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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1253087
審判番号 不服2009-3805  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-19 
確定日 2012-03-05 
事件の表示 特願2003-556909「静止画像形状記述子の統計的特性を示す動画形状記述子の抽出装置及びその方法とそれを利用した動画索引システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月10日国際公開、WO03/56463、平成17年 5月12日国内公表、特表2005-513675〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2002年9月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年12月31日、大韓民国)を国際出願日とする出願であって、平成20年6月19日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月24日付けで手続補正がなされたが、同年11月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年2月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月23日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成21年3月23日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「動画検索システムにおいて、
動画を時間分割するための動画分割手段と、
分割された動画情報から一つの画像オブジェクトに該当する形状情報を抽出し、前記抽出された形状情報を用いて動画形状記述子情報を出力するための動画形状記述子の抽出手段と、
前記動画形状記述子情報をメタデータで格納するための動画メタデータ格納手段と
を備え、
前記動画形状記述子の抽出手段は、
分割された動画情報から一つの画像オブジェクトに該当する形状情報を抽出するための形状抽出手段と、
前記抽出された形状情報から形状記述子ベクトル列情報を抽出するための形状ベクトル記述子の抽出手段と、
前記抽出された形状記述子ベクトル列情報から動画形状記述子情報を抽出するための統計的形状記述子ベクトルの抽出手段と
を備えることを特徴とする動画検索システム。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-167095号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

A.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力画像データから画像特徴量を抽出し特徴記述子を生成する特徴記述子生成部と、
生成された特徴記述子を入力画像データと対応づけて蓄積する画像情報蓄積部と、
入力画像データに付随して入力する属性情報に基づいて属性リストを生成する属性リスト生成部と、
属性情報に関する検索条件が入力すると前記属性リストを検索して当該検索条件に適合する属性情報を出力すると共に、特徴記述子に関する検索条件が入力すると前記画像情報蓄積部を検索して当該検索条件に適合する画像データを出力する画像検索部と、
を備えることを特徴とする画像検索システム。
・・・(中略)・・・
【請求項4】 前記特徴記述子生成部は、フレーム単位で特徴量を抽出し、複数のフレームをまとめたビデオセグメント単位で特徴記述子を生成することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の画像検索システム。」

B.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アナログまたはデジタルで記録された映像、静止画などの画像データから特徴量や属性情報を抽出し、抽出された特徴量や属性情報を利用して画像データの検索を行う画像検索システムおよび画像検索方法に関する。」

C.「【0008】また、本発明は、動画像からキーワードを抽出するときに、フレーム単位ではなく、複数のフレームをまとめたビデオセグメント単位で特徴量を抽出することにより、動画像の検索を容易に行うことのできる画像検索システムおよび画像検索方法を提供することを第3の目的とする。」

D.「【0029】
【発明の実施の形態】実施の形態1.本実施の形態1では、ネットワーク上に散在する複数、すなわち1つ以上のデータベースに蓄積された画像データからユーザが所望の画像データを検索して利用することができる画像検索システムについて説明する。画像データは利用方法によって、圧縮静止画像(JPEG画像等)、圧縮動画像(MPEG画像等)、非圧縮画像いずれでもよく、画像フォーマットについては特に限定しない。本実施の形態1では、本発明の一例として、インターネット上のWWW(World Wide Web)により、画像情報の発信や収集を行うことを想定するが、本発明はこれに限るものではなく、有線または無線通信によるサービスや、放送網によるサービス等に本システムを適用することもできる。
【0030】図1は、本実施の形態1における画像検索システムの構成を説明するブロック図である。以下、「クラス」をデータの定義、「インスタンス」をクラス定義に基づき値として具象化したデータそのもの、例えばファイル、変数などの意味で用いる。
【0031】図1において、1は画像データベース生成部、2は画像に関連する属性を示すテキスト情報の属性情報および画像データ、3は画像データから所定の特徴量セットを抽出する特徴抽出部、4は他の画像データベース生成部1あるいはサーバと共通の特徴量記述データクラスによる定義に基づき特徴量セットからインスタンスセットである特徴記述子セットを生成する特徴記述子セット生成部、5は画像データと特徴記述子セットとを対で蓄積する画像情報蓄積部である。
【0032】また、図1において、6は他の画像データベース生成部1あるいはサーバと共通のテキスト情報記述データクラスによる定義に基づき属性情報からインスタンスセットである属性リストを生成する属性リスト生成部、7は属性リストを蓄積する属性リスト蓄積部である。さらに8は画像検索部であり、9は検索対象の画像データのカテゴリやキー画像から検索したい画像を選択するユーザインターフェース部、10はユーザインターフェース部で指示された検索条件に基づき検索処理を行う検索処理部、11は検索されたキー画像および検索画像を表示する表示部である。なお、本実施の形態1において、属性リストや特徴記述子を総称してメタデータと定義する。」

E.「【0041】次に、画像の特徴量を抽出して特徴量記述子を生成し登録するまでの処理(ステップS4?S6)について詳述する。本実施の形態1における特徴記述子生成処理では、入力して蓄積される画像データは、MPEGやH.261/H.263等の所定の符号化方式によって圧縮符号化されたビデオ(動画像)ビットストリームであるものとする。
【0042】まず、特徴抽出部3において、画像ビットストリームより画像の特徴量を抽出する(ステップS4)。本実施の形態1においては、特徴量として、圧縮ビデオビットストリーム中の動き情報、イントラ符号化フレームの輝度、色差それぞれの直流成分のデータを抽出する。圧縮ビデオビットストリームは、MPEGやH.261/H.263などの国際標準符号化方式によるものを想定しており、これらの方式においてはビデオフレーム信号は、図4に示すようにマクロブロックという単位で動き補償予測(以下、インターという)/フレーム内(以下、イントラという)適応符号化されている。マクロブロックは、輝度信号16x16画素、色差信号8x8画素x2の画像データから構成される。特に、1フレームのすべてのマクロブロックをイントラ符号化する場合をイントラフレームと呼び、この場合、当該フレームの画像データはそれ自身の圧縮データのみで伸長・復元可能である。このようなフレームにおいては、イントラ符号化マクロブロックの各信号の直流成分が画像全体の概略を表現するデータであると考えることができる(図4中、左側最下段に図示)。イントラフレームは、図4に示すようにランダムアクセスなどの要求条件から通常ビデオ信号中に周期的に挿入されることが多い。」

F.「【0044】以下の説明のため、所定の期間のフレーム群をビデオセグメントと呼ぶこととする。例えば、最も単純なビデオセグメントはイントラフレームから始まり、次のイントラフレームの直前のフレームで終了する単位と考えられる。または、より長い期間でイントラフレームからイントラフレーム直前フレームまでのフレーム群を一まとめにしたフレームセットと考えることもできる。ビデオセグメントの長さはビデオセグメント内のコンテンツの意味内容に従い、任意に設定されてよい。」

G.「【0102】さらに、以上述べた特徴抽出部3、特徴記述子セット生成部4の動作や抽出される特徴量、生成される特徴記述子セットについては、他にも様々な例がある。例えば、図12に示すように、特徴抽出部3がビデオ圧縮符号化部12により圧縮符号化される前の非圧縮状態の画像データから特徴量を抽出して、それらを特徴記述子セット生成部4に受け渡す場合も考えられる。このような構成されたシステムの応用例としては、例えば、長時間の監視映像を圧縮しながら蓄積するシステムにおいて、カメラからのデジタイズされた入力映像に対して直接移動物体や侵入物などの特徴(色、形状、サイズ、動きの大きさ・方向など)を検出して特徴量として抽出し、特徴量記述子セット生成部4において特徴記述子セットを生成した後、ビデオ圧縮符号化部12において圧縮符号化されるビデオセグメントに付加して蓄積するという運用形態が考えられる。この例では、画像データとしての詳細な特徴を保持した非圧縮映像について特徴量を抽出するので、圧縮データから特徴量を抽出する場合に比べてより詳細な特徴記述子(被写体の種類や軌跡の記述など)を生成できるという利点がある。一方、詳細な特徴記述子の生成には複雑な演算処理系が必要となり、特徴抽出部3、特徴記述子セット生成部4には、より高い演算性能が要求されることになる。」

上記A?Gの記載及び関連する図面を参照すると、引用例には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。)
「動画像の検索を行うことのできる画像検索システムにおいて、
ビデオセグメント単位の画像データをフレーム単位の画像データに分割する手段と、
前記フレーム単位の画像データから移動物体や侵入物等の形状などの特徴を検出して特徴量として抽出し、前記抽出された特徴量を用いて特徴記述子セットを出力するための特徴記述子セット生成部と、
前記特徴記述子セットをメタデータとして画像データとの対で蓄積する画像情報蓄積部と
を備え、
前記特徴記述子セット生成部は、
前記フレーム単位の画像データから移動物体や侵入物等の形状などの特徴を検出してフレーム単位の特徴量として抽出するためのフレーム単位特徴量抽出手段と、
前記抽出されたフレーム単位の特徴量をまとめてビデオセグメント単位の特徴量として抽出するためのビデオセグメント特徴量抽出手段と
を備える動画像の検索を行うことのできる画像検索システム。」

4.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例記載の発明における「動画像の検索を行うことのできる画像検索システム」は、本願発明における「動画検索システム」に相当する。

(い)引用例記載の発明における「ビデオセグメント単位の画像データ」は、本願発明における「動画」に相当する。
そして、引用例記載の発明において、「ビデオセグメント単位の画像データをフレーム単位の画像データに分割する」ことは、本願発明において、「動画を時間分割する」ことに相当する。
よって、引用例記載の発明における「ビデオセグメント単位の画像データをフレーム単位の画像データに分割する手段」は、本願発明における「動画を時間分割するための動画分割手段」に相当するということができる。

(う)引用例記載の発明における「フレーム単位の画像データ」は、本願発明における「分割された動画情報」に相当する。
また、引用例記載の発明において、フレーム単位の画像データに含まれる「移動物体や侵入物等」は、本願発明において、分割された動画情報に含まれる「一つの画像オブジェクト」に相当する。
そして、引用例記載の発明において、「移動物体や侵入物等の形状などの特徴」を検出して抽出される「特徴量」は、本願発明における「一つの画像オブジェクトに該当する形状情報」に相当する情報であるといえる。
さらに、引用例記載の発明における「特徴記述子セット」、「特徴記述子セット生成部」は、本願発明における「動画形状記述子情報」、「動画形状記述子の抽出手段」に相当するといえるから、引用例記載の発明における「フレーム単位の画像データから移動物体や侵入物等の形状などの特徴を検出して特徴量として抽出し、前記抽出された特徴量を用いて特徴記述子セットを出力するための特徴記述子セット生成部」は、本願発明における「分割された動画情報から一つの画像オブジェクトに該当する形状情報を抽出し、前記抽出された形状情報を用いて動画形状記述子情報を出力するための動画形状記述子の抽出手段」に相当するということができる。

(え)引用例記載の発明における「特徴記述子セットをメタデータとして画像データとの対で蓄積する画像情報蓄積部」は、本願発明における「動画形状記述子情報をメタデータで格納するための動画メタデータ格納手段」に相当する。

(お)引用例記載の発明における「フレーム単位の画像データから移動物体や侵入物等の形状などの特徴を検出してフレーム単位の特徴量として抽出するためのフレーム単位特徴量抽出手段」は、本願発明における「分割された動画情報から一つの画像オブジェクトに該当する形状情報を抽出するための形状抽出手段」に相当する。

(か)引用例記載の発明における「抽出されたフレーム単位の特徴量をまとめてビデオセグメント単位の特徴量として抽出するためのビデオセグメント特徴量抽出手段」と、本願発明における「抽出された形状情報から形状記述子ベクトル列情報を抽出するための形状ベクトル記述子の抽出手段」及び「前記抽出された形状記述子ベクトル列情報から動画形状記述子情報を抽出するための統計的形状記述子ベクトルの抽出手段」からなる構成は、「抽出された形状情報から動画形状記述子情報を抽出するための手段」である点において、共通するものであるということができる。

上記(あ)?(か)の事項を踏まえると、本願発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「動画検索システムにおいて、
動画を時間分割するための動画分割手段と、
分割された動画情報から一つの画像オブジェクトに該当する形状情報を抽出し、前記抽出された形状情報を用いて動画形状記述子情報を出力するための動画形状記述子の抽出手段と、
前記動画形状記述子情報をメタデータで格納するための動画メタデータ格納手段と
を備え、
前記動画形状記述子の抽出手段は、
分割された動画情報から一つの画像オブジェクトに該当する形状情報を抽出するための形状抽出手段と、
前記抽出された形状情報から動画形状記述子情報を抽出するための手段と
を備える動画検索システム。」
である点。

(相違点)
本願発明においては、「抽出された形状情報から動画形状記述子情報を抽出するための手段」が、「抽出された形状情報から形状記述子ベクトル列情報を抽出するための形状ベクトル記述子の抽出手段」及び「前記抽出された形状記述子ベクトル列情報から動画形状記述子情報を抽出するための統計的形状記述子ベクトルの抽出手段」によって構成されているのに対し、引用例記載の発明においては、それらの手段によって構成されていない点。

5.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
一般に、画像オブジェクトの形状をベクトル列情報で表すことは、周知技術(例えば、特開平8-315152号公報の「・・・セグメント化された物の画像情報から、複数の形状性質を特徴付ける特徴量をその要素とする一次特徴量ベクトルを算出する一次特徴量ベクトル抽出手段・・・」(第2頁第1欄第20?22行)との記載参照)にすぎないから、引用例記載の発明において、上記周知技術を適用し、「抽出された形状情報から形状記述子ベクトル列情報を抽出するための形状ベクトル記述子の抽出手段」を設けるようにすることは、当業者が適宜になし得ることにすぎない。
そして、複数の個別の情報をまとめるために統計学的手法を使用することは、例えば「平均値を算出する」といった例に見られるように、広範な分野でごく普通に行われていることであるから、引用例記載の発明において、「抽出されたフレーム単位の特徴量をまとめてビデオセグメント単位の特徴量として抽出する」にあたり、抽出された形状情報から上記「形状ベクトル記述子の抽出手段」により抽出した「形状記述子ベクトル列情報」を、統計学的手法でまとめて統計的形状記述子ベクトルで表される動画形状記述子情報(ビデオセグメント単位の特徴量)とすること、すなわち、「抽出された形状記述子ベクトル列情報から動画形状記述子情報を抽出するための統計的形状記述子ベクトルの抽出手段」を設けるようにすることは、当業者がごく普通になし得ることにすぎない。
よって、引用例記載の発明において、「抽出された形状情報から動画形状記述子情報を抽出するための手段」を、「抽出された形状情報から形状記述子ベクトル列情報を抽出するための形状ベクトル記述子の抽出手段」及び「前記抽出された形状記述子ベクトル列情報から動画形状記述子情報を抽出するための統計的形状記述子ベクトルの抽出手段」によって構成するようにすることは、上記周知技術を参酌することにより、当業者が適宜になし得ることにすぎない。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-03 
結審通知日 2011-10-07 
審決日 2011-10-19 
出願番号 特願2003-556909(P2003-556909)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅本 達雄  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 小曳 満昭
久保 正典
発明の名称 静止画像形状記述子の統計的特性を示す動画形状記述子の抽出装置及びその方法とそれを利用した動画索引システム  
代理人 阿部 和夫  
復代理人 濱中 淳宏  
代理人 谷 義一  
復代理人 井原 光雅  

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