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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1252750
審判番号 不服2010-7938  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-14 
確定日 2012-02-22 
事件の表示 特願2006-532569「携帯電話によるマルチメディアコントローラ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日国際公開、WO2004/107099、平成19年 6月14日国内公表、特表2007-515698〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年4月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年4月30日(US)米国、2004年4月30日(US)米国)の出願であって、平成21年7月10日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月14日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年12月11日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成22年4月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年4月14日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
携帯電話をリモートコントローラとして用いて、該携帯電話とは別個の遠方機器におけるゲームを遠隔に制御する方法であって、
中央サーバと該中央サーバから遠隔地にある遠方機器との間で、ネットワーク接続を確立するステップと、
前記携帯電話と前記中央サーバとの間で、前記携帯電話による接続を確立するステップと、
前記ゲーム内のオブジェクトを動作可能にする前記遠方機器用のコマンドへと前記携帯電話用のコマンドを変換するソフトウェアを、前記携帯電話に設けるステップと、
前記中央サーバにて、前記携帯電話から前記遠方機器用のコマンドを受信するステップと、
前記中央サーバから、該遠方機器用のコマンドを前記遠方機器に送信して、前記ゲームの動作を前記遠方機器に持続させるステップと、
を含むことを特徴とするゲーム動作の遠隔制御方法。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-176610号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審が付与したものである。

(a)「【要約】
【課題】 ビデオデッキが設置されている場所に行かなくても、ビデオデッキに対する録画予約および再生などの操作が容易にできるようにする。
【解決手段】 ビデオ操作サーバ2は携帯電話機3に番組放送予定表を送信し、携帯電話機3がインターネット5を介してビデオ操作サーバ2にビデオデッキ4の操作信号を送信すると、ビデオ操作サーバ2は、これをビデオデッキ4に従った形式に変換する。変換された操作信号は、無線インターフェイス28、44を介してビデオデッキ4に送信される。これにより、携帯電話機3からの操作命令に基づいてビデオデッキ4を遠隔操作することができる。」

(b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、通信ネットワークを用いて遠隔制御によってテープ状の記録媒体を用いたビデオ録画再生装置の操作を可能とするビデオ操作サーバおよびビデオ操作方法に関する。」

(c)「【0046】なお、2つの無線インターフェイス28、44は必ずしも同種のものである必要はなく、異種のものが用いられてもよい。ただし、その場合、中継地点に何らかの変換機器が必要になる。また、ビデオ操作サーバ2とビデオデッキ4との間の通信インターフェイスとしては、無線インターフェイス28、44に代えて、有線通信インターフェイスを用いてもよいが、無線インターフェイス28、44を用いることによって、有線での配線が困難な場所であっても電波の届く範囲内であれば遠隔ビデオ操作が可能になるという利点がある。」

(d)「【0060】本実施の形態に係るビデオ操作サーバ2を用いてTV番組を予約する場合の手順について、図3および図4を参照して説明する。
【0061】まず、ステップS1において、操作者が携帯電話機3の操作部34を操作することにより、インターネット5を介してビデオ操作サーバ2にアクセスする。これにより、ステップS2において、携帯電話機3とビデオ操作サーバ2との間のセッションが確立される。
【0062】次に、ステップS3において、ビデオ操作サーバ2が、携帯電話機3にビデオ操作システム1において実行可能なメニューの一覧を送信する。なお、このメニューには、「TV番組予約システム」、「ビデオ再生システム」および「ビデオ状態確認システム」という3つの選択肢が含まれる。ステップS4において、操作者が「TV番組予約システム」を選択した場合には、以下に説明するような一連の操作を行う。
【0063】「TV番組予約システム」を選択した場合に、携帯電話機3のディスプレイ36に表示されるトップ画面は、図4(a)に示すようなもの(表示A)である。この画面において、番組表、出演者名検索またはジャンル検索のいずれかを選択することができる。ここで、出演者名検索またはジャンル検索のいずれかを選択した場合は、操作者の指定した出演者またはジャンルにあてはまる番組が番組データベース26の記憶内容に基づいて検索され、該当する番組を容易に見つけ出すことができる。
【0064】例えば、出演者名検索を選択すると、図4(b)に示されているような画面が携帯電話機3のディスプレイ36に表示される。図4(b)に示された出演者名入力画面で所望の出演者名(図4(b)の例では「モーニン」)が入力されて確定ボタンが押下されると、番組データベース26内で出演者の検索が行われ、そして、入力した出演者が出演している番組の一覧がディスプレイ36に表示される。この画面に表示された番組のなかから選択された番組の「録画予約」が選択されると、ステップS5において、上述のようにして選択された番組(録画予約時間を含む)に関するデータおよびビデオデッキに関するデータを含むビデオ操作指示が、携帯電話機3からビデオ操作サーバ2に送信される。
【0065】そして、ステップS6では、ビデオ操作サーバ2の変換部21aにおいて、携帯電話機3から受信した番組の録画予約に関する操作指示を、指定されたビデオデッキに係る制御ソフトを用いて、このビデオデッキに従った形式の操作信号に変換する。このようにして、作成された操作信号は、ビデオ操作サーバ2のRAM24に格納される。
【0066】次に、ステップS7において、ビデオ操作サーバ2が、無線インターフェイス28、44を介して、選択されたビデオデッキ4にアクセスする。なお、選択されたビデオデッキによっては、ルータ25を介してビデオデッキにアクセスをしてもよい。このアクセスにより、ステップS8において、ビデオ操作サーバ2とビデオデッキ4との間のセッションが確立される。
【0067】両者のセッションが確立された後、ステップS9において、操作されるべきビデオ操作コマンドが、ビデオ操作サーバ2のRAM24から無線インターフェイス28、44を経由してビデオデッキ4に送信される。ビデオデッキ4は、受信したビデオ操作コマンドをRAM42のバッファ領域に格納する。
【0068】そして、ステップS10において、RAM42に格納されたビデオ操作コマンドがビデオ装置部47に供給され、ビデオ操作コマンドに基づいてビデオ装置部47において録画を実行する予約時間が設定される。その後、設定された予約時間が来ると、ステップS11において、指定された番組が録画される。
【0069】なお、ビデオデッキ4には、携帯電話機3からの指令に基づいて、録画予約信号と共に、録画開始前に実行されるテープ巻き取り信号が送信されてもよい。これにより、録画開始前にテープを所望位置まで巻き戻してから録画を開始することができる。
【0070】また、ビデオデッキ4には、携帯電話機3からの指令に基づいて、録画予約信号と共に、録画終了後に実行されるテープ巻き取り信号が送信されてもよい。これにより、録画終了後にテープを頭だしする手間が省けるので、迅速に再生画像を見ることが可能になる。携帯電話機3の操作者は、後述するような手順でビデオ状態を確認することに基づいて、上述した録画開始前或いは録画終了後に実行されるテープ巻き取り信号を録画予約信号とともにビデオデッキ4に送信する旨の指令をビデオ操作サーバ2に送信する。このような巻き取り信号を録画予約信号とともに送信するのは、画像記録媒体がディスクではなく、本実施の形態のようなテープである場合には極めて有効である。」

よって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。

「通信ネットワークを用いて遠隔制御によってビデオ録画再生装置の操作を可能とするビデオ操作方法であって、
携帯電話機3とビデオ操作サーバ2との間のセッションが確立されるステップを含み、
携帯電話機3からビデオ操作サーバ2にビデオ操作指示が送信されるステップを含み、
ビデオ操作サーバ2の変換部21aにおいて、携帯電話機3から受信したビデオ操作指示を、ビデオデッキ4に従った形式の操作信号に変換するステップを含み、
ビデオ操作サーバ2が、ルータ25を介して選択されたビデオデッキ4にアクセスし、ビデオ操作サーバ2とビデオデッキ4との間のセッションが確立されるステップを含み、
操作されるべきビデオ操作コマンドがビデオ操作サーバ2からビデオデッキ4に送信されるステップを含む、
ビデオの遠隔制御方法。」

原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-312524号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審が付与したものである。

(e)「【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。図1ないし図3は、本発明の第1の実施の形態に係る顧客の待ち時間の活用方法について説明するために参照する図である。
【0008】図1は、本発明の一実施の形態に係る顧客の待ち時間の活用方法を実施するシネコン30(シネマコンプレックス、複合映画館)を示す図である。このシネコン30は、入口32に続くロビー34を有すると共に、そのロビー34の奥の方(図中下方)の廊下35の両側には8つの映画鑑賞室36を有している。各映画鑑賞室36は1つのスクリーン38を有すると共に、300席?500席の観客席を有している。
【0009】ロビー34はホテルのロビーのように広くゆったりしていて、チケット販売コーナー39も設けられており、シネコン30が混雑しているときはそのチケット販売コーナー39から長くロビー34内にお客の行列ができることになる。
【0010】そのような行列を作っているお客から見易いようにロビー34の天井からは、図2に示すように、CRT(ブラウン管)又はLCD(液晶ディスプレー)等を用いたディスプレー41(表示装置)が吊り下げられて設けられている。そしてこのディスプレー41の側部には図示してないスピーカー(音声装置)が設けられている。
【0011】図3に示すように、ディスプレー41にはコンピュータシステム24が接続され、このコンピュータシステム24はインターネット10(コンピュータネットワーク)を介して、情報提供企業のコンテンツサーバ12が接続可能となっている。
【0012】このコンテンツサーバ12には複数のデータ格納装置14?17が接続されており、これらのデータ格納装置14?17には例えば、ビンゴゲーム等の各種ゲーム等を行うときに用いるデータがダウンロード可能に格納されている。
【0013】ところで近頃は、ロビー34で行列に並んでいるお客のほとんどは携帯電話機20を持っており、この携帯電話機20から情報提供企業のコンテンツサーバ12のアドレスにダイヤルキーでアクセスすることにより、携帯電話機20は図3に示すように、通信会社(NTTドコモ社等)が回線の途中に配置したインターネット接続制御システム22(iモードシステム等)及びインターネット10を介して、情報提供企業のコンテンツサーバ12と接続するすることができるようになっている。
【0014】このような本発明の第1の実施の形態に係る顧客の待ち時間の活用方法について、以下に説明する。図1に示すように、シネコン30が混雑してチケット販売コーナー39の前や、廊下35の入口の前に長い行列ができたときは、オペレータがコンピュータシステム24の所定のボタンを押すことにより、ディスプレー41に司会者の顔が映ると共に、スピーカからその司会者の声が聞こえてくる。その司会者は例えば、「さあ皆さん、退屈しのぎにゲームをやりませんか?」と行列に並んでいる多勢のお客に話かけてくる。
【0015】このような場合に行うことができるゲームとしては、例えばビンゴゲームがある。ビンゴゲームとは、まず、縦横各々5列、中央がフリー(真先に無条件で孔をあけることができる場所)で、計24ヶの数字がランダムに並んでいて、その数字の部分を押すと裏側に倒れて折れ曲がることにより孔があくような番号シートを各人に配る。
【0016】そして、司会者が番号を1つずつ発表していき、各人が持っている番号シートに同じ番号があったらそこを押し倒して孔をあけ、縦横斜めのいずれかの方向に孔が4つ並んだら「リーチ」と声を上げ、その後孔が5つ並んだら「ビンゴ」と声を上げてゲームが終了したことを司会者に知らせる。一番先に「ビンゴ」と声を上げた人に一番高価な商品が与えられ、順位が後になるに従って賞品の等級が下がっていくようになっている。
【0017】以上は普通のビンゴゲームのやり方であるが、本発明の第1の実施の形態においては、まず司会者が、「さあ皆さん、退屈しのぎにゲームをやりませんか?」と声をかけた後、行列している多勢のお客に携帯電話機20をかけることを勧め、退屈しているお客は持っている携帯電話機20を取り出す。そして司会者に勧められてお客はディスプレー41の画面に表示されたコンテンツサーバ12のアドレス番号のキーを押して、携帯電話機20を情報提供企業のコンテンツサーバ12に接続する。
【0018】するとコンテンツサーバ12から携帯電話機20に、普通のビンゴゲームに使う番号シートに相当するデータがダウンロードされ、この番号シートに相当するデータは、それに含まれている24ヶの番号が当然他の人と異なるようにアレンジされている。
【0019】行列しているお客が上記ダウンロードを終了すると、インターネット10を介して予めコンテンツサーバ12と接続されているコンピュータシステム24に、コンテンツサーバ12から1つの番号データがダウンロードされ、この番号を司会者が声で伝えると共にディスプレー41の画面にもその番号が表示される。
【0020】この番号を聞いたり見たりしたお客は、自分にダウンロードされた前記番号シートに相当するデータをチェックして、同じ番号があったらその番号キーを押す。このようにして押した番号が5つ並んでビンゴが成立したら、コンテンツサーバ12からコンピュータシステム24にそのことが伝えられ、ディスプレー41の司会者が「どうもお目出度うございます」と祝福のメッセージを送り、他の人にこの中の誰かがビンゴが成立したことを知らせる。
【0021】そしてコンピュータシステム24からインターネット10を介して携帯電話機20に、ビンゴ成立の証明書とコンピュータシステム24の特典の内容(優待、割引等)を知らせるデータが送られ、そのお客は後でその証明書のデータをシネコン30の係員に見せることによりその特典を受けることができる。
【0022】このようにしてディスプレー41及び音声装置により誘導された複数のお客が携帯電話機20を操作して、ビンゴゲームという共同作業に加わってそれを楽しむことにより、顧客の待ち時間を有効に活用できるようにしたので、行列しているお客の苦痛や退屈を解消することができる。そして、ひいてはシネコン30の集客力をも向上させることができる。
【0023】図4は、本発明の第2の実施の形態について説明するために参照する図である。前記第1の実施の形態においては、お客がビンゴゲームをやる場合について説明したが、この第2の実施の形態においてはお客がすごろく(双六)のゲームをやることができるようにしたものである。
【0024】ディスプレー41及び携帯電話機20が共にインターネット10を介してコンテンツサーバ12に接続される点は前記第1の実施の形態と同様であるが、この第2の実施の形態においては、ディスプレー41には図4に示すようなすごろくの絵図がダウンロードされ、携帯電話機20には順番に、「サイコロを振りなさい」という意味の信号がコンテンツサーバ12から送られる。
【0025】これにより「サイコロを振りました」という意味の信号を携帯電話機20からコンテンツサーバ12に送ると、コンテンツサーバ12は「あなたがサイコロを振ったらこういう目が出ました」という結果のデータをコンピュータシステム24に送り、ディスプレー41の右上にその目の画像を表示する。
【0026】この結果ディスプレー41において、サイコロを振った人のコマ(カーソル)を三つ進め、止まった所のコメントを拡大してディスプレー41に表示し、そのコメントの言う事を聞いてコマを再び移動させてから停止させる。このようなことをお客が交互に繰り返して、誰が一番早く「上がり」に到着することができるかを競うことができる。このゲームは人数が5,6人位の少ないときに適している。
【0027】図5は、本発明の第3の実施の形態について説明するために参照する図である。上記第1,第2の実施の形態においてはゲームをやる場合について説明したが、この第3の実施の形態においては単にクイズに対して答える形式のものである。
【0028】ディスプレー41には図5に示すような画面がコンテンツサーバ12からダウンロードされ、問題の内容の文章と、答の内容の3つの文章が表示されると共に、司会者が問題の文章を読み上げた後、3つの答の文章を読み上げる。これに対し行列のお客はよく考えた上、所定の時間内に?のいずれかの数字のキーを押してその信号をコンテンツサーバ12にアップロードする。
【0029】そして所定時間経過後に正解の番号とその文章の欄だけがそれまでと違う色に変色して、正解の番号のアナウンスが流れる。そしてこれと同時に、コンテンツサーバ12から各々の携帯電話機20に、正解である旨の信号、或は誤りである旨の信号が送られると共に、それらの信号が携帯電話機20のメモリに記憶される。
【0030】このようにして何度もクイズが出題されて、所定の回数のクイズに対する解答がすべて終わったら、例えば全問正解だった人はそのことをメモリから再生してシネコン30の係員に見せることにより、それに見合った特典を受けることができる。
【0031】なお、前記実施の形態においては本発明に関してビンゴゲームとすごろくのゲームを用いた場合について説明したが、本発明に関してそれ以外のゲームを用いてもよい。また前記実施の形態においては本発明に関してゲームやクイズを用いた場合について説明したが、ゲームやクイズ以外のものを本発明に関して用いてもよい。
【0032】また、前記実施の形態においてはスピーカーが付いたディスプレー41について説明したが、ディスプレー41にスピーカーが付いてないものを用いてもよいし、或はディスプレー41の代りにスピーカーだけを用いてもよい。
【0033】また、前記実施の形態においてはシネコン30について説明したが、その他にテーマパークとか劇場等、お客が行列を作るような場所であればどのような場所でも本発明の実施が可能である。
【0034】以上、本発明の実施の形態について具体的に述べてきたが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて、その他にも各種の変更が可能なものである。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の顧客の待ち時間の活用方法によれば、表示装置及び/又は音声装置により誘導された複数のお客が各々の携帯電話機を操作して所定の共同作業に加わることにより顧客の待ち時間を有効に活用できるようにしたので、行列に並んでいるお客の苦痛や退屈を解消することができる。」

よって、引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。

「お客がすごろく(双六)のゲームをやることができるようにしたものであって、
ディスプレー41及び携帯電話機20が共にインターネット10を介してコンテンツサーバ12に接続され、ディスプレー41にはすごろくの絵図がダウンロードされ、携帯電話機20には順番に、「サイコロを振りなさい」という意味の信号がコンテンツサーバ12から送られ、「サイコロを振りました」という意味の信号を携帯電話機20からコンテンツサーバ12に送ると、コンテンツサーバ12は「あなたがサイコロを振ったらこういう目が出ました」という結果のデータをコンピュータシステム24に送り、ディスプレー41の右上にその目の画像を表示し、この結果ディスプレー41において、サイコロを振った人のコマ(カーソル)を三つ進め、止まった所のコメントを拡大してディスプレー41に表示し、そのコメントの言う事を聞いてコマを再び移動させてから停止させる、方法。」

4.対比
本願発明と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「携帯電話機3」は、本願発明の「携帯電話」に相当する。そして、引用発明1の携帯電話機3(携帯電話)はビデオデッキ4を遠隔操作するものであるから、本願発明の「携帯電話をリモートコントローラとして用いる」ものに相当する。また、引用発明1の遠隔操作される「ビデオデッキ4」は、本願発明の携帯電話とは別個の「遠方機器」に相当する。したがって、引用発明1と本願発明とは、「携帯電話をリモートコントローラとして用いて、該携帯電話とは別個の遠方機器を遠隔に制御する方法」である点で共通する。

引用例1の段落【0054】には、家庭に設置されている複数台のビデオデッキを選択して操作することが記載されており、ビデオ操作サーバ2が複数台のビデオデッキを中央で制御するものといえる。また、引用例1の段落【0053】には、ビデオ操作サーバ2内のユーザデータベース27に、ビデオデッキ4を操作するユーザのIDや氏名、住所、携帯電話番号を記憶することが記載され、段落【0055】には、操作者が自分のユーザデータベースの内容を確認できることが記載されていることから、複数のユーザがビデオデッキの操作を行うことが示唆されているといえる。また、各ユーザの家庭内に設置されたビデオを遠隔で制御するものであることから考えても、多数のユーザが操作するものと考えるのが自然であるといえる。つまり、ビデオ操作サーバ2は、複数のユーザの操作を中央で受け付けるものといえる。したがって、引用発明1の「ビデオ操作サーバ2」は、本願発明の「中央サーバ」に相当するといえる。
また、ルータとはネットワーク上を流れるデータを他のネットワークに中継する機器をさし、引用発明1のルータはビデオ操作サーバ2(中央サーバ)とビデオデッキ4(遠方機器)との間のセッションを確立するものであるから、「ネットワーク接続を確立する」ものであるといえる。さらに、ビデオ操作サーバ2(中央サーバ)とビデオデッキ4(遠方機器)は離れた場所にあるから、ビデオデッキ4(遠方機器)はビデオ操作サーバ2(中央サーバ)から遠隔地にあるものといえる。よって、引用発明1と本願発明とは、「中央サーバと該中央サーバから遠隔地にある遠方機器との間で、ネットワーク接続を確立するステップ」を含む点で一致する。

引用発明1は、携帯電話機3(携帯電話)とビデオ操作サーバ2(中央サーバ)との間のセッションが確立されるものであるから、引用発明1と本願発明とは、「前記携帯電話と前記中央サーバとの間で、前記携帯電話による接続を確立するステップ」を含む点で一致する。

引用発明1の携帯電話機3が送信する「ビデオ操作指示」は、機器を遠隔制御するために携帯電話から出力され、機器の所定機能の実行を指示するための信号であるといえる。そして、本願発明の「携帯電話用のコマンド」は、本願明細書の段落【0013】を参照すると、「携帯電話で入力されたコマンド」に対応するものであるから、引用発明1の携帯電話機3が送信する「ビデオ操作指示」は、本願発明の「携帯電話用のコマンド」に相当する。また、引用発明1は、送信されたビデオ操作指示をビデオデッキ4に従った形式の操作信号に変換するものであり、引用発明1の変換された「操作信号」は、本願発明の「遠方機器用のコマンド」に相当する。したがって、引用発明1と本願発明とは、「前記遠方機器用のコマンドへと前記携帯電話用のコマンドを変換する手段を設けるステップ」を有する点で共通する。

引用発明1では、携帯電話機3(携帯電話)がビデオ操作サーバ2(中央サーバ)にビデオ操作指示(コマンド)を送信するものであるから、引用発明1と本願発明とは「前記中央サーバにて、前記携帯電話からコマンドを受信するステップ」を有する点で共通する。

引用発明1では、変換された操作信号(遠方機器用のコマンド)は、ビデオデッキ4(遠方機器)に送信され、これにより、携帯電話機3からの操作命令に基づいてビデオデッキ4を遠隔操作するものであるから、引用発明1と本願発明とは、「前記中央サーバから、該遠方機器用のコマンドを前記遠方機器に送信するステップ」である点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明1とは、
「携帯電話をリモートコントローラとして用いて、該携帯電話とは別個の遠方機器を遠隔に制御する方法であって、
中央サーバと該中央サーバから遠隔地にある遠方機器との間で、ネットワーク接続を確立するステップと、
前記携帯電話と前記中央サーバとの間で、前記携帯電話による接続を確立するステップと、
前記遠方機器用のコマンドへと前記携帯電話用のコマンドを変換する手段を設けるステップと、
前記中央サーバにて、前記携帯電話からコマンドを受信するステップと、
前記中央サーバから、該遠方機器用のコマンドを前記遠方機器に送信するステップと、を含むことを特徴とする遠隔制御方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明の遠隔制御方法は、ゲーム及びその動作を遠隔制御するものであるのに対し、
引用発明1の遠隔制御方法は、ビデオを制御するものである点。

(相違点2)
本願発明の前記遠方機器用のコマンドは、前記ゲーム内のオブジェクトを動作可能にするものであるのに対し、
引用発明1のコマンドは、前記ゲーム内のオブジェクトを動作可能にするものではない点。

(相違点3)
本願発明は、コマンドを変換するソフトウェアを前記携帯電話に設け、前記携帯電話にて変換されたコマンドを、前記中央サーバが受信するものであるのに対し、
引用発明1は、コマンドを変換する手段がソフトウェアであるか否かが明確ではなく、また、コマンドを変換する手段が携帯電話ではなく、中央サーバに設けられ、中央サーバがコマンドを受信後に変換するものである点。

(相違点4)
本願発明は、遠方機器用のコマンドを前記遠方機器に送信して、前記ゲームの動作を前記遠方機器に持続させるものであるのに対し、
引用発明1は、前記ゲームの動作を前記遠方機器に持続させるものではない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。

(a)相違点1、2及び4について
引用発明2は、携帯電話機20からインターネットを介してコンピュータシステム24に信号を送り、ゲームをおこなうものであり、ネットワークを介した相手側機器は遠方機器であるといえる。また、引用発明2のすごろくゲームのコマ(カーソル)は、「ゲーム内のオブジェクト」であって、すごろくは、コマを動かしてゲームを続けるものである。したがって、引用発明2は、ゲームを制御する遠隔制御方法であって、ゲーム内のオブジェクトを動作可能にする遠方機器用のコマンドを備え、遠方機器用のコマンドを遠方機器に送信して、ゲームの動作を遠方機器に持続させるものであるといえる。
そして、引用発明1及び2は、マルチメディア機器の制御という共通する技術分野に属する発明であり、さらに、携帯電話を用いた入力によって入力の利便性を高めるという共通の課題を有しているといえるから、引用発明1に引用発明2を適用して、引用発明1の遠隔制御方法をゲーム及びその動作を制御するものとし、引用発明1の前記遠方機器用のコマンドを、前記ゲーム内のオブジェクトを動作可能にするものとし、引用発明1の遠方機器用のコマンドを前記遠方機器に送信して、前記ゲームの動作を前記遠方機器に持続させるものとすることで、上記相違点1、2及び4に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

なお、引用発明2だけでなく、携帯電話を入力機器として遠方機器のゲームのオブジェクトの動作を制御することは特開2003-62336号公報(特許請求の範囲、段落【0038】の「複数の遊技者が各携帯電話3からインターネット3を介してサーバ1にアクセスし、・・・対戦ゲームを行う」の記載、及び段落【0114】の「持ち駒の動作で勝負を決するゲーム」の記載参照)、特開2003-6532号公報(段落【0077】ないし【0079】、図16のアミューズメントパーク等でのロボットの遠隔制御サービスの記載参照)、特開2001-38057号公報(特許請求の範囲、段落【0022】の麻雀ゲームの記載参照)にも記載されるとおり本願優先日前に周知の技術である。

また、ゲームの種類としてどのようなものを採用するかは当業者が適宜選択し得る事項であり、例えばゲームにおいて宇宙船が飛行し続けるようなものを想定することなどにも困難性はない。

(b)相違点3について
コマンドの変換をどこで行うかは当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項である。また、機器を操作するコマンドの変換を操作機器側でおこなうことは本願優先日前に周知の技術(<1>特開2003-23680号公報、段落【0023】及び【0024】、<2>特開平11-327827号公報段落【0024】、<3>特開2002-262372号公報段落【0034】、【0035】、【0041】ないし【0056】参照。)である。
そして、変換手段をソフトウェアとすることも通常のことであるから、引用発明1において、コマンドを変換するソフトウェアを前記携帯電話に設け、前記携帯電話にて変換されたコマンドを、前記中央サーバが受信するように構成することで上記相違点3に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明が奏する効果は当業者が引用発明1、引用発明2及び周知技術から予想できる範囲内のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-22 
結審通知日 2011-09-27 
審決日 2011-10-11 
出願番号 特願2006-532569(P2006-532569)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須藤 竜也  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 稲葉 和生
佐藤 匡
発明の名称 携帯電話によるマルチメディアコントローラ  
代理人 英 貢  
代理人 杉村 憲司  

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