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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1252637
審判番号 不服2010-23161  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-13 
確定日 2012-02-23 
事件の表示 特願2008-146501「情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム、並びに情報処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月17日出願公開、特開2009-294821〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
出願日 平成20年6月4日
拒絶理由(起案日) 平成22年4月7日
意見書及び手続補正書 平成22年6月14日
拒絶査定(起案日) 平成22年7月9日
同謄本送達 平成22年7月13日
審判請求 平成22年10月13日
手続補正書 平成22年10月13日
前置報告書(作成日) 平成22年11月18日
審尋(起案日) 平成23年4月22日
回答書 平成23年6月27日

2.平成22年10月13日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年10月13日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
平成22年10月13日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)の特許請求の範囲についてする補正の内容は次のとおりである。
(本件補正後(特許請求の範囲の補正部分には下線を付した。))
「【請求項1】
識別情報を有し、他の情報処理装置からの要求に応じた処理を行う複数の処理部と、
前記複数の処理部のそれぞれの前記識別情報を記憶し、前記他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記他の情報処理装置に通知する通知部と
を備え、
前記通知部は、前記複数の処理部のうちの所定の前記処理部と選択的に接続可能なように、前記複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続され、前記他の情報処理装置により前記複数の処理部の中の所定の前記処理部が選択されたとき、選択された所定の前記処理部の前記通信ラインを有効にする
情報処理装置。
【請求項2】
前記情報処理装置と前記他の情報処理装置は、相互に非接触通信し、
前記通知部は、前記他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて、前記識別情報を前記他の情報処理装置に通知した後に、前記他の情報処理装置と前記複数の処理部との通信を仲介する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
電源がオンされたとき、および前記処理部が着脱されたとき、前記処理部の前記識別情報を収集し、前記通知部に記憶させる制御部をさらに備える
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の処理部のいずれかの前記通信ラインを個々に指定して前記識別情報を取得し、取得した前記識別情報を前記通知部に記憶させる
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記非接触通信は、NFC仕様に基づく非接触通信である
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記通知部と前記処理部は、前記識別情報として、前記処理部を識別する番号と、前記処理部が有するアプリケーションの番号を記憶する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御部は前記複数の処理部との接続を確認するために、前記複数の処理部と個別に接続されている
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は前記複数の処理部との接続を確認するために、前記複数の処理部と循環的に接続されており、
前記処理部は、前段からのコマンドに自己の前記識別情報を付加して出力する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記循環的接続を介して前記複数の処理部に前記コマンドを出力し、前記処理部に前記識別情報を付加して出力させることで、前記複数の処理部の前記識別情報を取得し、取得した前記識別情報を前記通知部に記憶させる
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
通知部が、複数の処理部の識別情報を取得し、記憶するステップと、
前記通知部が、他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記他の情報処理装置に通知するステップと、
前記通知部と、前記複数の処理部のうちの所定の前記処理部と選択的に接続可能なように、それぞれ個別の通信ラインにより接続されている前記複数の処理部のうち、前記他の情報処理装置により選択された所定の前記処理部の前記通信ラインが有効に設定され、選択された所定の前記処理部が、前記他の情報処理装置からの要求に応じた処理を行うステップと
を含む情報処理装置の情報処理方法。
【請求項11】
通知部が、複数の処理部の識別情報を取得し、記憶するステップと、
前記通知部が、他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記他の情報処理装置に通知するステップと、
前記通知部と、前記複数の処理部のうちの所定の前記処理部と選択的に接続可能なように、それぞれ個別の通信ラインにより接続されている前記複数の処理部のうち、前記他の情報処理装置により選択された所定の前記処理部の前記通信ラインが有効にされ、選択された所定の前記処理部が、前記他の情報処理装置からの要求に応じた処理を行うステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項12】
識別情報を保持する複数の処理部と、前記識別情報を前記複数の処理部から取得して記憶する通知部とを有する他の情報処理装置の前記複数の処理部の前記識別情報を要求するコマンドを出力するとともに、前記複数の処理部に代えて前記通知部に記憶されている前記複数の処理部の複数の前記識別情報を取得する取得部と、
取得された複数の前記識別情報の中から、前記識別情報に含まれるアプリケーション番号のうち、処理対象として設定された前記アプリケーション番号に対応するアプリケーションを有する前記処理部の前記識別情報を選択する選択部と、
前記通知部と、前記複数の処理部のうちの所定の前記処理部と選択的に接続可能なように、個別の通信ラインにより接続されている前記複数の処理部のうち、選択された前記識別情報に対応する前記処理部の前記通信ラインを有効にさせ、選択された前記識別情報に対応する前記処理部に所定の処理を実行させる実行部と
を備える情報処理装置。
【請求項13】
取得部が、識別情報を保持する複数の処理部と、前記識別情報を前記複数の処理部から取得して記憶する通知部とを有する他の情報処理装置の前記複数の処理部の前記識別情報を要求するコマンドを出力するとともに、前記複数の処理部に代えて前記通知部に記憶されている前記複数の処理部の複数の前記識別情報を取得するステップと、
選択部が、取得された複数の前記識別情報の中から、前記識別情報に含まれるアプリケーション番号のうち、処理対象として設定された前記アプリケーション番号に対応するアプリケーションを有する前記処理部の前記識別情報を選択するステップと、
実行部が、前記通知部と、前記複数の処理部のうちの所定の前記処理部と選択的に接続可能なように、個別の通信ラインにより接続されている前記複数の処理部のうち、選択された前記識別情報に対応する前記処理部の前記通信ラインを有効にさせ、選択された前記識別情報に対応する前記処理部に所定の処理を実行させるステップと
を含む情報処理方法。
【請求項14】
識別情報を保持する複数の処理部と、前記識別情報を前記複数の処理部から取得して記憶する通知部とを有する他の情報処理装置の前記複数の処理部の前記識別情報を要求するコマンドを出力するとともに、前記複数の処理部に代えて前記通知部に記憶されている前記複数の処理部の複数の前記識別情報を取得するステップと、
取得された複数の前記識別情報の中から、前記識別情報に含まれるアプリケーション番号のうち、処理対象として設定された前記アプリケーション番号に対応するアプリケーションを有する前記処理部の前記識別情報を選択するステップと、
前記通知部と、前記複数の処理部のうちの所定の前記処理部と選択的に接続可能なように、個別の通信ラインにより接続されている前記複数の処理部のうち、選択された前記識別情報に対応する前記処理部の前記通信ラインを有効にさせ、選択された前記識別情報に対応する前記処理部に所定の処理を実行させるステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項15】
第1の情報処理装置の通知部が、前記第1の情報処理装置の複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続され、前記通信ラインを介して複数の前記処理部の識別情報を取得して、記憶し、
第2の情報処理装置が、前記第1の情報処理装置に対して、前記識別情報の通知を要求し、
前記第1の情報処理装置の前記通知部が、前記第2の情報処理装置からの要求に応じて、記憶している前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記第2の情報処理装置に通知し、
前記第2の情報処理装置が、通知を受けた前記識別情報の中から選択した前記識別情報により指定した前記処理部に所定の処理を要求し、
前記第1の情報処理装置の前記複数の処理部のうち、前記第2の情報処理装置により指定された前記処理部の前記通信ラインが有効にされ、指定された前記処理部が、前記第2の情報処理装置からの要求に応じた処理を行う
情報処理システム。
【請求項16】
第1の情報処理装置の通知部が、前記第1の情報処理装置の複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続され、前記通信ラインを介して複数の前記処理部の識別情報を取得して、記憶し、
第2の情報処理装置が、前記第1の情報処理装置に対して、前記識別情報の通知を要求し、
前記第1の情報処理装置の前記通知部が、前記第2の情報処理装置からの要求に応じて、記憶している前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記第2の情報処理装置に通知し、
前記第2の情報処理装置が、通知を受けた前記識別情報の中から選択した前記識別情報により指定した前記処理部に所定の処理を要求し、
前記第1の情報処理装置の前記複数の処理部のうち、前記第2の情報処理装置により指定された前記処理部の前記通信ラインが有効にされ、指定された前記処理部が、前記第2の情報処理装置からの要求に応じた処理を行う
情報処理方法。」

(本件補正前)
「【請求項1】
識別情報を有し、他の情報処理装置からの要求に応じた処理を行う複数の処理部と、
前記複数の処理部のそれぞれの前記識別情報を記憶し、前記他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記他の情報処理装置に通知する通知部と
を備え、
前記通知部は、前記複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続されている
情報処理装置。
【請求項2】
前記情報処理装置と前記他の情報処理装置は、相互に非接触通信し、
前記通知部は、前記他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて、前記識別情報を前記他の情報処理装置に通知した後に、前記他の情報処理装置と前記複数の処理部との通信を仲介する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記通知部は、前記複数の処理部のうちの1つだけと選択的に接続可能なように、前記複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続されている
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
電源がオンされたとき、および前記処理部が着脱されたとき、前記処理部の前記識別情報を収集し、前記通知部に記憶させる制御部をさらに備える
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の処理部のいずれかの前記通信ラインを個々に指定して前記識別情報を取得し、取得した前記識別情報を前記通知部に記憶させる
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記非接触通信は、NFC仕様に基づく非接触通信である
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記通知部と前記処理部は、前記識別情報として、前記処理部を識別する番号と、前記処理部が有するアプリケーションの番号を記憶する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は前記複数の処理部との接続を確認するために、前記複数の処理部と個別に接続されている
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記制御部は前記複数の処理部との接続を確認するために、前記複数の処理部と循環的に接続されており、
前記処理部は、前段からのコマンドに自己の前記識別情報を付加して出力する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記循環的接続を介して前記複数の処理部に前記コマンドを出力し、前記処理部に前記識別情報を付加して出力させることで、前記複数の処理部の前記識別情報を取得し、取得した前記識別情報を前記通知部に記憶させる
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記複数の処理部は前記通知部とバスを介して接続されている
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項12】
通知部が、複数の処理部の識別情報を取得し、記憶するステップと、
前記通知部が、他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記他の情報処理装置に通知するステップと、
前記通知部とは、それぞれ個別の通信ラインにより接続されている前記複数の処理部のうち、前記他の情報処理装置が通知を受けた前記識別情報により指定した前記処理部が、
前記他の情報処理装置からの要求に応じた処理を行うステップと
を含む情報処理装置の情報処理方法。
【請求項13】
通知部が、複数の処理部の識別情報を取得し、記憶するステップと、
前記通知部が、他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記他の情報処理装置に通知するステップと、
前記通知部とは、それぞれ個別の通信ラインにより接続されている前記複数の処理部のうち、前記他の情報処理装置が通知を受けた前記識別情報により指定した前記処理部が、
前記他の情報処理装置からの要求に応じた処理を行うステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項14】
識別情報を保持する複数の処理部と、前記識別情報を前記複数の処理部から取得して記憶する通知部とを有する他の情報処理装置の前記複数の処理部の前記識別情報を要求するコマンドを出力するとともに、前記複数の処理部に代えて前記通知部に記憶されている前記複数の処理部の複数の前記識別情報を取得する取得部と、
取得された複数の前記識別情報の中から、前記識別情報に含まれるアプリケーション番号のうち、処理対象として設定された前記アプリケーション番号に対応するアプリケーションを有する前記処理部の前記識別情報を選択する選択部と、
選択された前記識別情報に対応する前記処理部に所定の処理を実行させる実行部と
を備える情報処理装置。
【請求項15】
前記通知部と前記複数の処理部との個別の通信ラインのうち、選択された前記識別情報に対応する前記処理部の前記通信ラインをアクティベート状態とする設定部をさらに備える
請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
取得部が、識別情報を保持する複数の処理部と、前記識別情報を前記複数の処理部から取得して記憶する通知部とを有する他の情報処理装置の前記複数の処理部の前記識別情報を要求するコマンドを出力するとともに、前記複数の処理部に代えて前記通知部に記憶されている前記複数の処理部の複数の前記識別情報を取得するステップと、
選択部が、取得された複数の前記識別情報の中から、前記識別情報に含まれるアプリケーション番号のうち、処理対象として設定された前記アプリケーション番号に対応するアプリケーションを有する前記処理部の前記識別情報を選択するステップと、
実行部が、選択された前記識別情報に対応する前記処理部に所定の処理を実行させるステップと
を含む情報処理方法。
【請求項17】
識別情報を保持する複数の処理部と、前記識別情報を前記複数の処理部から取得して記憶する通知部とを有する他の情報処理装置の前記複数の処理部の前記識別情報を要求するコマンドを出力するとともに、前記複数の処理部に代えて前記通知部に記憶されている前記複数の処理部の複数の前記識別情報を取得するステップと、
取得された複数の前記識別情報の中から、前記識別情報に含まれるアプリケーション番号のうち、処理対象として設定された前記アプリケーション番号に対応するアプリケーションを有する前記処理部の前記識別情報を選択するステップと、
選択された前記識別情報に対応する前記処理部に所定の処理を実行させるステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項18】
第1の情報処理装置の通知部が、前記第1の情報処理装置の複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続され、前記通信ラインを介して複数の前記処理部の識別情報を取得して、記憶し、
第2の情報処理装置が、前記第1の情報処理装置に対して、前記識別情報の通知を要求し、
前記第1の情報処理装置の前記通知部が、前記第2の情報処理装置からの要求に応じて、記憶している前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記第2の情報処理装置に通知し、
前記第2の情報処理装置が、通知を受けた前記識別情報の中から選択した前記識別情報により指定した前記処理部に所定の処理を要求し、
前記第1の情報処理装置の前記複数の処理部のうち、前記第2の情報処理装置により指定された前記処理部が、前記第2の情報処理装置からの要求に応じた処理を行う
情報処理システム。
【請求項19】
第1の情報処理装置の通知部が、前記第1の情報処理装置の複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続され、前記通信ラインを介して複数の前記処理部の識別情報を取得して、記憶し、
第2の情報処理装置が、前記第1の情報処理装置に対して、前記識別情報の通知を要求し、
前記第1の情報処理装置の前記通知部が、前記第2の情報処理装置からの要求に応じて、記憶している前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記第2の情報処理装置に通知し、
前記第2の情報処理装置が、通知を受けた前記識別情報の中から選択した前記識別情報により指定した前記処理部に所定の処理を要求し、
前記第1の情報処理装置の前記複数の処理部のうち、前記第2の情報処理装置により指定された前記処理部が、前記第2の情報処理装置からの要求に応じた処理を行う
情報処理方法。
【請求項20】
識別情報を有し、他の情報処理装置からの要求に応じた処理を行う複数の処理部と、
前記複数の処理部のそれぞれの前記識別情報を記憶し、前記他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記他の情報処理装置に通知する通知部と
を備え、
前記通知部は、前記他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて、前記複数の処理部の識別情報を含むコマンドを前記他の情報処理装置に送信する
情報処理装置。」

(a)本件補正において、補正前の請求項1の「前記通知部は、前記複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続されている
情報処理装置」を、補正後に「前記通知部は、前記複数の処理部のうちの所定の前記処理部と選択的に接続可能なように、前記複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続され、前記他の情報処理装置により前記複数の処理部の中の所定の前記処理部が選択されたとき、選択された所定の前記処理部の前記通信ラインを有効にする
情報処理装置」とする補正は、補正前の請求項1に請求項3の記載事項を追加して記載を整合し、願書に添付した出願当初の明細書(以下、「当初明細書」という。)の特に【0084】【0085】段落の記載等に基づいて補正されたものである。
(b)本件補正後の請求項2は、補正されていないが、引用する請求項1の補正にともない、本件補正後の請求項1と同趣旨の補正をするものである。
本件補正後の請求項3乃至9は、補正前の請求項3が削除されたことにより、補正前の請求項4乃至10に対応する。(補正前の請求項4乃至10の番号がそれぞれを1ずつ順次繰り上げられ、請求項3乃至9とされた。)この順次繰り上げにともない、補正後請求項3乃至9で引用している請求項も補正された。請求項3(補正前の請求項4)における「請求項2」についての補正事項は、補正前の請求項3を削除したことによるものである。
請求項4(補正前の請求項5)における「請求項3」についての補正事項は、請求項を繰り上げたことによるものである。
請求項5(補正前の請求項6)における「請求項4」についての補正事項は、請求項を繰り上げたことによるものである。
請求項7、8(補正前の請求項8、9)における「請求項3」についての補正事項は、誤記の訂正をしたものである。
請求項9(補正前の請求項10)における「請求項8」についての補正事項は、請求項を繰り上げたことによるものである。
補正前の請求項11は削除し、補正前の請求項12乃至14のそれぞれを2ずつ順次繰り上げ、請求項10乃至12とした。
(c)請求項10、11(補正前の請求項12、13)は、請求項1に係る情報処理装置に対応する「方法」および「プログラム」の請求項であり、補正事項の根拠は請求項1と同様である。
(d)請求項12(補正前の請求項14)における「前記通知部と、前記複数の処理部のうちの所定の前記処理部と選択的に接続可能なように、個別の通信ラインにより接続されている前記複数の処理部のうち、選択された前記識別情報に対応する前記処理部の前記通信ラインを有効にさせ、選択された前記識別情報に対応する前記処理部」についての補正事項は、補正前の請求項15を追加するとともに、当初明細書の特に【0020】【0084】【0085】段落の記載等に基づくものである。
(e)補正前の請求項15は削除し、補正前の請求項16乃至19のそれぞれを3ずつ順次繰り上げ、請求項13乃至16とした。
(f)請求項13、14(補正前の請求項16、17)は、請求項12に係る情報処理装置に対応する「方法」および「プログラム」の請求項であり、補正事項の根拠は請求項12と同様である。
請求項15(補正前の請求項18)における「前記第2の情報処理装置により指定された前記処理部の前記通信ラインが有効にされ、指定された前記処理部」についての補正事項は、当初明細書の特に【0084】【0085】段落の記載等に基づくものである。
請求項16(補正前の請求項19)は、請求項15に係る情報処理システムに対応する「方法」の請求項であり、補正事項の根拠は請求項15と同様である。
(g)補正前の請求項20は削除された。

(2)本件補正における新規事項追加についての判断
本件補正における前記(a)の補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。また、前記(c)(d)(f)の補正も願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

(3)本件補正における補正の目的についての判断
本件補正後の請求項1の前記(a)の補正は、補正前の請求項1に記載された「通知部」「情報処理装置」について特定するために必要な事項を限定するもの(限定的減縮)であり、特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的としたものにあたる。
また、前記(b)(e)(g)の補正は、誤記の訂正ないし明りょうでない記載の釈明または請求項の削除を目的としたものにあたる。
また、前記(c)の補正は、(a)と同趣旨の補正であり、特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的としたものにあたる。
前記(d)(f)の補正も(c)と同趣旨の補正であり、同様に前記特許請求の範囲の減縮を目的としたものにあたる。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に適合する。

(4)独立特許要件についての判断
本件補正後の前記請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(4.1)引用文献
(4.1.1)引用文献1発明
原審の拒絶の理由に引用された、本願出願前頒布された刊行物である特開2005-242444号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の記載がある。
ア.「【0020】
図1は本発明による通信システムの第1の実施形態を示す構成ブロック図であって、100A,100Bはマルチアプリケーションカード、101Aは非接触通信部、102Aは情報蓄積部、103Aは情報処理部、104Aはアンテナコイル、110はディレクトリカード、111は非接触通信部、112は情報蓄積部、113は情報処理部、120は制御装置、121は非接触通信部、122は情報蓄積部、123はユーザ操作部、124は外部機器通信部、125は情報処理部、126はアンテナコイル、201Aはカード固有ID、202Aはカード論理ID、203Aはカードアプリケーション、204AはアプリケーションID、205Aはアプリケーションプログラム、211は応用分野ID、212はカード固有ID、213はカード論理ID、214はディレクトリテーブル、215はディレクトリレコード、216はカード固有ID、217はアプリケーションID、221はアプリケーションIDである。
【0021】
同図において、この第1の実施形態は、マルチアプリケーションカード100A,100B,……とディレクトリカード110を1セットとし、この1セットのカード群を制御装置120のリーダライタにかざすことにより、制御装置120との通信(ここでは、非接触通信)が可能となり、制御装置120が応用されている分野でのサービスを利用することができるようにしたものである。制御装120は、例えば、POS端末や自動改札機,自動販売機などに応用されるものであって、かかる1セットのカード群を使用することにより、その応用分野に応じたサービスが提供されるものである。マルチアプリケーションカード100A,100B,……は夫々、各応用分野のアプリケーションプログラムを搭載でき、非接触通信する制御装置120の応用分野(例えば、自動改札)に該当するアプリケーションプログラムが起動して、このアプリケーションプログラムにより、この制御装置120の利用分野でのサービスがユーザに提供されるものである。また、ディレクトリカード110は、どのアプリケーションプログラムがマルチアプリケーションカード100A,100B,……のいずれに搭載されているかを示す情報(ディレクトリテーブル)を搭載したものであり、制御装置120は、かかる情報をもとに、その応用分野での特定のサービスを提供するアプリケーションプログラムを搭載したマルチアプリケーションカード100A,100B,……を探し出すことができる。」

イ.「【0089】
図6は本発明による通信システムの第3の実施形態を示す構成ブロック図であって、600は携帯端末、601はアンテナコイル、602は外部非接触通信部、603は内部非接触通信部、604は情報蓄積部、605は情報処理部、606はアンテナコイル選択部、611A,611Bはアンテナコイル、612A,61Bは電波吸収体であり、前出図面に対応する部分には同一符号を付けて重複する説明を省略する。
【0090】
同図において、この第3の実施形態も、携帯端末600と制御装置120との間で、RF動作磁界による非接触通信を行なうものである。この制御装置120は、先の各実施形態での制御装置120と同様のものである。
【0091】
携帯端末600においても、図4及び図5に示した第2の実施形態の携帯端末500と同様、2枚のマルチアプリケーションカード100Aとマルチアプリケーションカード100Bとを夫々挿入可能とするものであって、挿入されたマルチアプリケーションカード100Aは、これと非接触通信を行なうアンテナコイル611Aとともに、電波吸収体612Aで覆われ、挿入されたマルチアプリケーションカード100Bも、これと非接触通信を行なうアンテナコイル611Bとともに、電波吸収体612Bで覆われて、マルチアプリケーションカード100Aとマルチアプリケーションカード100Bとの間の干渉が防止されるようにしている。これら電波吸収体612A,612Bも、図4における電波吸収体511Aなどと同様である。これらアンテナコイル611A,611Bは、アンテナコイル選択部606によっていずれか一方が選択されて内部非接触通信部603と電気的に接続される。
【0092】
このように、この携帯端末600で使用されるマルチアプリケーションカード100A,100Bも、図1に示したマルチアプリケーションカード100A,100Bと同様の構成をなすものであり、また、制御装置120も、図1での制御装置120と同様の構成をなすものである。
【0093】
外部非接触通信部602は、アンテナコイル601を用いて、制御装置120が発生するRF動作磁界により、制御装置120と非接触通信を行なう。内部非接触通信部603は、アンテナコイル選択部606がアンテナコイル611Aを選択したときには、このアンテナコイル611AにRF動作磁界を発生させてマルチアプリケーションカード100Aと非接触通信を行ない、また、アンテナコイル選択部606がアンテナコイル611Bを選択したときには、このアンテナコイル611BにRF動作磁界を発生させてマルチアプリケーションカード100Bと非接触通信を行なう。アンテナコイル選択部606は、情報処理部605の制御により、アンテナコイル611Aとアンテナコイル611Bとのいずれか一方を選択するものである。
【0094】
…(中略)…情報処理部605は、マイクロプロセッサなどを用いて情報蓄積部604に格納されているプログラムを実行し、情報の処理やこの携帯端末600全体の制御を行なうものである。
【0095】
ここで、情報蓄積部604に格納されている情報について説明する。
【0096】
この携帯端末600は、挿入されたアプリケーションカード100A,100Bに搭載されているカードアプリケーションによって提供される特定のサービスを受けることができるものであって、情報蓄積部604には、これらの応用分野毎に、応用分野ID701と端末固有ID702と端末論理ID703とディレクトリテーブル704の各情報が格納されている。応用分野ID701は携帯端末600がサービスを受けることができる応用分野の識別子であり、端末固有ID702はこの携帯端末600を一意に識別するための固定値であり、端末論理ID703は携帯端末600を活性化したときに、制御装置120により、動的に割り当てられる値である。ディレクトリテーブル704は、マルチアプリケーションカード100A,100Bが搭載しているこの応用分野IDに該当する応用分野のカードアプリケーションに関する情報であるディレクトリレコード705からなるものである。応用分野が異なるカードアプリケーションに関するディレクトリレコードは、別の応用分野IDのディレクトリテーブルに格納される。
【0097】
ディレクトリレコード705は、アンテナコイルID706とカード固有ID707とカード論理ID708とアプリケーションID709とからなるものであって、カードアプリケーションとそのカードアプリケーションが格納されているマルチアプリケーションカードとを関連付けているものであり、アンテナコイルID706はアンテナコイル611A,611Bを識別するための値であり、マルチアプリケーションカードと通信可能なアンテナコイルを判別できるようにしている。例えば、ディレクトリレコード705がマルチアプリケーションカード100Aに該当するものであるときには、そのアンテナコイルID706は、このマルチアプリケーションカード100Aと非接触通信できるアンテナコイル611Aに対するものである。なお、情報処理部605は、このアンテナコイルID706に基づいて、アンテナコイル選択部606にアンテナコイル611A,611Bのいずれかを選択させる。
【0098】
このように、情報蓄積部604は、先の実施形態でのディレクトリカードの機能を持たせたものであり、かかるディレクトリカードを使用しなくともよいようにしている。
【0099】
制御装置120は、携帯端末600を活性化した後、情報蓄積部604のディレクトリテーブル704を読み出すことにより、選択したいカードアプリケーションを格納しているマルチアプリケーションカードのカード固有ID707を取得することが可能になる。
【0100】
図7はこのように制御装置120が所望とするカードアプリケーションを選択するための処理の一具体例を示すフローチャートである。ここでは、この携帯端末600には、図1に示したアプリケーションカード100A,10Bが挿入されており、制御装置120
がこのマルチアプリケーションカード100Aに格納されているカードアプリケーション203A(図1)を選択するものとして説明する。なお、図1に示したように、マルチアプリケーションカード100Aはカード固有ID201Aで一意に識別され、また、そのカードアプリケーション203AはアプリケーションID204Aで一意に識別される。
【0101】
図7において、制御装置120は、まず、処理ステップS1201を開始して検出コマンド701を送信する。
【0102】
携帯端末600では、検出コマンド701がアンテナコイル601から外部非接触通信部602で受信され、情報処理部605により、処理ステップS1301の処理が開始して、情報蓄積部604に格納されているディレクトリテーブル704の中から最初のディレクトリレコード705のカードID707を取り出して検出コマンド応答702に付加し、外部非接触通信部602から制御装置120に返信する。
【0103】
制御装置120は、この検出コマンド応答702を受信し、これに付加されているカード固有ID707を判定するが、このカード固有ID707がマルチアプリケーションカード100Bのカード固有IB201Bとすると、求めるカード固有ID201Aでないので、再び検出コマンド703を送信する。
【0104】
携帯端末600では、上記と同様にして、この検出コマンド703が受信され、情報処理部605が再び情報蓄積部604のディレクトリテーブル704から次のディレクトリレコード705のカード固有ID707を読み取り、検出コマンド応答704に付加して制御装置120に返信する。
【0105】
制御装置120は、この検出コマンド応答702を受信し、これに付加されているカード固有ID707を判定するが、このカード固有ID707が求めるマルチアプリケーションカード100Aのカード固有IB201Aとすると、処理ステップS1201から処理ステップS1202の処理に移って、活性化コマンド705を携帯端末600に送信する。このようにして、求めるマルチアプリケーションカード100Aのカード固有ID201Aが得られなければ、これが得られるまで、制御装置120は検出コマンド701の送信を繰り返す。
【0106】
活性化コマンド705には、取得したマルチアプリケーションカード100Aのカード固有ID201Aと、制御装置120がこのときにマルチアプリケーションカード100Aに対して割り当てたカード論理ID202Aとが付加されている。
【0107】
携帯端末600では、この活性化コマンド705が外部非接触通信部602で受信されると、処理ステップS1301から処理ステップS1302に移って、情報処理部605が、まず、受信したカード論理ID202Aを情報蓄積部604のディレクトリテーブル704でのカード固有ID707としてカード固有ID201Aを格納しているディレクトリレコード705に保存する。
【0108】
そして、情報処理部605は、このカード固有ID201Aを格納しているディレクトリレコード705のアンテナコイルID706を取り込み、このアンテナコイルID706からマルチアプリケーションカード100Aと非接触通信可能なアンテナコイル611Aを識別し、アンテナコイル選択部606にこのアンテナコイル611Aを選択させる。しかる後、情報処理部605は、内部非接触通信部603を介して、このアンテナコイル611Aからマルチアプリケーションカード100Aに検出コマンド706を送信する。
【0109】
これに対して、マルチアプリケーションカード100Aは自身のカード固有ID201
Aを付加した検出コマンド応答707をアンテナコイル611Aに送信する。情報処理部605は、これを受信すると、受信したカード固有ID201Aにより、マルチアプリケーション100Aからの返信であることを確認し、このマルチアプリケーション100Aのカード固有ID201Aと先に制御装置120から取得してディレクトリレコード705にカード論理ID708として格納したこのマルチアプリケーションカード100Aのカード論理ID202Aとを付加した活性化コマンド708を、内部非接触通信部603を介してアンテナコイル611Aからマルチアプリケーションカード100Aに送信する。この場合でも、情報処理部605は、ディレクトリテーブル704でのカード固有ID707がマルチアプリケーションカードのカード固有ID201Aであるディレクトリレコード705内のアンテナコイルID706を確認し、このアンテナコイルID706に基づいて、これに該当するアンテナコイル611Aをアンテナコイル選択部606で選択させることにより、アンテナコイル611Aとマルチアプリケーションカード100Aとで通信可能とし、しかる後、上記の活性化コマンド708をマルチアプリケーションカード100Aに送信する。
【0110】
このように、内部非接触通信部603からマルチアプリケーション100Aまたは100Bにコマンドを送信する場合には、その送信毎に、ディレクトリテーブル704での該当するディレクトリレコード705のアンテナコイルID706により、アンテナコイル611A,611Bのうちの該当する方を確認する処理が行なわれる。
【0111】
情報処理部605は、この活性化コマンド708に対して、マルチアプリケーションカード100Aから活性化コマンド応答713を内部非接触通信部603を介して受信すると、外部非接触通信部602から活性化コマンド応答710を制御装置120に返信し、処理ステップS1302の処理を終了する。
【0112】
制御装置120は、この活性化コマンド応答710を受信すると、処理ステップS1202から処理ステップS1203の処理に移り、マルチアプリケーションカード100Aに選択コマンド711を送信する。この選択コマンド711には、選択したいカードアプリケーションのアプリケーションID204Aとカード論理ID202Aが付加されている。
【0113】
携帯端末600ではは、この選択コマンド711が外部非接触通信部602を介して受信されると、処理ステップS1303の処理が開始し、情報処理部605が、まず、情報蓄積部604のディレクトリテーブル704から受信したカード論理ID202Aに等しいカード論理ID708を格納しているディレクトリレコード705のアンテナコイルID706を取り込み、マルチアプリケーションカード100Aと非接触通信可能なアンテナコイル611Aを確認して、アンテナコイル選択部606にこのアンテナコイル611Aを選択させ、しかる後、マルチアプリケーションカード100Aに選択コマンド712を内部非接触通信部603を介して送信する。この選択コマンド712にも、マルチアプリケーションカード100Aのカード論理ID202Aと上記のアプリケーションID204Aとが付加されている。
【0114】
そこで、このマルチアプリケーションカード100では、受信した選択コマンド712に付加されているアプリケーションID204Aのアプリケーションプログラム205Aが起動し、これによって特定のサービスが提供される状態となる。かかる状態になると、このマルチアプリケーションカード100Aは選択コマンド応答713をアンテナコイル611Aに送信し、情報処理部605に対して返信する。情報処理部605は、この選択コマンド応答713を取得すると、選択コマンド応答714を外部非接触通信部602から制御装置120に送信する。これにより、携帯端末600では、処理ステップS1303の処理が終了する。また、制御装置120は、この選択コマンド応答714を受信する
と、処理ステップS1203の処理を終了し、特定のサービスが提供される動作に移る。
【0115】
以上の処理動作により、制御装置120は携帯端末600に収納されているマルチアプリケーションカード100Aから求めるカードアプリケーション203Aを的確に選択することが可能になる。」

ウ.「【0117】
図8は本発明による通信システムの第4の実施形態を示す構成ブロック図であって、800は携帯端末、801はアンテナコイル、802は外部非接触通信部、803は内部非接触通信部、804は内部接触通信部、805は情報蓄積部、806は情報処理部、811Bはアンテナコイル、812Bは電波吸収体、900Aはマルチアプリケーションカード、901Aは接触通信部、902Aは情報蓄積部、903Aは情報処理部であり、前出図面に対応する部分には同一符号を付けて重複する説明を省略する。
…(中略)…
【120】・・・接触通信型のマルチアプリケーションカード900Aは、接触ICカード用の収納部(図示せず)に挿入されると、内部接触通信部804と電気的に接続され、この内部接触通信部804との間で接触通信が可能となる。…(中略)…
【0125】
なお、この携帯端末800に、図示するように、非接触通信型のマルチアプリケーションカード100Bと接触通信型のマルチアプリケーションカード900Aとが夫々1枚ずつしか挿入できない場合、あるいは、非接触通信型と接触通信型とのマルチアプリケーションカードが夫々複数枚ずつ挿入して使用できるような場合であって、夫々のICカード毎に内部非接触通信部、内部接触通信部が設けられている場合には、これらマルチアプリケーションカードが内部非接触通信部、内部接触通信部と対応付けられるものであるから、…(中略)…内部接触通信部のIDを用いるようにしてもよい。
…(中略)…
【0127】
さらに、接触通信型のマルチアプリケーションカードを携帯端末800に挿入して使用可能な場合には、これに共通の内部接触通信部とカード選択部とを用い、このカード選択部で選択した接触通信型のマルチアプリケーションカードをこの共通の内部接触通信部に接続する構成とすることができるが、この場合のディレクトリテーブル704(図6)のこの接触通信型のマルチアプリケーションカードに関するディレクトリレコード705では、アンテナID706の代わりに、このカード選択部の接触通信型のマルチアプリケーションカード毎の接続端子の番号を表わすIDが用いられることになる。
【0128】
この第4の実施形態での非接触通信型,接触通信型のマルチアプリケーションカードのカードアプリケーションの選択のための処理動作も、図7に示される第3の実施形態での動作と同様である。」

(ア)図6、図7と、関連してイ.に記載された、複数のマルチアプリケーションカード(100A、100B)は、「マルチアプリケーションカード100A,100Bも、図1に示したマルチアプリケーションカード100A,100Bと同様の構成をなす」と記載され、図1とア.の記載を参照すると、マルチアプリケーションカードは、「カード固有ID、カード論理ID」、「情報処理部(103A、103B)」を有しているから、前記複数のマルチアプリケーションカード(100A、100B)は、「カード固有ID、カード論理ID」、「情報処理部(103A、103B)」を有している。
引用文献1には、ア.の「制御装置120との通信(ここでは、非接触通信)が可能となり、制御装置120が応用されている分野でのサービスを利用することができる・・・マルチアプリケーションカード100A,100B,・・・は夫々、各応用分野のアプリケーションプログラムを搭載でき、非接触通信する制御装置120の応用分野(例えば、自動改札)に該当するアプリケーションプログラムが起動して、このアプリケーションプログラムにより、この制御装置120の利用分野でのサービスがユーザに提供される」、イ.の「制御装置120は、・・・マルチアプリケーションカード100Aに選択コマンド711を送信する。この選択コマンド711には、選択したいカードアプリケーションのアプリケーションID204Aとカード論理ID202Aが付加されている。・・・ そこで、このマルチアプリケーションカード100では、受信した選択コマンド712に付加されているアプリケーションID204Aのアプリケーションプログラム205Aが起動し、これによって特定のサービスが提供される状態となる。」、及び、該選択コマンドのほか、図7において、制御装置から携帯端末を介して検出コマンド、活性化コマンドがマルチアプリケーションカードに送信され、マルチアプリケーションカードがこれらのコマンドに応じて起動し、活性化コマンド応答、選択コマンド応答を返す様子が示されており、制御装置からのコマンドに応じた処理を行うマルチアプリケーションカードの情報処理部が示されている。
以上を併せると、引用文献1には、カード固有ID、カード論理IDを有し、制御装置からのコマンドに応じた処理を行う複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部が示されていると言える。
(イ)イ.の「情報蓄積部604に格納されている・・・カードID707(カード固有ID、図6の707参照)」及び図6の情報記憶部604(引用文献1には、情報記憶部と情報蓄積部なる用語が記載されているが、これらの用語は同じものに対して用いられているので、同じ実体と認める。また、これら二つの表現は前後の流れに応じていずれも用いることにする。)にカード固有IDとカード論理IDが複数格納されている様子が示されており、イ.の「制御装置120は、携帯端末600を活性化した後、情報蓄積部604のディレクトリテーブル704を読み出すことにより、選択したいカードアプリケーションを格納しているマルチアプリケーションカードのカード固有ID707を取得することが可能になる。」「 図7において、制御装置120は、まず、処理ステップS1201を開始して検出コマンド701を送信する。」「 携帯端末600では、検出コマンド701がアンテナコイル601から外部非接触通信部602で受信され、情報処理部605により、処理ステップS1301の処理が開始して、情報蓄積部604に格納されているディレクトリテーブル704の中から最初のディレクトリレコード705のカードID707を取り出して検出コマンド応答702に付加し、外部非接触通信部602から制御装置120に返信する。」及び、図7において、制御装置からの検出コマンドに対して、携帯端末で折り返して前記制御装置に対して検出コマンド応答が返信されていることから、前記複数の情報処理部のそれぞれの前記カード固有ID、カード論理IDを記憶し、前記制御装置からの前記カード固有IDの検出コマンドに応じて前記カード固有IDを、前記複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部に代わって前記制御装置に返信(通知)する携帯端末の情報処理部(605)が示されている。
(ウ)イ.の「アンテナコイル選択部606は、情報処理部605の制御により、アンテナコイル611Aとアンテナコイル611Bとのいずれか一方を選択する」「アンテナコイル611A,611Bは、アンテナコイル選択部606によっていずれか一方が選択されて内部非接触通信部603と電気的に接続される。」「内部非接触通信部603は、アンテナコイル選択部606がアンテナコイル611Aを選択したときには、このアンテナコイル611AにRF動作磁界を発生させてマルチアプリケーションカード100Aと非接触通信を行ない、また、アンテナコイル選択部606がアンテナコイル611Bを選択したときには、このアンテナコイル611BにRF動作磁界を発生させてマルチアプリケーションカード100Bと非接触通信を行なう。」及び、図6を参照すると、アンテナコイル611Aとマルチアプリケーションカード100Aは個別の(電磁界)接続がされ、アンテナコイル611Bとマルチアプリケーションカード100Bも同様に個別の(電磁界)接続がされる様子が示されており、マルチアプリケーションカード(100A、100B)は個別に通信接続により接続されていることが認められる。 そして、前記通信接続に関して、ウ.の「非接触通信型のマルチアプリケーションカード100Bと接触通信型のマルチアプリケーションカード900Aとが夫々1枚ずつしか挿入できない場合、」あるいは、「接触通信型」の「マルチアプリケーションカード」が夫々「複数枚ずつ挿入して使用できるような場合」であって、夫々のICカード毎に「内部接触通信部」が設けられている場合には、これらマルチアプリケーションカードが「内部接触通信部」と対応付けられる、「接触通信型のマルチアプリケーションカードを携帯端末800に挿入して使用可能な場合には、これに共通の内部接触通信部とカード選択部とを用い、このカード選択部で選択した接触通信型のマルチアプリケーションカードをこの共通の内部接触通信部に接続する構成とすることができるが、この場合、…(中略)…アンテナID706の代わりに、このカード選択部の接触通信型のマルチアプリケーションカード毎の接続端子の番号を表わすIDが用いられる…(中略)…この第4の実施形態での非接触通信型,接触通信型のマルチアプリケーションカードのカードアプリケーションの選択のための処理動作も、図7に示される第3の実施形態での動作と同様である」及び、図8の内部接触通信部804とマルチアプリケーションカード900Aの間に「ライン」(接触通信)による物理的接続が示唆されていることから、結局、図6のマルチアプリケーションカード(100A、100B)、内部非接触通信部、アンテナコイル選択部606、アンテナコイルIDに換えて、複数の接触通信型のマルチアプリケーションカード、接触通信型のマルチアプリケーションカードに共通の内部接触通信部とカード選択部、カード選択部の接触通信型のマルチアプリケーションカード毎の接続端子の番号を表わすIDを用いるものが記載され、接触通信型のマルチアプリケーションカード900Aは、挿入されると、内部接触通信部804と電気的に接続され、図7に示される第3の実施形態での選択動作と同様に、情報処理部605は、前記複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部のうちの所定の前記情報処理部と(カード選択部を介して)選択的に接続可能なように、前記複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続され、外部の制御装置により複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部の中の所定の情報処理部が選択されたとき、該選択された所定の情報処理部の前記通信ラインの接触通信を可能にすることが示されている。
(ア)ないし(ウ)を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用文献1発明」という。)が示されている。

カード固有ID、カード論理IDを有し、制御装置からのコマンドに応じた処理を行う複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部と、
前記複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部のそれぞれの前記カード固有ID、カード論理IDを記憶し、前記制御装置からの前記カード固有IDの検出コマンドに応じて前記カード固有IDを、前記複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部に代わって前記制御装置に通知する携帯端末の情報処理部(605)と
を備え、
該携帯端末の情報処理部(605)は、前記複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部のうちの所定の前記情報処理部と選択的に接続可能なように、前記複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続され、前記制御装置により複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部の中の所定の情報処理部が選択されたとき、該選択された所定の情報処理部の前記通信ラインを通信可能にする
通信システム。

(4.2)対比
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)と引用文献1発明とを対比する。
A.引用文献1発明の「カード固有ID」「制御装置」「コマンド」「マルチアプリケーションカードの情報処理部」は本件補正発明の「識別情報」「他の情報処理装置」「要求」「処理部」に相当する。
引用文献1発明の「カード固有ID、カード論理IDを有し、制御装置からのコマンドに応じた処理を行う複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部」と、本件補正発明の「識別情報を有し、他の情報処理装置からの要求に応じた処理を行う複数の処理部」と実質的な差異はない。
B.引用文献1発明の「カード固有IDの検出コマンド」「携帯端末の情報処理部」は本件補正発明の「識別情報の通知の要求」「通知部」に相当する。
引用文献1発明の「前記複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部のそれぞれの前記カード固有ID、カード論理IDを記憶し、前記制御装置からの前記カード固有IDの検出コマンドに応じて前記カード固有IDを、前記複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部に代わって前記制御装置に通知する携帯端末の情報処理部」と、本件補正発明の「前記複数の処理部のそれぞれの前記識別情報を記憶し、前記他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記他の情報処理装置に通知する通知部」と実質的な差異はない。
C.本件補正発明の「接触通信を有効にする」は、その上位概念では「接触通信可能にする」ものである。引用文献1発明と本件補正発明とは、上位概念において「前記通知部は、前記複数の処理部のうちの所定の前記処理部と選択的に接続可能なように、前記複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続され、前記他の情報処理装置により前記複数の処理部の中の所定の前記処理部が選択されたとき、選択された所定の前記処理部の前記通信ラインを通信可能にする」点では共通する。
D.引用文献1発明の「通信システム」と本件補正発明の「情報処理装置」と実質的な差異はない。

以上の対比によれば、引用文献1発明と本件補正発明とは、次の事項を有する発明である点で一致し、そして、次の点で相違する。
〈一致点〉
識別情報を有し、他の情報処理装置からの要求に応じた処理を行う複数の処理部と、
前記複数の処理部のそれぞれの前記識別情報を記憶し、前記他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記他の情報処理装置に通知する通知部と
を備え、
前記通知部は、前記複数の処理部のうちの所定の前記処理部と選択的に接続可能なように、前記複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続され、前記他の情報処理装置により前記複数の処理部の中の所定の前記処理部が選択されたとき、選択された所定の前記処理部の前記通信ラインを通信可能にする
情報処理装置。

〈相違点〉
制御装置により複数のマルチアプリケーションカードの情報処理部の中の所定の情報処理部が選択されたとき、選択された所定の情報処理部の通信ラインを「通信可能にする」に関し、本件補正発明は「通信ラインを有効にする」のに対し、引用文献1発明は、通信ラインを通信可能にするものである点。
(4.3)当審判断
一般的に、選択された所定の情報処理部の通信ラインを通信可能にする技術として、通信ラインを有効にすることにより成すことは、引用例を示すまでもなく本願出願前周知の技術にすぎないと認められる。
引用文献1発明において、選択された所定の情報処理部の前記「通信ラインを通信可能にする」ところを「通信ラインを有効にする」と成すことは技術的に格別なことではなく、前記周知の技術を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。
そして、本件補正発明の構成により奏する効果も、引用文献1発明から当然予測される範囲内のもので、格別顕著なものとは認められない。

(4.4)小括
以上のように、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、本件補正は同法第159条1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

3.本願発明について
(1)平成22年10月13日付の手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成22年6月14日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。(再掲する。)
【請求項1】
識別情報を有し、他の情報処理装置からの要求に応じた処理を行う複数の処理部と、
前記複数の処理部のそれぞれの前記識別情報を記憶し、前記他の情報処理装置からの前記識別情報の通知の要求に応じて前記識別情報を、前記複数の処理部に代わって前記他の情報処理装置に通知する通知部と
を備え、
前記通知部は、前記複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続されている
情報処理装置。

(2)引用文献
原審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、前記引用文献1には、前記(4.1)で摘記した事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願請求項1に係る発明は、前記(4.2)対比で検討した本件補正発明における発明特定事項である、前記通知部は、「前記複数の処理部のうちの所定の前記処理部と選択的に接続可能なように、」前記複数の処理部のそれぞれと個別の通信ラインにより接続され、「前記他の情報処理装置により前記複数の処理部の中の所定の前記処理部が選択されたとき、選択された所定の前記処理部の前記通信ラインを有効にする」なる構成を省いたものである。
そうすると、本願請求項1に係る発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記(4.2)乃至(4.3)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-26 
結審通知日 2011-12-27 
審決日 2012-01-10 
出願番号 特願2008-146501(P2008-146501)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 満  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 清木 泰
西山 昇
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム、並びに情報処理システム  
代理人 稲本 義雄  

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