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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1252638
審判番号 不服2010-23406  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-18 
確定日 2012-02-23 
事件の表示 特願2006-103586「現像剤担持体、現像剤担持体の製造方法、現像装置、および画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月25日出願公開、特開2007-279251〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年4月4日の出願であって、平成22年4月2日付けで通知した拒絶理由に対し、同年5月21日付けで手続補正がなされたが、同年7月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後、当審において、平成23年6月10日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年7月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、当審において、同年10月3日付けで拒絶理由が再度通知され、これに対して、同年11月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明について
1,本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、平成23年11月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
円筒状または円柱状をなし、現像剤を担持するための現像剤担持体であって、
その金属製の外周面に、規則的に配列された多数の突起部を有し、該突起部の頂面は、平均曲率半径が5μm?50μmである湾曲凸面からなっており、
前記多数の突起部は、前記外周面に型を押圧することにより形成されていることを特徴とする現像剤担持体。」

2.引用刊行物の記載事項及び刊行物1の記載事項
これに対して、当審で通知した平成23年10月3日付け拒絶理由で引用された、本願出願前に頒布された、

刊行物1:特開2000-206780号公報
刊行物2:特開2003-208012号公報
刊行物3:特開平7-13410号公報
刊行物4:特開平11-280394号公報
刊行物5:特開平9-250627号公報

には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は当審で付した。

(1)刊行物1
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾式現像剤を用いる電子写真用現像装置に関する、より詳細には、乾式現像剤を薄層に担持した回動部材を用いて静電潜像担持体表面の静電潜像を現像するための現像装置に関する。」

(1b)「【0004】
いずれの現像プロセスにおいても上述したように現像剤を、静電潜像を現像するため現像剤格納室から現像剤担持体上へと運搬する必要がある。この際の運搬は、現像剤担持体を回動させ、この回動した現像剤担持体へとトナーを供給し、磁性あるいは、静電気力等によって現像剤担持体へと現像剤を担持させるプロセスを含んでいる。したがって、一成分現像プロセスでも、二成分現像プロセスにおいても現像剤担持体は常に現像剤により摺擦されることになる。上述した現像剤担持体は、現在のところ主として比較的硬度の低いアルミニウムによって形成されている。このため現像剤に流動性を向上させる等の目的により含まれる比較的硬度の高い成分、例えば酸化チタン,二酸化珪素等との摺擦によってその表面が研削されて、長期間のプリントにより摩耗してしまうと言った問題を有している。このように、現像剤担持体の表面状態が変化すると特に現像剤を薄層担持する現像装置においては、現像剤担持体上のトナーの付着量が変動してしまい、長期間にわたる画像安定性を提供することが困難となる。特に現像剤の層を薄層化するために現像剤薄層化ブレードを用いる現像装置においては、現像剤薄層化ブレードによる剪断応力が現像剤担持体へと現像剤を介して加えられるため、特に問題とされることが多い。
【0005】
これまで、このような現像剤担持体の表面状態の変化により生じる画像特性の変動を防止するため種々の検討がなされている。例えば、特開平6-51618号公報においては、現像剤担持体、すなわち現像ローラ表面を定型粒子によるブラスト処理や、現像ローラ表面に用いられる表面樹脂中へと導電性粉末を分散させ、比較的滑らかな多数の凹凸を形成するように粗面化処理を施すことにより、長期間にわたる画像安定化が図られている。また、特開平10-97134号公報においては、表面を球状粒子によるビーズブラスト処理と不定形粒子によるサンドブラスト処理とにより粗表面化した金属円筒基体の表面に、樹脂被覆層をRaが0.7?3.0μmの範囲となるようにして設けた現像ローラを用いることが開示されている。このような現像ローラを用いた現像装置を用いて、長期間にわたる高画質・均質性、かつ安定性の維持が図られている。」

(1c)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した現像装置には次のような問題点がある。特開平6-51618号公報に開示された現像装置では、現像剤担持体が、定型粒子によるブラスト処理を行ったり、導電性粉末の分散を必要とする等が必要とされるなど、比較的製造が難しく、コスト的に高くなると言う問題点を有している。また、近年電子写真分野においては、コンピュータの普及によるコピーボリュームの急増により、さらに長期にわたり高画質を提供し、画質の均一性・安定性を向上する必要が生じている。また、特開平10-97134号公報に開示された現像装置では、ビーズブラスト処理と、サンドブラスト処理と言った複数のブラスト処理が必要であり、コスト的に高くなると言う問題点を有している。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、現像剤の薄層を現像剤担持体上に形成して静電潜像を形成する電子写真法式において、比較的安価に製造することが可能な現像剤担持体を用いて、長期間にわたり画像を高画質かつ均質・安定に維持させることが可能な現像装置を提供することである。さらに、その目的は、長期間にわたり画像を高画質かつ均質・安定に維持させるべく、現像剤担持体の研削による表面形状の変化を改善するため、現像剤担持体表面へと滑剤を供給する手段を有する現像装置を提供することである。」

(1d)「【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である一成分現像剤を用いる現像装置を示す概略構成図である。図1は、現像装置の各構成要素を示すため、一部を切り欠いて示してある。本発明の一成分現像装置は、現像剤担持体1と、トナー供給ローラ2と、トナー搬送部材3と、現像剤薄層化部材4と、トナー格納室5と、一成分トナー6とを備えている。図1には、さらに、画像形成装置の静電潜像担持体7が図示されている。
この現像装置は、現像剤薄層化部材4により現像剤担持体1表面にトナーの薄層を形成している。本発明では、トナーの薄層とは、本発明における一成分現像プロセスにおけるトナーの体積平均粒径の2倍の厚さ以下の厚さ、又はトナー1層程度の厚さでトナーが緻密に担持されて形成される層をいう。本発明の現像装置は、このトナー薄層を画像形成装置の静電潜像担持体である感光体7と接近又は圧接、すなわち摺擦するようにして相対的に移動させている。この感光体7と現像剤担持体1の移動及び回動速度は、好ましくは感光体7の線速度に対し、現像剤担持体1の線速度を1.5?2.5倍とすることが好ましい。この現像剤担持体1には、現像用のバイアス電圧が印加されており、感光体7表面の画像パターン状静電潜像をトナーにより顕像化させる構成とされている。」

(1e)図1は次のとおり。


刊行物1には、第2の実施例として、次の(1f)?(1h)が記載されている。

(1f)「【0017】
本発明の第2の実施例においては、図8に示すアルミニウム製の現像剤担持体1に対してブラスト加工が施され、現像剤担持体1が形成される。この際のブラスト加工としては、上述したブラスト加工の他にも、従来用いられる方法を用いることもできる。このように条線状溝を現像剤担持体1表面に形成させた後、ブラスト加工することにより、溝端部がより確実にブラスト加工できる。これを図9に示す。
図9(a)は、本発明の第2の実施例の現像剤担持体1の回転方向に沿った断面を示した図である。図9(a)に示されるように条線状溝部は、他の部分よりも確実にブラスト加工されている。図9(b)は、本発明の第2の実施例の現像剤担持体1の表面の上面図である。図9(b)に示されている破線は、ブラスト加工前の条線状溝付部分の端部を示す。図9(b)には、条線状溝付近が良好にブラスト加工されているのが示されている。図9(b)には、同時に回転軸Rを示している。図9(c)は、この回転軸Rに沿った断面図である。図9(c)に示されるように、回動軸方向についてみるとブラスト加工の効果は、条線状溝付部よりも低く、比較的平坦な面が得られているのが示されている。図10には、ブラスト加工の別の実施例を示す。図10(a)は、回動方向に沿った現像剤担持体1の断面図であり、図10(b)は、ブラスト加工後の回動方向に沿った断面図である。図10には、条線付溝が狭く、かつ浅いものであっても溝部が他の部分よりも効率よくブラスト加工されるとともに、溝部位外の平坦部においても多少のブラスト加工がなされ、ブラスト加工後の凹凸の平均間隔Smがブラスト加工前と同等以下とすることができること、すなわち、回動方向のブラスト加工前の凹凸の平均間隔Sm1と、ブラスト加工後の凹凸の平均間隔Sm2とは、
【数6】
Sm1≧Sm2 (6)
となることが示されている。」

(1g)図8は次のとおり。


(1h)図10は次のとおり。


刊行物1には、第3の実施例として、次の(1i)?(1k)が記載されている。

(1i)「【0020】
図14は、本発明の第3の実施例を示した図である。本発明の第3の実施例では、ブラスト加工前の現像剤担持体1に対して、回動軸方向に対して角度θ1が45゜未満の第1の条線状溝8及びこれに直交する方向の第2の条線状溝9を回動軸に対して角度θ2の方向で形成させた二方向の条線状溝が形成される。このように互いに直交する二種類の条線状溝を形成させることにより、本発明の第2の実施例において説明した条線の溝部が選択的にブラスト加工を受ける効果がより好適に奏され、トナー搬送能力の変動をよりいっそう好適に防止することができる。図15には、図14のように条線状溝を形成させたブラスト加工前の現像剤担持体1表面(図15(a)に示す。)がブラスト加工により受ける変化(図15(b)に示す。)を示した概略図である。図15(a)、(b)に示されているように、現像剤担持体1の摺擦方向である回動方向の凹凸の平均間隔Smyが、回動軸方向の凹凸の平均間隔Smxに比較して広くされており、従来におけるように回動軸方向と回動軸方向の凹凸の平均間隔Smが同等ではなく良好なトナー搬送能力を与えることができることを示している。これは、従来のブラスト加工と同等の微粒子を用い、同等の吹き付け圧で、同等の深さの凹部を形成するようにブラスト加工を施しても、本発明の第3の実施例によれば凹凸の平滑化を改善することができ、この結果トナー搬送能力の安定化を図ることができることを示している。」

(1j)図14は次のとおり。


ここで、図1、14から刊行物1には次のことが記載されていると認められる。

「円筒状または円柱状をなし、トナーを担持するための現像剤担持体」

(1k)図15は次のとおり。


ここで、(1f)?(1h)及び(1i)?(1k)に記載された刊行物1の第2の実施例、第3の実施例から、次のことが認められる。
まず、刊行物1に記載された第2の実施例は、アルミニウム製の現像剤担持体表面に条線状溝を形成させた後、ブラスト加工することにより、溝部がより効率よくブラスト加工されるとともに、溝部位外の平坦部においても多少のブラスト加工がなされて凹凸が形成され、回動方向に沿った断面が湾曲凸面であり、前記凹凸の凸部分が湾曲凸面となるように加工されるものであると認められる。
そして、刊行物1に記載された第3の実施例は、第2の実施例において説明した条線状溝を回動軸に対して所定の方向で二方向に形成して、その後にブラスト加工を行ったものであり、表面に二方向に条線溝部が形成されたアルミニウム製の現像剤担持体にブラスト加工を行った場合、第2の実施例と同様に、溝部がより効率よくブラスト加工されるとともに、前記二方向に形成された条線状溝により規則的に配列された平坦部も多少のブラスト加工がなされるのであるから、前記二方向に形成された条線状溝により規則的に配列された前記平坦部の一部が凸部分として、前記溝部が凹部分としてなる平滑化された多数の凹凸が形成され、第2の実施例と同様に、断面が湾曲凸面となり、前記凹凸の凸部分が湾曲凸面となるように加工され、平滑化された多数の凹凸が形成されるものであると認められる。

これらの記載事項によれば、刊行物1には第3の実施例に対応する次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「円筒状または円柱状をなし、トナーを担持するためのアルミニウム製の現像剤担持体であって、
該現像剤担持体表面の二方向に条線状溝が形成されて規則的に配列された平坦部および溝部が形成され、
表面に前記二方向に条線溝部が形成されたアルミニウム製の現像剤担持体にブラスト加工により加工することにより、
該現像剤担持体表面に規則的に形成された前記平坦部の一部が凸部分として、前記溝部が凹部分としてなる平滑化された多数の凹凸が形成され、
該凹凸の凸部分が湾曲凸面となるように加工されている現像剤担持体。」

(2)刊行物2
(2a)「【0022】
本発明の第(6)は、本発明の第(4)に記載の画像形成装置であり、現像ローラ上にはアヤメ状ローレット溝が切られており、該溝深さ5?30μmの範囲としている。このローレットローラの概念図を図4に示す。このような溝があるとトナー層形成時に薄層化ブレードとローラの間を通過するときにトナー凝集体がほぐされてローラ上に均一に広がる。ローレットピッチ(P)を150?500μmの範囲に、溝幅(L)を10?100μmの範囲に設定すると、ローラ凸部に2?3層の良好な薄層が形成され、現像時に均一な感光体上トナー像を得ることができる。このように感光体上のトナー付着を均一化すると、該トナーが紙に転写されるときも各トナーに転写電界が一様にかかり、紙上の未定着トナーは紙繊維に対して接触率が高く充填された状態で定着域に搬送されてくる。このため定着ローラとしてポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂コートローラを用いても定着ローラ側へのオフセットするトナーがほとんどなくオフセット余裕度が大幅に向上されることになる。」

(3)刊行物3
(3a)「【0025】
そして、本実施例の現像ローラ4としては、付着トナーを増大させる等の目的で、図1に示すような表面に電荷を保持できる誘電体部41と接地された導電体部42とが微小面積で混在露出するように構成され、誘電体部41と導電体部42との間で高低差を有する現像ローラ4を用いる。
この誘電体部41の大きさは、例えば幅が50?200μm程度になるようにする。このような誘電体部41がランダムに、又はある規則に従って分散しているようにする。両部の面積比としては、例えば誘電体部41の面積が全体の40?70%の範囲になるようにするのが好ましい。
また、誘電体部41と導電体部42との間の高低差は、トナー7の体積平均粒径の1/2より大きい値に設定する。この現像ローラ4の表層部を形成するには、例えば芯金ローラの表面をローレット加工して所定の溝を形成した後、絶縁性の例えば樹脂をコートし、その後に表面を切削加工し、冷却工程により樹脂を収縮させる。これにより、芯金部が凸部の導電体部42として、溝内の樹脂部が凹部の誘電体部41として、それぞれ表面に露出する。」

(3b)「【0030】
以下、本実施例のより具体的な態様を具体例として記載する。
(1)現像ローラ4
・径が25mmの芯金ローラ表面にローレット加工により、深さ0.1mm、溝巾0.2mmの溝を、ピッチ0.3mm、角度45度でアヤメ状に形成した(図7(a)及び(b)参照)。
・この芯金ローラの表面に、エポキシ変性シリコーン樹脂(東レ製,SR2115:商標)410をコーティングし、100℃で約30分乾燥させて誘電層コートを施した(図8(a)及び(b)参照)。
・このローラの表面を切削加工して、芯金部を導電体部42として表面に露出させ、ローレット加工の溝に充填されて残っている樹脂部を誘電体部41とした(図8(c)参照)。このときの導電体部42の総面積が全体の50%(従って誘電体部41の総面積は全体の50%)になるようにした。
・その後、-10°Cで約30分冷却して樹脂を収縮させ、誘電体部41(樹脂)の表面と導電体部42(アルミ)の表面との間に10?20μmの高低差をつける(図8(d)参照)。
(2)トナー供給ローラ5
・径6mmの芯金ローラ51上に抵抗率約1×10^(6)Ωcmの導電性のスポンジ層52を有する径16mmのスポンジローラで構成し、これを現像ローラ4に食い込むように圧接させて配置した。この導電性のスポンジ層52としては、カーボン10wt%を内添及び分散させ、その後、発泡及び型成型した発泡ポリウレタンを用いた。
(3)層厚ならし板8
・厚さ2mm、ゴム硬度73度、及びヤング率0.66g/mm^(2)の弾性板を、現像ローラ4に対して、エッジ部角度90度、及び10?20g/cmの接触圧で接触配置した。
・この弾性板としては、カーボン10wt%を内添及び分散させ、その後、型成型したウレタンゴムを用いた。
(4)現像バイアス21、現像ギャップ
・現像ローラ4には、例えば、直流-700Vを重畳したピーク・ツウ・ピーク電圧1200Vp-p、2kHzの交流バイアスを印加する。
・現像ギャップを180μmに設定した。
(5)トナー供給ローラバイアス22
・このスポンジローラの芯金14には、例えば、現像バイアス電圧の直流分と同極性で絶対値が100V大きいバイアス、具体的には、現像バイアス電圧の直流分が-700Vの時、-800Vの直流バイアスを印加する。
(6)感光体1
・OPC(ドラムタイプ)
・ネガ潜像が地肌部で-850V、書き込み部(画像部)で-100Vになるように一様帯電を施した。
(7)トナー7
・非磁性スチレンアクリル系+ポリエステル系樹脂使用の負帯電トナーを用いた。
・体積平均粒径は10μmである。
・外添剤としてSiO_(2)微粉末0.5wt%を外添した。」

(4)刊行物4
(4a)「【0038】
従って、図6において塑性変形に適した状態の樹脂製ロックボルト21がローレット加工機24を通過する際、その外周面にローレット加工治具27の回転周面が押付けられることにより、所定のパターンの凹凸模様形状が塑性変形によって形成される。」

(5)刊行物5
(5a)「【0007】
【発明の実施の形態】
次に本発明に係る油圧ポンプの駆動軸とプーリの軸着部の結合構造を図1に示す第1実施形態に基づき、従来技術と同一部分には同一符号を付して説明する。
まず炭素鋼(例えばS45C)の冷間引き抜き材から加工された駆動軸102の先端側にローレット加工具(図示省略)を押し当て、両者を互いに逆向きに回転させる所謂転造により条痕の山の部分を駆動軸の本体部102Aの軸径Ddから突出させ、本体部の軸径Ddよりも大きい外径Dsの膨径条痕102Bを形成する。この実施形態では条痕は駆動軸102の軸線と平行である。このローレット加工による転造の場合、条痕は図1(C)にその一部を示す様に3角状であり、谷部は圧縮されて駆動軸の本体部の外径Ddより小さくなり、膨径条痕の外径Dsは逆に盛り上がって駆動軸の外径Ddより大きくなる。条痕の谷部及び頂部にはローレット加工具の選択により適当な丸味をつけることができる。」

3.対比・判断
そこで、本願発明1と刊行物1記載の発明とを比較すると、
刊行物1記載の発明の「トナー」「現像剤担持体」「凸部分」は、それぞれ
本願発明1の「現像剤」「現像剤担持体」「突起部」
に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりと認められる。

[一致点]
「円筒状または円柱状をなし、現像剤を担持するための現像剤担持体であって、
その金属製の外周面に、多数の突起部を有し、
該突起部の頂面は、湾曲凸面である現像剤担持体。」

[相違点1]
金属製の外周面に形成された突起部に関して、
本願発明1では、「突起部」が「規則的に配列」され、「該突起部の頂面は、平均曲率半径が5μm?50μmである」のに対して、
刊行物1記載の発明では、「突起部」が「規則的に配列」されているのではなく、「頂面」の「平均曲率半径」がいかなる大きさであるのか不明である点。

[相違点2]
突起部の形成に関して、
本願発明1では、「突起部」が「外周面に型を押圧することにより形成されている」のに対して、
刊行物1記載の発明では、「突起部」が、表面に二方向に条線溝部が形成されたアルミニウム製の現像剤担持体にブラスト加工を行うことにより形成されている点。

以下、相違点について検討する。
ここで、[相違点1]及び[相違点2]は、ともに現像剤担持体の外周面に形成された「突起部」に関する内容であるから、あわせて検討を行う。

(相違点1、2について)
刊行物1の現像剤担持体は、凸部分が所定の湾曲凸面である比較的滑らかな多数の凹凸が外周面に形成されることにより、現像剤担持体上の現像剤層を均一化し、現像剤担持体の現像剤搬送能力を適正化して、画像安定性を提供している(【0005】?【0007】【0026】)。
また、トナーを担持する現像ローラが安定したトナー層を形成し、トナーを搬送することができるように、現像ローラの外周面に凹凸を形成する際、ローレット加工により溝をアヤメ状に形成し、凹凸を形成する技術は、本願出願日前に周知である。例えば、刊行物2(【0022】、図4)、刊行物3(【0030】、図7)を参照。
そして、刊行物4には、ローレット加工に関し、ローレット加工治具を加工対象に対して押付けることにより、所定のパターンの凹凸模様形状が塑性変形により形成される技術(【0038】)が、刊行物5には、ローレット加工具を加工対象に押し当てて転造により条痕の谷部及び頂部を形成する際、ローレット加工具の選択により該頂部に適当な丸みをつけることが可能である技術(【0007】)が、それぞれ記載されている。

そうしてみると、刊行物1記載の発明の現像剤担持体において、凸部分が所定の湾曲凸面である比較的滑らかな多数の凹凸を外周面に形成する際の構成として、表面に二方向に条線溝部が形成されたアルミニウム製の現像剤担持体にブラスト加工することにより形成する技術に代えて、ローレット加工に関する刊行物4に記載されたローレット加工治具を加工対象に押付けることにより、所定のパターンの凹凸模様形状が塑性変形により形成する技術、及び、刊行物5に記載されたローレット加工具を加工対象に押し当てて転造により条痕の谷部及び頂部を形成する際、ローレット加工具の選択により該頂部に適当な丸みをつけることが可能である技術をそれぞれ考慮し、ローレット加工により溝をアヤメ状に形成し、凹凸を形成する周知技術を採用し、ローレット加工治具を押し付けることにより、現像剤担持体の外周面を塑性変形させて溝をアヤメ状に形成して該溝からなる凹凸を形成する、すなわち、凹凸を形成する技術として、丸みをつけるローレット加工を採用することにより、凸部分が所定の湾曲凸面である比較的滑らかな多数の凹凸が規則的に形成されるようになり、本願発明1のような構成をなすことは当業者が容易に想到し得るものである。

そして、刊行物1記載の発明の現像剤担持体は、凸部分が所定の湾曲凸面である比較的滑らかな多数の凹凸が外周面に形成されることにより、現像剤担持体上の現像剤層を均一化し、現像剤担持体の現像剤搬送能力を適正化して、画像安定性を提供しているのであるから、現像剤担持体の外周面に凸部分が所定の湾曲凸面である凹凸を形成するにあたり、現像剤担持体の現像剤搬送量力、それに伴う画像安定性を考慮して、比較的滑らかな多数の凹凸を構成する該凸部分の平均曲率半径を必要に応じて適切な数値範囲とすることは、当業者が適宜なし得る技術の具体的適用に伴う設計変更であるから、突起部の頂面の平均曲率半径を5?50μmとすることは当業者が容易に想到し得る事項であるといわざるを得ない。

(本願発明1の効果について)
そして、全体として、本願発明1によってもたらされる効果も、刊行物1?5の記載及び周知技術から当業者であれば予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

(まとめ)
よって、本願発明1は、刊行物1?5の記載及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(請求人の主張について)
請求人は、平成23年11月28日付け意見書で、

「5.本願発明が特許されるべき理由
(1)引用発明の説明
刊行物1には、ただ単に、円柱状をなし、現像剤を担持するための現像剤担持体において、その外周面に対して条線状溝付加工後にブラスト加工を施すものであり、溝部位外が平坦面であること、および、溝部位外の平坦部においてもブラスト加工による不規則な凹凸が形成されることが記載されているに過ぎません(刊行物1の段落[0017]、[図9]等参照)。
また、刊行物2には、ただ単に、現像ローラの外周面に凹凸を形成する際、ローレット加工により溝をアヤメ状に形成し、凹凸を形成することが記載されているに過ぎません(刊行物2の段落[0022]、[図4]等参照)。
また、刊行物3には、ただ単に、現像ローラの外周面に凹凸を形成する際、ローレット加工により溝をアヤメ状に形成し、導電体および誘電体で構成された凹凸を形成することが記載されているに過ぎません(刊行物3の段落[0030]、[図7]等参照)。
また、刊行物4には、ただ単に、樹脂製ロックボルトの加工に関し、ローレット加工治具を加工対象に対して押付けることにより、所定のパターンの凹凸模様形状が塑性変形により形成される技術が記載されているに過ぎません(刊行物4の段落[0038]、[図7]等参照)。
また、刊行物5には、ただ単に、油圧ポンプ等の駆動軸の加工に関し、ローレット加工具を加工対象に押し当てて転造により条痕の谷部及び頂部を形成する際、ローレット加工具の選択により該頂部に適当な丸みをつけることが可能である技術が記載されているに過ぎません(刊行物5の段落[0007]参照)。

(2)本願発明と引用文献の対比
補正後の【請求項1】に係る発明の発明特定事項は、「円筒状または円柱状をなし、現像剤を担持するための現像剤担持体であって、その金属製の外周面に、規則的に配列された多数の突起部を有し、該突起部の頂面は、平均曲率半径が5μm?50μmである湾曲凸面からなっており、前記多数の突起部は、前記外周面に型を押圧することにより形成されている」ことであります。
この構成により、この発明では、
(い)複数の突起部の湾曲凸面に現像剤を担持することができる。
(ろ)そのため、現像剤担持体は、その外周面に均一かつ最適な量の現像剤を担持させることができる。
(は)また、現像剤担持体の外周面での現像剤の転動性(転がりやすさ)も均一なものとすることができる。
(に)その結果、現像剤の局所的な帯電不良や搬送不良を防止して、優れた現像特性を発揮させることができる。
(ほ)さらに、突起部を比較的大きく形成することができるため、突起部の耐久性を向上させることができる。
(へ)さらに、押圧により突起部を形成することにより、突起部の優れた機械的強度を有することができる。
という作用効果を奏するものであります(当初明細書段落[0008]、[0055]参照)。
これに対して、刊行物1に記載された発明は、本願発明が課題とする従来技術であるところの現像剤担持体の表面にブラスト加工を施すものであり、ブラスト加工を施すが故に突起部は不規則な凹凸に形成されるものであります。このため、刊行物1に記載の発明は、現像剤担持体の外周面に、規則的に配列される突起部を有する、とすることができません。このことは、刊行物1に開示されている突起部の形状が、すべて、算術平均粗さで示されていることからも明らかであります。さらに、刊行物1に記載の算術平均粗さとは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線から
測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値を表したものであります。つまり、算術平均粗さは、曲面形状を規定するものではないばかりか、曲率半径とは全く相違するものであります。さらに、刊行物1に記載の発明は、条線状溝付加工後にブラスト加工を施すものであり、溝部位外が、平坦面であること、および、溝部位外の平坦部においてもブラスト加工による不規則な凹凸が形成されることが開示されております(刊行物1の段落[0017]、[図9]等参照)。すなわち、刊行物1に記載の発明は、該突起部の頂部は、湾曲凸面に形成されている、構成については、全く開示も示唆もされておりません。
また、刊行物2?5に記載された発明にも、補正後の【請求項1】に係る発明について、開示も示唆もありません。
また、刊行物2、刊行物4、刊行物5に記載された発明には、本願発明の「発明が解決しようとする課題」、「構成要件」、「発明が奏する作用効果」について、開示も示唆もありません。
すなわち、補正後の【請求項1】に係る発明は、当業者といえども刊行物1?5から容易に発明できたとはいえないものであります。
また、 補正後の【請求項2】ないし【請求項12】に係る発明は、補正後の【請求項1】に係る発明をすべてを具備しており、上記と同様の理由で特許性を有することは明らかであります。
したがいまして、本願発明は刊行物1?5に記載の技術に対する進歩性を十分に具備しており、特許法第29条第2項には該当しないものと思料いたします。」

と主張する。

しかし、上記請求人の主張は、刊行物1?5において、各刊行物個別に本願発明が有する構成について開示があるか否かを述べているのみで、刊行物1?5から本願発明が容易に想到し得るものであるか否かについて主張するものではない。
そして、上記(相違点1、2について)で検討したように、刊行物1?5に接した当業者が、凸部分が所定の湾曲凸面である比較的滑らかな多数の凹凸を外周面に形成する際の構成として、ローレット加工に関する各技術を考慮して、ローレット加工に関する上記周知技術を適用して、本願発明1のようにすることは、当業者が容易になし得ることといわざるを得ない。
また、その際、現像剤担持体の現像剤搬送量力、それに伴う画像安定性を考慮して、比較的滑らかな多数の凹凸を構成する凸部分の平均曲率半径を必要に応じて適切な数値範囲とすることは、当業者が適宜なし得る技術の具体的適用に伴う設計変更であるといわざるを得ない。

そして、上記請求人が主張する効果は、刊行物1?5及び周知技術を用いることによって生じる効果に過ぎない。
そのため、本願発明1が奏する効果は、刊行物1?5が奏する効果及び周知技術が奏する効果の総和を超えるものではない。

よって、上記請求人の主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-16 
結審通知日 2011-12-20 
審決日 2012-01-10 
出願番号 特願2006-103586(P2006-103586)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤本 義仁  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 住田 秀弘
立澤 正樹
発明の名称 現像剤担持体、現像剤担持体の製造方法、現像装置、および画像形成装置  
代理人 須澤 修  
代理人 宮坂 一彦  
代理人 上柳 雅誉  

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