種々の基質を有効に酸化でき、基質に対応するケトン類,アルコール類,アルデヒド類,カルボン酸類などを生成させることができる。基質の種類は特に制限されず、広い範囲の飽和又は不飽和化合物、例えば、炭化水素類(脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類)、複素環式化合物、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アルデヒド類、アミン類などが使用できる。・・(中略)・・
好ましい基質には、例えば、次のような工業的に有用な化合物が含まれる。
(a)シクロアルカン類
シクロアルカン類としては、3?30員のシクロアルカン環を有する化合物、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカン、シクロペンタデカン、シクロヘキサデカン、シクロオクタデカン、シクロノナデカン、シクロエイコサン、シクロドコサン、シクロテトラコサン、シクロトリアコンタンなどが例示できる。
・・(中略)・・
前記イミド化合物(1)で構成された酸化触媒、又はイミド化合物(1)と助触媒とで構成された触媒系の存在下、このようなシクロアルカン類を酸素により酸化すると、常圧の空気又は酸素雰囲気下であっても、高い転化率および選択率で、主に、対応するジカルボン酸又はシクロアルカノンが生成する。例えば、シクロヘキサン又はその誘導体(シクロヘキサノンやシクロヘキサノールなど)を酸化すると、高い転化率および選択率でアジピン酸を効率よく生成できる。・・(中略)・・前記の酸化方法でシクロヘキサン又はその誘導体を酸化すると、温和な条件下のみならず、反応温度及び/又は反応圧力を高くして反応速度を大きくしても、副生物が殆ど生成せず、生成物の殆どがアジピン酸であるという特色がある。そのため、アジピン酸の分離精製を極めて簡単かつ容易に行なうことができ、ナイロン66、ポリエステルや可塑剤などの原料となるアジピン酸を製造する上で極めて有用である。」(【0057】?【0061】)

(h)
「基質がシクロアルカン類であるとき、特に有効な助触媒は、少なくとも周期表7A族元素(Mnなど)を含む化合物で構成されている。また、有効な助触媒は周期表7A族元素(Mnなど)を含む化合物と周期表8族元素(Feなど)を含む化合物との組み合わせで構成できる。また、助触媒として、二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物やマンガン化合物など)を用いると、シクロアルカン類(例えば、シクロオクタン)から、ジケトンの副生を大きく抑制しつつ、シクロアルカノン(例えば、シクロオクタノン)、特にジカルボン酸(例えば、スベリン酸)の選択率および収率を顕著に高めることができる。」(【0063】)

(i)
「(c)環の構成単位としてメチリジン基を含む多環式炭化水素類
前記多環式炭化水素類には、少くとも1つのメチリジン基(すなわち、メチン炭素-水素結合-CH<)を有する橋架け環式炭化水素類(例えば、架橋環式炭化水素、テルペン類など)および縮合多環式炭化水素類が含まれる。・・(中略)・・
橋架け環式炭化水素類のうち架橋環式炭化水素類としては、例えば、・・(中略)・・3環式炭化水素(例えば、トリシクロ[4.3.1.1^(2,5)]ウンデカン、ホモブレダン(すなわちトリシクロ[5.2.1.0^(3,8)]デカン)、アダマンタン、エキソトリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.0^(2,6)]デカン、トリシクロ[4.3.1.1^(2,5)]ウンデカン、エンドトリシクロ[5.2.2.0^(2,6)]ウンデカンなど)・・(中略)・・が挙げられる。架橋環式炭化水素類としては、・・(中略)・・特に、ピナン、ボルナン、ボルニレン、ノルボルネン、ノルボルナンなどの2環式炭化水素、トリシクロ[4.3.1.1^(2,5)]ウンデカン、ホモブレダン、アダマンタンなどの3環式炭化水素を用いる場合が多い。橋頭位の第3級炭素原子にヒドロキシル基が導入可能な架橋環式炭化水素類には、例えば、ノルボルネン、トリシクロ[4.3.1.1^(2,5)]ウンデカン、ホモブレダン、アダマンタンやこれらの誘導体などが含まれる。・・(中略)・・
前記イミド化合物で構成された酸化触媒、又は前記イミド化合物および助触媒で構成された酸化触媒系を利用すると、環の構成単位としてメチリジン基を含む多環式炭化水素類を効率よく酸素酸化でき、多環式炭化水素類の酸化物(ケトン類、アルコール類、アルデヒド類、カルボン酸類)、特にケトン類やアルコール類を高い選択率で生成させることができる。・・(中略)・・特に、前記イミド化合物と二価の遷移金属化合物とで構成された触媒系、前記イミド化合物と、周期表4A族元素(Ti,Zrなど)、5A族元素(Vなど)、6A族元素(Cr,Moなど)、7A族元素(Mnなど)および8族元素(Coなど)から選ばれた元素を含有する化合物とで構成された触媒系を利用すると、多環式炭化水素類の転化率を高め、ヒドロキシル基含有多環式炭化水素類を高い選択率および収率で得ることができる。」(【0067】?【0074】)

(j)
「(d)芳香族性環の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する芳香族性化合物
前記芳香族性化合物は、少くとも1つのメチル基又はメチレン基が芳香族性環に置換した芳香族性化合物であればよく、芳香族性環は、芳香族炭化水素環、芳香族性複素環のいずれであってもよい。なお、芳香族性化合物が、ビフェニル、ターフェニル、ビナフタレン、ビピリジンなどの芳香族素環が結合した環集合化合物である場合、少くとも1つの芳香族性環にメチル基又はメチレン基が置換していればよい。・・(中略)・・
(d2)芳香族性環の隣接部位にメチレン基を有する化合物
芳香族性環の隣接部位にメチレン基を有する化合物には、炭素数2以上のアルキル基又は置換アルキル基が置換した芳香族性化合物、および環状メチレン基を有する芳香族性化合物が含まれる。前記アルキル基又は置換アルキル基を有する芳香族性化合物としては、例えば、アルキル基を有する芳香族炭化水素類(エチルベンゼン,プロピルベンゼン,クメン,ブチルベンゼン,イソブチルベンゼン,1,4-ジエチルベンゼン、1-エチル-4-ペンチルベンゼンなどのC_(2-6)アルキル基を有する芳香族炭化水素類、ジベンジル,ジフェニルメタン,トリフェニルメタン,1-ベンジルナフタレンなどの置換アルキル基を有する芳香族炭化水素類など),アルキル基を有する複素環化合物(エチルピリジン,イソプロピルピリジン,ブチルピリジンなど)などが例示できる。環状メチレン基を有する芳香族性化合物としては、5?8員環が縮合した縮合多環式芳香族炭化水素類(ジヒドロナフタレン,インデン,インダン,テトラリン,フルオレン,フェナレン,α-テトラロン,β-テトラロン,インダノンなど)などが例示できる。
・・(中略)・・
前記イミド化合物で構成された酸化触媒、又はイミド化合物と助触媒とで構成された酸化触媒系の存在下、このような芳香族性化合物を酸素との接触により酸化すると、メチル基又は芳香族性環に隣接するメチレン基を極めて高い効率で酸化でき、メチル基含有芳香族性化合物からはアルデヒド類、特にカルボキシル基含有芳香族性化合物を高い選択率および収率で得ることができ、メチレン基を有する芳香族性化合物からはケトン類を高い選択率および収率で得ることができる。特に、温和な条件下で反応しても、短時間内に反応が円滑に進行し、カルボキシル基を有する芳香族性化合物又はケトン類が高い選択率および収率で得られる。さらに、複数のメチル基を有する芳香族性化合物を酸化する場合、反応時間などの反応条件をコントロールすることにより、反応の進行に応じてメチル基が残存するカルボン酸を生成させることができ、さらに反応を進行させると、2以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸を得ることも容易である。そのため、本発明の方法は、少くとも1つのメチル基又はメチレン基を有する芳香族性化合物と酸素とを接触させ、カルボキシル基を有する芳香族性化合物又はケトン類を生成させるのに有用である。本発明の好ましい方法には、メチル基が置換したベンゼン誘導体(例えば、トルエン、キシレンなど)を酸素と接触させ、工業的に有用な化合物であるカルボキシル基を有するベンゼン誘導体(例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸など)を生成させる方法、C_(2-6)アルキル基が置換した芳香族炭化水素類(例えば、エチルベンゼンなど)を酸素と接触させ、工業的に有用な化合物であるカルボニル基を有するベンゼン誘導体(例えば、アセトフェノンなど)を生成させる方法が含まれる。
なお、二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物など)を助触媒として用いると、低温(例えば、10?60℃)、特に室温(15?30℃)程度の温和な条件下であっても、ポリカルボン酸やケトン類の選択率および収率を向上できる。例えば、p-キシレンを酸化すると、温和な条件下、反応時間が1/2程度であっても、テレフタル酸を短時間内に高い選択率および収率で得ることができる。なお、二価の遷移金属化合物を前記イミド化合物と組合わせた触媒系でo-キシレンを空気又は酸素酸化すると、無水フタル酸も生成する。
そのため、本発明の方法は、芳香族性化合物を、温和な条件下、高い転換率および選択率で酸化し、モノカルボン酸、ポリカルボン酸などのカルボキシル基含有化合物やケトン類を得る上で有用である。特に、安息香酸などの芳香族モノカルボン酸や、ポリエステル、ポリアミドなどの原料となる芳香族ポリカルボン酸(特に芳香族ジカルボン酸)を製造する上で極めて有用である。」(【0078】?【0085】)

(k)
「本発明の方法は、比較的温和な条件であっても酸化反応が円滑に進行するという特色がある。反応温度は、基質や触媒系の種類などに応じて適当に選択でき、例えば、0?300℃、好ましくは30?250℃、さらに好ましくは50?200℃程度であり、通常、70?150℃程度で反応する場合が多い。なお、前記のように、酸化触媒系の種類によっては、室温などの比較的低温でも酸化反応を円滑に進行させることができる。また、アダマンタンポリオールを製造する場合、例えば、温度40?150℃、特に60?120℃(例えば、70?110℃)程度で反応させると、短時間内にアダマンタンポリオールが生成しやすい。
反応は、常圧または加圧下で行なうことができ、加圧下で反応させる場合には、通常、1?100atm(例えば、1.5?80atm)、好ましくは2?70atm、さらに好ましくは5?50atm程度である場合が多い。反応時間は、反応温度及び圧力に応じて、例えば、30分?48時間、好ましくは1?36時間、さらに好ましくは2?24時間程度の範囲から適当に選択できる。反応は、分子状酸素の存在下又は分子状酸素の流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行なうことができる。・・(後略)」(【0105】?【0106】)

(l)
「【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例A1-1
シクロヘキサン1.68g(20ミリモル)、N-ヒドロキシフタルイミド0.26g(1.6ミリモル)、マンガンアセチルアセトナートMn(AA)_(2)0.043g(0.12ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロヘキサンの転化率55%および選択率82%でアジピン酸が得られた(収率45%)。また、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。
・・(中略)・・
実施例A4
マンガンアセチルアセトナートに代えて、酢酸マンガンMn(OAc)_(2)を用いる以外、実施例A1-1と同様にして反応させたところ、シクロヘキサンの転化率60%、収率50%でアジピン酸が得られた。なお、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。」(【0108】?【0111】)

(m)
「実施例E9
4-t-ブチル-1-メチルベンゼン1.49g(10ミリモル)、N-ヒドロキシフタルイミド0.16g(1ミリモル)、コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)_(3)0.018g(0.05ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌したところ、4-t-ブチル-1-メチルベンゼンの転化率95%で、4-t-ブチル安息香酸(収率88%)が得られた。」(【0190】)

(n)
「実施例E38
トルエン10ミリモル、N-ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、酢酸コバルト(Co(OAc)_(2))0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、室温(約15℃)で24時間攪拌したところ、トルエンの転化率72%で安息香酸(収率60%)、ベンズアルデヒド(収率3%)が得られた。」(【0219】)

(o)
「実施例G1
アダマンタン10ミリモル、N-ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)_(4)0.05ミリモル、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、アダマンタンの転化率74%で、1-アダマンタノール(収率40%)、1,3-アダマンタンジオール(収率8%)、2-アダマンタノン(収率6%)が生成し、N-ヒドロキシフタルイミドの100%が残存していた。
・・(中略)・・
実施例G4
ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)_(4)に代えて、マンガン(III)アセチルアセトナートMn(AA)_(3)0.05ミリモルを用いる以外、実施例G1と同様にして反応させたところ、アダマンタンの転化率68%で、1-アダマンタノール(収率37%)、1,3-アダマンタンジオール(収率7%)、2-アダマンタノン(収率5%)が生成し、N-ヒドロキシフタルイミドの85%が残存していた。

実施例G5
ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)_(4)に代えて、マンガン(II)アセチルアセトナートMn(AA)_(2)0.05ミリモルを用いる以外、実施例G1と同様にして反応させたところ、アダマンタンの転化率67%で、1-アダマンタノール(収率39%)、1,3-アダマンタンジオール(収率6%)、2-アダマンタノン(収率5%)が生成し、N-ヒドロキシフタルイミドの91%が残存していた。

実施例G6
ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)_(4)に代えて、モリブデン酸H_(2)MoO_(4)0.05ミリモルを用いる以外、実施例G1と同様にして反応させたところ、アダマンタンの転化率79%で、1-アダマンタノール(収率49%)、1,3-アダマンタンジオール(収率15%)、2-アダマンタノン(収率7%)が生成し、N-ヒドロキシフタルイミドの89%が残存していた。
・・(中略)・・
実施例G9
シクロヘキサン10ミリモル、N-ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、マンガンアセチルアセトナートMn(AA)_(3)0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、110℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロヘキサンの転化率85%でアジピン酸(収率70%)、シクロヘキサノン(収率5%)が生成し、N-ヒドロキシフタルイミドの77%が残存していた。・・(中略)・・
実施例G11
シクロヘキサン10ミリモル、N-ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)_(2)0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、110℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロヘキサンの転化率76%でシクロヘキサノン(収率36%)、シクロヘキサノール(収率1%)、アジピン酸(収率29%)が生成し、N-ヒドロキシフタルイミドの48%が残存していた。」(【0225】?【0235】)

3.検討

(1)引用例に記載された発明
引用例には、「アダマンタン10ミリモル、N-ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)_(4)0.05ミリモル、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、アダマンタンの転化率74%で、1-アダマンタノール(収率40%)、1,3-アダマンタンジオール(収率8%)、2-アダマンタノン(収率6%)が生成し、N-ヒドロキシフタルイミドの100%が残存していた」ことが記載されている(摘示(o)の実施例G1参照)から、引用例には、
「アダマンタン10ミリモル、N-ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)_(4)0.05ミリモル、酢酸の混合物を、酸素雰囲気下、75℃で撹拌して、1-アダマンタノール、1,3-アダマンタンジオール及び2-アダマンタノンを生成する方法」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(2)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「N-ヒドロキシフタルイミド」は、本願発明の式(1)で表されるイミド化合物において、R^(1)及びR^(2)が互いに結合して芳香族性の環を形成し、Xはヒドロキシル基、nが1である場合に相当するから、引用発明の「N-ヒドロキシフタルイミド」は、本願発明の「下記式(1)
【化1】


(式中、R^(1)及びR^(2)は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R^(1)及びR^(2)は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、nは1?3の整数を示す)
で表されるイミド化合物」に相当する。
また、引用発明の「アダマンタン10ミリモル」は、アダマンタンが環状炭化水素の1種であることが当業者に自明であり、本願明細書の発明の詳細な説明においても有機基質の1種として例示された「(b)メチン炭素原子を有する化合物」の範ちゅうに入る化合物である(本願明細書【0031】?【0033】参照)から、本願発明の「有機基質」に相当する。
さらに、引用発明の「ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)_(4)0.05ミリモル」、「酢酸」、「75℃」は、それぞれ本願発明の「金属化合物」、「有機溶媒」、「反応温度30?80℃」に相当する。
そして、引用発明は、酸素雰囲気下でアダマンタンから1-アダマンタノール、1,3-アダマンタンジオール、2-アダマンタノンを生成する方法であるところ、1-アダマンタノール、1,3-アダマンタンジオール、2-アダマンタノンは、いずれもアダマンタンを酸化して得られる「対応する酸化生成物」である。
してみると、引用発明は、「アダマンタン」すなわち「有機基質」を、「酸素雰囲気下」すなわち「分子状酸素により酸化して」、「対応する酸化生成物」を生成する方法であるから、引用発明の方法は、本願発明と同様、「有機基質を分子状酸素により酸化して対応する酸化生成物を得る方法」である。
以上によれば、本願発明と引用発明は、
「下記式(1)
【化1】


(式中、R^(1)及びR^(2)は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R^(1)及びR^(2)は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、nは1?3の整数を示す)
で表されるイミド化合物と金属化合物の存在下、有機基質を分子状酸素により酸化して対応する酸化生成物を得る方法であって、有機溶媒中、反応温度30?80℃の条件下で有機基質と酸素とを接触させる有機基質の酸化方法。」
で一致し、以下の3点で相違する。

相違点1:上記酸化方法における金属化合物の量が、本願発明は、「有機基質に対して0.0001?0.25モル%」であるのに対して、引用発明は、有機基質であるアダマンタン10ミリモルに対して0.05ミリモル、すなわち、アダマンタンに対して0.05/10×100=0.5モル%である点
相違点2:金属化合物につき、本願発明は、「V、Mo、Co、Mnから選択される金属元素の有機酸塩」であるのに対して、引用発明は「ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)_(4)」である点
相違点3:有機基質につき、本願発明は、「シクロアルカン又は芳香族性環が第3級炭素原子を有する脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素」であるのに対して、引用発明は、「アダマンタン」である点

(3)各相違点についての判断

ア.相違点1について
引用例には、金属化合物である助触媒の量について、「基質1モルに対して0.0001?0.7モル」、すなわち、0.01?70モル%という広い範囲で変えることができ(摘示(a)の【請求項38】参照)、「反応性および選択率を低下させない範囲で適当に選択」され、「0.0005?0.1モル」、すなわち、「0.05?10モル%」程度である場合が多いと記載されている(摘示(f)後段部参照)。
さらに、引用例には、「助触媒の量が増加するにつれて、イミド化合物の活性が低下する場合がある」ことも記載されているから(摘示(f)前段部参照)、引用発明の方法において、反応性、選択率、イミド化合物の活性などの条件を考慮して、金属化合物の量を、0.5モル%に変えて、より好ましい範囲を検討し、「有機基質に対して0.0001?0.25モル%」程度とすることは、当業者が容易になし得ることである。

イ.相違点2について
引用例には、助触媒である金属化合物として、種々の遷移金属元素の配位化合物(錯体)と同様に有機酸塩を使用できることが記載され(摘示(c)参照)、具体的には、酢酸コバルト、酢酸マンガン又は対応するV塩あるいはMo塩が例示されている(摘示(d)参照)。
また、引用例には、実施例として、酢酸コバルトCo(OAc)_(2)又は酢酸マンガンMn(OAc)_(2)を使用した実験例についても記載されている(摘示(n)及び(l)の実施例A4参照)。
そして、引用例には、「二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物、二価のマンガン化合物など)を助触媒として用いると、酸化活性を向上できる」こと、「二価の遷移金属化合物を前記イミド化合物と組合わせた触媒系では、酸化反応生成物を短時間にしかも高い選択率および収率で誘導できる」こと、「二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルトなどの周期表8族元素を含む化合物)を助触媒として用いると、低温(例えば、10?60℃)、特に室温(15?30℃程度)であっても、基質(例えば、メチル基が置換した芳香族性化合物など)を定量的に酸化でき、対応する酸化物(例えば、カルボン酸など)を生成できる」こと、「周期表・・6A族(Cr,Moなど)、および7A族元素(Mnなど)のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を助触媒として用いると、反応条件が厳しくても、触媒(特にイミド化合物)の失活を大きく抑制できる」「ため、工業的に有利に基質を酸素酸化又は空気酸化することができる」こと、「周期表・・5A族元素(Vなど),6A族元素(Cr,Moなど),7A族元素(Mnなど)および8族元素(Fe,Coなど)を含む化合物を助触媒として用いると、酸化活性が大きく向上し、基質を有効に酸化でき」、「例えば、周期表5A族元素(Vなど),周期表7A族元素(Mnなど)や周期表8族元素(Coなど)を含む化合物を助触媒とする触媒系は、活性が高」く「周期表7A族元素(Mnなど)や周期表8族元素(Feなど)を含む化合物を助触媒とする触媒系は、基質(例えば、シクロアルカン類など)に対して高活性であり、高い選択率で対応する酸化物(例えば、ケトン類やジカルボン酸類など)を生成できる」ことが記載されている(摘示(e)参照)。
してみると、引用発明において、(酸化)触媒活性及び選択率の改善並びにイミド化合物の失活の防止などを意図し、助触媒である金属化合物として、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)_(4)に代えて、V、Mo、Co、Mnから選択される遷移金属元素の酢酸などの有機酸塩を使用することは、当業者が容易になし得ることである。

ウ.相違点3について
引用例には、「イミド化合物と助触媒とで構成された酸化触媒系を用いると、種々の基質を有効に酸化でき、基質に対応するケトン類,アルコール類,アルデヒド類,カルボン酸類などを生成させることができる」ことが記載され、さらに「基質の種類は特に制限されず、広い範囲の飽和又は不飽和化合物、例えば、炭化水素類(脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類)・・などが使用できる」ことも記載されている(摘示(g)参照)。
そして、引用例には、「好ましい基質」として、「シクロアルカン」(摘示(g)の後段部及び摘示(h)参照)及びイソブチルベンゼン(本願発明でいう「芳香族性環が第3級炭素原子を有する脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素」に相当するものと認める。)など芳香族炭化水素を含む「芳香族性環の隣接部位にメチレン基を有する化合物」(摘示(j)参照)が、アダマンタンなどの「環の構成単位としてメチリジン基を含む多環式炭化水素類」(摘示(i)参照)と並列的に例示されており、特に「シクロアルカン」については、実施例として、シクロヘキサンを基質とした場合につき記載されている(摘示(l)及び摘示(o)の実施例G9並びにG11参照)。
してみると、引用発明における基質として、アダマンタンに代えて、並列的に例示されているシクロヘキサンなどの「シクロアルカン」又は「芳香族性環が第3級炭素原子を有する脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素」を使用することは、当業者が所望に応じて適宜なし得ることというほかはない。

(4)本願発明の効果について
本願明細書の段落【0067】には、本願発明の効果について、「本発明の方法によれば、触媒として用いるイミド化合物の失活を顕著に抑制できる。また、アルコール類やカルボニル化合物(アルデヒド又はケトン)などの低次酸化生成物を高い選択率及び収率で得ることができる。」と記載されているので、当該効果について検討する。

a.引用例には、引用発明の方法において「N-ヒドロキシフタルイミドの100%が残存していた」と記載されているから(摘示(o)の実施例G1)、引用発明が、75℃の反応温度において「触媒として用いるイミド化合物の失活を顕著に抑制できる」という効果を奏することは、明らかである。
また、引用例には、「周期表4A族元素(Ti,Zrなど)、6A族(Cr,Moなど)、および7A族元素(Mnなど)のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を助触媒として用いると、反応条件が厳しくても、触媒(特にイミド化合物)の失活を大きく抑制できる。そのため、工業的に有利に基質を酸素酸化又は空気酸化することができる。」と記載されているから(摘示(e)の「2.」の欄参照)、引用発明においても、Mo、Mnなどの金属化合物を助触媒とし、特に反応条件が温和な場合(例えば、反応温度がさらに低い及び/又は反応時間がさらに短いなどの場合等)に「触媒として用いるイミド化合物の失活を顕著に抑制できる」という効果を奏することは、当業者が予期し得ることである。

b.また、引用例には、「二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物、二価のマンガン化合物など)を助触媒として用いると、酸化活性を向上できる。例えば、・・二価の遷移金属化合物を前記イミド化合物と組合わせた触媒系では、酸化反応生成物を短時間にしかも高い選択率および収率で誘導できる」こと及び「二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルトなどの周期表8族元素を含む化合物)を助触媒として用いると、低温(例えば、10?60℃)、特に室温(15?30℃程度)であっても、基質・・を定量的に酸化でき、対応する酸化物・・を生成できる」ことがそれぞれ記載されており(摘示(e)の「1.」の欄参照)、さらに、基質としてアダマンタンなどの多環式炭化水素を使用した場合につき、引用発明の触媒系によれば、「多環式炭化水素類の酸化物(ケトン類、アルコール類、アルデヒド類、カルボン酸類)、特にケトン類やアルコール類を高い選択率で生成させることができる」(摘示(i)後段部参照)及び「本発明の方法は、比較的温和な条件であっても酸化反応が円滑に進行するという特色がある。反応温度は、基質や触媒系の種類などに応じて適当に選択でき、例えば、0?300℃、好ましくは30?250℃、さらに好ましくは50?200℃程度であり、通常、70?150℃程度で反応する場合が多い。なお、前記のように、酸化触媒系の種類によっては、室温などの比較的低温でも酸化反応を円滑に進行させることができる。また、アダマンタンポリオールを製造する場合、例えば、温度40?150℃、特に60?120℃(例えば、70?110℃)程度で反応させると、短時間内にアダマンタンポリオールが生成しやすい。」(摘示(k)参照)と記載されているから、引用発明において、二価のコバルト化合物、二価のマンガン化合物などの遷移金属化合物を助触媒とし、特に反応条件が温和な場合(例えば、反応温度が低温(例えば、10?60℃)である及び/又は反応時間がさらに短いなどの場合等)に「アルコール類やカルボニル化合物(アルデヒド又はケトン)などの低次酸化生成物を高い選択率及び収率で得ることができる」という効果を奏することは、当業者が予期し得ることである。

c.なお、引用例には、
「イミド化合物(1)と助触媒とで構成された触媒系の存在下、このようなシクロアルカン類を酸素により酸化すると、常圧の空気又は酸素雰囲気下であっても、高い転化率および選択率で、主に、対応するジカルボン酸又はシクロアルカノンが生成する。・・(中略)・・前記の酸化方法でシクロヘキサン又はその誘導体を酸化すると、温和な条件下のみならず、反応温度及び/又は反応圧力を高くして反応速度を大きくしても、副生物が殆ど生成せず、生成物の殆どがアジピン酸であるという特色がある。」(摘示(g)後段部参照)及び
「基質がシクロアルカン類であるとき、特に有効な助触媒は、少なくとも周期表7A族元素(Mnなど)を含む化合物で構成されている。また、有効な助触媒は周期表7A族元素(Mnなど)を含む化合物と周期表8族元素(Feなど)を含む化合物との組み合わせで構成できる。また、助触媒として、二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物やマンガン化合物など)を用いると、シクロアルカン類(例えば、シクロオクタン)から、ジケトンの副生を大きく抑制しつつ、シクロアルカノン(例えば、シクロオクタノン)、特にジカルボン酸(例えば、スベリン酸)の選択率および収率を顕著に高めることができる。」(摘示(h)参照)
と記載されているから、基質としてシクロアルカンを使用しイミド化合物(1)と助触媒とで構成された触媒系の存在下反応させた場合につき、「アルコール類やカルボニル化合物(アルデヒド又はケトン)などの低次酸化生成物を高い選択率及び収率で得ることができる」という効果を奏すると当業者が認識することを妨げる要因となるかに見える。

しかるに、炭化水素基質からアルコール、ケトン又はアルデヒドを経てカルボン酸に至る反応進行経路を有する炭化水素の酸化方法において、酸化反応条件を温和なもの(例えば反応温度を低くする、反応系の酸素圧力を低下させる等)とし、アルコール又はケトン(アルデヒド)などの比較的低次の酸化生成物を得られた時点で反応を停止する、すなわち反応時間を短縮することにより、低次酸化生成物を選択的に得ることは、当業者の技術常識の範ちゅうに入る事項であるものと認められる。
ちなみに、この点については、引用例にも「二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物など)を助触媒として用いると、低温(例えば、10?60℃)、特に室温(15?30℃)程度の温和な条件下であっても、ポリカルボン酸やケトン類の選択率および収率を向上できる。例えば、p-キシレンを酸化すると、温和な条件下、反応時間が1/2程度であっても、テレフタル酸を短時間内に高い選択率および収率で得ることができる。」(摘示(j)後段部参照)と記載されているとおり、「温和な条件下、反応時間が1/2程度であっても」最終酸化生成物であるカルボン酸が高い選択率及び収率で形成されることが特異であること、すなわち、翻って「温和な条件下、反応時間が1/2程度であ」る場合に最終酸化生成物ではなく低次酸化生成物が主に形成されることが、当業者の技術常識であったものと認めるのが自然である。
してみると、基質としてシクロアルカンを使用しイミド化合物(1)と助触媒とで構成された触媒系の存在下反応させる場合であっても、当業者は、上記技術常識に照らして、さらに温和な反応条件下で反応時間を短縮することにより、低次酸化生成物を高い選択率及び収率で得ることができると認識するものと認められ、上記引用例の記載は、当該認識を妨げる要因となるとはいえない。

d.したがって、本願発明の「本発明の方法によれば、触媒として用いるイミド化合物の失活を顕著に抑制できる。また、アルコール類やカルボニル化合物(アルデヒド又はケトン)などの低次酸化生成物を高い選択率及び収率で得ることができる。」という効果は、上記引用例の記載から、当業者が予測できる程度のものである。

(5)検討のまとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.審判請求人の主張について
審判請求人は、上記平成23年11月11日付け意見書において、
「刊行物3には、イミド化合物と助触媒の存在下、有機基質(例えば、シクロアルカン等)を酸素酸化して酸化物を得る発明が記載されています。
しかし、実施例において有機基質としてシクロヘキサンを使用した場合、常に反応温度は100℃又は120℃の高温であります。
更に、実施例において、シクロヘキサン等のシクロアルカンを基質とする場合、助触媒としては、常に、Mn(AA)_(2)、酸化マンガン、Co(AA)_(3)を使用しており、V、Mo、Co、Mnから選択される金属元素の有機酸塩を使用した例は一切記載されていません。
また、芳香族性環が第3級炭素原子を有する脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素については、イソプロピルベンゼンが有機基質の一例として挙げられているのみで実施例も一切ありません。
すなわち、刊行物1?3には、イミド化合物と金属化合物の存在下、有機基質を酸化して対応する酸化生成物を得る有機基質の酸化方法において、上記1?4の条件を兼ね備える有機基質の酸化方法については一切記載も示唆もありません。
従って、上記刊行物1?3から本願の請求項に係る発明を想起することは困難であります。
そして、本願の請求項1に係る発明によれば格別顕著な効果を奏します。すなわち、本願発明では、イミド化合物と金属化合物の存在下、有機基質を酸化して対応する酸化生成物を得る有機基質の酸化方法を、上記1?4の条件を兼ね備えた環境下で行うため、触媒として使用するイミド化合物の変質、分解を抑制しつつ、目的酸化生成物を高収率、選択的に得ることができます。それは、実施例からも明らかであります。
一方、反応温度が上記3に記載の範囲(30?80℃)を超えた場合(例えば、100℃:刊行物3に記載の発明に相当)や、金属化合物の使用量が上記4に記載の範囲を超えた場合は、目的化合物の収率は多少良くなりますが、触媒残存率が急激に低下します(段落番号0071(比較例2)、段落番号0072(比較例3)参照)。
上記刊行物1?3には、本願の上記効果を予測するような記載は全くありません。
以上より、本願の請求項1に係る発明は上記刊行物1?3には開示も示唆もない構成により、前記刊行物からは予測もできない顕著な効果を奏するので、刊行物1?3に記載された発明ではなく、また刊行物1?3に基づいて当業者が容易に想到できた発明でもありません。」(意見書「(4)新規性及び進歩性について」の欄)と主張している。

しかるに、上記引用例(拒絶理由通知における「刊行物3」)には、上記2.で指摘した(a)?(o)の事項が記載され、当該引用例の記載に基づき認定した引用発明(拒絶理由通知中で認定した「引用発明3」のとおりである。)では、反応温度が75℃である。 そして、引用例には、引用発明の方法を実施した場合の反応後のイミド化合物の残量が100重量%であったことも記載されている(摘示(o)の実施例G1参照)。
してみると、引用発明における「75℃」なる反応温度は、本願発明における「30?80℃」の範囲に入る点で両者間の実質的な相違であるとはいえないし、引用発明が、当該「75℃」なる反応温度において「触媒として用いるイミド化合物の失活を顕著に抑制できる」という効果を奏することは明らかであるから、請求人の上記意見書における反応温度及びイミド化合物の失活の抑制に係る主張は、引用例の記載に基づかないものである。
また、引用例には、シクロヘキサンを基質とし「酢酸マンガンMn(OAc)_(2)」なるMnの有機酸塩を助触媒とした実施例についても記載されている(摘示(l)の実施例A4参照)から、請求人の上記意見書における助触媒の種別に係る主張も、引用例の記載に基づかないものである。
さらに、請求人の「芳香族性環が第3級炭素原子を有する脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素」に係る主張を検討すると、技術常識(必要ならば下記参考文献参照)からみて、イソプロピルベンゼン及びイソブチルベンゼンは、いずれも第三級炭素原子、すなわち、水素が結合していない炭素原子が脂肪族炭化水素基に存する化合物ではないのであるから、「第3級炭素原子を有する脂肪族炭化水素基で置換された芳香族炭化水素」に該当するものではなく、技術的根拠を欠くものである。
したがって、審判請求人の上記意見書における主張は、引用例の記載を正解しないものであるか、技術的根拠を欠くものであるから、いずれにしても当を得ないものであって、当審の上記3.の検討結果を左右するものではない。

参考文献:日本化学会編「第2版 標準化学用語辞典」平成17年3月31日、丸善株式会社発行、第390頁、第392頁及び第395頁(「第一級炭素原子」、「第二級炭素原子」及び「第三級炭素原子」の各欄)

5.当審の判断のまとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 結び
以上のとおり、本願の請求項1に記載された事項で特定される発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、その余につき検討するまでもなく、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-16 
結審通知日 2011-12-20 
審決日 2012-01-05 
出願番号 特願平10-170590
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松澤 優子  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 東 裕子
橋本 栄和
発明の名称 有機基質の酸化方法  
代理人 後藤 幸久  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ