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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1252966
審判番号 不服2010-26174  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-19 
確定日 2012-02-29 
事件の表示 特願2000-506671「非均一イオン注入法を用いる半導体処理の補償」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月18日国際公開、WO99/08306、平成13年 8月28日国内公表、特表2001-512904〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、1998年6月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年8月6日,米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年5月18日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月25日に意見書及び手続補正書が提出され、平成22年7月12日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年11月19日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、その後、平成23年5月18日付けで審尋がなされたものの、それに対する回答書は提出されなかったものである。

第2.平成22年11月19日に提出された手続補正書による補正についての却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成22年11月19日に提出された手続補正書による補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成22年11月19日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし19を、補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし18に補正するとともに、明細書の補正を行うものであり、補正前後の特許請求の範囲の各請求項の記載は、各々以下のとおりである。

(補正前)
「 【請求項1】 半導体ウェハにわたって形成される装置のパラメータの測定値における空間的変動を補償するための方法であって、
複数の処理ステップを行なって前記半導体ウェハ上およびウェハ内に複数の装置を形成するステップと、
前記処理に関連する複数のパラメータ値を測定するステップとを含み、前記測定するステップは、前記半導体ウェハにおける複数の場所で行なわれ、さらに、前記複数のパラメータ値は設計要件内に収まらなければならない設計パラメータを含み、前記方法はさらに、
イオン注入を前記複数の場所で行なうステップを含み、各前記場所における前記イオン注入のセッティングは前記複数の装置のコンピュータモデルを用いて決定され、前記半導体ウェハにわたって形成される前記複数の装置の前記複数のパラメータ値における空間的変動を補償するために、特定の場所のための前記複数のセッティングは、前記特定の場所のための前記複数のパラメータの測定値を前記コンピュータモデルに適用することにより決定され、前記複数のセッティングは、各前記場所のための前記設計パラメータの値が、前記イオン注入を前記行なうステップの前の前記パラメータのある値よりも前記設計要件に近くなるように決定される、方法。
【請求項2】 複数の処理ステップを行なう前記ステップが、イオン注入を行なうステップ、膜の堆積を行なうステップ、材料のパターニングを行なうステップ、材料のエッチングを行なうステップ、または膜の熱成長を行なうステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 複数のパラメータ値を測定する前記ステップが、複数の物理的、化学的または電気的パラメータ値を測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】 複数の物理的パラメータ値を測定する前記ステップが微小寸法を測定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】 複数の化学的パラメータ値を測定する前記ステップが、ドーピングプロファイルまたは材料の化学組成を測定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】 複数の電気的パラメータ値を測定する前記ステップが、層のシート抵抗、臨界点間の容量、しきい値電圧、動作電圧、電流消費、遅延時間、応答時間、またはブレークダウンパラメータを測定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】 前記設計パラメータが、しきい値電圧、動作電圧、電流消費、切換速度、遅延時間、応答時間、またはブレークダウンパラメータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】 前記イオン注入を行なうステップが、ソース/ドレイン領域を注入するステップ、しきい値調整注入を行なうステップ、ゲート導体を注入するステップ、チャネルストップ注入を行なうステップ、またはウェル注入を行なうステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】 前記イオン注入装置の前記セッティングが、x軸およびy軸スキャナプレートのタイミングシーケンスと、x注入座標およびy注入座標の関数としての注入エネルギと、x注入座標およびy注入座標の関数としての注入ドーズ量とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】 イオン注入を行なう前記ステップが、異なる半導体ウェハ上のある場所での注入を含み、前記異なる半導体ウェハ上の前記場所が、前記半導体ウェハ上の前記場所に対して同様の位置である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】 半導体ウェハ上およびウェハ内に形成された複数の装置の測定されたパラメータにおける、前記半導体ウェハにわたる空間的変動を補償するための方法であって、前記方法は、
複数の処理ステップを行なって前記半導体ウェハ上に前記複数の装置を形成するステップと、
前記複数の装置の各々の前記パラメータを測定して、前記半導体ウェハの表面にわたる前記パラメータの空間的分布を決定するステップと、
前記半導体ウェハの前記表面にわたってイオン注入を行なうステップとを含み、前記イオン注入の複数のセッティングは前記複数の装置のコンピュータモデルを用いて決定され、前記複数のセッティングは前記空間的変動を減じるために前記半導体ウェハ上の場所のx座標およびy座標に従って変動する、方法。
【請求項12】 複数のパラメータを測定する前記ステップが、複数の物理的、化学的または電気的パラメータを測定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】 複数の物理的パラメータを測定する前記ステップが微小寸法を測定するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】 複数の化学的パラメータを測定する前記ステップが、ドーピングプロファイルまたは材料の化学組成を測定するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】 複数の電気的パラメータを測定する前記ステップが、層のシート抵抗、臨界点間の容量、しきい値電圧、動作電圧、電流消費、遅延時間、応答時間、またはブレークダウンパラメータを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】 前記イオン注入を行なうステップが、ソース/ドレイン領域を注入するステップ、しきい値調整注入を行なうステップ、ゲート導体を注入するステップ、チャネルストップ注入を行なうステップ、またはウェル注入を行なうステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】 前記イオン注入装置の前記セッティングが、x軸およびy軸スキャナプレートのタイミングシーケンスと、x注入座標およびy注入座標の関数としての注入エネルギと、x注入座標およびy注入座標の関数としての注入ドーズ量とを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】 複数の処理ステップを行なう前記ステップが、イオン注入を行なうステップ、膜の堆積を行なうステップ、材料のパターニングを行なうステップ、材料のエッチングを行なうステップ、または膜の熱成長を行なうステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】 イオン注入を行なう前記ステップが、前記半導体ウェハとは異なる別の半導体ウェハの表面にわたって注入するステップを含む、請求項11に記載の方法。」

(補正後) (下線部は補正箇所)
「 【請求項1】 半導体ウェハにわたって形成される装置のパラメータの複数の測定値における空間的変動を補償するための方法であって、
複数の処理ステップを行なって前記半導体ウェハ上およびウェハ内に複数の装置を形成するステップと、
前記処理に関連する複数のパラメータ値を測定するステップとを含み、前記測定するステップは、前記半導体ウェハにおける複数の場所で行なわれ、さらに、前記複数のパラメータ値は設計要件内に収まらなければならない設計パラメータの値を含み、前記方法はさらに、
イオン注入を前記複数の場所で行なうステップを含み、各前記場所における前記イオン注入のセッティングは前記複数の装置のコンピュータモデルを用いて決定され、前記半導体ウェハにわたって形成される前記複数の装置の前記設計パラメータの前記複数のパラメータ値における空間的変動を補償するために、特定の場所に対する前記複数のセッティングは、前記特定の場所に対する前記複数のパラメータの測定値を前記コンピュータモデルに適用することにより決定され、前記複数のセッティングは、各前記場所に対する前記設計パラメータの値が、前記イオン注入を前記行なうステップの前の前記パラメータのある値よりも前記設計要件に近くなるように決定される、方法。
【請求項2】 複数の処理ステップを行なう前記ステップが、イオン注入を行なうステップ、膜の堆積を行なうステップ、材料のパターニングを行なうステップ、材料のエッチングを行なうステップ、または膜の熱成長を行なうステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 複数のパラメータ値を測定する前記ステップが、複数の物理的、化学的または電気的パラメータ値を測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】 複数の物理的パラメータ値を測定する前記ステップが微小寸法を測定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】 複数の化学的パラメータ値を測定する前記ステップが、ドーピングプロファイルまたは材料の化学組成を測定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】 複数の電気的パラメータ値を測定する前記ステップが、層のシート抵抗、臨界点間の容量、しきい値電圧、動作電圧、電流消費、遅延時間、応答時間、またはブレークダウンパラメータを測定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】 前記設計パラメータが、しきい値電圧、動作電圧、電流消費、切換速度、遅延時間、応答時間、またはブレークダウンパラメータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】 前記イオン注入を行なうステップが、ソース/ドレイン領域を注入するステップ、しきい値調整注入を行なうステップ、ゲート導体を注入するステップ、チャネルストップ注入を行なうステップ、またはウェル注入を行なうステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】 前記イオン注入装置の前記セッティングが、x軸およびy軸スキャナプレートのタイミングシーケンスと、x注入座標およびy注入座標の関数としての注入エネルギと、x注入座標およびy注入座標の関数としての注入ドーズ量とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】 イオン注入を行なう前記ステップが、異なる半導体ウェハ上のある場所での注入を含み、前記異なる半導体ウェハ上の前記場所が、前記半導体ウェハ上の前記場所に対して同様の位置である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】 半導体ウェハ上およびウェハ内に形成された複数の装置の測定されたパラメータにおける、前記半導体ウェハにわたる空間的変動を補償するための方法であって、前記方法は、
複数の処理ステップを行なって前記半導体ウェハ上に前記複数の装置を形成するステップと、
前記複数の装置の各々の前記パラメータを測定して、前記半導体ウェハの表面にわたる前記パラメータの空間的分布を決定するステップとを備え、前記複数の装置各々の前記パラメータの測定は、物理的、電気的または化学的パラメータを測定するステップを備え、前記方法は、さらに
前記半導体ウェハの前記表面にわたってイオン注入を行なうステップを含み、前記イオン注入の複数のセッティングは前記複数の装置のコンピュータモデルを用いて決定され、前記複数のセッティングは前記空間的変動を減じるように前記半導体ウェハ上の場所のx座標およびy座標に従って変動する、方法。
【請求項12】 前記物理的パラメータを測定するステップが微小寸法を測定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】 前記化学的パラメータを測定するステップが、ドーピングプロファイルまたは材料の化学組成を測定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】 前記電気的パラメータを測定するステップが、層のシート抵抗、臨界点間の容量、しきい値電圧、動作電圧、電流消費、遅延時間、応答時間、またはブレークダウンパラメータを測定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】 前記イオン注入を行なうステップが、ソース/ドレイン領域を注入するステップ、しきい値調整注入を行なうステップ、ゲート導体を注入するステップ、チャネルストップ注入を行なうステップ、またはウェル注入を行なうステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】 前記イオン注入の前記セッティングが、x軸およびy軸スキャナプレートのタイミングシーケンスと、x注入座標およびy注入座標の関数としての注入エネルギと、x注入座標およびy注入座標の関数としての注入ドーズ量とを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】 複数の処理ステップを行なう前記ステップが、イオン注入を行なうステップ、膜の堆積を行なうステップ、材料のパターニングを行なうステップ、材料のエッチングを行なうステップ、または膜の熱成長を行なうステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】 イオン注入を行なう前記ステップが、前記半導体ウェハとは異なる別の半導体ウェハの表面にわたって注入するステップを含む、請求項11に記載の方法。」

2.補正事項の整理
(補正事項1)
補正前の請求項1の「半導体ウェハにわたって形成される装置のパラメータの測定値におけるパラメータの測定値における」を、補正後の請求項1の「半導体ウェハにわたって形成される装置の複数のパラメータの測定値における」と補正すること。

(補正事項2)
補正前の請求項1の「半導体前記複数のパラメータ値は設計要件内に収まらなければならない設計パラメータ」を、補正後の請求項1の「半導体前記複数のパラメータ値は設計要件内に収まらなければならない設計パラメータの値」と補正すること。

(補正事項3)
補正前の請求項1の「前記半導体ウェハにわたって形成される前記複数の装置の前記複数のパラメータ値」を、補正後の請求項1の「前記半導体ウェハにわたって形成される前記複数の装置の前記設計パラメータの前記複数のパラメータ値」と補正すること。

(補正事項4)
補正前の請求項1の「特定の場所のための」を、補正後の請求項1の「特定の場所に対する」と、3箇所にわたり補正すること。

(補正事項5)
補正前の請求項11の「前記複数の装置の各々の前記パラメータを測定して、前記半導体ウェハの表面にわたる前記パラメータの空間的分布を決定するステップと、」を、補正後の請求項1の「前記複数の装置の各々の前記パラメータを測定して、前記半導体ウェハの表面にわたる前記パラメータの空間的分布を決定するステップとを備え、前記複数の装置各々の前記パラメータの測定は、物理的、電気的または化学的パラメータを測定するステップを備え、」と補正すること。

(補正事項6)
補正前の請求項11の「前記半導体ウェハの前記表面にわたってイオン注入を行なうステップとを含み、」を、補正後の請求項11の「前記方法は、さらに 前記半導体ウェハの前記表面にわたってイオン注入を行なうステップを含み、」と補正すること。

(補正事項7)
補正前の請求項11の「前記複数のセッティングは前記空間的変動を減じるために前記半導体ウェハ上の場所のx座標およびy座標に従って変動する」を、補正後の請求項11の「前記複数のセッティングは前記空間的変動を減じるように前記半導体ウェハ上の場所のx座標およびy座標に従って変動する」と補正すること。

(補正事項8)
補正前の請求項12を削除するとともに、それに伴って補正前の請求項13以降の項番と引用する請求項を修正すること。

(補正事項9)
補正前の請求項13の「複数の物理的パラメータを測定する前記ステップ」を、補正後の請求項12の「前記物理的パラメータを測定するステップ」と補正すること。

(補正事項10)
補正前の請求項14の「複数の化学的パラメータを測定する前記ステップ」を、補正後の請求項13の「前記化学的パラメータを測定するステップ」と補正すること。

(補正事項11)
補正前の請求項15の「複数の電気的パラメータを測定する前記ステップ」を、補正後の請求項14の「前記電気的パラメータを測定するステップ」と補正すること。

(補正事項12)
補正前の請求項17の「前記イオン注入装置」を、補正後の請求項16の「前記イオン注入」と補正すること。

3.補正の目的適否についての検討
(1)補正事項1
補正事項1は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下「特許法第17条の2第4項」という。)第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(2)補正事項2
補正事項2は、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(3)補正事項3
補正事項3は、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(4)補正事項4
補正事項4は、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(5)補正事項5
補正事項5は、補正前の請求項11に係る発明の発明特定事項である「前記複数の装置の各々の前記パラメータを測定」することについて、実質「物理的、電気的または化学的パラメータを測定する」ことに限定したものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

(6)補正事項6
補正事項6は、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(7)補正事項7
補正事項7は、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(8)補正事項8
補正事項8は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。

(9)補正事項9
補正事項9は、補正前の請求項13の「複数の物理的パラメータを測定する前記ステップ」における「複数の」という発明特定事項を削除し、測定する物理的パラメータの数として新たに「1」も包含する補正後の請求項12に変更するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではなく、かつ、特許法第17条の2第4項第1号、第3号、及び第4号のいずれをも目的とするものではないことは、明らかである。
よって、補正事項9は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの目的をも満足するものではない。

(10)補正事項10
補正事項10は、補正前の請求項14の「複数の化学的パラメータを測定する前記ステップ」における「複数の」という発明特定事項を削除し、測定する化学的パラメータの数として新たに「1」も包含する補正後の請求項13に変更するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではなく、かつ、特許法第17条の2第4項第1号、第3号、及び第4号のいずれをも目的とするものではないことは、明らかである。
よって、補正事項10は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの目的をも満足するものではない。

(11)補正事項11
補正事項11は、補正前の請求項15の「複数の電気的パラメータを測定する前記ステップ」における「複数の」という発明特定事項を削除し、測定する電気的パラメータの数として新たに「1」も包含する補正後の請求項14に変更するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではなく、かつ、特許法第17条の2第4項第1号、第3号、及び第4号のいずれをも目的とするものではないことは、明らかである。
よって、補正事項11は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの目的をも満足するものではない。

(12)補正事項12
補正事項12は、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(13)補正の目的適否についての検討のむすび
したがって、本件補正は、補正事項9ないし11が特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの目的をも満足するものではなく、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものではない。

4.独立特許要件(容易想到性)についての予備的検討
(1)検討の前提
上記3.において検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものではない。
しかしながら、本件補正が特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしているものと仮定をした場合、上記3.(5)において補正前後の請求項11について検討したとおり、本件補正は、同法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とした補正を含むから、念のため、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定(独立特許要件)を満たすかどうかについても、予備的に検討する。

(2)本件補正による補正後の請求項11に係る発明
本件補正による補正後の請求項11に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項11に記載されている事項により特定される、上記第2.1.の「補正後」の「請求項11」に記載したとおりのものである。

(3)引用例の記載と引用発明
(3-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平04-168763号公報(以下「引用例1」という。)には、第1図とともに、次の記載がある。(下線は当審で付加したもの。以下同じ。)

「第1図は本発明のポリシリコン抵抗体の製造方法の手順を説明する図である。
まず、(a)に示すように、Si基板1表面上にSiO_(2)等の絶縁膜1aを形成し、次いでその絶縁膜1a表面上にCVD法等によりポリシリコン層を一様に積層した後、そのポリシリコン層中に、PやAsあるいはB等の導電性不純物を、所定の量だけイオン注入してドープポリシリコン層2を形成する。」(第2ページ右上欄第9-17行)
「さて、本発明方法においては、得られたポリシリコン抵抗体の抵抗値を測定し、その測定値が所望の設計値から外れている場合には、(g)に示すように、抵抗体としてのドープポリシリコン層2の表面層に不純物を絶縁層4を通じて高エネルギでイオン注入して、不純物再注入領域2aを形成した後、再度、不純物活性化のための熱処理を行う。すなわち、抵抗測定値が設計値よりも高い場合には、ドープポリシリコン層2中の不純物と同じ導電形の不純物を、一方、低い場合には異なる導電形の不純物を、それぞれ設計値から外れた抵抗値分に相当する量だけイオン注入した後、アニール等の熱処理を施す。このような不純物イオンの再注入・熱処理により、ドープポリシリコン層2の抵抗値を設計値に一致するように補正でき、これにより、常に一定の高抵抗値を有するポリシリコン抵抗体を得ることが可能となる。」(第2ページ右下欄第1-17行)
「なお、SiウエハやSiチツプに形成した複数のポリシリコン抵抗体のうち一部のみの抵抗値補正を行う場合には、・・・さらに、ウェハもしくはイオンビームのいずれか一方を走査して、補正を要する部分のみ不純物を選択的にイオン注入する等の方法により、ドープポリシリコン層2に不純イオン(審決注:「不純イオン」は「不純物イオン」の誤記と認める)を再注入するようにしてもよい。」(第3ページ左上欄第4-14行)

(2-2)ここで、引用例1に記載される「Siウエハ」に形成された「複数のポリシリコン抵抗体」は、同じく引用例1に「Si基板1表面上にSiO_(2)等の絶縁膜1aを形成し、次いでその絶縁膜1a表面上にCVD法等によりポリシリコン層を一様に積層した後、そのポリシリコン層中に、PやAsあるいはB等の導電性不純物を、所定の量だけイオン注入してドープポリシリコン層2を形成する。」との「本発明のポリシリコン抵抗体の製造方法の手順」が示されていることに照らし、「Si基板1」を「Siウエハ」として具体化した際、「Siウエハ」上に形成された「複数のポリシリコン抵抗体」であることは明らかである。
また、そのような引用例1に記載される「本発明のポリシリコン抵抗体の製造方法の手順」は、「CVD法等によりポリシリコン層を一様に積層」するステップと、「導電性不純物を、所定の量だけイオン注入してドープポリシリコン層2を形成する」ステップとを行なって、「Siウエハ」上に「複数のポリシリコン抵抗体」を形成するステップを備えることは明らかである。
また、引用例1には「得られたポリシリコン抵抗体の抵抗値を測定し、その測定値が所望の設計値から外れている場合」、「すなわち、抵抗測定値が設計値よりも高い場合には、ドープポリシリコン層2中の不純物と同じ導電形の不純物を、一方、低い場合には異なる導電形の不純物を、それぞれ設計値から外れた抵抗値分に相当する量だけイオン注入した後、アニール等の熱処理を施す」こと、及び、「Siウエハ」「に形成した複数のポリシリコン抵抗体のうち一部のみの抵抗値補正を行う場合には、」「ウェハもしくはイオンビームのいずれか一方を走査して、補正を要する部分のみ不純物を選択的にイオン注入する」ことが記載されており、引用例1に記載される「本発明のポリシリコン抵抗体の製造方法の手順」は、「複数のポリシリコン抵抗体」の各々の「抵抗値を測定し」て、「Siウエハ」の表面にわたる前記「抵抗値」の空間的分布を決定するステップを備えること、また、そのような「複数のポリシリコン抵抗体」各々の「抵抗値」の「測定」は、電気的パラメータを測定するステップを備えること、また、「Siウエハ」の表面にわたって「イオン注入」を行なうステップを含むこと、さらに上記「イオン注入」とは、「Siウエハ」の表面の「複数のポリシリコン抵抗体」の「抵抗値」が「所望の設計値から外れている場合」、「ウェハもしくはイオンビームのいずれか一方を走査して、補正を要する部分のみ不純物を選択的にイオン注入する」ものであることは、それぞれ明らかである。

(2-3)そうすると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「Siウエハ上に形成された複数のポリシリコン抵抗体の測定された抵抗値が所望の設計値から外れている場合の抵抗値補正を行うポリシリコン抵抗体の製造方法であって、
CVD法等によりポリシリコン層を一様に積層するステップと、導電性不純物を、所定の量だけイオン注入してドープポリシリコン層2を形成するステップとを行なって、前記Siウエハ上に前記複数のポリシリコン抵抗体を形成するステップと、
前記複数のポリシリコン抵抗体の各々の前記抵抗値を測定して、Siウエハの表面にわたる前記抵抗値の空間的分布を決定するステップとを備え、前記複数のポリシリコン抵抗体各々の前記抵抗値の測定は、電気的パラメータを測定するステップを備え、前記製造方法は、さらに、
前記Siウエハの前記表面にわたってイオン注入を行なうステップを含み、複数のポリシリコン抵抗体の抵抗値が所望の設計値から外れている場合、ウェハもしくはイオンビームのいずれか一方を走査して、補正を要する部分のみ不純物を選択的にイオン注入する、方法。」

(3)本願補正発明と引用発明との対比
(3-1)引用発明の「Siウエハ」、「ポリシリコン抵抗体」及び「抵抗値」は、それぞれ本願補正発明の「半導体ウェハ」、「装置」及び「パラメータ」に相当する。
そして、以下さらにそのような用語対応を踏まえて検討すると、引用発明の「Siウエハ上に形成された複数のポリシリコン抵抗体の測定された抵抗値が所望の設計値から外れている場合の抵抗値補正を行うポリシリコン抵抗体の製造方法」は、本願補正発明の「半導体ウェハ上およびウェハ内に形成された複数の装置の測定されたパラメータにおける、前記半導体ウェハにわたる空間的変動を補償するための方法」に相当する。
また、引用発明の「CVD法等によりポリシリコン層を一様に積層するステップと、導電性不純物を、所定の量だけイオン注入してドープポリシリコン層2を形成するステップと」は、本願補正発明の「複数の処理ステップ」に相当する。
また、引用発明の「前記複数のポリシリコン抵抗体各々の前記抵抗値の測定は、電気的パラメータを測定するステップを備え」ることは、本願補正発明の「前記複数の装置各々の前記パラメータの測定は、物理的、電気的または化学的パラメータを測定するステップを備え」ることに相当する。
また、引用発明の「前記Siウエハの前記表面にわたってイオン注入を行なうステップ」は、本願補正発明の「前記半導体ウェハの前記表面にわたってイオン注入を行なうステップ」に相当する。
さらに、引用発明の「複数のポリシリコン抵抗体の抵抗値が所望の設計値から外れている場合、ウェハもしくはイオンビームのいずれか一方を走査して、補正を要する部分のみ不純物を選択的にイオン注入する」ことは、少なくとも、補正を要する部分のイオン注入位置、イオン注入エネルギー、イオン注入量などに関わる「イオン注入の複数のセッティング」が行われることを前提とし、かつ、当該「複数のセッティング」は、複数のポリシリコン抵抗体の抵抗値について「前記空間的変動を減じるように前記半導体ウェハ上の場所のx座標およびy座標に従って変動する」点において、本願補正発明と共通していることは明らかである。

(3-2)以上によれば、本願補正発明と引用発明とは、
「半導体ウェハ上およびウェハ内に形成された複数の装置の測定されたパラメータにおける、前記半導体ウェハにわたる空間的変動を補償するための方法であって、前記方法は、
複数の処理ステップを行なって前記半導体ウェハ上に前記複数の装置を形成するステップと、
前記複数の装置の各々の前記パラメータを測定して、前記半導体ウェハの表面にわたる前記パラメータの空間的分布を決定するステップとを備え、前記複数の装置各々の前記パラメータの測定は、物理的、電気的または化学的パラメータを測定するステップを備え、
前記方法は、さらに
前記半導体ウェハの前記表面にわたってイオン注入を行なうステップを含み、前記イオン注入の複数のセッティングは前記空間的変動を減じるように前記半導体ウェハ上の場所のx座標およびy座標に従って変動する、方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明の「イオン注入の複数のセッティング」は「複数の装置のコンピュータモデルを用いて決定され」るものであるのに対し、引用発明では、そのような決定手法までは特定されていない点。

(4)相違点についての当審の判断
引用発明における「ポリシリコン抵抗体」への「イオン注入」にあたり、「ポリシリコン抵抗体」のコンピュータモデルを用いてイオン注入の複数のセッティングを行なうことは、それらセッティングにあたって必要となる複雑な計算を実行するにあたり、それを出来るだけ早く正確に実行するとの自明の課題に基づき、当業者が適宜なしえた設計事項である。
したがって、引用発明において、本願補正発明の上記相違点の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たものである。

以上のとおり、上記相違点に係る構成は、引用発明に基づき、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)独立特許要件についてのまとめ
本件補正は、補正後の請求項11に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項をいう。以下同じ。)の規定に適合しない。

4.補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成22年11月19日に提出された手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし19に係る発明は、平成21年9月25日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載されている事項により特定されるとおりのものである。
そして、そのうちの請求項11に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項11に記載されている事項により特定される、上記第2.1.の「補正前」の「請求項11」に記載したとおりのものである。

一方、原査定の拒絶の理由に引用され、かつ、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用例1(特開平04-168763号公報)には、上記第2.3.(2)で認定したとおりの事項及び発明(引用発明)が記載されているものと認められる。
そして、本願発明に対して技術的限定を付加した発明である本願補正発明は、上記第2.3.において検討したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様に当業者が容易に発明をすることができたものであることは明らかである。
したがって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4.むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-28 
結審通知日 2011-10-04 
審決日 2011-10-17 
出願番号 特願2000-506671(P2000-506671)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 57- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池渕 立和瀬田 芳正  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 市川 篤
西脇 博志
発明の名称 非均一イオン注入法を用いる半導体処理の補償  
代理人 堀井 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 仲村 義平  

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