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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01R
管理番号 1252957
審判番号 不服2010-16637  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-23 
確定日 2012-02-29 
事件の表示 特願2006-521918号「圧縮可能な導体を有するオフセットコネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月10日国際公開、WO2005/013428、平成19年 3月29日国内公表、特表2007-507832号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯
本願は、平成16年7月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年8月1日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成22年3月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成22年7月23日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判請求と同時に手続補正がなされ、さらに、当審より平成23年6月6日付けで拒絶理由が通知されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、審判請求と同時に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
対向する2つの平面上のオフセットされた位置にある第1および第2の結合部の相互接続を行うコネクタにおいて、
前記コネクタは、縦方向に貫通する内部空洞を有する棒状体を屈折した形状の中空の誘電体と、その中空の誘電体の内部空洞内に設けられて導電路を形成する導体とにより構成され、その導電路を形成する導体の両端の第1および第2の端部は前記第1および第2の結合部とそれぞれ結合され、
前記屈折した形状の中空の誘電体は前記第1および第2の端部から前記平面に垂直に延びる直線状の第1および第2の部分と、それら直線状の第1および第2の部分の前記第1および第2の端部と反対側の端部を連結している第3の部分とよりなる屈折した形状に形成され、
前記屈折した形状の中空の誘電体の内部空洞内に設けられた導体は、前記屈折した形状の中空の誘電体の前記直線状の第1および第2の部分の少なくとも一方の内部空洞内において圧縮可能な導体を含んでおり、
前記屈折した形状の中空の誘電体のこの直線状の部分の内部空洞内に位置して前記圧縮可能な導体から前記第1および第2のいずれかの結合部と結合される端部まで延在する導体はそれを囲む誘電体の内部空洞壁に対して滑動可能に構成されているコネクタ。」

3.引用刊行物とその記載事項
刊行物1:特表平6-505359号公報
刊行物2:欧州特許出願公開第1243931号明細書
刊行物3:実願平3-71518号(実開平5-17939号)のCD-ROM

(1)刊行物1
当審が通知した拒絶理由にて引用され、本願優先日前に頒布された刊行物1には、「電気コネクタ」に関して、図面とともに以下の記載がある。

ア.「本発明によれば、コネクタは回路盤の導体パッドに接続される回路間の複数の伝播経路で電気信号の伝播に設けられ、各回路はそれに接続されるパッドでのある特性インピーダンスを示す。例えば、コネクタが一対の回路盤の対向面間に挟持でき、複数のコネクタが積層回路盤の回路間に信号伝播経路を形成することに利用できる。各コネクタが一対の回路盤上の導体パッドと係合できる対向端を有する複数の弾性的かつ電気的導体信号伝播接続手段を具備する。このような導体接続手段は、そのそれぞれが弾性的な詰め込まれた要素を具備でき、支持構造の絶縁手段であって各開口に対してまたそこに支持される導体接続手段に対して隣接関係で導体接地手段を設けるものにより支持され、導体接地手段は回路盤の接地要素への接続のために配置される。
本発明の重要な特徴によれば、各信号-伝播接続手段に関する接地手段及び絶縁手段の構成及び特性は各信号-伝播接続手段により接続される回路の特性インピーダンスを整合するための一定特性インピーダンスを得るものである。」(公報第3ページ左下欄第25行?右下欄第14行)(下線部は当審にて付与。以下同様)

イ.「図8は本発明のインピーダンス制御概念を利用するコネクタ90の別の構成を示す。図示するように、接続装置が設けられ二つの往復移動可能なプランジャ91及び92のアセンブリと弾性圧縮ボタン94とを具備し、該アセンブリは絶縁誘電物質からなる二つのブロック部材97及び98であってブロックを形成しコネクタ10のブロック部材33及び34に類似するものにおいて直線に合わされた開口95及び96により形成される開口に取り付けられる。プランジャ91及び92は減少された直径からなる端子端部分91A及び92Aを有しさらにブロック部材97及び98は開口95及び96の上部及び下部に減少される直径のネック部分99及び100で形成されるので、プランジャ91及び92の端子端部分91A及び92Aだけは図示されるように上部及び下部部材97及び98から上方向及び下方向に突出する。かくしてその二つのプランジャ及びその間に入るボタンは弾性圧縮信号伝播接続経路アセンブリであってアセンブリブロック部材97及び98で捕捉され保持されるものを構成する。コネクタ90が一対の回路盤(図示しない)間にアセンブリされるときに、端部分91A及び92Aは導電性ボタン94の弾性により圧力をかけられて回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドと圧力係合することが理解されるであろう。
本発明によれば、プランジャ91A及び92Aの外直径、減少される直径端部分91A及び92Aを除き、さらにボタン94に外直径は直線に合わされた開口95及び96の内直径以下にして、図4に示すように、コネクタl0の空気空間86に類似する空気空間102を設け、これにより予め選択されたインピーダンス値が空気空間の選択により得ることができる。
図示された構成において、下部プランジャ92の長さは実質的にアセンブリを容易にするのに望ましいと分かる上部プランジャ91の長さ以下である。図示する要素104及び103のような集中化要素が任意に設けられてもよい。またアセンブリの位置は頂部により短いプランジャを設けるためにさらに重力の逆の効果を回避するために逆にしてもよいことが着目される。
図8に示される部材97及び98は、アルミニュームのような、導電性物質からなる二つの壁105及び106間に取り付けられ、これらはコネクタ110で使用されるものに類似する導電性ボタンを介してのように回路盤の接地パッドに接続される。」(公報第6ページ左下欄第1行?右下欄第8行)

ウ.「図1は6つのコネクタ10-15であって本発明の原理により構成されるもの及び回路盤アセンブリ16に示され取り付けられるものを示す。アセンブリ16は4つの回路盤17、18、19及び20であって積層に取り付けられまた六つのボルト21-26により一体に固定されるものを具備する。」(公報第4ページ右上欄第2?6行)

エ.Fig.1には、各回路盤は、平面からなっているとともに、コネクタ10、11、12が対向する2つの平面からなる上下の回路盤の間に位置していることが示されている。

オ.Fig.8には、絶縁誘電物質の直線に合わされた開口95及び96によって形成される開口内であって、プランジャ91及び92の間に位置する弾性圧縮ボタン94から、プランジャ91及び92が、回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドと係合する端部分91A及び92Aまで延びていることが示されている。さらに、上記イ.に記載されているようにプランジャ91及び92及びその端部分91A及び92Aが往復移動する際、開口95、96の内壁に対して往復移動することが、このFig.8から推認できる。

以上のア.?ウ.の記載と、エ.のFig.1に示された事項、オ.のFig.8に示された事項とを総合すると、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。

「対向する2つの平面からなる回路盤の間に設けられ、上下の回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドと圧力係合するコネクタ90において、
コネクタ90は、二つのブロック部材97及び98であってブロックを形成し、直線に合わされた開口95及び96によって形成される開口を有する絶縁誘電物質と、絶縁誘電物質の直線に合わされた開口95及び96に取り付けられるプランジャ91及び92とにより構成され、プランジャ91及び92の端部分91A及び92Aは、回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドと係合し、
絶縁誘電物質の直線に合わされた開口95及び96によって形成される開口内におけるプランジャ91及び92の間に弾性圧縮ボタン94を備えたものであって、
絶縁誘電物質の直線に合わされた開口95及び96によって形成される開口内に位置する弾性圧縮ボタン94から、プランジャ91及び92が、回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドと係合する端部分91A及び92Aまで延びており、開口95、96の内壁に対して往復移動可能である、接続される回路のインピーダンスを整合させている電気コネクタ。」

(2)刊行物2
当審が通知した拒絶理由にて引用され、本願優先日前に頒布された刊行物2には、「半導体集積デバイスのためのテストプローブ」に関して、図面とともに以下の記載がある。

カ.「[0031] With reference to the drawings, particularly to Figure 3 thereof, a testing head according to the invention, designed for contacting an electronic integrated device to be tested, is shown generally at 100 in schematic form.
[0032] For simplicity, only the testing head portion that comprises two plate-like holders or dies for the movable contact probes is shown, it being understood that the testing head of this invention could accommodate a range of different dies and movable probes.
[0033] The testing head 100 has an upper die 12A and a lower die 12B, both formed with guide holes 13A, 13B, respectively, and adapted to receive a contact probe 14.
[0034] The contact probes 14 have contact tips 15 arranged to abut onto a plurality of contact pads 16 of an electronic integrated device, shown schematically at 17, to be tested.
[0035] In the embodiment of Figure 3, the testing head 100 is shown to include loose-mounted probes that have a further contact tip 18 at another end for contacting a micro-contact strip or space transformer 19. It should be understood, however, that the testing head 100 could be provided with fixed probes instead.
[0036] Advantageously according to the invention, each contact probe 14 is formed with a rigid arm 20, extending laterally from a body 21 of the probe 14. In particular, the rigid arm 20 extends along a perpendicular or otherwise sloping direction with respect to the probe 14, i.e. has a longitudinal axis B-B lying perpendicularly or at an angle to a longitudinal axis A-A of the contact probe 14. The arm 20 is terminated with the contact tip 15 of the probe 14 for abutting the contact pads 16 of the electronic integrated device 17 to be tested.
[0037] Accordingly, the point where the tip 15 of the probe 14 meets the pad 16 will be offset from the longitudinal axis A-A of the probe 14.
[0038] Advantageously according to the invention, the arm 20 is made rigid, and the probe 14 is designed to deform in a different region, called the deflection region 22, of its body 21. 」
(当審仮訳:
「[0031]特にFig.3の図面を参照すると、発明の試験ヘッドは、試験のために電子集積デバイスに接触するための、図番100で概略示されるようなものである。
[0032]簡単のために、動きうる接触プローブのための、2つの板状の保持具かダイからなる試験ヘッドのみが示されており、この発明の試験ヘッドが、さまざまなダイと動きうる接触プローブを提供できることが理解できる。
[0033]試験ヘッド100は、上方のダイ12Aと下方のダイ12Bを備え、両者はガイド孔13A、13Bを有しており、接触プローブ14を受け入れるようになっている。
[0034]接触プローブ14は、接点15を備え、試験のために17で示される電子集積デバイスの複数の接触パッド16に接するようになっている。
[0035]Fig.3の実施例において、試験ヘッド100が、マイクロコンタクトストリップかスペーストランスフォーマ19に接触するために、他方端に、さらに接点18を備えた、緩く取り付けられたプローブを含むことを示している。しかしながら、試験ヘッド100は、代わりに固定プローブからなってもよいことが理解される。
[0036]有利には、発明によると、各々の接触プローブ14は、リジッドアーム20が、プローブ14のボディ21から横へ延びるものからなっている。特に、リジッドアーム20は、プローブ14から垂直に、さもなければ傾斜方向に延びている。例えば、B-B軸が接触プローブのA-A軸と垂直、あるいは、ある角度が付いたものとなっている。アーム20の終点が、プローブ14の接点15からなり、電子集積デバイス17の接触パッド16に、試験のために接触する。
[0037]よって、プローブ14の接点15が、接触パッド16と接する場所は、プローブ14のA-A軸からオフセットされている。
[0038]有利には、この発明によると、アーム20は固定され、プローブ14は、ボディ21の変形箇所22と呼ばれる、違う箇所で変形する。」)

キ.Fig.3には、縦に延びるボディ21と、ボディ21から横へ延びて、さらに下へ屈折した接点15が接触パッド16に接するリジッドアーム20とからなるプローブ14が示されている。

以上のカ.の記載と、キ.の図面に示された事項とを総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2記載の発明」という)が記載されている。

「スペーストランスフォーマ19に接点18で接触して縦に延びるA-A軸を有するボディ21と、ボディ21から横へ延び、下へ屈折した接点15を有し、A-A軸からオフセットされた位置で電子集積デバイス17の接触パッド16に接触するリジッドアーム20とからなり、途中に変形箇所22を備えるプローブ14。」

(3)刊行物3
当審が通知した拒絶理由にて引用され、本願優先日前に頒布された刊行物3には、「同軸コネクタおよび配線システム」に関して、図面とともに以下の記載がある。

ク.「【0008】
【実施例】
次に本考案の実施例を図面に基いて詳細に説明する。
図1および図2は本考案に実施例の同軸コネクタを示したものである。この同軸コネクタ1は丸棒状の中心導体11の外周に絶縁物12を介してパイプ状の外部導体13を同心状に配置されている。中心導体11の一端には雄ねじ111が、また他端には雌ねじ112がそれぞれ形成されている。
【0009】
この中心導体11の外径をd、絶縁物12の外径をDとし、また絶縁物12の誘電率をεrとすれば、この同軸コネクタ1のインピーダンスZ^(0) は次式で表される。」

ケ.「【0011】
よって、これら外径d,外径をD,誘電率εrなどの値を適宜な値に選定することで、同軸コネクタ1のインピーダンスZ^(0) をこれが接続される信号ラインやグランドラインなどのストリップラインのそれと等しくなるように設定することができる。そしてこのようなインピーダンスのマッチングを行うことで、高周波信号ラインを備えた高周波用の基板実装構造においてこの同軸コネクタを好適に使用することができる。」

コ.「【0013】
図4(a) ?(d) は同軸コネクタ2?5の他例をそれぞれ示したものである。即ち、同軸コネクタ2は略L字状に、同軸コネクタ3は略コの字状に、同軸コネクタ4はクランク状にそれぞれ折曲形成した構造のものである。また同軸コネクタ5は、雌ねじに代えて逆ねじ513を形成したものである。」

サ.「【0016】
図7は基板状に実装された他の部品や装置など機器7を介して2枚の基板6,6の間の信号ライン62とグランドライン63とを、上記同軸コネクタ2と同軸コネクタ1を連結させた同軸コネクタによって接続する例を示したものである。
これら同軸コネクタ2、1に代えて上記同軸コネクタ4を用いても、勿論良い。
そしてこのように同軸コネクタを介して2枚の基板を接続することで、2枚の基板を同軸コネクタによりしっかりと連結して機械的に保持することができる。」

シ.図7には、連結された同軸コネクタ1、2が、基板6に接続される第1および第2の端部から基板6に垂直に延びる直線状の第1および第2の部分と、それら直線状の第1および第2の部分の、第1および第2の端部と反対側の端部を連結している第3の部分を備えたクランク状に折曲形成した構造となっており、2枚の基板6,6の間のオフセットした部分に設けられた信号ライン62とグランドライン63とを接続する点が示されている。

以上のク.?サ.の記載、及びシ.の図面の記載を総合すると、刊行物3には、次の発明(以下「刊行物3記載の発明」という)が記載されている。

「丸棒状の中心導体11の外周に絶縁物12を介してパイプ状の外部導体13を同心状に配置されている同軸コネクタであって、基板6に接続される第1および第2の端部から基板6に垂直に延びる直線状の第1および第2の部分と、それら直線状の第1および第2の部分の、第1および第2の端部と反対側の端部を連結している第3の部分を備えたクランク状に折曲形成した構造を備えており、2枚の基板6,6の間のオフセットされた部分に設けられた信号ライン62とグランドライン63とを接続するとともに、インピーダンスのマッチングを行う同軸コネクタ。」

4.発明の対比
本願発明と、引用発明とを対比すると、引用発明の「回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドと圧力係合するコネクタ90」は、本願発明の「第1および第2の結合部の相互接続を行うコネクタ」に相当し、以下同様に、「直線に合わされた開口95及び96によって形成される開口を有する」「絶縁誘電物質」は、「縦方向に貫通する内部空洞を有する」「中空の誘電体」に、「絶縁誘電物質の直線に合わされた開口95及び96に取り付けられるプランジャ91及び92」は、「中空の誘電体の内部空洞内に設けられて導電路を形成する導体」に、「プランジャ91及び92の端部分91A及び92Aは、回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドと係合し」は、「導電路を形成する導体の両端の第1および第2の端部は前記第1および第2の結合部とそれぞれ結合され」に、「絶縁誘電物質の直線に合わされた開口95及び96によって形成される開口内に位置する弾性圧縮ボタン94」は、「内部空洞内において圧縮可能な導体」に、「導電性パッドと係合する端部分91A及び92Aまで延び」ている「プランジャ91及び92」は、「結合部と結合される端部まで延在する導体」に、「開口95,96の内壁」は、「内部空洞壁」に、それぞれ相当し、引用発明の「開口95、96の内壁に対して往復移動可能」と、本願発明の「内部空洞壁に対して滑動可能」とは、「内部空洞壁に対して移動可能」である点で共通する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「対向する2つの平面上の第1および第2の結合部の相互接続を行うコネクタにおいて、前記コネクタは、縦方向に貫通する内部空洞を有する中空の誘電体と、その中空の誘電体の内部空洞内に設けられて導電路を形成する導体とにより構成され、その導電路を形成する導体の両端の第1および第2の端部は前記第1および第2の結合部とそれぞれ結合され、中空の誘電体の内部空洞内に設けられた導体は、中空の誘電体の内部空洞内において圧縮可能な導体を含んでおり、
中空の誘電体の内部空洞内に位置して前記圧縮可能な導体から前記第1および第2のいずれかの結合部と結合される端部まで延在する導体は、それを囲む誘電体の内部空洞壁に対して移動可能に構成されているコネクタ。」

[相違点1]
本願発明においては、第1および第2の結合部が「対向する2つの平面上のオフセットされた位置」にあるのに対し、引用発明においては、回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドが「対向する2つの平面からなる回路盤の間」でオフセットされた位置に設けられていない点。

[相違点2]
本願発明の中空の誘電体は、「棒状体を屈折した形状」であって、「屈折した形状の中空の誘電体は第1および第2の端部から平面に垂直に延びる直線状の第1および第2の部分と、それら直線状の第1および第2の部分の前記第1および第2の端部と反対側の端部を連結している第3の部分とよりなる屈折した形状」となっているのに対し、引用発明の絶縁誘電物質は、そのような形状となっていない点。

[相違点3]
本願発明においては、「屈折した形状の中空の誘電体の内部空洞内に設けられた導体は、前記屈折した形状の中空の誘電体の前記直線状の第1および第2の部分の少なくとも一方の内部空洞内において圧縮可能な導体を含んで」いるのに対し、引用発明においては、「絶縁誘電物質の直線に合わされた開口95及び96によって形成される開口内におけるプランジャ91及び92の間に弾性圧縮ボタン94を備えたもの」である点。

[相違点4]
中空の誘電体の内部空洞内に位置して前記圧縮可能な導体から第1および第2の結合部と結合される端部まで延在する導体は、それを囲む誘電体の内部空洞壁に対して移動可能に構成するにあたって、
本願発明においては、「屈折した形状の中空の誘電体のこの直線状の部分の内部空洞内に位置して前記圧縮可能な導体から前記第1および第2のいずれかの結合部と結合される端部まで延在する導体はそれを囲む誘電体の内部空洞壁に対して滑動可能」となっているのに対し、引用発明においては、「絶縁誘電物質の直線に合わされた開口95及び96によって形成される開口内に位置する弾性圧縮ボタン94から、プランジャ91及び92が、回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドと係合する端部分91A及び92Aまで延びており、開口95、96の内壁に対して往復移動可能」となっている点。

5.当審の判断

[相違点1について]
第1および第2の結合部を対向する2つの平面上のオフセットされた位置とすることについて、刊行物2記載の発明においては、プローブ14の上端、下端の互いにオフセットした位置に接点15及び18が設けており、さらに、刊行物3記載の発明においては、同軸コネクタが、2枚の基板6,6の間のオフセットされた部分に設けられた信号ライン62とグランドライン63とを接続したものであるから、上記刊行物2、3記載の発明に倣って、引用発明を上下の回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドがオフセットしたものに対応したものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

[相違点2について]
本願発明と、刊行物3記載の発明とを対比すると、刊行物3記載の発明における「絶縁物12」は、インピーダンスのマッチングを行うものであるから、本願発明の「誘電体」に相当する。
そして、刊行物3記載の発明の同軸コネクタ全体が、第1および第2の端部から基板6に垂直に延びる直線状の第1および第2の部分と、それら直線状の第1および第2の部分の、第1および第2の端部と反対側の端部を連結している第3の部分を備えたクランク状に折曲形成した構造であるから、絶縁物12も同様の形状となり、刊行物3記載の発明における「絶縁物12」は、導電路を形成する中心導体11の外周に設けられるものであるから、棒状でかつ、中心導体11を除けば中空の構造であることは当業者にとって明らかである。
よって、刊行物3記載の発明における「クランク状に折曲形成した構造」は、本願発明の「棒状体を屈折した形状」に相当し、刊行物3記載の発明における絶縁物12は中空の誘電体であって、「第1および第2の端部から平面に垂直に延びる直線状の第1および第2の部分と、それら直線状の第1および第2の部分の前記第1および第2の端部と反対側の端部を連結している第3の部分とよりなる棒状体を屈折した形状」のものということができる。
そして、上記[相違点1について]で述べたように、コネクタをオフセットした位置にある結合部に接触結合させるにあたって、引用発明と刊行物3記載の発明とは、ともに2つの平面同士を接続するコネクタであって、さらにインピーダンスの整合を行うものであるから、引用発明の絶縁誘電物質の構成として、刊行物3記載の発明における中空の誘電体を採用し、上記相違点2に係る本願発明とすることは、当業者が容易になし得たものである。


[相違点3について]
上記[相違点2について]で述べたように、引用発明の絶縁誘電物質の構成として、刊行物3記載の発明における中空の誘電体であって、第1および第2の端部から前記平面に垂直に延びる直線状の第1および第2の部分と、それら直線状の第1および第2の部分の前記第1および第2の端部と反対側の端部を連結している第3の部分とよりなる棒状体を屈折した形状を採用する際、引用発明の圧縮可能な導体を配置する場所として、プランジャが回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドと係合するために、内部空洞壁に対して移動可能な方向に延びる中空の誘電体の直線状の第1の部分、第2の部分の少なくとも一方を選択することは、導体を結合部と結合するという圧縮可能な導体の機能を考慮すると、当業者が容易になし得た事項である。

[相違点4について]
引用発明において、プランジャ91及び92が、上下の回路盤の下部及び上部面上の導電性パッドと係合する端部分91A及び92Aまで延びており、往復移動可能であったものを、それを囲む誘電体の内部空洞壁に対して滑動可能とすることは、プランジャ91及び92の位置決め精度を向上させる等の目的で、当業者が適宜なし得たものである。
さらに、引用発明において、絶縁誘電物質を、屈折した形状の中空の誘電体とすることについて、上記[相違点2について]において既に検討済みであり、引用発明において「屈折した形状の中空の誘電体のこの直線状の部分の内部空洞内に位置(する)前記圧縮可能な導体」を採用することが当業者にとって容易になし得たことである点については、[相違点3について]において既に検討済みである。

そして、本願発明によって得られる効果も、引用発明、刊行物2、3記載の発明から当業者であれば予測できた程度のものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2、3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.結び
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2、3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-29 
結審通知日 2011-10-04 
審決日 2011-10-17 
出願番号 特願2006-521918(P2006-521918)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 松下 聡
稲垣 浩司
発明の名称 圧縮可能な導体を有するオフセットコネクタ  
代理人 勝村 紘  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 村松 貞男  
代理人 中村 誠  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 河野 哲  
代理人 福原 淑弘  
代理人 白根 俊郎  

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