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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1253166
審判番号 不服2009-5961  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-19 
確定日 2012-03-08 
事件の表示 特願2003-154209「メータ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月16日出願公開、特開2004-357120〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年5月30日の出願であって、平成21年2月10日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年3月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同年4月17日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成23年10月17日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、同年12月15日付けで手続補正がされたものである。

2.平成23年12月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年12月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
平成23年12月15日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「前面に車両の走行情報を表示する表示部を有しており、かつ、該表示部における表示内容を実際の車両の走行状態に追随制御するメータ回路が形成されたメータ回路基板を板厚方向を前後方向にとってメータハウジング内に配設するとともに、受信回路が形成された受信回路基板および該受信回路基板に設けられたアンテナよりなる電波受信機を、前記メータハウジング内に配設し、
前記電波受信機を、アンテナ給電点位置がメータ回路基板の上端部と略同じ高さとなるように配置したメータ装置において、
前記電波受信機は、前記アンテナをパターン形成した前記受信回路基板を前記メータ回路基板に固定し、かつ、前記受信回路基板の板面が前記メータ回路基板の板面に対して直交するように配置したことを特徴とするメータ装置。」
から、
「前面に車両の走行情報を表示する表示部を有しており、かつ、該表示部における表示内容を実際の車両の走行状態に追随制御するメータ回路が形成されたメータ回路基板を板厚方向を前後方向にとってメータハウジング内に配設するとともに、受信回路が形成された受信回路基板および該受信回路基板に設けられたアンテナよりなる電波受信機を、前記メータハウジング内に配設し、
前記電波受信機を、アンテナ給電点位置がメータ回路基板の上端部と略同じ高さとなるように配置したメータ装置において、
前記電波受信機は、前記アンテナをパターン形成した前記受信回路基板を板厚方向を水平方向にとって、水平方向を長手方向とした前記メータ回路基板に固定し、かつ、前記アンテナが前記メータ回路基板の配線パターン非形成領域に対向し、前記受信回路基板の板面が前記メータ回路基板の板面に対して直交するように配置したことを特徴とするメータ装置。」
に補正された。

上記補正は、補正前の請求項1における「受信回路基板」について「板厚方向を水平方向にとって」メータ回路基板に固定することを限定し、かつ、「メータ回路基板」について「水平方向を長手方向とした」ものとすることを限定するとともに、「アンテナ」が「メータ回路基板の配線パターン非形成領域に対向」するものであることを限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
当審において平成23年10月17日付けで通知した最後の拒絶の理由に引用した特開2002-321547号公報(以下、「引用例1」という。)、及び特開平10-329578号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例1)
A.「【0041】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)以下、図面にしたがい、本発明の電波受信機内蔵型メータ装置について説明する。図1は電波受信機内蔵型メータ装置の分解した状態を示し、図2は電波受信機であるキーレスエントリー受信機を搭載した状態のメータ回路基板の正面視を示している。電波受信機内蔵型メータ装置は、車室のインストゥルパネル内に嵌め込まれるアッパーハウジング11、ロアハウジング12を有し、乗員と対向するアッパーハウジング11には、車両の走行情報等を表示する表示部2が設けられる。表示部2は、スピードメータ21A、タコメータ21B、水温計21C、燃料計21D等のメータ類が設けられる。アッパーハウジング11の背後には、メータ回路基板3およびキーレスエントリー受信機7が配設される。メータ21A?21Dの配置は、通常、図例のごとく、略中央にタコメータ21Bが配され、これを挟んで左側にスピードメータ21Aが、右側にやや小さなメータである水温計21Cおよび燃料計21Dが並ぶ。したがって、アッパーハウジング11、ロアハウジング12およびメータ回路基板3は車両水平方向に細長の形状となっている。
【0042】メータ回路基板3には、表示部2を制御する制御部4が実装される。制御部4は、メータ21A?21Dと1対1に対応したメータ指示用交差コイル42A,42B,42C,42Dの他、トリップメータとしてのLCD44、これらの制御用のCPU43、これらへの電源としての電源レギュレータ41、ワイヤハーネスと接続されるコネクタ6が設けられている。メータ回路基板3の表面には配線パターン51,52,54等が形成される。」

B.「【0066】(第3実施形態)図4に本発明の第3実施形態になる電波受信機内蔵型メータ装置を示す。図中、第1実施形態と実質的に同じ作動をする部分には同じ番号を付して第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0067】図中、Yはメータ回路基板3の水平方向の中心を示す仮想線であり、Xはメータ回路基板3の車両高さ方向(図中、縦方向)の中心を示す仮想線である。CPU43は、かかる仮想線X,Yによって画成される4つの領域F1,F2,F3,F4のうちの右下領域F2の仮想線Xの近傍に実装され、水平方向に細長のLCD44は仮想線Yを横切り右下領域F2および左下領域F3にわたって実装される。そして、CPU43からLCD44への制御信号を伝送する複数の配線パターン(以下、LCDラインという)54が束状に形成されている。LCDライン54は、LCD44に近接して水平方向に伸びる水平部541を有し、水平部541に連なる両端部542,543は屈曲して、一端部542がCPU43と接続され、他端部543がLCD44と接続されている。LCDライン54の水平部541は仮想線Yに対してやや右側に偏しており、主たる形成領域は右下領域F2である。
【0068】一方、キーレスエントリー受信機7は、左上領域F4の中の、メータ回路基板3の左上の隅部301に寄せて実装されている。アンテナ8Bは図5に示すように基板71から逆L型に突出する構成となっており、アンテナ入力端子74の近傍部分である垂直直線部811から基板71の主面に対して平行な方向に屈曲する水平部812は下方に向けてある。
【0069】LCD44は、周知のごとく各画素がコンデンサ構造のセルを有し、セルへの充電と放電とを切り換えて所望の表示が可能であり、LCDライン54はそれぞれ、その線端が容量性素子としてのLCD44を介して図示しないグランドパターンに接地されることになる。
【0070】CPU43は高周波信号源として作用し、これに基因した高周波ノイズがキーレスエントリー受信機7のS/Nに与える影響の程度が問題となる。発明者らがメータ回路基板3上の輻射ノイズの強度を調査したところ、CPU43からLCD44にかけて高いレベルのノイズが検出された。CPU43は車両各部間で通信を行う多重通信システムのノードとなっているから、駐車時等にもスリープモード等で作動しており、前記ノイズは輻射され続けることになる。従来の、単にメータ装置にキーレスエントリー受信機を内蔵しただけの構成では、このノイズにより受信性能が低下することが明らかとなった。
【0071】漏洩する高周波ノイズは前記LCDライン54にも流れるが、LCDライン54のインダクタンス成分と容量性素子としてのLCD44とで直列共振回路を形成しており、LCDライン54をアンテナとして、高周波ノイズが強く輻射されることになる。この、アンテナとしてのLCDライン54はモノポール型の電界アンテナのごとく作用し、電界放射イメージは図6に示すようなパターンRとなるものと認められる。
【0072】本実施形態では、キーレスエントリー受信機7が、高周波ノイズを発生するCPU43やアンテナとなるLCDライン54が配置される右下領域F2に対して水平方向および高さ方向に対称な左上領域F4のうち、メータ回路基板3の隅部301に配置されるから、キーレスエントリー受信機7は、メータ回路基板3上でCPU43やLCDライン54から最も離れた位置にある。これにより、高周波ノイズによるキーレスエントリー受信機7のS/Nの低下を防止することができる。したがって、ワイヤハーネスのアンテナ8Bの特性への影響を相対的に低減することができる。
【0073】前記のごとく、キーレスエントリー受信機7のアンテナ8Bがキーレスエントリー受信機基板71の主面から逆L字状に突設されているから、その給電点としてのアンテナ入力端子741に近い部分、すなわち、基板71の主面に対して垂直な直線部811が、メータ回路基板3の面に対して垂直である。したがって、LCDライン54に対しても垂直方向を向いている。前記アンテナ8Bの垂直直線部811は給電点としてのアンテナ入力端子74に近接していることから電流密度が最も高いが、アンテナ垂直直線部811に対して垂直方向を向くLCDライン54との結合は疎であり、LCDライン54から輻射される前記高周波ノイズの影響を低減することができる。
【0074】また、前記のごとく、アンテナ8Bの垂直直線部811はメータ回路基板3の主面に対して垂直であり、LCDライン54のごとき高周波ノイズを輻射するアンテナとして機能する配線パターンがLCDライン54の他に存在していても、これらに対しても良好な耐ノイス性を発揮する。
【0075】また、アンテナ8Bは、キーレスエントリー受信機基板71の主面に平行な平行直線部812が、下方に向けて形成されており、水平方向に形成されたLCDライン54に対して直角方向を向く。したがって、強くノイズが輻射されるLCDライン54からのノイズに対して良好な耐性を発揮する。」

上記A.,B.の記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「前面に車両の走行情報を表示する表示部を有しており、かつ、該表示部における表示内容を実際の車両の走行状態に追随制御するメータ回路が形成されたメータ回路基板を板厚方向を前後方向にとってメータハウジング内に配設するとともに、受信回路が形成された受信回路基板および該受信回路基板に設けられたアンテナよりなる電波受信機を、前記メータハウジング外に配設し、
前記電波受信機を、アンテナ給電点位置がメータ回路基板の上端部と略同じ高さとなるように配置したメータ装置において、
前記電波受信機のアンテナを、水平方向を長手方向とした前記メータ回路基板上のLCDラインが形成されていない領域に対向させるとともに該LCDラインに対して直交するように配置したメータ装置。」

(引用例2)
C.「【0009】図1?図5の実施例において、1は車両用計器装置、2は所定の表示を行う表示部、3?5は単一機能若しくは複数の機能を統合化してユニット化した電装品ユニット、6は、表示部2や電装品ユニット3?5等の各種部品の取付け基準品となると共に電気的な基準品となる基準部であり、印刷配線板からなるマザーボードに図示しない電気回路が導電材料の印刷によりパターン形成され、信号や電源の分配を行う機能を有し、前面側には少なくとも電装品ユニット3?5を接続可能とする複数の装着部7が設けられ、車両用計器装置1のケースの一部を成す本体ケース8の後面側に装着されて、その背後には前記ケースの一部を成すリヤケース9が装着されている。
・・・(中略)・・・
【0012】表示部2は、車両用計器装置1の表示機能を一元的に有するもので、走行速度やエンジン回転数等の運転情報、GPS衛星を利用した現在位置情報、車両の室内温度,外気温度等の環境情報等を、電装品ユニット3?5での処理に基づき表示するもので、本体ケース8の中央部の段差部81に載置される液晶パネル(LCD)20と、この背後に位置してLCD20への照明光を均一化する光拡散板21と、基準部6に装着されてLCD20の背後から照明光を照射する4個の小型ランプ22とからなり、LCD20の図示しない露出端子にそのクリップ状の端部を接続した金属接続ピン23の他端を後述するメインユニットとなる電装品ユニット3に接続することにより、表示部2の電気的接続が図られる。」

D.「【0015】電装品ユニット5は、比較的小電流(1アンペア以下)を消費する警報回路(図2の符号5a),キーレス受信回路(同5b)等の電装品であり、印刷配線板からなるドーターボード50上にセンサやスイッチ等の図示しない検出素子に接続されるて電子部品からなる入力回路51と、リレーやアクチュエータ等の図示しない制御素子に接続されて電子部品からなる出力回路52とを有し、ドーターボード50の一端である下端には突出する端子部となる接続用オス型コネクタ53が露出しており、このコネクタ53を装着部7の一部である小電流ユニット用メス型コネクタ72(図2の符号72a,72b)に挿入することにより、ドータボード50が基準部6の表面に対して略垂直状態の関係となるように配置され、電装品ユニット5と基準部6との機械的及び電気的接続が図られる(図4参照)。
【0016】斯かる構成によれば、電装品ユニット3,4,5は、そのドーターボード30,40,50に設けた前記端子部を基準部6に設けたワンタッチ接続可能な装着部7であるコネクタ70,71,72に押し込むことにより、瞬時に機械的及び電気的接続が完了する。
【0017】例えば、電波式キーレスエントリーシステムの受信機であるキーレス受信回路5bは、印刷配線板からなるドーターボード50上に、基準部6に設けた後述するアンテナ100を介して送信機からの電波を受信する受信回路,受信した電波を増幅する増幅回路,受信した電波に含まれているIDコード等の信号を検出する検波回路,その信号を波形整形する波形整形回路,予め所定のプログラムやIDコード等を記憶している記憶回路,受信した信号に基づき所定の処理を行う処理回路等の入力回路51と、図示しないドアに設けたモータ等で構成されるドアロックアクチュエータでドアのロック,アンロックを制御するための制御信号を出力する出力回路52とを構成している。一方、基準部6には、基準部6の領域内に位置してその基準部6の周縁に沿うように略輪形状とした銅線等の導電性材料からなるアンテナ100が基準部6の表面から離した状態で装着されている。そして、ドーターボード50の一端である下端に設けた突出する端子部となる接続用オス型コネクタ53を、装着部7の一部である小電流ユニット用メス型コネクタ72bに挿入することにより、ドータボード50が基準部6の表面に対して略垂直状態の関係となるように配置され、キーレス受信回路5bと基準部6及びアンテナ100との機械的及び電気的接続が図られる(図5参照)。」

上記C.,D.の記載及び関連する図面を参照すると、引用例2には、次の技術が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の技術」という。)
「車両用のメータ装置において、メータハウジング内にキーレス受信回路基板を配設するとともに、該メータハウジング内で該キーレス受信回路基板をメータ回路基板に固定すること。」

(3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、「受信回路が形成された受信回路基板および該受信回路基板に設けられたアンテナよりなる電波受信機」を「所定の位置」に配設している点において共通するものであるといえるから、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
「前面に車両の走行情報を表示する表示部を有しており、かつ、該表示部における表示内容を実際の車両の走行状態に追随制御するメータ回路が形成され水平方向を長手方向としたメータ回路基板を板厚方向を前後方向にとってメータハウジング内に配設するとともに、受信回路が形成された受信回路基板および該受信回路基板に設けられたアンテナよりなる電波受信機を所定の位置に配設し、
前記電波受信機を、アンテナ給電点位置がメータ回路基板の上端部と略同じ高さとなるように配置したメータ装置。」
である点。

(相違点)
相違点1:本願補正発明においては、メータ回路基板のみならず、受信回路基板を含む電波受信機をもメータハウジング内に配設するとともに、該メータハウジング内で受信回路基板をメータ回路基板に固定しているのに対し、引用例1記載の発明においては、受信回路基板を含む電波受信機をメータハウジング外に配設している点。

相違点2:本願補正発明においては、受信回路基板にアンテナをパターン形成するとともに、該受信回路基板の板厚方向を水平方向にとり、かつ、該受信回路基板の板面がメータ回路基板の板面に対して直交するように配置しているのに対し、引用例1記載の発明においては、そのようにしていない点。

相違点3:本願補正発明においては、アンテナをメータ回路基板の配線パターン非形成領域に対向させるようにしているのに対し、引用例1記載の発明においては、アンテナをメータ回路基板上のLCDラインが形成されていない領域に対向させるようにしているものの、LCDライン以外の配線パターンの非形成領域に対向させるようにしているか明らかでない点。

(4)判断
そこで、上記相違点1?3について検討する。

(相違点1について)
上記引用例2記載の技術に見られるように、「車両用のメータ装置において、メータハウジング内にキーレス受信回路基板を配設するとともに、該メータハウジング内で該キーレス受信回路基板をメータ回路基板に固定すること」は、公知の技術である。
してみれば、引用例1記載の発明に対して上記引用例2記載の技術を適用することにより、メータ回路基板のみならず、受信回路基板を含む電波受信機をもメータハウジング内に配設するとともに、該メータハウジング内で受信回路基板をメータ回路基板に固定するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点2について)
一般に、送受信機や受信機において、アンテナを回路基板にパターン形成することは、例えば、特開2003-124719号公報(段落【0034】?【0035】の記載及び図3,4参照)、特開2003-110332号公報(段落【0028】の記載及び図4参照)、特開2001-332924号公報(段落【0003】の記載及び図5参照)、特開2001-211019号公報(段落【0016】の記載及び図4参照)、特開平10-6859号公報(【請求項1】の記載及び図1参照)に記載されているように、周知技術にすぎない。
してみれば、引用例1記載の発明において、電波受信機のアンテナを、受信回路が形成された受信回路基板にパターン形成するようにすることは、上記周知技術を採用することにより、当業者が適宜に設計できる事項にすぎない。
また、引用例1記載の発明においては、LCDラインから輻射される高周波ノイズの影響を低減させるための方策として、電波受信機のアンテナをメータ回路基板上のLCDラインに対して直交させるような配置関係を採用しているが、上記のように、アンテナを、受信回路が形成された受信回路基板にパターン形成するようにした場合には、パターン形成されたアンテナを含む受信回路基板ごとLCDラインに対して直交させるようにしなければ、アンテナをLCDラインに対して直交させることができないということは、当業者にとって明らかである。
そして、LCDラインに対して直交関係にある引用例1の図5のもののようなアンテナを受信回路基板にパターン形成した場合の該受信回路基板の板厚方向は、必然的に水平方向となるものと解される。
よって、引用例1記載の発明において、受信回路基板の板厚方向を水平方向にとり、かつ、該受信回路基板の板面がメータ回路基板の板面に対して直交するように配置することは、上記周知技術を参酌することにより、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点3について)
引用例1の上記B.の段落【0072】に、「本実施形態では、キーレスエントリー受信機7が、高周波ノイズを発生するCPU43やアンテナとなるLCDライン54が配置される右下領域F2に対して水平方向および高さ方向に対称な左上領域F4のうち、メータ回路基板3の隅部301に配置されるから、キーレスエントリー受信機7は、メータ回路基板3上でCPU43やLCDライン54から最も離れた位置にある。これにより、高周波ノイズによるキーレスエントリー受信機7のS/Nの低下を防止することができる。」と記載されているように、引用例1記載の発明において、アンテナをメータ回路基板上のLCDラインが形成されていない領域に対向させるようにしているのは、メータ回路基板の配線パターンのうちLCDラインが最も大きい高周波ノイズ源となってキーレスエントリー受信機のアンテナに対して悪影響を及ぼすためであると解される。
ここで、LCDライン以外の配線パターンは、LCDラインほどキーレスエントリー受信機のアンテナに対して悪影響を及ぼさないものであっても、全く影響がないわけではないことは明らかであるから、LCDライン以外の配線パターンについてもその非形成領域に対向するようにキーレスエントリー受信機のアンテナを配置した方がよいということは、当業者がごく普通に考えられることである。
よって、引用例1記載の発明において、LCDライン以外の配線パターンも含めてアンテナをメータ回路基板の配線パターン非形成領域に対向させるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(本願補正発明の作用効果について)
そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術、及び上記周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術、及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成23年12月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成21年4月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「前面に車両の走行情報を表示する表示部を有しており、かつ、該表示部における表示内容を実際の車両の走行状態に追随制御するメータ回路が形成されたメータ回路基板を板厚方向を前後方向にとってメータハウジング内に配設するとともに、受信回路が形成された受信回路基板および該受信回路基板に設けられたアンテナよりなる電波受信機を、前記メータハウジング内に配設し、
前記電波受信機を、アンテナ給電点位置がメータ回路基板の上端部と略同じ高さとなるように配置したメータ装置において、
前記電波受信機は、前記アンテナをパターン形成した前記受信回路基板を前記メータ回路基板に固定し、かつ、前記受信回路基板の板面が前記メータ回路基板の板面に対して直交するように配置したことを特徴とするメータ装置。」

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「受信回路基板」、「メータ回路基板」、及び「アンテナ」についての特定の限定を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術、及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明も、同様に、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術、及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
したがって、本願発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の技術、及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-05 
結審通知日 2012-01-10 
審決日 2012-01-23 
出願番号 特願2003-154209(P2003-154209)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H04B)
P 1 8・ 121- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江口 能弘畑中 博幸  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 甲斐 哲雄
小曳 満昭
発明の名称 メータ装置  
代理人 伊藤 求馬  
代理人 伊藤 求馬  

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