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審決分類 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない H01S
管理番号 1252713
審判番号 訂正2011-390110  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2011-09-21 
確定日 2012-02-20 
事件の表示 特許第2898643号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件は、昭和63年11月11日に出願され、平成11年3月12日に特許第2898643号として設定登録(請求項数1)された特許(以下「本件特許」という。)について、平成23年9月21日付けで本件訂正審判が請求され、同年11月8日付けで訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である同年12月12日付けで審判事件意見書が提出されたものである。

第2 請求の趣旨

本件審判の請求の趣旨は、本件特許明細書を本件訂正審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
本件特許公報の1頁1欄8行に「であること」とあるのを、「であるとともに、前記活性層の平均格子定数がInPの格子定数よりも大きいこと」と訂正する。

(2)訂正事項2
本件特許公報の2頁3欄48行に「であること」とあるのを、「であるとともに、前記活性層の平均格子定数がInPの格子定数よりも大きいこと」と訂正する。

(3)訂正事項3
本件特許公報の2頁4欄6行に「選択すること」とあるのを、「選択するとともに、活性層の平均格子定数がInPの格子定数よりも大きくすること」と訂正する。

第3 訂正拒絶理由の概要

平成23年9月21日付けで当審が通知した訂正拒絶理由の概要は、次のとおりである。

[訂正拒絶理由1]特許法第126条第3項(新規事項の追加)
訂正事項1ないし3に係る「活性層の平均格子定数がInPの格子定数よりも大きくすること」は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されておらず、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項から自明な事項でもない。

[訂正拒絶理由2]特許法第126条第5項(独立特許要件)
(1)特許法第36条第4項第1号について
本件特許の請求項1に係る発明において、「活性層」は、量子井戸層とバリア層からなるものであるが、「活性層の平均格子定数」とは、どのように定義され、どのように算出又は測定されるものであるのか、発明の詳細な説明に記載されておらず、また、自明であるともいえない。
また、訂正事項1に係る「活性層の平均格子定数がInPの格子定数よりも大きくすること」が、どのような技術上の意義を有するのか、不明である。

(2)特許法第36条第6項第2号について
訂正事項1に係る「活性層の平均格子定数」について、上記(1)に記載のように、その定義と算出又は測定方法が、発明の詳細な説明及び図面を参照しても不明であるから、訂正後の特許請求の範囲の記載は、明確であるとはいえない。

第4 当審の判断

以下、訂正拒絶理由1について検討する。

訂正事項1ないし3は、いずれも、特許請求の範囲又は発明の詳細な説明において、「活性層の平均格子定数がInPの格子定数よりも大きい」との事項を付加するものである。
しかるところ、訂正によって付加される「活性層の平均格子定数」について、特許明細書には、
「活性層17の平均格子定数は、量子井戸層20とバリア層21の厚みと組成を調整することによって、InPの格子定数に等しくすることができる」
(特許公報3頁5欄21?23行参照。)
ことが記載されているのみであって、訂正事項1ないし3に係る「活性層の平均格子定数がInPの格子定数よりも大きい」との事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていない。また、後記のとおり、請求人の主張は採用できず、当該事項が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項から自明な事項と認めることもできない。

請求人は、上記付加事項につき、請求の理由において、
「上記より、本件特許明細書のすべての記載を総合すると、当業者によれば、量子井戸層とバリア層からなる活性層についての平均格子定数という概念が記載されており、量子井戸層の格子定数をInPの格子定数よりも大きくすることによって量子井戸層中に歪が印加される際、バリア層に歪を印加していなければ、活性層の平均格子定数はInPよりも大きくなることは自明であるところ、バリア層の格子定数をInPの格子定数よりも小さくすることによって、量子井戸層に印加された歪を緩和することにより、InPの格子定数よりも大きい活性層の平均格子定数が、○1InPの格子定数に近づくこと、○2InPの格子定数と等しくなること、○3InPの格子定数よりも小さくなることを、技術的事項として導くことができる。本件実施例2は、このうち、○2InPの格子定数と等しくなることについてのものである。」
(審判請求書7頁13?24行。なお、便宜上、丸数字は、「○1」のように記載した。以下同じ。)
と主張するが、本件特許明細書において、バリア層の格子定数について記載されているのは、いずれも、InPの格子定数よりも小さいことであって(【請求項1】、特許公報2頁3欄46?47行、2頁4欄3?4行、3頁5欄16?18行参照。)、「量子井戸層の格子定数をInPの格子定数よりも大きくすることによって量子井戸層中に歪が印加される際、バリア層に歪を印加していな」いものについては記載されていない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

また、請求人は、平成23年12月12日付け審判事件意見書において、
「ここで、バリア層の格子定数をInPの格子定数よりも小さくすることによって、量子井戸層に印加された歪みを緩和することが記載されているのであるから、この記載を上記〔従来の技術〕及び〔発明が解決しようとする課題〕の記載とあわせて読めば、解決すべき課題を有する従来技術の歪量子井戸半導体レーザ素子の構成(量子井戸層の格子定数がInPの格子定数より大きく、バリア層の格子定数がInPの格子定数と等しく、活性層の平均格子定数がInPの格子定数よりも大きい構成)において、バリア層の格子定数をInPの格子定数よりも小さくしていくと、「活性層の平均格子定数」は、○1InPの格子定数に次第に近づき(この段階では活性層の平均格子定数はInPの格子定数よりも大きい)、次に、○2InPの格子定数と等しくなり、さらに、○3InPの格子定数よりも小さくなることが、明確に理解できるものである。」
(審判事件意見書10頁20行?11頁4行)
と主張するが、本件特許明細書に、「従来技術の歪量子井戸半導体レーザ素子の構成(量子井戸層の格子定数がInPの格子定数より大きく、バリア層の格子定数がInPの格子定数と等しく、活性層の平均格子定数がInPの格子定数よりも大きい構成)において、バリア層の格子定数をInPの格子定数よりも小さくしていく」ことは記載されておらず、またそのようにすることを示唆する記載もないことから、請求人の上記主張は採用できない。

以上によれば、訂正事項1ないし3はいずれも、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものとはいえず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第3項の規定に適合しないものであって、本件訂正は認められない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-21 
結審通知日 2011-12-26 
審決日 2012-01-10 
出願番号 特願昭63-285549
審決分類 P 1 41・ 841- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛門田 かづよ  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 北川 創
江成 克己
登録日 1999-03-12 
登録番号 特許第2898643号(P2898643)
発明の名称 量子井戸半導体レーザ素子  
代理人 北原 潤一  
代理人 岩間 智女  
代理人 片山 英二  
代理人 黒川 恵  
代理人 小林 浩  
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