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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47K
管理番号 1252971
審判番号 不服2011-3069  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-10 
確定日 2012-03-01 
事件の表示 特願2004-337545「処理材付きトイレ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-141790〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年11月22日の出願であって,平成22年11月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年2月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされたものである。
その後,平成23年7月19日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年9月22日付けで回答書が提出された。


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年2月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容・目的
平成23年2月10日の手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする補正事項を含む。 (下線は,審判請求時に補正された個所に,当審にて付与した。)

(補正前:平成22年1月12日受付の手続補正書)
「便座の下に,柔軟で長尺の折畳まれた筒状体がパッケージ材として便器にセットされ,排泄の度に前記パッケージ材に排泄物が収容され,当該パッケージ材の入口を密封して便器の下方へ送出すようにしたトイレ装置において,該トイレ装置の傍に,収容される排泄物の水分を吸収して半ば凝固状態にする処理材としてオカラを配置し,排泄の度そのオカラを排泄物が入る便器内のパッケージ材の中に供給し,当該排泄物の水分を前記オカラに吸収させてそのパッケージ材の入口を密封するようにしたことを特徴とする処理材付きトイレ装置。」
を,

(補正後)
「便座の下に,柔軟で長尺の折畳まれた筒状体がパッケージ材として便器にセットされ,排泄の度に前記パッケージ材に排泄物が収容され,当該パッケージ材の入口を密封して便器の下方へ送出すようにしたトイレ装置において,該トイレ装置の傍に,収容される排泄物の水分を吸収して半ば凝固状態にする処理材としてオカラを配置し,排泄の度そのオカラを排泄物が入る便器内の封止されて底が造られたパッケージ材の中に供給し,当該排泄物の水分を前記オカラに吸収させてそのパッケージ材の入口をヒートシーラーによりヒートシールの上下幅を大きく取ってシール部を形成して密封し,このシール部をカットして排泄物を収容した個々のパッケージ材を貯めるようにしたことを特徴とする処理材付きトイレ装置。」
とする。

上記補正事項は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項であるオカラを供給する際のパッケージ材を「封止されて底が造られた」ものに限定し,パッケージ材の入口の密封を「ヒートシーラーによりヒートシールの上下幅を大きく取ってシール部を形成」するものに限定し,「トイレ装置」を「シール部をカットして排泄物を収容した個々のパッケージ材を貯める」ように限定するものであるから,本件補正は,少なくとも,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。

そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,すなわち,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしているか,について以下に検討する。
ここで,本願補正発明の「送出すようにした」は誤記であるため,「送出するようにした」として,認定する。

2 独立特許要件違反(特許法第29条第2項違反)
(1)引用刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平10-33409号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面と共に以下の記載がある。

(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,用便のための簡易な便器であり,糞尿を高分子吸収凝固剤で固化して使用する簡易トイレに関する」
(1b)「【0008】本発明は,このような事情に鑑みて成されたもので,緊急非常時の臨時的な使用,野外への携帯,さらには病院または家庭療養時の常設用として衛生的な用便を行うため,段ボールまたは合成樹脂等の軽量かつ安価な材料で構成することができ,高分子吸収凝固剤で固化した糞尿を衛生的に処理するようにした簡易トイレを提供することを目的とする。
【0009】また,本発明は,高分子吸収凝固剤をトイレ本体に収納可能とし,使用の際には,簡単な操作でこの凝固剤を衛生的に散布することができるようにした簡易トイレを提供することを目的とする。」
(1c)「【0016】本実施例における簡易トイレの全体構成は,図1に示すように,箱体2を上室3と下室4に分け,下室4の上面には開口4b(図2参照)が設けてあり,上室3と下室4の略中間の水平位置に設けられた隙間5に中敷板6を差し込むことにより,下室4の開口4bを遮断し,中敷板6を外方へ引き出すことによって上室3を下室4の開口4bと連通するようにしてある。
【0017】また,上室3の上面には開口3aを設けてその周辺を座面7としてある。
【0018】上室3内には中敷板6の上面に中箱8が収納してある。この中箱8の内周には,その内方の開口部8aへ向けて勾配を有する内側勾配9aが設けてある。そして,この中箱8を上室3の側面に設けた蓋付き開口10から引出して内側勾配9aにビニール袋12(図2参照)の開口周縁を掛止した状態で上室3内に収納することができる。
【0019】さらに,上室3の上面の後部に高分子吸収凝固剤のための収納箱13を設け,該収納箱13を中箱8の内側勾配9aの上方に開口すると共に,収納箱13の内部下方を閉塞する位置に設けた開口16を有する筒栓14を回動することによって,収納箱13の内部下方を閉塞したり,この収納箱13内に収容した高分子吸収凝固剤15を中箱8の内側勾配9aに開設したビニール袋12内に排出するようにしてある。」
(1d)「【0026】ビニール袋12は,一般的に信玄袋と称せられる形式に構成してある。即ち,ビニール袋12の上縁を折り返した挿通孔12aを形成し,挿通孔12aの対称二か所を開孔して二本の紐18,18を互い違いの方向に挿通することによって夫々の開孔から紐18,18の両端部を二本ずつ引き出し,箱体2の側部の適当位置から引き出して,これらの紐18,18を互いに遠方側へ引っ張ることによって,二本の紐18,18がビニール袋12の上縁全周を互い違いに絞り込んで閉封するようにしてある。
【0027】このようなビニール袋12の設置は,上室3の前面の蓋10aを開けて開口することにより,この開口10から中箱8を外方へ取り出して行い,中箱8の内側勾配9a上にビニール袋12を開封状態に設置した後,上室3の前面の開口10から上室3内へ収納し,蓋10aを閉じる。なお,蓋10aの内側面に上記と同様のマジックテープ等の付着手段17を固着してある。」
(1e)「【0038】上記の構成の簡易トイレを使用するには,上室3の蓋10aを開けて中箱8を上室3から取り出し,この中箱8の内側勾配9a内にビニール袋12を開口して設置する。
【0039】そして,隙間5の入口から中敷板6を挿入して下室4の開口4bを閉塞すると共に,中箱8を中敷板6上の上室3内に収納すると,中箱8に開設したビニール袋12は上室3の開口3aにて口を拡げる。そして,座面7に腰を下ろして用便を行うと,糞尿はビニール袋12の底面上に至り,用便を終了してから,高分子吸収凝固剤5をビニール袋12内の糞尿の上に散布する。この散布によって,糞尿は匂いを消失し,抗菌されながら固化する。
【0040】上記のように収納箱13を設けてある場合,把手24により筒栓14を回動することによって高分子吸収凝固剤15の定量的な散布を行うことができる。また,使用者が高分子吸収凝固剤15を直接ふり掛けるのに比べて,衛生的であり,使用感に優れたものとなる。
【0041】そして,ビニール袋12を中箱8内に設置したままの状態で,ビニール袋12の開口を閉じる。このビニール袋12を閉封するには,紐18を上記のように引っ張ることによって行う。
【0042】ついで,中敷板6の引出穴6bを用いて,中敷板6を外側に引っ張ると,中箱8の開口8aと下室4の開口4aとが開通して,閉封したビニール袋12が下室4内に落下し,収納される。」
(1f)「【0044】また,下室4内に収納された閉封後のビニール袋12は,下室4の容積にもよるが,使用者がそのつど,または数個をまとめて下室4の蓋11aを開けて,開口11から取り出して処分することができる。」

そうすると,上記記載(1a)?(1f)及び図面より,刊行物1には,
「座面7の下に,ビニール袋12が中箱8に開封状態で設置され,
用便を行うと,糞尿は該ビニール袋12の底面上に至り,
紐18を引っ張ることによって該ビニール袋12の開口を閉じて,閉封した該ビニール袋12を下室4内に落下させ,収納する簡易トイレにおいて,
該簡易トイレの上室3の上面の後部に設けた収納箱13に,糞尿を固化する高分子吸収凝固剤15を収納し,
該ビニール袋12内に用便を行って,該高分子吸収凝固剤15を散布してから該紐18を引っ張ることにより該ビニール袋12を閉じ,
閉封後の該ビニール袋12を数個まとめて該下室4から取り出す,
該高分子吸収凝固剤15を収納した簡易トイレ。」の発明(以下,「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)引用刊行物2
原査定の平成22年11月11日付け補正の却下の決定で引用された,本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平5-176960号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面と共に以下の記載がある。

(2a)「【0044】ベッド枠体1の下方にして床面に取付板60を固着し,この取付板60に二本のレール61を所定間隔に介在せしめて対設固着し,このレール61上を摺動する基台86を設け,この基台86に基台枠62を固着し,この基台枠62に引き出し枠体63を基台枠62に対して前後方向に摺動自在に設け,引き出し枠体63上に引き出し体64を載置し,該引き出し体64を基台枠62の側方開口部87から引き出し自在に設け,引き出し枠体63の基部側左右に支持杆65を枢着し,この支持杆65の先端に便器取付枠体66を枢着し,この取付枠体66の上面に合成樹脂製にして局部に良好に密着し得るように特殊形状に形成した便器67を固着し,便器67に筒体68を連設して該筒体68を便器取付枠体66内において垂下状態に配設し,該筒体68に所定長さの筒状の袋体77を被嵌し,該袋体77の上部を筒体68に適宜な手段により止着する。」
(2b)「【0046】基台枠62の上部前端には三段の線状発熱体73が形成されたヒート部74が設けられ,一方,引き出し枠体63の上部先端内縁の前記ヒート部74と合致する位置にも三段の線状発熱部73が形成されたヒート部75が発条76により突没自在に設けられている。」
(2c)「【0057】病人がこの状態で例えば小便をする。小便は,便器67から筒体68を通って袋体77に貯められる。袋体77は小便の重量により垂下し,袋体77の底は引き出し枠体63上に載置されている引き出し体64上に当接する。」
(2d)「【0058】続いて,ウォームホイール70の前記と逆の回動により便器取付枠体66は下方に擺動し,この擺動により支持杆65も擺動し,且つ引き出し枠体63は基台枠62内に摺動収納され,袋体77はヒート部74・75により挾持される。この時,制御部58からの信号によりヒート部74・75の線状発熱体73に電流が流れ,中位の線状発熱体73により袋体77は切断され,上位の線状発熱体73により袋体77の底が次回用の為にヒートシールされ,下位の線状発熱体73により切断された使用済の袋体77の上縁がヒートシールされる。」
(2e)図17で袋体77が筒体68に被嵌している部分に皺があることからみて,袋体77は長尺で折りたたまれており,筒状であると認められる。
(3)対比
そこで,本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,
刊行物1記載の発明の「座面7」は本願補正発明の「便座」に相当し,以下同様に,
「中箱8」は「便器」に,
「用便」は「排泄」に,
「糞尿」は「排泄物」に,
「簡易トイレ」は「トイレ装置」に,
「下室4内に落下させ」は「便器の下方へ送出する」に,
「簡易トイレの上室3の上面の後部に設けた収納箱13に」は「トイレ装置の傍に」に,
それぞれ相当している。

また,刊行物1記載の発明の「ビニール袋12」と本願補正発明の柔軟な「筒状体」及び「パッケージ材」とは,「柔軟なパッケージ材」および「パッケージ材」である点で共通し,
刊行物1記載の発明の「用便を行うと,糞尿は該ビニール袋12の底面上に至り」は本願補正発明の「排泄の度に前記パッケージ材に排泄物が収容され」に相当し,
刊行物1記載の発明の「ビニール袋12の開口を閉じ」と本願補正発明の「パッケージ材の入口を密封」とは,パッケージ材の入口を「閉じる」点で共通し,
刊行物1記載の発明の「高分子吸収凝固剤15」と本願補正発明の「オカラ」とは,「排泄物の水分を吸収して半ば凝固状態にする処理材」および「処理材」である点で共通し,
刊行物1記載の発明の「簡易トイレの上室3の上面の後部に設けた収納箱13に,糞尿を固化する高分子吸収凝固剤15を収納」することは,本願補正発明において処理材を「トイレ装置の傍らに配置する」ことに相当し,
刊行物1記載の発明の「ビニール袋12内に用便を行って,該高分子吸収凝固剤15を散布し」と本願補正発明の「排泄の度そのオカラを排泄物が入る便器内の封止されて底が造られたパッケージ材の中に供給し」とは,「排泄の度その処理材を排泄物が入る便器内のパッケージ材の中に供給し」との点で共通し,
刊行物1記載の発明の「ビニール袋12を数個まとめて下室4から取り出す」には,本願補正発明のように「排泄物を収容した個々のパッケージ材を貯めるようにした」ことが,前提であり,
刊行物1記載の発明の「ビニール袋12内に用便を行って,該高分子吸収凝固剤15を散布」することにより排泄物の水分を処理材に吸収させることとなるから,本願補正発明の「排泄物の水分を前記オカラに吸収させ」ることとは,「排泄物の水分を処理材に吸収させ」る点で共通する。

そうすると両者は,
「便座の下に,柔軟なパッケージ材が便器にセットされ,排泄の度に前記パッケージ材に排泄物が収容され,当該パッケージ材の入口を閉じて便器の下方へ送出するようにしたトイレ装置において,該トイレ装置の傍に,収容される排泄物の水分を吸収して半ば凝固状態にする処理材を配置し,排泄の度その処理材を排泄物が入る便器内のパッケージ材の中に供給し,当該排泄物の水分を前記処理材に吸収させてそのパッケージ材の入口を閉じ,排泄物を収容した個々のパッケージを貯めるようにした,処理材付きトイレ装置。」である点で一致し,次の点で相違する。

<相違点1>
便器にセットされた「パッケージ材」が,本願補正発明は「長尺の折畳まれた筒状体」であるのに対し,刊行物1記載の発明は「ビニール袋15」であって,
本願補正発明は「パッケージ材の入口を密封して便器の下方へ送出するようにした」ものであって,排泄の度に「パッケージ材の入口をヒートシーラーによりヒートシールの上下幅を大きく取ってシール部を形成して密封し,このシール部をカット」し,そのことによりパッケージ材が「封止されて底が作られた」ものであるのに対し,刊行物1記載の発明は「ビニール袋12の開口を閉じて,閉封した該ビニール袋12を下室4内に落下させ」るものであって,用便を行ってから「紐18を引っ張ることにより該ビニール袋12を閉じ」ており,また,パッケージ材が「封止されて底が作られた」ものではない点。

<相違点2>
「排泄物の水分を吸収して半ば凝固状態にする処理材」が,本願補正発明は「オカラ」であるのに対し,刊行物1記載の発明は「高分子吸収凝固剤15」である点。

(4)判断
<相違点1について>
刊行物2の記載事項(2d)には「中位の線状発熱体73により袋体77は切断され,上位の線状発熱体73により袋体77の底が次回用の為にヒートシールされ,下位の線状発熱体73により切断された使用済の袋体77の上縁がヒートシールされる」との記載があり,記載事項(2e)とあわせると,刊行物2には本件補正発明の「長尺の折畳まれた筒状体がパッケージ材として便器にセットされ」,「パッケージ材の入口を密封したトイレ装置」,「封止されて底が造られたパッケージ材」及び「パッケージ材の入口をヒートシーラーによりシール部を形成して密封し,カット」することに相当する技術が記載されていると認められる。
そして,刊行物1記載の発明と同様の,パッケージ材を用いたトイレである刊行物2の上記技術を,刊行物1記載の発明に適用することは当業者が容易に想到したことであり,「トイレ装置」において,便座の下に,柔軟で長尺の折畳まれた筒状体をパッケージ材として便器にセットし,ヒートシールによって密封した後に便器の下方へ送出することは,平成22年3月9日付けの拒絶理由通知書に示した実願平4-54023号(実開平6-13686号)のCD-ROM(【図3】,【0009】,【0019】?【0021】,【0040】?【0052】参照)にも示され,また,本願明細書(【0004】参照)に示された,【特許文献1】特開昭49-102167号公報(Fig.3A,3ページ左上欄9?11行,左下欄1行?7行,4ページ左下欄17行?5ページ左上欄18行等参照),【特許文献2】特開平6-30857号公報(【0005】?【0007】,【0012】?【0014】,【0030】,【0031】,【図2】,【図3】,【図7】?【図10】参照)にも同様の構成が示されているように,当業者に周知の技術である。
さらに,ヒートシール部をカットすることは普通に行われていることであり,本願補正発明の「幅を大きく取る」との記載は,具体的に何センチ程度の幅を意味するのか不明であるが,ヒートシールの幅をどの程度にするかは,パッケージの用途やパッケージする機械の性能等を考慮して当業者が適宜決める事項である(必要であれば,特開2003-112714号公報(【0002】,【0014】,【0015】の記載,及び【図1】,【図3】における「ヒートシーラー5,ヒートシール部35」),並びに,再公表特許WO-2003/064259号公報(【図4】(A)「一次シール部S1」)参照。図面に記載されたヒートシール幅は大きいと認められる。このように,筒状のパッケージ材をヒートシールして密封し,同時に底部を作る際に,シール幅を大きく取ってシール部を形成して密封し,このシール部をカットすることは,普通に行われていることである。)。
そうすると,本願補正発明の相違点1に係る発明とすることは,当業者が容易になし得たことと認められる。

<相違点2について>
排泄物の水分を吸収して半ば凝固状態にする処理材を「オカラ」とすることは特開平11-309205号公報(【0001】,【0022】,【0024】及び【0028】参照)並びに特開昭62-221444号公報(特許請求の範囲(1)及び(産業上の利用分野)の項等参照)等に記載されているように,当業者に周知の技術である。特に,特開平11-309205号公報【0028】には,本願補正発明と同様に,可燃性物質状態に処理できる旨(可燃性の廃棄物として処分する事もできる)の記載があり,また,特開昭62-221444号公報の3ページ左上欄1?2行には,吸収材料(オカラ)は,ペットに限らないとの記載がある。
そうすると,排泄物の水分を吸収して半ば凝固状態にする処理材を,刊行物1記載の発明の「高分子吸収凝固剤15」に替え,上記周知技術を採用して「オカラ」とすることは,当業者であれば容易になし得たことである。

そして,本願補正発明の作用効果は,刊行物1記載の発明,刊行物2の技術,及び周知技術から当業者が予測できる程度のことである。

請求人は,審判請求書及び平成22年5月17日付け意見書において,「本願発明では,ヒートシールの上下幅を大きく取って形成されたシール部ですから,このシール部をカットする位置が例えばシール部の真ん中であれば何らの問題はなく,また,カット位置が多少上下にずれたり,或は,多少斜めになったりしても,カットして切り分かれた両方のパッケージ材の端部のシールに影響がない。すなわち,2つのパッケージ材の端部は,確実にシールされた状態で切り分けられるという固有の効果が得られます。」(審判請求書4ページ下)と主張する。
しかしながら,上記<相違点1について>で述べたように,ヒートシールの幅をどの程度にするかは,パッケージの用途やパッケージする機械の性能等を考慮して当業者が適宜決める事項であって,カットの位置精度が良くなければヒートシール幅を大きめに取ることは当業者であれば当然行うことにすぎない。さらに,パッケージ材の入口をヒートシーラーによりヒートシールの上下幅を大きく取ってシール部を形成して密封し,このシール部をカットして内容物を収容した個々のパッケージ材は,上記のように周知な技術事項であり,その作用効果もヒートシールの上下幅を大きく取っている以上,請求人が主張する作用効果は当然奏するのであって,この技術を,トイレのパッケージに適用したからといって,当業者が予測できないような格別の作用効果を奏するものでもない。

したがって,本願補正発明は,刊行物1記載の発明,刊行物2の技術,及び周知な技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成23年2月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?5に係る発明は,平成22年1月12日受付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち,請求項1に係る発明は,上記「第2 1」(補正前)に記載されたものである。
ここで,「送出すようにした」は誤記であるため,「送出するようにした」として,認定する(以下,認定した請求項1に係る発明を,「本願発明」という。)。

2 刊行物の記載内容
原査定に引用され本願出願前に頒布された刊行物1の記載内容は,前記「第2 2 (1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
(1)対比
本願発明は,前記「第2 2」で検討した本願補正発明のパッケージ材が「封止されて底が造られた」ものとの限定を省き,本願補正発明のパッケージ材の入口を密封を「ヒートシーラーによりヒートシールの上下幅を大きく取ってシール部を形成」するとの限定を省き,本願補正発明の「トイレ装置」の「このシール部をカットして排泄物を収容した個々のパッケージ材を貯める」との限定を省いたものであり,本願発明と刊行物1記載の発明とは,上記「第2 2(3)」と同じ点で一致し,以下の<相違点1’>及び上記「第2 2(3)」の<相違点2>で相違する。

<相違点1’>
便器にセットされた「パッケージ材」が,本願発明は「長尺の折畳まれた筒状体」であるのに対し,刊行物1記載の発明は「ビニール袋15」であり,
本願発明は「パッケージ材の入口を密封して便器の下方へ送出するようにした」ものであって,排泄の度に「パッケージ材の入口を密封」するようにしたものであるのに対し,刊行物1記載の発明は「ビニール袋12の開口を閉じて,閉封した該ビニール袋12を下室4内に落下させ」るものであり,用便を行ってから「紐18を引っ張ることにより該ビニール袋12を閉じ」ている点。

(2)判断
<相違点1’について>
「トイレ装置」において,便座の下に,柔軟で長尺の折畳まれた筒状体をパッケージ材として便器にセットし,排泄の度にヒートシールによって密封した後に便器の下方へ送出することは,平成22年3月9日付けの拒絶理由通知書に示した実願平4-54023号(実開平6-13686号)のCD-ROM(【図3】,【0019】,【0040】?【0052】参照)にも示され,また,本願明細書(【0004】参照)に示された,【特許文献1】特開昭49-102167号公報(Fig.3A,3ページ左下欄1行?7行,4ページ左下欄17行?5ページ左上欄18行等参照),【特許文献2】特開平6-30857号公報(【0006】,【0007】,【0012】?【0014】,【0030】,【0031】【図3】,【図7】?【図10】参照)にも同様の構成が示されているように,当業者に周知の技術である。
そうすると,本願発明の相違点1’に係る発明とすることは,当業者が容易になし得たことと認められる。

そして,<相違点2>についての判断は,前記「第2 2(3)」のとおりであって,さらに本願発明の作用効果は,刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる程度のことである。

したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明および周知な技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

<回答書について>
回答書において請求人は,新引用例1,2に基づく認定に対しては,補正の機会が与えられていないとして,補正の機会を要望し,請求項2?4の記載事項に基づいて補正限定したいとして,次の主張をしている。
「前置報告書では,補正した本願発明において,請求項2の「オカラを1回分を分包したままパッケージ材の中に供給する形態」の構成,および,請求項3の分包した「オカラを1回分ごとパッケージ材の中に供給する態様」の構成,並びに,請求項4の「オカラを自動供給する駆動源を起動するための構成」について何ら言及されていないのみならず,これらの構成については,原審引例1?6及び新引用例1,2のいずれにも記載されていない」

しかしながら,請求人が新引用例1とする実願平4-54023号(実開平6-136686号)のCD-ROMは平成22年3月9日付け拒絶理由通知書に周知例として挙げられたものであり,新引用例2とする特開昭62-221444号公報はオカラを処理剤することの周知例として,平成22年3月9日付け拒絶理由通知書及び平成22年11月11日付け補正の却下の決定で示された特開平11-309205号公報に付加して示したものにすぎない。

さらに,仮に,本願発明を請求項2?4に限定したとしても,以下の理由で特許を受けることができない。
すなわち,登録実用新案第3050144号公報の【0013】及び【0020】には,「用便後,水溶性の袋に分包してある吸水性高分子粉末を(当審注:排泄物を入れる袋の)内部に投入」する旨記載され,排泄物の水分を吸収する処理剤(吸水性高分子粉末)1回分を分包したまま,パッケージ材(排泄物を入れる袋)の中に供給することは,公知と認められるから,本願の請求項2及び請求項3に係る発明は,刊行物記載の発明,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また,平成22年3月9日付け拒絶理由通知書において指摘したように,特開2000-104319号公報(【0017】参照)に「処理材の自動供給は,排泄する者が便座に腰掛けたことを機械-電気的に検出し,この検出に基づいて処理材の機械的送出手段の駆動源を起動させるようした点」が記載されているように公知である。したがって,本願の請求項4に係る発明も,刊行物記載の発明,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知な技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-15 
結審通知日 2011-12-20 
審決日 2012-01-16 
出願番号 特願2004-337545(P2004-337545)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A47K)
P 1 8・ 121- Z (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 中川 真一
土屋 真理子
発明の名称 処理材付きトイレ装置  
代理人 樋口 盛之助  
代理人 樋口 盛之助  
代理人 樋口 盛之助  

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