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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09K
管理番号 1252725
審判番号 不服2008-9263  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-14 
確定日 2012-02-22 
事件の表示 特願2004-337986「真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体,その製造方法及びこれを含む発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成17年6月16日出願公開、特開2005-154770〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成16年11月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年11月20日(以下「優先日」という。)(KR)韓国)の出願であって、平成19年9月3日付けで拒絶理由が通知され、同年12月11日に意見書及び手続補正書が提出され、平成20年1月8日に拒絶査定がされ、これに対し同年4月14日に審判が請求されるとともに手続補正書が提出された後、平成22年8月17日付けで審尋がされ、同年11月24日に回答書が提出され、再度平成23年5月17日付けで審尋がされたところ、回答書が提出されなかったものである。

第2 平成20年4月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年4月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成20年4月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成19年12月11日付けの手続補正後の特許請求の範囲である、
「【請求項1】
下記の化学式1で表示される,真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体であって,前記蛍光体の粒度が1?5μmの範囲にあることを特徴とする,真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
【化1】
A_(x)B_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式1)
前記化学式1において,AはMg又はZnであり,BはAl又はGaであり,0.6≦x≦1.4,0.01≦y≦0.1である。
【請求項2】
前記緑色蛍光体が下記の化学式2を有することを特徴とする,請求項1に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体:
【化2】
Mg_(x)Al_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式2)
前記化学式2において,xとyの範囲は,0.6≦x≦1.4,0.01≦y≦0.1である。
【請求項3】
前記化学式において,xとyの範囲は,0.6≦x≦0.98,0.01≦y≦0.1であることを特徴とする,請求項1又は2に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
【請求項4】
前記蛍光体はスピネル構造を有することを特徴とする,請求項1に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
【請求項5】
前記蛍光体は4?9msの残光時間を有することを特徴とする,請求項1に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
【請求項6】
前記蛍光体は,147nmと173nmの紫外線を励起源とする場合,515?525nmの範囲で緑色の発光バンドを示すことを特徴とする,請求項1に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
【請求項7】
下記の化学式1で表示される緑色蛍光体を含み,前記蛍光体の粒度が1?5μmの範囲にあることを特徴とする,真空紫外線を励起源とする発光素子。
【化3】
A_(x)B_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式1)
前記化学式1において,AはMg又はZnであり,BはAl又はGaであり,0.6≦x≦1.4,0.01≦y≦0.1である。
【請求項8】
前記緑色蛍光体が下記の化学式2を有することを特徴とする,請求項6に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子。
【化4】
Mg_(x)Al_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式2)
前記化学式2において,xとyの範囲は,0.6≦x≦1.4,0.01≦y≦0.1である。
【請求項9】
前記化学式において,xとyの範囲は,0.6≦x≦0.98,0.01≦y≦0.1であることを特徴とする,請求項7又は8に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子。
【請求項10】
前記蛍光体はスピネル構造を有することを特徴とする,請求項7に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子。
【請求項11】
前記蛍光体は4?9msの残光時間を有することを特徴とする,請求項7に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子。
【請求項12】
前記蛍光体は,147nmと173nmの紫外線を励起源とする場合,515?525nmの範囲で緑色の発光バンドを示すことを特徴とする,請求項7に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子。
【請求項13】
前記発光素子はプラズマディスプレイパネルであることを特徴とする,請求項7に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子。
【請求項14】
以下の化学式1で表示される真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法であって,
マンガン系化合物,マグネシウム化合物,アルミニウム化合物,及び融剤を均一に混合する段階と;
前記混合物を1次熱処理する段階と;
前記1次熱処理を経た混合物を還元雰囲気で2次熱処理する段階と,を含み,
前記蛍光体の粒度を1?5μmの範囲とすることを特徴とする,真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【化5】
A_(x)B_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式1)
ここで、前記化学式1において,AはMg又はZnであり,BはAl又はGaであり,0.6≦x≦1.4,0.01≦y≦0.1である。
【請求項15】
前記化学式1において,xとyの範囲は,0.6≦x≦0.98,0.01≦y≦0.1であることを特徴とする,請求項14に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項16】
前記マンガン系化合物はMnCO_(3),MnO,MnF_(2),Mn(NO_(3))_(2),及びMnCl_(2)からなる群のうち少なくとも一つ含むことを特徴とする,請求項14に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項17】
前記マグネシウム化合物はMgO,MgCO_(3),及びMg(OH)_(2)からなる群のうち少なくとも一つ含むことを特徴とする,請求項14に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項18】
前記アルミニウム化合物はAl_(2)O_(3),及びAl(OH)_(3)からなる群のうち少なくとも一つ含むことを特徴とする,請求項14に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項19】
前記融剤はAlF_(3),MgF_(2),LiF,及びLi_(2)(SO_(4))からなる群のうち少なくとも一つ含むことを特徴とする,請求項14に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項20】
前記1次熱処理は1400?1650℃の温度で0?10時間実施することを特徴とする,請求項14に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項21】
前記2次熱処理は還元雰囲気で1000?1650℃の温度で0?3時間実施することを特徴とする,請求項14に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項22】
前記2次熱処理の還元雰囲気は窒素(N_(2))と水素(H_(2))を100:0?80:20の体積比で混合したものであることを特徴とする,請求項14に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。」を、
「【請求項1】
下記の化学式1で表示される,真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体であって,前記蛍光体の粒度が1?5μmの範囲にあることを特徴とする,真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
【化1】
A_(x)B_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式1)
前記化学式1において,AはMg又はZnであり,BはAl又はGaであり,0.6≦x≦0.98,0.01≦y≦0.1である。
【請求項2】
前記緑色蛍光体が下記の化学式2を有することを特徴とする,請求項1に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体:
【化2】
Mg_(x)Al_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式2)
前記化学式2において,xとyの範囲は,0.6≦x≦0.98,0.01≦y≦0.1である。
【請求項3】
前記蛍光体はスピネル構造を有することを特徴とする,請求項1に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
【請求項4】
前記蛍光体は4?9msの残光時間を有することを特徴とする,請求項1に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
【請求項5】
前記蛍光体は,147nmと173nmの紫外線を励起源とする場合,515?525nmの範囲で緑色の発光バンドを示すことを特徴とする,請求項1に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
【請求項6】
下記の化学式1で表示される緑色蛍光体を含み,前記蛍光体の粒度が1?5μmの範囲にあることを特徴とする,真空紫外線を励起源とする発光素子。
【化3】
A_(x)B_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式1)
前記化学式1において,AはMg又はZnであり,BはAl又はGaであり,0.6≦x≦0.98,0.01≦y≦0.1である。
【請求項7】
前記緑色蛍光体が下記の化学式2を有することを特徴とする,請求項6に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子。
【化4】
Mg_(x)Al_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式2)
前記化学式2において,xとyの範囲は,0.6≦x≦0.98,0.01≦y≦0.1である。
【請求項8】
前記蛍光体はスピネル構造を有することを特徴とする,請求項6に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子。
【請求項9】
前記蛍光体は4?9msの残光時間を有することを特徴とする,請求項6に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子。
【請求項10】
前記蛍光体は,147nmと173nmの紫外線を励起源とする場合,515?525nmの範囲で緑色の発光バンドを示すことを特徴とする,請求項6に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子。
【請求項11】
前記発光素子はプラズマディスプレイパネルであることを特徴とする,請求項6に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子。
【請求項12】
以下の化学式1で表示される真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法であって,
マンガン系化合物,マグネシウム化合物,アルミニウム化合物,及び融剤を均一に混合する段階と;
前記混合物を1次熱処理する段階と;
前記1次熱処理を経た混合物を還元雰囲気で2次熱処理する段階と,を含み,
前記蛍光体の粒度を1?5μmの範囲とすることを特徴とする,真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【化5】
A_(x)B_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式1)
ここで、前記化学式1において,AはMg又はZnであり,BはAl又はGaであり,0.6≦x≦0.98,0.01≦y≦0.1である。
【請求項13】
前記マンガン系化合物はMnCO_(3),MnO,MnF_(2),Mn(NO_(3))_(2),及びMnCl_(2)からなる群のうち少なくとも一つ含むことを特徴とする,請求項12に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項14】
前記マグネシウム化合物はMgO,MgCO_(3),及びMg(OH)_(2)からなる群のうち少なくとも一つ含むことを特徴とする,請求項12に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項15】
前記アルミニウム化合物はAl_(2)O_(3),及びAl(OH)_(3)からなる群のうち少なくとも一つ含むことを特徴とする,請求項12に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項16】
前記融剤はAlF_(3),MgF_(2),LiF,及びLi_(2)(SO_(4))からなる群のうち少なくとも一つ含むことを特徴とする,請求項12に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項17】
前記1次熱処理は1400?1650℃の温度で0?10時間実施することを特徴とする,請求項12に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項18】
前記2次熱処理は還元雰囲気で1000?1650℃の温度で0?3時間実施することを特徴とする,請求項12に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。
【請求項19】
前記2次熱処理の還元雰囲気は窒素(N_(2))と水素(H_(2))を100:0?80:20の体積比で混合したものであることを特徴とする,請求項12に記載の真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体の製造方法。」
とする補正を含むものである。

2 補正の適否
(1)目的要件
上記特許請求の範囲についての補正は、補正前の請求項1、2、7、8、14を削除し、その補正後の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項であるxの範囲の上限値を1.4から0.98に下げて、新たな請求項1ないし19とするものであり、補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除及び同第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。また、本件補正後の明細書を「本件補正明細書」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

進歩性について>

ア 刊行物及び刊行物に記載された事項
(ア)刊行物
1 K.Toda,Journal of Materials Science Letters,Vol 22,p979-980,July/2003
(以下、「刊行物1」という。)

(イ)刊行物1に記載された事項
この出願の優先日(2003年11月20日)前に頒布されたことが明らかな刊行物1には、以下の事項が記載されている(摘示箇所は、当審による仮訳の日本語で示す。)。

1a 「スピネル構造を有する(Mg_(1-x)Zn_(x))Al_(2-y)Ga_(y)O_(4):Mn緑色VUV蛍光体」(表題)

1b 「現代の人間社会には多数の高効率の蛍光物質がさまざまな装置、たとえば照明や表示装置、に使用されている。プラズマディスプレイパネル(PDP)や水銀を含まない蛍光ランプを製造するためにVUV(147nm)で励起される高効率の蛍光物質が望まれている[1,2]。」(1頁左欄1?6行)

1c 「スピネル型構造のMgAl_(2)O_(4)は光学素材の1つで、優れた光透過性及び化学的安定性を有する。したがってスピネル組成物はVUV蛍光物質候補であり得る。本稿は、緑色のVUV蛍光体、Mg_(1-x)Zn_(x)Al_(2-y)Ga_(y)O_(4):Mnの蛍光特性について報告する」(1頁左欄12?17行)

1d 「このスピネル蛍光体は、MgO(関東化学,99.99%),ZnO(高純度品,99.99%),Ga_(2)O_(3)(和光純薬工業,99.99%),Al(OH)_(3)(住友化学,CHP-340S>99.7%)及びMnCO_(3)(高純度品,99.99%)を、フラックス成分無しに、空気中において1300℃及び還元雰囲気(95%Ar及び5%H_(2))において1100℃に加熱することにより固相反応で製造された。」(1頁左欄18?25行)

1e 「粉末サンプルのUV領域(220-400nm)における励起及び発光スペクトルは粉末でJascoFP-6500蛍光スペクトロメーターにより測定される。」(1頁左欄18?25行)

1f 「図1は固相合成Mg_(1-x)Zn_(x)Al_(2)O_(4):Mn蛍光体のXRDパターンを示す。Mn^(2+)をドープした全てのサンプルは、典型的なスピネル構造のXRDパターンを示し、UV励起により緑色の発光のみを示す。約520nmの発光は、Mn^(2+)イオンの^(4)T_(1)から^(6)A_(1)の遷移を起源とする[3]。Mn^(2+)イオンの発光色がマトリックスに占める位置環境に依存することはよく知られている。図2には、スピネル型のMg_(1-x)Zn_(x)Al_(2)O_(4):Mn蛍光体の結晶構造が示されている。Mn^(2+)イオンが、四面体サイトにあるとき緑色発光を示し、他方八面体サイトにあるとき赤色を示す。したがって、ドープされたMn^(2+)イオンは、スピネル構造における四面体Mg^(2+)サイトに置換しているであろう。」(1頁左欄37行?右欄7行)

1g 「

」(1頁右欄中 図1)

1h 「

」(2頁左欄上 図3)

1i 「図3には、2mol%のMn^(2+)イオンでドープされたスピネル蛍光体のVUV(147nm)励起による輝度が、マトリックス成分の関数として示されている。」(2頁左欄表下1?3行)

1j 「まとめると、我々は緑色発光の真空紫外線(VUV)励起蛍光体、Mg_(1-x)Zn_(x)Al_(2-y)Ga_(y)O_(4):Mnを慣用的な固相反応により製造した。Mg_(0.88)Zn_(0.10)Mn_(0.02)Al_(2)O_(4)組成物は、VUV(147nm)励起において、対照物質であるサリチル酸ナトリウムの13倍高い最大輝度を示した。」

イ 刊行物1に記載された発明
刊行物1は、「スピネル構造を有する(Mg_(1-x)Zn_(x))Al_(2-y)Ga_(y)O_(4):Mn緑色VUV蛍光体」(摘示1a)について記載するものである。その蛍光体は「真空紫外線励起蛍光体」(摘示1j)であり、具体例として、「Mg_(1-x)Zn_(x)Al_(2)O_(4):Mn蛍光体」(摘示1f)であってMn^(2+)2モル%で賦活され、x=0,0.1,0.3,0.5のもの(摘示1g、1h)が記載されていると認められ、そのx=0の蛍光体は、MgAl_(2)O_(4):Mn_(0.02)と表記できる。
そして、刊行物1の「多数の高効率の蛍光物質がさまざまな装置、たとえば照明や表示装置、に使用されている。プラズマディスプレイパネル(PDP)や水銀を含まない蛍光ランプを製造するためにVUV(147nm)で励起される高効率の蛍光物質が望まれている」(摘示1b)との記載から、刊行物1の「スピネル構造を有する(Mg_(1-x)Zn_(x))Al_(2-y)Ga_(y)O_(4):Mn緑色VUV蛍光体」(摘示1a)は、「プラズマディスプレイパネル」などを製造するために用いられる蛍光体であると認められる。
そうすると、刊行物1には、
「下記の化学式で表示される緑色蛍光体である,真空紫外線励起源とするプラズマディスプレイパネルなどを製造するために用いられる緑色蛍光体。
MgAl_(2)O_(4):Mn_(0.02)」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

ウ 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
本件補正発明の「発光素子用」とは、その請求項11(本件補正後。上記1(1)参照)に「前記発光素子はプラズマディスプレイパネルである…」とされていることから、引用発明の「プラズマディスプレイパネルなどを製造するために用いられる」ものを包含する。すると、引用発明の「真空紫外線励起源とするプラズマディスプレイパネルなどを製造するために用いられる緑色蛍光体」は、本件補正発明の「真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体」に相当する。
そして、本件補正発明に包含される、AがMg、BがAlの蛍光体(Mg_(x)Al_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y))は、本件補正明細書に「マグネシウムアルミネート(magnesium aluminate)母体」(段落【0036】)と記載されているとおりマグネシウムアルミネートを母体とする蛍光体であると認められるから、本件補正発明に包含されるその蛍光体と引用発明の蛍光体は、MgとAlとOとからなる母体であってMnにより付活される緑色蛍光体(「Mg-Al-O:Mn」と表示する。)である点で同じであるといえ、Mnの量yは、引用発明が0.02であって、本件補正発明の範囲(0.01≦y≦0.1)に包含される。
そうすると、両者は、
「下記で表示される緑色蛍光体である,真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
Mg-Al-O:Mn
y=0.02」
において一致するが、以下の点A,Bにおいて相違する。

A Mg-Al-Oが、本件補正発明は、Mg_(x)Al_(4-2x)O_(6-2x)で0.6≦x≦0.98であるのに対して、引用発明は、MgAl_(2)O_(4)で、x=1である点
B 緑色蛍光体が、本件補正発明は、粒度が1?5μmの範囲にあるものであるのに対して、引用発明は、粒度が明らかではない点

エ 相違点についての判断
(ア)相違点Aについて
本件補正発明に包含される緑色蛍光体(Mg_(x)Al_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y))は、本件補正明細書における「図1は実施例13によって製造された緑色蛍光体のX線回折パターンを示した図面である。図1に示すように実施例13によって製造された緑色蛍光体は主な相がスピネル(MgAl_(2)O_(4))相であることが分かる。」(段落【0057】)などの記載によれば、主な相がスピネル相である、マグネシウムアルミネートを母体とする蛍光体であると認められる。
スピネル相のマグネシウムアルミネートは、MgAl_(2)O_(4)と表記することができ(必要ならば、摘示1c等参照)、本件補正発明の式におけるx=1の場合に相当するものであるから、本件補正発明の蛍光体の母体は、xが1よりやや少なめの「非化学量論的」(段落【0036】)なマグネシウムアルミネートであるといえる。
引用発明のMgAl_(2)O_(4)母体はスピネル相である(摘示1f等)ところ、母体の組成を化学量論量から多少ずらすことにより物性などを調整することは蛍光体の分野における慣用技術であることから、引用発明の蛍光体の母体の組成を慣用技術に従い化学量論量から多少ずらしてxを0.98程度とすることは、当業者にとって格別の創作力を有するものではない。
そして、本件補正発明がその特定のxの範囲全体において格別顕著な効果を奏するものとも認められない。

(イ)相違点Bについて
引用発明の蛍光体は、「プラズマディスプレイパネルなどを製造するために用いられる」ものであるところ、その用途に用いる蛍光体の粒度として1?5μmは普通であるから、引用発明の蛍光体において、その粒度を上記用途における普通の蛍光体の粒度範囲である1?5μmとすることは、当業者にとって何ら困難なことではない。
そして、本件補正発明がその特定の粒度範囲全体において格別顕著な効果を奏するものとも認められない。

オ まとめ
以上によれば、本件補正発明は、その出願前頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

3 むすび
以上のとおり、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、その余について検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたから、この出願に係る発明は、平成19年12月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載した事項により特定されるとおりのもの(上記第2の1参照)であるところ、その請求項1は、再掲すれば以下のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「下記の化学式1で表示される,真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体であって,前記蛍光体の粒度が1?5μmの範囲にあることを特徴とする,真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
【化1】
A_(x)B_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式1)
前記化学式1において,AはMg又はZnであり,BはAl又はGaであり,0.6≦x≦1.4,0.01≦y≦0.1である。」

第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定は、「この出願については、平成19年 9月 3日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。」というものであって、その「理由2」とは、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明…に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
その「下記の請求項」は、「請求項:1-21」、すなわち全請求項であって、「下記の刊行物」は、「引用文献等:1」である「1.Toda.K.,"Green VUV phosphor with spinel structure,Mg_(1-x)Zn_(x)Al_(2-y)Ga_(y)O_(4):Mn",Journal of Materials Science Letters,Vol 22,p979-980,2003.07.01」であって、前記第2の2(2)の項における刊行物1である(以下、同様に「刊行物1」という。)。

第5 当審の判断
当審は、原査定のとおり、本願発明は刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、と判断する。

1 刊行物1に記載された事項及び刊行物1に記載された発明
刊行物1に記載された事項は、前記第2の2(2)の項アの(ア)に記載したとおりである。
そして、刊行物1には、同項イに記載したとおりの発明(以下、同様に「引用発明」という。)が記載されている。

2 対比・相違点についての判断
本願発明は、前記第2の2(1)の項で示したとおり、本件補正発明におけるxの範囲の上限0.98を1.4に上げたものである。
引用発明の蛍光体の組成は、本願発明の化学式1において、AがMg、BがAl、x=1、y=0.02に相当するものであって、化学式1に包含されものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比したとき、
「下記の化学式1で表示される,真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体であることを特徴とする,真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体。
A_(x)B_(4-2x)O_(6-2x):Mn_(y) …(化学式1)
前記化学式1において,AはMg又はZnであり,BはAl又はGaであり,0.6≦x≦1.4,0.01≦y≦0.1である。」
において一致し、以下のB’の点においてのみ相違することになる。

B’ 緑色蛍光体が、本願発明は、粒度が1?5μmの範囲にあるものであるのに対して、引用発明は、粒度が明らかではない点

この相違点は、前記第2の2(2)の項ウで示した相違点Bと同じであるから、相違点Bについて述べたのと同様の理由が適用できる。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 まとめ
よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-22 
結審通知日 2011-09-27 
審決日 2011-10-11 
出願番号 特願2004-337986(P2004-337986)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09K)
P 1 8・ 575- Z (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中西 祐子中野 孝一  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 橋本 栄和
細井 龍史
発明の名称 真空紫外線を励起源とする発光素子用緑色蛍光体,その製造方法及びこれを含む発光素子  
代理人 亀谷 美明  
代理人 アイ・ピー・ディー国際特許業務法人  
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