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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1252972
審判番号 不服2011-6667  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-30 
確定日 2012-02-29 
事件の表示 特願2008-210256「異なる画像表示装置を連携する方法、色エラー検知方法及び色測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月15日出願公開、特開2009- 10983〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、特願平9-532643号(優先権主張:平成8年2月26日 米国)の分割出願として平成20年8月19日に出願されたものであり、平成21年10月28日付けで通知した拒絶理由に応答して平成22年3月24日付けで手続補正書が提出され、これに対し平成22年6月28日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成22年11月5日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年11月22日付けで当該手続補正は却下され、同日付けで拒絶査定がされたものである。
これに対して平成23年3月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されている。

2.拒絶査定の内容

拒絶査定は、平成22年6月28日付け拒絶理由通知書に記載された理由によってなされたものである。
理由は以下のとおりである。

「 理 由

この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。


(請求項1乃至10について)
請求項1に「色画像を捕捉して、一つ或は複数個の色表示装置による当該画像の改良された画像表示の為の情報を提供する」と記載されているが、「当該画像の改良された画像表示の為の情報」が具体的にどのような情報であるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。
請求項1に記載された「当該信号を、色空間に於ける座標値として表わすデジタル画像データに変換する事が可能である様に構成されたプロセッサーであって、当該変換は、当該一つ或は複数個のセンサーにより捕捉された当該画像のガムートに影響を与える、一つ或は複数個の操作を含む様に構成されたプロセッサー」と記載されているが、具体的にどのような「プロセッサー」であるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。
請求項1に記載された「当該画像再生」の定義が不明である。
請求項1に「色表示装置による当該画像再生のために、少なくとも、当該デジタル画像データのガムートを拡張する色変換を生成するに際して使用される、当該一つ或は複数の操作に関係する情報を得る為に使用可能なヘッダー部を有するファイルに当該デジタル画像データを格納する為の記憶装置」と記載されているが、「該デジタル画像データのガムートを拡張する色変換を生成するに際して使用される、当該一つ或は複数の操作に関係する情報を得る為に使用可能なヘッダー部を有するファイル」が、具体的にどのようなファイルであるのか不明であり、また、「・・・ファイルに当該デジタル画像データを格納する為の記憶装置」が、具体的にどのような記憶装置であるのか不明である。さらに、上記「ファイル」及び「記憶装置」が、それぞれ発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。
また、従属する他の請求項についても同様である。
請求項2に「当該ヘッダー部は、当該デジタル画像データに関するトーンスケールをリマッピングするか、当該デジタル画像データに関する色群からなる少なくも一つのサブセットの色彩を増加させるかの少なくとも一つに従って、当該デジタル画像データに関するガムートの評価を可能とする情報を提供する」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。
請求項3に「当該一つ或は複数個の操作は、少なくとも、当該デジタル画像データの複数の色を当該色空間の一つ若しくは複数の次元内で圧縮することが可能である」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。

請求項5に「一つ若しくは複数の画像の再生を促進する為に、デジタル画像データに関する情報を格納する方法」と記載されているが、「画像の再生を促進する」ことが、具体的にどのようなことであるのか不明である。
請求項5に「当該捕捉された画像の色ガムートと当該デジタル画像データのガムートとの間の一つ或は複数個の関係を含む情報を生成する工程」と記載されているが、上記「情報」が具体的にどのような情報で、上記「工程」が具体的にどのような工程であるのか不明であり、また、それぞれ発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。
請求項5に「当該情報は、当該デジタル画像データの為のファイルヘッダー部を使用して取得可能であり、更に、当該ヘッダー部のコンテンツは、色表示装置による当該画像の再生の為に、当該デジタル画像データのガムートを拡大させる色変換の生成に使用可能である」と記載されているが、上記「情報」が具体的にどのような情報であるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。
また、従属する他の請求項についても同様である。
請求項6に「当該情報は、当該デジタル画像データに関するトーンスケールをリマッピングするか、当該デジタル画像データに関する色群の色彩を増加させるかの少なくとも一つに従って、当該デジタル画像データのガムートの評価を可能とするものである」と記載されているが、上記「情報」が具体的にどのような情報であるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。
請求項7に「当該情報は、当該再生画像と、一つ或は複数個の当該センサーにより捕捉された色群との間のマッチングの改良を可能にするものである」と記載されているが、上記「情報」が具体的にどのような情報であるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。
請求項8に「当該画像をデジタル的に処理して、色空間の座標値で示される画像データを生成するための一つ或は複数個のモデュールであって、当該処理は少なくともトーン再生、或いは、色彩の何れかを修正するものであるモデュール」と記載されているが、発明の詳細な説明に記載したものではない。
請求項8に「少なくとも、当該処理と関連する情報を含むヘッダー部を有するファイル内から当該画像データを読み出すか、当該ファイル内に当該画像データを書き込む為の一つ或は複数個のモデュールであって、当該ヘッダー部の情報は、色表示装置による当該画像の再生の為に、当該デジタル画像データのガムートを拡大させる色変換の生成に使用可能であるモデュール」と記載されているが、上記「モデュール」が具体的にどのようなモデュールであるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。
請求項9に「少なくとも、一つ或は複数個の色空間次元に於ける当該色画像についてのガムートに影響を与える、一つ或は複数個の操作に関連する情報を得る為のヘッダー部を有するファイルに於ける色画像を表すデジタルデータを読み出す為の一つ或は複数個のモデュールであって、且つ、少なくとも一つ或いは複数の当該操作は、当該ガムートを圧縮するものであるモデュール」と記載されているが、上記「モデュール」が具体的にどのようなモデュールであるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。
請求項9に「画像表示の為の準備に際する更なる処理の為の一つ或は複数個のモデュールであって、当該更なる処理は、当該情報に従って、少なくとも部分的に、当該デジタルデータの色群のガムートを拡大するものであるモデュール」と記載されているが、上記「モデュール」が具体的にどのようなモデュールであるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。

請求項10に「・・・該処理は、少なくともトーン再生、或いは、色彩の何れかを修正するものである工程」と記載されているが、当該工程は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
請求項10に「当該処理に関係する情報を得る為に、ヘッダー部を有するファイルに当該画像データを格納する工程であって、且つ、当該情報は、画像の再生の為に色群を変換する際に使用可能であり、且つ、当該変換は、当該色空間の少なくとも一つの次元に於ける色群のガムートを拡大するものである工程」と記載されているが、上記「工程」が具体的にどのような工程であるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。

なお、この出願は、出願内容が著しく不明確であるから、請求項1乃至10に係る発明については、新規性進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。

拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。」

3.本願特許請求の範囲

平成23年3月30日付けで提出された手続補正書による特許請求の範囲の補正は、当該補正により、平成22年3月24日付けで補正されている請求項1?4、8、10を削除し、平成22年3月24日付けで補正されている請求項5?7、9をそれぞれ新しい請求項1?4とするものであり、併せて、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正を行っているものである。

そして、補正された特許請求の範囲の内、請求項1の記載は以下のとおりである。

「 【請求項1】
デジタルシステムに於ける色画像の再生を制御するために有用な情報を格納する方法であって、当該方法は、
当該画像の光を電気信号に変換する、一つ或は複数個のセンサーにより画像を捕捉する工程と、
当該信号を色空間内の座標値として表わされるデジタル画像データに変換する工程と、当該捕捉された画像の色ガムートと当該デジタル画像データのガムートとの間の一つ或は複数個の関係を含む情報を生成する工程と、
少なくとも、当該デジタル画像データと当該情報を記憶手段に格納する工程と
から構成され、
且つ、当該情報は、当該デジタル画像データの為のファイルヘッダー部を使用して取得可能であり、更に、当該ヘッダー部のコンテンツは、色表示装置による当該画像の再生の為に、当該デジタル画像データのガムートを拡大させる色変換の生成に使用可能である事を特徴とする情報を格納する方法。 」

4.当審の判断

平成22年6月28日付け拒絶理由通知に記載された理由による拒絶査定が解消しているか、すなわち、当該補正された特許請求の範囲の内、請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号および第2号の規定を満たしているか否かについて検討する。

補正された請求項1は補正前の請求項5に相当するものであるから、以下、拒絶理由で請求項5について指摘した点について検討する。
なお、便宜上、拒絶理由通知において「請求項5」とされているものを、以下、「(請求項1)」を付加して記載することとする。

(1)“請求項5(請求項1)に「一つ若しくは複数の画像の再生を促進する為に、デジタル画像データに関する情報を格納する方法」と記載されているが、「画像の再生を促進する」ことが、具体的にどのようなことであるのか不明である。”という指摘について

「一つ若しくは複数の画像の再生を促進する為に、デジタル画像データに関する情報を格納する方法」は「デジタルシステムに於ける色画像の再生を制御するために有用な情報を格納する方法」と補正された。
すなわち、「画像の再生を促進する為」は「色画像の再生を制御するために有用な」と言い換えがされている。

これにより、当該指摘事項が意味不明であるということについては解消されたものと判断される。
ただし、「有用な」とは、どのように有用であるのか明示されていない点において、当該文章がどのような技術的意義をもつものであるかは明らかではない。

(2)“請求項5(請求項1)に「当該捕捉された画像の色ガムートと当該デジタル画像データのガムートとの間の一つ或は複数個の関係を含む情報を生成する工程」と記載されているが、上記「情報」が具体的にどのような情報で、上記「工程」が具体的にどのような工程であるのか不明であり、また、それぞれ発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。”という指摘について

「当該捕捉された画像の色ガムートと当該デジタル画像データのガムートとの間の一つ或は複数個の関係を含む情報を生成する工程」において、「当該捕捉された画像の色ガムート」とは、「画像の光を電気信号に変換する、一つ或は複数個のセンサーにより」補足された画像の色ガムートを指すことは請求項1の前段の記載から明らかである。
また、「当該デジタル画像データのガムート」とは、「当該信号を色空間内の座標値として表わされるデジタル画像データに変換する工程」により得られたガムートであることも請求項1の前段の記載から明らかである。

そうすると、「当該捕捉された画像の色ガムート」とは、“画像の光をセンサーにより電気信号に変換して得られた(補足された)画像の色ガムート”であり、「当該デジタル画像データのガムート」とは、“画像の光をセンサーにより電気信号に変換して得られた信号を色空間内の座標値として表わされるデジタル画像データに変換する工程により得られたガムート”ということになる。

なお、「ガムート」とは通常「ガマット」と称されるものであって、発明の詳細な説明の段落【0024】の記載を参酌すれば「色再生可能領域」のことである。
そして、「ガマット」あるいは「色再生可能領域」は色空間座標における領域を意味するものであるから、「当該捕捉された画像の色ガムート」とは、結局のところ、“画像の光をセンサーにより電気信号に変換して得られた(補足された)画像を色空間に変換して得られる座標値としての色ガムート”に他ならない。

してみれば、“画像の光をセンサーにより電気信号に変換して得られた信号を色空間内の座標値として表わされるデジタル画像データに変換する工程により得られたガムート”である「当該デジタル画像データのガムート」と、「当該捕捉された画像の色ガムート」とは、同じ画像に基づいて本質的に同様の過程において得られるガムートということになり、両ガムート自体の違いがない。

そうすると、本質的に同様のものである2つのガムートの間の一つ或は複数個の関係を含む情報とは、どのような情報であるのか著しく不明である。また、そのような情報を生成する工程というものがどういう処理、演算を行うことであるのかも不明である。

審判請求人は審判請求書(平成23年5月25日付け手続補正)において、当該記載不備の点を(チ)とした上で、次のように明確である旨の主張をしている。

「(c)指摘事項(チ)?(リ)について
平成22年11月5日付け補正後の請求項5(新しい請求項1)に於ける「情報」及び「工程」に対する拒絶理由(指摘事項(チ))に関し、当該「工程」は、当該捕捉された画像の色ガムートと当該デジタル画像データのガムートとの間の一つ或いは複数の関係を含む情報を発生させる為の工程であり、一方、当該「情報」は、以下に示す様な、用語によって明確に記述されている。
即ち、本願明細書段落番号(0167)には、「最後に、入力のガムートは、イメージが表される、色座標スキーム内に合う様に評価、調整される。システムへの入力はプリントコピー(プルーフおよびプレスシート)であるため、イメージ表示が、プリントのすべての色を包含しない調整モニターRGB等スペースであるときを除き、ガムートの評価は不要なことがよくある。ガムートの評価が問題になりそうな場合とは、例えば、従来のシアンと黄色の印刷の限定範囲が、あるモニターにとってガムート外であるが、“HiFi”効果に使用される余分の着色剤を含む場合である。」と記載されており、又、本願明細書段落番号(0171)には、「図4Bに示されていないが、TSVsがCIELABのように均一色スペース座標に変換された後、ガムートスケーリングが行われる。この場合、入力ガムートの出力ガムートへのスケーリングは、この説明の後に示す画像表示装置に関する評価プロセスと全く等しい。」と記載されている。
更に、本願明細書段落番号(0320)の最後の3行には、「上記のオペレータはガムートディスクリプタに依存して、出力ガムートにマッピングされなければならない入力ガムートの制限された色を見出す。一旦2つのガムート内の対応する表面点が識別されると、スケーリング関数を使用して状態変換を準備する。」と記載されている。
上記の各説明から明らかな通り、本願発明で使用される情報は、一般的に、入力された色のガムートと出力された色のガムートと相互のマッピングとの間の関係に関連するものである。」

しかしながら、審判請求人がそのように根拠とする段落【0167】【0171】【0320】を参酌しても、「当該捕捉された画像の色ガムートと当該デジタル画像データのガムートとの間の一つ或は複数個の関係を含む情報を生成する工程」における「情報」が具体的にどのような情報で、「工程」が具体的にどのような工程であるのかは明らかではない。

段落【0167】には、「最後」に、入力のガムートが「色座標スキーム内に合う様に評価、調整される。」ことが記載されているが、請求項1の記載内容は入力のガムートが「色座標スキーム内に合う様に評価、調整される。」ことではない。
また、「イメージ表示が、プリントのすべての色を包含しない調整モニターRGB等スペースであるときを除き、ガムートの評価は不要なことがよくある。」、「ガムートの評価が問題になりそうな場合」、「従来のシアンと黄色の印刷の限定範囲が、あるモニターにとってガムート外であるが、“HiFi”効果に使用される余分の着色剤を含む場合」が請求項1の内容とどのような関係があるのか不明である。
また、段落【0171】には、「TSVsがCIELABのように均一色スペース座標に変換された後、ガムートスケーリングが行われる。」と記載されているが、「均一色スペース座標に変換」や「入力ガムートの出力ガムートへのスケーリング」が請求項の内容にどのように対応するか明らかでなく、そのことと、「当該捕捉された画像の色ガムートと当該デジタル画像データのガムートとの間の一つ或は複数個の関係を含む情報を生成する工程」とがどのように対応するのか、審判請求書において何の説明もされておらず、不明点は明らかとなっていない。

段落【0320】には、「上記のオペレータはガムートディスクリプタに依存して、出力ガムートにマッピングされなければならない入力ガムートの制限された色を見出す。一旦2つのガムート内の対応する表面点が識別されると、スケーリング関数を使用して状態変換を準備する。」として、「一旦2つのガムート内の対応する表面点が識別され」た後に、「スケーリング関数を使用して状態変換を準備する。」ことが記載されているが、そもそも、その「2つのガムート内の対応する表面点」を識別するとはどういうことであり、そのことと、「当該捕捉された画像の色ガムートと当該デジタル画像データのガムートとの間の一つ或は複数個の関係を含む情報を生成する工程」とがどのように対応するのか、審判請求書において何の説明もされておらず、不明点は明らかとなっていない。

また、発明の詳細な説明における他の段落を参酌しても、2つのガムートの間の一つ或は複数個の関係を含む情報とは、どのような情報であるのか、また、そのような情報を生成する工程というものがどういう処理、演算を行うことであるのかについて記載されていることを確認することができない。

したがって、本願特許請求の範囲の請求項1における当該記載箇所の内容は不明であり、また当該内容は発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(3)“請求項5(請求項1)に「当該情報は、当該デジタル画像データの為のファイルヘッダー部を使用して取得可能であり、更に、当該ヘッダー部のコンテンツは、色表示装置による当該画像の再生の為に、当該デジタル画像データのガムートを拡大させる色変換の生成に使用可能である」と記載されているが、上記「情報」が具体的にどのような情報であるのか不明であり、また、発明の詳細な説明の、具体的にどこに記載されたものか不明である。”について

当該記載から、「当該情報」が、当該デジタル画像データの為のファイルヘッダー部に存在し、これが、色表示装置による当該画像の再生の為に、当該デジタル画像データのガムートを拡大させる色変換の生成に使用されることであることは理解できる。

しかしながら、「当該情報」がどのように使用されることによって、当該デジタル画像データのガムートを拡大させる色変換に寄与することになるのかについては不明であって、使用されることをもって「当該情報」が具体的にどのような情報であるのかということは明らかにすることにはならない。

前項(2)でも論じたように、「当該情報」、すなわち「当該捕捉された画像の色ガムートと当該デジタル画像データのガムートとの間の一つ或は複数個の関係を含む情報」とがどういう情報であるのかがそもそも不明である。

したがって、「当該情報は、当該デジタル画像データの為のファイルヘッダー部を使用して取得可能であり、更に、当該ヘッダー部のコンテンツは、色表示装置による当該画像の再生の為に、当該デジタル画像データのガムートを拡大させる色変換の生成に使用可能である」とはどのような技術思想、技術的事項であるのか、依然として不明である。

本願特許請求の範囲の請求項1における当該記載箇所の内容は不明であり、また当該内容は発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(4)請求項2及び3の記載について

請求項1で不明とした「情報」について、請求項2及び3においては、文言上、その意味を限定をしているので、請求項1を引用する請求項2、3の記載について検討を加える。
請求項2及び3の記載は次のとおりである。
【請求項2】
当該情報は、当該デジタル画像データに関するトーンスケールをリマッピングするか、当該デジタル画像データに関する色群の色彩を増加させるかの少なくとも一つに従って、当該デジタル画像データのガムートの評価を可能とするものである事を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該情報は、当該再生画像と、一つ或は複数個の当該センサーにより捕捉された色群との間のマッチングの改良を可能にするものである事を特徴とする請求項1に記載の方法。

しかしながら、「当該デジタル画像データに関するトーンスケールをリマッピングするか、当該デジタル画像データに関する色群の色彩を増加させるかの少なくとも一つに従って、当該デジタル画像データのガムートの評価を可能とするもの」も、「当該再生画像と、一つ或は複数個の当該センサーにより捕捉された色群との間のマッチングの改良を可能にするもの」も、「評価を可能とする」「マッチングの改良を可能にする」とはどういうことであるか、また、「当該情報」がそのためのどのような情報であるのかを何ら明らかにしない。

したがって、請求項1の記載は、請求項2あるいは請求項3に記載の内容を参酌したとしても、どのような技術思想を具現化したものであるか著しく不明である。

よって、拒絶理由において指摘した当該事項(2)(3)は、依然として解消していない。

結局、上記拒絶理由として指摘した事項は依然として著しく不明であって、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明を明確に記載したものではなく、また、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載されているものとはいえない。

5.むすび

以上のとおりであるから、この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第6項第1号および第2号に規定する要件を満たしていないとした拒絶査定に誤りはない。

よって、原査定を取り消す、この出願の発明は特許すべきものであるとする審判請求の趣旨は認められないから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-03 
結審通知日 2011-10-04 
審決日 2011-10-17 
出願番号 特願2008-210256(P2008-210256)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04N)
P 1 8・ 536- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 好一  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 吉村 博之
古川 哲也
発明の名称 異なる画像表示装置を連携する方法、色エラー検知方法及び色測定装置  
代理人 木村 満  
代理人 斉藤 武彦  
代理人 毛受 隆典  
代理人 森川 泰司  

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