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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1252405
審判番号 不服2010-25835  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-16 
確定日 2012-02-16 
事件の表示 特願2005-108515「積層フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月19日出願公開、特開2006-281731〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、平成17年4月5日の出願であって、平成22年9月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「アルケニル置換ナジイミドを含有する塗布剤を基材フィルムの少なくとも片面に塗布し、乾燥させることにより設けられた塗布層を有することを特徴とする積層フィルム。」

第3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-265541号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】 光配向性を示す構成単位を有する多官能マレイミド誘導体、及びアルケニル置換ナジイミド誘導体を含有する光配向材料。」

(2)「【請求項10】 請求項1?8のいずれか1つに記載の光配向材料を基板上に塗布し、加熱によりマレイミド誘導体とアルケニル置換ナジイミド誘導体の硬化を行い、次いで光照射により光配向性を示す構成単位の光反応を行う光配向膜の製造方法。」

(3)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、液晶の配向方法に関し、特に光を照射することで、ラビングを行うことなく液晶分子を配向させることのできる光配向膜に関する。本発明の光配向膜は、液晶表示素子用等の液晶配向膜として好適に用いられる。」

(4)「【0071】本発明の光配向材料は、上記に記載した光配向性を示す構成単位(以下、光配向性を示す構成単位を光配向性基と略す)を有する多官能マレイミド誘導体およびアルケニル置換ナジイミド誘導体を含有することを特徴とする。次に、本発明の光配向材料を用いて、光配向膜とこれを具備した液晶表示素子を製造する方法の例を述べる。
【0072】本発明の光配向材料は、適切な溶媒に溶解して用いる。・・・中略・・・
【0073】上記光配向材料の溶液をガラス等の基板にスピンコーティング法、印刷法等の方法によって塗布し、乾燥後、マレイミド基とアルケニル置換ナジイミド誘導体との硬化および光配向性基の配向操作を行う。マレイミド基とアルケニル置換ナジイミド誘導体との硬化は光照射もしくは加熱によって行われる。光や熱による硬化操作は、既に配向した光配向性基に影響を与える恐れがあるため、光配向性基の配向に先立って行うことが好ましいが、アゾベンゼンのような可逆的な光異性化による光配向の状態を固定化する目的で、光配向を行った後に硬化操作を行う場合もある。」

上記記載(2)において、基板上に光配向膜を形成したものは、基板と光配向膜との積層体といえるから、上記各記載より、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「光配向性を示す構成単位を有する多官能マレイミド誘導体、及びアルケニル置換ナジイミド誘導体を含有する光配向材料の溶液を基板に塗布し、乾燥後、マレイミド基とアルケニル置換ナジイミド誘導体の硬化および光配向性基の配向操作を行うことで光配向膜を形成した積層体。」

第4 対比
引用発明の「アルケニル置換ナジイミド誘導体」は、本願発明の「アルケニル置換ナジイミド」に相当し、引用発明の「光配向性を示す構成単位を有する多官能マレイミド誘導体、及びアルケニル置換ナジイミド誘導体を含有する光配向材料の溶液」は、本願発明の「アルケニル置換ナジイミドを含有する塗布剤」に相当する。
引用発明の「基板」と、本願発明の「基材フィルム」とは、「基材」であるとの限度で一致する。
引用発明の、「光配向膜」は、光配向材料の溶液を塗布し、乾燥する工程を経て形成される層であるから、本願発明の、塗布剤を塗布し、乾燥させることにより設けられた「塗布層」に相当する。
引用発明の「積層体」と、本願発明の「積層フィルム」とは、「積層体」との限度で一致する。
よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「アルケニル置換ナジイミドを含有する塗布剤を基材の少なくとも片面に塗布し、乾燥させることにより設けられた塗布層を有する積層体。」

[相違点]
本願発明は、基材が「基材フィルム」である「積層フィルム」であるのに対し、引用発明は、基材が「基板」である「積層体」である点。

第5 判断
引用発明の「基板」は、液晶表示素子用等の液晶配向膜の形成に用いられる基板である(上記記載(3))。そして、引用文献には「ガラス等の基板」と基板にガラスを用いる例が記載されているものの、それは一つの例示であって、ガラスに限定されているわけではない。そして、液晶表示素子用の基板に樹脂を用いることは、原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-341030号公報(【0001】、【0112】)に開示されているように周知であり、液晶表示装置にフィルムを用いることも、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-246855号公報(【0001】?【0003】)に開示されているように周知である。また、液晶表示素子の液晶配向膜の形成に用いられる基板に限ってみても、そのような基板としてフィルムを用いることは、新たに提示する特開2001-125082号公報(【請求項1】、【請求項4】、【請求項7】)に開示されているように周知である。
引用発明の「基板」は、上記のとおり、ガラス基板に限定されていないから、当該基板としては、当業者が技術常識に照らして適宜の基板を採用できるのである。このことに加え、上記周知技術を考慮すれば、引用発明の「基板」として、周知のフィルムを選択することは、当業者が容易になしえた設計事項というべきである。

請求人は、引用発明は、本願発明のように、塗布層上に反射防止層やハードコート層を積層するものではなく、両者の技術分野が全く異なるとか、引用発明は、本願発明のように、塗布層を硬化させることなく、当該塗布層上に表面機能層を設けるものとは、目的、構成の点で全く異なると主張する。しかし、上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、理由がない。
また、請求人は、引用文献に本願発明の課題が開示されていない旨を主張するが、本願発明の課題を考慮しなくとも、上記のとおり、引用発明の「基板」として周知のフィルムを採用することは、当業者が容易になしえたことである。

よって、相違点に係る本願発明の構成は、周知技術を考慮すれば、引用発明に基いて当業者が、容易に想到し得たものである。

そして、本願明細書には、塗布層面上に表面機能層が積層されたときの反射防止能に優れる旨の記載がある(【0055】)が、表面機能層は、本願発明特定事項ではないから、上記記載は、本願発明についての効果と認めることはできず、本願発明と引用発明の効果に格別の相違を認めることはできない。

なお、本願発明は、明細書の記載によれば「光学用途に好適な積層フィルムに関する」(【0001】)とされているが、特許請求の範囲には、特に光学用途に好適といえる構成が記載されていない。このことを考慮すれば、新たに提示する特開平2003-13033号公報(【0041】)に示される「接着シート」は、用途が異なるものの、本願発明と同一の発明といえるものであることを付言する。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-07 
結審通知日 2011-12-13 
審決日 2012-01-04 
出願番号 特願2005-108515(P2005-108515)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 晋也  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 熊倉 強
紀本 孝
発明の名称 積層フィルム  

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