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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1252393
審判番号 不服2010-16446  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-22 
確定日 2012-02-16 
事件の表示 特願2005-316108「情報処理装置の無線通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月17日出願公開、特開2007-124463〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年10月31日の出願であって、平成22年1月29日付けで拒絶理由通知がなされ、同年3月30日付けで手続補正がなされたが、同年4月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成22年3月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「複数の無線通信規格に準拠した高周波回路部を含む複数の無線モジュールと、
前記複数の無線モジュールによるそれぞれの無線通信規格の高周波信号を送受信する複数のアンテナと、
前記無線モジュールのそれぞれに電力を供給する組み込み制御器と、
前記組み込み制御器より前記各無線モジュールに電力を供給する電源線をそれぞれ開閉するスイッチ群と、
前記組み込み制御器に指示して前記スイッチ群を開閉する1つの制御スイッチと、
を備え、
前記組み込み制御器より前記スイッチ群によって閉じられた電源線を通して前記無線モジュールに電力が供給され、その無線モジュールとこれに対応するアンテナによりデータが送受信される状態で前記制御スイッチの操作により、前記組み込み制御器は前記スイッチ群を全て「開」にして前記無線モジュールへの電力の供給を停止し、かつ、前記スイッチ群の全てが「開」状態で、前記制御スイッチを操作することにより、前記組み込み制御器は前記スイッチ群をその全てが開にされる前の状態に戻し、前記スイッチ群の全てが開にされる前に電力が供給されていた無線モジュールとこれに対応するアンテナにより当該無線モジュールによる無線通信規格の高周波信号にてデータが送受信される状態に復帰することを特徴とする情報処理装置の無線通信装置。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-125031号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

A.「【0019】
【発明の実施の形態】次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0020】(第1の実施の形態)本発明の第1の実施の形態に係る通信情報端末4aの機能ブロック図を図1に示す。
【0021】本発明の第1の実施の形態に係る通信情報端末4aは、通信装置11、処理制御装置12、一時記憶装置13、入力装置14、出力装置15、通信状態表示装置16を備えている。図示しないが、通信情報端末4aの稼働に必要な電源装置が備えられているのは勿論である。
【0022】通信装置11は、無線通信を行えるように、無線電波を発信或いは受信する装置である。具体的に、通信装置11は、モデム、LANカード、発信機、受信器等の装置のことである。更に、それらから接続されるアンテナ等が含まれても良い。或いは、同様の機能を持つ回路でも良い。
【0023】一時記憶装置13は、ROM及びRAMが組み込まれている。ROMは、処理制御装置12において実行されるプログラムを格納しているプログラムメモリとして機能し、RAMは、処理制御装置15におけるプログラム実行中に利用されるデータ等を格納したり、作業領域として利用されるデータメモリ等として機能する。入力装置14は、キーボード、ボタン、スクロールボタン、トラックボールなどにより、出力装置15は、液晶ディスプレイなどにより構成されている。
【0024】通信状態表示装置16は、通信情報端末4aが、通信状態等を表示する装置である。通信状態表示装置16は、LED等を点灯させても良いし、液晶ディスプレイ等に文字を表示しても良い。通信状態表示装置16は、表示する色や、点灯時間、点灯間隔、文字を変更させることにより、幾つかの状態を示しても良い。通信状態表示装置16は、通信情報端末4aの通信状態が、周囲の人に分かりやすいように表示されるのが好ましい。
【0025】処理制御装置12は、通信手段12a、情報処理手段12b、通信許可制御手段12cを備えている。
【0026】通信手段12aは、電話機能の受話送話及びデータの送受信等に代表される通信を行う手段である。通信手段12aにより通信装置12に接続され、通信情報端末4aは、通信を行うことが出来る。
【0027】情報処理手段12bは、内蔵されたアプリケーションプログラムを実行する手段である。情報処理手段12bは、スケジュール、カレンダー、時計、電卓などの機能を実行する。更に、外部のサーバからのプログラムやデータをダウンロードして、内蔵された記憶装置(図示せず)に保存し、ゲーム、画像、乗換案内処理などのアプリケーションを実行することも可能である。更に、情報処理手段から、通信手段12aを介して、通信を行うことも可能である。この時、通信情報端末4aが、通信を許可しているのは勿論である。又、情報処理手段12bは、通話を行う場合も入力手段14から入力された電話番号等に従って、通信手段12aにおいて、通話を行えるように制御しても構わない。
【0028】通信許可制御手段12cは、通信を許可するか否かを制御する手段である。具体的には、通信を許可する場合は、通信手段12aと通信装置11とを接続する。通信が許可された場合は、通信情報端末4aの発着呼を可能にするために、断続的に、最寄りの基地局に対して無線電波を送信する。又、通信が許可されていない場合は、あらゆる無線電波の送受信を行わない。図1に示した通信情報端末4aにおいては、入力装置14の操作によって、通信許可制御手段12cが制御される。又、通信許可制御手段12cが、通信許可或いは不許可を制御する時に、通信状態表示装置16も合わせて制御するのが好ましい。」

B.「【0067】(第5の実施の形態)本発明の第5の実施の形態に係る通信情報端末4aの機能ブロック図を図8に示す。
【0068】図1に示した、第1の実施の形態に係る通信情報端末4aに比べて、第5の実施の形態に係る通信情報端末4aは、通信手段12aが、通話手段12d、データ通信手段12eを備えており、通信装置11が、通話装置11a、データ通信装置12bを備えている点が異なる。
【0069】通話装置11aは、マイク、スピーカー等の通話に必要な装置である。データ通信手段11bは、LANカード等のデータ通信に必要な装置である。
【0070】通話手段12dは、通信手段12aにおいて、電話機能の受話送話を行うための手段である。通話手段12dには、CODEC19が接続されている。CODEC19は、受話装置21を介して受話したデータをコンピュータが読取可能なデータに変換して通話手段12dに伝達する。ここで得られたデータは、スピーカー等により、利用者に伝達される。利用者が話したデータは、マイクなどにより通話手段12dに取り込まれ、CODECにより音声データに変換され、送話装置20を介して送話する。
【0071】データ通信手段12eは、通信手段12aにおいて、データ通信を行うための手段である。
【0072】第5の実施の形態における通話許可制御手段12cは、通話手段11aと通話手段12d、データ通信装置11bとデータ通信手段12eを接続したり、接続を切ったりすることによって、通信を許可するか否か、制御する手段である。
【0073】更に、通信状態表示装置16は、通話が許可されているか否か、データ通信が許可されているか否かを示すのが好ましい。
【0074】本発明の第5の実施の形態に係る通信情報端末4aのフローチャートを図9に示す。
【0075】まず、ステップS201において、通信許可制御手段12cが、通信を許可しているか否かを判定する。通信を許可していない場合は、ステップS219において、通信が不許可の処理を行う。
【0076】(通信が不許可の処理)まず、ステップS219において、通信状態表示装置16を無通信状態に変更する。更に、ステップS220において、通話装置11aの待機を停止する。更に、ステップS221において、データ通信装置11bの待機を停止する。
【0077】ステップS220において、通信を終了するか否かを判定する。通信が終了しない場合は、ステップS201で、再び、通信許可制御手段12cが通信を許可しているか否か、判定を行う。通信を終了する場合は、この処理を終了する。
【0078】更に、ステップS202において、通話、データ通信がそれぞれ、許可されているか否かを判定する。通話のみ許可されている場合は、ステップS203において、通話が許可の処理を行う。通話、データ通信が友に許可されている場合は、ステップS208において、通話及びデータ通信が許可の処理を行う。データ通信のみ許可されている場合は、ステップS213において、データ通信が許可の処理を行う。
【0079】(通話が許可の処理)まず、ステップS203において、通信状態表示装置16を通話許可状態に変更する。更に、ステップS204において、通話装置11aを待機させ、ステップS205において、データ通信装置11bの待機を停止する。ステップS206において、基地局に電波を送信し、通信情報端末4aの収容局を認識させ、ステップS207において、通話を待機する。
【0080】(通話及びデータ通信が許可の処理)まず、ステップS208において、通信状態表示装置16を通話・データ通信許可状態に変更する。更に、ステップS209において通話装置11aを、ステップS210においてデータ通信装置11bを待機させる。ステップS211において、基地局に電波を送信し、通信情報端末4aの収容局を認識させ、ステップS207において、通話及びデータ通信を待機する。
【0081】(データ通信が許可の処理)まず、ステップS213において、通信状態表示装置16をデータ通信許可状態に変更する。更に、ステップS214において、通話装置11aの待機を停止し、ステップS215において、データ通信装置11bを待機させる。ステップS216において、基地局に電波を送信し、通信情報端末4aの収容局を認識させ、ステップS217において、データ通信を待機する。
【0082】通話或いはデータ通信のうち少なくとも一つが許可されている場合は、ステップS207、ステップS212、ステップS217において、通話、データ通信のうち少なくとも一つを待機させ、ステップS218において、通信情報端末4aが送信することにより、或いは、基地局より受信することにより、通信を開始する。
【0083】最後に、ステップS220において、ステップS218における通信を終了するか否かを判定する。通信が終了しない場合は、ステップS201で、再び、通信許可制御手段12cが通信を許可しているか否か、判定を行う。通信を終了する場合は、この処理を終了する。
【0084】第5の実施の形態によれば、通話、データ通信のそれぞれに対して制御をすることが出来る。従って、音声を出してはいけないエリアでは、データ通信のみ許可するなど、柔軟な通信制御を行うことが出来る。」

ここで、
(ア)上記Aの段落【0019】の「以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。」という記載より、図8に記載された構成要素において格別に説明がなされていない事項については、図1に記載された対応する構成要素の説明によるものと認められる。

(イ)上記Aの段落【0022】の記載より、図1に記載された通信装置11には、高周波回路部を含む無線モジュールと、前記無線モジュールによる高周波信号を送受信するアンテナが含まれているものと解される。
ここで、上記Bの段落【0068】に「通信装置11が、通話装置11a、データ通信装置12bを備えている点が異なる。」と記載されているが、その記載に対応する図8を参照すると、通信装置11は、通話装置11a、データ通信装置11bを備えており、上記記載中の「データ通信装置12b」は「データ通信装置11b」の誤記であると認められる。したがって、図8に記載された通信装置11には、高周波回路部を含む、通話装置11aとデータ通信装置11bからなる複数の無線モジュールと、前記複数の無線モジュールによる高周波信号を送受信するアンテナが含まれているものと解される。

(ウ)上記Aの段落【0021】の「図示しないが、通信情報端末4aの稼働に必要な電源装置が備えられているのは勿論である。」という記載より、図8に記載された通信情報端末4aには、通話装置11aとデータ通信装置11bからなる複数の無線モジュールのそれぞれに電力を供給する電源回路と、前記電源回路より前記各無線モジュールに電力を供給する電源線が備えられているものと解される。

(エ)上記Bの段落【0072】の記載及び図8より、図8に記載された通信情報端末4aには、通話許可制御手段12cより制御され、通話装置11aとデータ通信装置11bからなる各無線モジュールによる通信を許可するか否かをそれぞれ開閉することによって切り換えるスイッチ群があるものと解される。

(オ)上記Aの段落【0028】の「図1に示した通信情報端末4aにおいては、入力装置14の操作によって、通信許可制御手段12cが制御される。」という記載より、図8に示した通信情報端末4aにおいて、通信許可制御手段12cに指示してスイッチ群を開閉する入力装置14があるものと解される。

(カ)上記Bの段落【0074】?段落【0078】の記載、特に段落【0075】の「ステップS201において、通信許可制御手段12cが、通信を許可しているか否かを判定する。」という記載より、ステップS201において、入力装置14の操作によって制御された通信許可制御手段12cが、通信を許可しているか否かを判定しているから、図8に示した通信情報端末4aにおいて、少なくとも1つの無線モジュールによる通信を許可とされている状態で入力装置14の操作により、通信許可制御手段12cはスイッチ群を全て「開」にして無線モジュールによる通信を不許可とし、かつ、前記スイッチ群の全てが「開」状態で、前記入力装置14を操作することにより、前記通信許可制御手段12cは前記スイッチ群を少なくとも1つの無線モジュールによる通信を許可とするように制御するものであると解される。

よって、上記A,Bの記載及び関連する図面を参照すると、引用例には、次の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「高周波回路部を含む複数の無線モジュールと、
前記複数の無線モジュールによる高周波信号を送受信するアンテナと、
前記無線モジュールのそれぞれに電力を供給する電源回路と、
前記電源回路より前記各無線モジュールに電力を供給する電源線と、
通話許可制御手段12cより制御され、前記各無線モジュールによる通信を許可するか否かをそれぞれ開閉することによって切り換えるスイッチ群と、
前記通信許可制御手段12cに指示して前記スイッチ群を開閉する入力装置14と、
を備え、
少なくとも1つの前記無線モジュールによる通信を許可とされている状態で前記入力装置14の操作により、前記通信許可制御手段12cは前記スイッチ群を全て「開」にして前記無線モジュールによる通信を不許可とし、かつ、前記スイッチ群の全てが「開」状態で、前記入力装置14を操作することにより、前記通信許可制御手段12cは前記スイッチ群を少なくとも1つの無線モジュールによる通信を許可とするように制御する通信情報端末4a。」

4.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例記載の発明における「無線モジュールのそれぞれに電力を供給する電源回路」と、本願発明における「無線モジュールのそれぞれに電力を供給する組み込み制御器」とは、ともに、「無線モジュールのそれぞれに電力を供給する電源回路」であるということができる。

(い)引用例記載の発明における「通信許可制御手段12cに指示して前記スイッチ群を開閉する入力装置14」と、本願発明における「組み込み制御器に指示して前記スイッチ群を開閉する1つの制御スイッチ」とは、ともに、「スイッチ群を制御する制御器に指示して前記スイッチ群を開閉する装置」であるということができる。

(う)引用例記載の発明における「通信情報端末4a」は、引用例の図8に記載された情報処理手段12bにて情報処理を行う装置であるとともに、該情報処理を行う装置において無線通信を行う装置でもあると考えられるから、本願発明における「情報処理装置の無線通信装置」に相当する。

上記(あ)?(う)の事項を踏まえると、本願発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「高周波回路部を含む複数の無線モジュールと、
前記複数の無線モジュールによる高周波信号を送受信するアンテナと、
前記無線モジュールのそれぞれに電力を供給する電源回路と、
前記電源回路より前記各無線モジュールに電力を供給する電源線と、
スイッチ群と、
前記スイッチ群を制御する制御器に指示して前記スイッチ群を開閉する装置と、
を備えた情報処理装置の無線通信装置。」
である点。

(相違点)
相違点1:「高周波回路部を含む複数の無線モジュール」が、本願発明においては、「複数の無線通信規格に準拠した高周波回路部を含む複数の無線モジュール」であるのに対し、引用例記載の発明においては、そのようなものでない点。

相違点2:「複数の無線モジュールによる高周波信号を送受信するアンテナ」が、本願発明においては、「前記複数の無線モジュールによるそれぞれの無線通信規格の高周波信号を送受信する複数のアンテナ」であるのに対し、引用例記載の発明においては、そのようなものでない点。

相違点3:「無線モジュールのそれぞれに電力を供給する電源回路」が、本願発明においては、「組み込み制御器」であるのに対し、引用例記載の発明においては、そのようなものでない点。

相違点4:「スイッチ群」が、本願発明においては、「前記組み込み制御器より前記各無線モジュールに電力を供給する電源線をそれぞれ開閉する」ものであるのに対し、引用例記載の発明においては、「通話許可制御手段12cより制御され、前記各無線モジュールによる通信を許可するか否かをそれぞれ開閉することによって切り換える」ものである点。

相違点5:「スイッチ群を制御する制御器に指示して前記スイッチ群を開閉する装置」が、本願発明においては、「前記組み込み制御器に指示して前記スイッチ群を開閉する1つの制御スイッチ」であるのに対し、引用例記載の発明においては、「前記通信許可制御手段12cに指示して前記スイッチ群を開閉する入力装置14」である点。

相違点6:本願発明においては、「前記組み込み制御器より前記スイッチ群によって閉じられた電源線を通して前記無線モジュールに電力が供給され、その無線モジュールとこれに対応するアンテナによりデータが送受信される状態で前記制御スイッチの操作により、前記組み込み制御器は前記スイッチ群を全て「開」にして前記無線モジュールへの電力の供給を停止し、かつ、前記スイッチ群の全てが「開」状態で、前記制御スイッチを操作することにより、前記組み込み制御器は前記スイッチ群をその全てが開にされる前の状態に戻し、前記スイッチ群の全てが開にされる前に電力が供給されていた無線モジュールとこれに対応するアンテナにより当該無線モジュールによる無線通信規格の高周波信号にてデータが送受信される状態に復帰する」ものであるのに対し、引用例記載の発明においては、「少なくとも1つの前記無線モジュールによる通信を許可とされている状態で前記入力装置14の操作により、前記通信許可制御手段12cは前記スイッチ群を全て「開」にして前記無線モジュールによる通信を不許可とし、かつ、前記スイッチ群の全てが「開」状態で、前記入力装置14を操作することにより、前記通信許可制御手段12cは前記スイッチ群を少なくとも1つの無線モジュールによる通信を許可とするように制御する」ものである点。

5.判断
そこで、上記相違点1?6について検討する。

(相違点1,2について)
複数の無線通信規格に準拠した高周波回路部を含む複数の無線モジュールと、前記複数の無線モジュールによるそれぞれの無線通信規格の高周波信号を送受信する複数のアンテナと、を備えた情報処理装置の無線通信装置は、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-350108号公報の図2及びその説明や、特開2003-110454号公報の図3及びその説明、特開2003-309499号公報の図5及びその説明等に記載されているように、周知技術である。
したがって、引用例記載の発明において、上記周知技術を適用して、高周波回路部を含む複数の無線モジュールと、前記複数の無線モジュールによる高周波信号を送受信するアンテナの代わりに、複数の無線通信規格に準拠した高周波回路部を含む複数の無線モジュールと、前記複数の無線モジュールによるそれぞれの無線通信規格の高周波信号を送受信する複数のアンテナとすることは、当業者が適宜実施できたことにすぎない。

(相違点3について)
本願明細書には、段落【0006】及び段落【0022】を参照して、組み込み制御器はエンベデッドコントローラであることが記載されているので、本願発明の「組み込み制御器」は具体的にはエンベデッドコントローラであると考えられる。
そして、一般的に、エンベデッドコントローラは、装置の電力を管理して当該装置内の各コンポーネントに供給する機能を有するものである(例えば、特開2004-118264号公報の段落【0025】,段落【0026】や、特開2004-110456号公報の段落【0023】?段落【0025】、特開2003-296042号公報の段落【0019】等を参照。)から、引用例記載の発明において、「電源回路」として、エンベデッドコントローラである「組み込み制御器」を用いることは、当業者が適宜実施できたことにすぎない。

(相違点4について)
一般的に、あるコンポーネントを個別に動作させるか否かを、当該コンポーネントに供給する電力を供給/遮断することによって制御することは広く行われていることであり、また、エンベデッドコントローラもそのような制御を行うものである(例えば、特開2004-118264号公報の段落【0025】,段落【0026】や、特開2004-110456号公報の段落【0023】?段落【0025】等を参照。)。
したがって、引用例記載の発明において、上記(相違点3について)で検討した事項も踏まえて、通話許可制御手段12cより制御され、各無線モジュールによる通信を許可するか否かをそれぞれ開閉することによって切り換えるスイッチ群の代わりに、エンベデッドコントローラである組み込み制御器より前記各無線モジュールに電力を供給する電源線をそれぞれ開閉するスイッチ群とすることは、当業者が適宜なし得た設計変更にすぎない。

(相違点5について)
引用例の段落【0023】には、「入力装置14は、キーボード、ボタン、スクロールボタン、トラックボールなどにより、・・・構成されている。」と記載されており、この記載では「ボタン」は1つであることを排除していないから、引用例記載の発明において、入力装置14がボタンである場合、当該入力装置14は1つのボタンであることも含み、また、一般的に、ボタンは制御スイッチであるといえるものであるから、当該入力装置14は1つの制御スイッチであると解される。
そして、引用例記載の発明は、当該入力装置14がスイッチ群の開閉を指示するものであるところ、引用例記載の発明において、上記(相違点3について)及び上記(相違点4について)で検討した事項を踏まえて、組み込み制御器より各無線モジュールに電力を供給する電源線をそれぞれ開閉するスイッチ群の開閉を指示するために、1つの制御スイッチが前記組み込み制御器に指示するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点6について)
引用例記載の発明において、少なくとも1つの前記無線モジュールによる通信を許可とされている状態で前記入力装置14の操作により、前記通信許可制御手段12cは前記スイッチ群を全て「開」にして前記無線モジュールによる通信を不許可とし、かつ、前記スイッチ群の全てが「開」状態で、前記入力装置14を操作することにより、前記通信許可制御手段12cは前記スイッチ群を少なくとも1つの無線モジュールによる通信を許可とするように制御することは、上記(相違点1について)?上記(相違点5について)で検討した事項を踏まえると、組み込み制御器より前記スイッチ群によって閉じられた電源線を通して前記無線モジュールに電力が供給され、その無線モジュールとこれに対応するアンテナによりデータが送受信される状態で前記制御スイッチの操作により、前記組み込み制御器は前記スイッチ群を全て「開」にして前記無線モジュールへの電力の供給を停止し、かつ、前記スイッチ群の全てが「開」状態で、前記制御スイッチを操作することにより、前記組み込み制御器は前記スイッチ群のうちの少なくとも1つのスイッチを「閉」とし、当該少なくとも1つのスイッチに対応する無線モジュールとこれに対応するアンテナにより当該無線モジュールによる無線通信規格の高周波信号にてデータが送受信される状態に復帰することになるといえる。
そして、一般的に、電源オン時には記録された情報に従って電源オフ以前の設定状態に戻す機能(ラストメモリー機能)は、様々な分野において用いられている技術である。
したがって、引用例記載の発明に上記(相違点1について)?上記(相違点5について)で検討した事項を踏まえたものにおいて、スイッチ群の全てが「開」状態で、制御スイッチを操作することにより、組み込み制御器は前記スイッチ群をその全てが開にされる前の状態に戻し、前記スイッチ群の全てが開にされる前に電力が供給されていた無線モジュールとこれに対応するアンテナにより当該無線モジュールによる無線通信規格の高周波信号にてデータが送受信される状態に復帰するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記周知技術等から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び上記周知技術等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-16 
結審通知日 2011-12-20 
審決日 2012-01-05 
出願番号 特願2005-316108(P2005-316108)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 昌敏  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 小曳 満昭
甲斐 哲雄
発明の名称 情報処理装置の無線通信装置  
代理人 永野 大介  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 内藤 浩樹  

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