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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1253177
審判番号 不服2009-20423  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-23 
確定日 2012-03-08 
事件の表示 特願2004-183303「帳票データ入出力処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月12日出願公開、特開2006- 11503〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成16年6月22日の出願であって,平成21年7月14日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年10月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,平成23年10月24日付けの当審の拒絶理由通知に対して同年11月24日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成23年11月24日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
少なくとも帳票データを構成する文字データの入力及び記録保存を行う利用者プログラムと,これとは独立して,帳票のどの位置にどのデータが存在するかを示す出力レイアウト情報を含む画面定義情報と,前記画面定義情報が有する出力レイアウト情報及び前記利用者プログラムが出力する前記文字データを取り込んで,この出力レイアウト情報に従って,帳票データの画面出力情報或いは印刷出力情報を作成して出力する入出力制御部と,を有する帳票データ入出力処理装置において,
記入済み伝票処理部と,記入済み伝票のイメージ読み取りを行うスキャナとを備え,
前記記入済み伝票処理部は,前記スキャナに対して,記入済み伝票の読み取りを指示して,読み取った記入済み伝票イメージから,前記帳票データの画面出力情報或いは印刷出力情報を作成して出力するために用いたのと同じ画面定義情報を用いて,その画面定義情報が有する出力レイアウト情報に基づき,該記入済み伝票イメージを解析して文字データを取得し,
前記入出力制御部は,前記出力レイアウト情報に基づいた帳票の所定の位置に,取得した文字データをマッピングした上で帳票の形態で画面出力或いは印刷出力すると共に,記入済みの伝票から取得した文字データを帳票データとして取り込んで記録保存することを特徴とする帳票データ入出力処理装置。」

3.引用例
(1)引用例1記載の事項及び引用例1発明
これに対して,当審において,平成23年10月24日付けで通知した拒絶の理由において引用した「特開平4-190471号公報」(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の(ア)?(ケ)の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

(ア)「3.発明の詳細な説明
〔概 要〕
OCRで読取ったデータを修正するための修正画面の自動生成処理方式に関し,
帳票についての位置情報に基づいて帳票に即した修正画面を自動的に生成することを目的とし,
読取装置によって帳票上のデータを読取り,この読取り結果を修正するための修正画面をディスプレイに表示する光学文字読取装置において,前記帳票の各項目についての位置情報と,前記修正画面を生成する生成処理部とを備え,前記生成処理部が,前記位置情報に従って,前記帳票に即した前記修正画面を生成するように構成する。」(第1頁右下欄第6-18行)

(イ)「〔産業上の利用分野〕
本発明は,修正画面の自動生成処理方式に関し,更に詳しくは,OCRで読取ったデータを修正するための修正画面の自動生成処理方式に関する。
各種の帳票上の所定の位置に記入された手書き文字等をOCR(光学文字読取装置)に読取らせ,データとして入力することが行われる。この読取りの結果は,誤読等の修正のために,修正画面上に表示される。オペレータは,この修正画面を見ながら,誤読を修正する。」(第2頁左上欄第1-10行)

(ウ)「〔従来の技術〕
OCRに帳票上の文字を読取らせるために,OCRに対して,帳票上の文字の位置が入力される。例えば,帳票上には,「得意先コード」,「担当者コード」,「年月日」等のデータ(これらを項目と総称する)を記入する欄があるが,その各々について,行位置,桁位置が入力される。OCRは,各項目について,その位置情報に従って,記入された文字を読取る。
一方,このような帳票についての位置情報とは別に,修正画面についての位置情報が入力され,当該画面が設計される。この修正画面の構成が当該帳票に近ければ,オペレータの操作性は向上する。そこで,帳票上の位置に近くなるように,修正画面上における項目の各々について,その行位置,桁位置が入力される。
帳票及び修正画面についての位置情報は,その各項目の位置を算出したうえで,入力される。この作業は,人手によって行われている。」(第2頁左上欄第11行-同頁右上欄第10行)

(エ)「〔発明が解決しようとする課題〕
前述の従来技術によれば,修正画面の設計のために位置情報の入力を必要とするので,その設計に多大の時間を要するという問題がある。また,修正画面についての位置情報は,帳票についての位置情報と近似するものであるので,類似の情報を,別々に2度入力するという重複した作業を行っているという問題もある。」(第2頁右上欄第11-18行)

(オ)「本発明は,帳票についての位置情報に基づいて帳票に即した修正画面を自動的に生成する修正画面の自動生成処理方式を提供することを目的とする。」(第2頁左下欄第10-13行)

(カ)「〔課題を解決するための手段〕
第1図は本発明の原理構成図であり,本発明による光学文字読取装置を示している。
第1図において,1は処理装置,2はOCR処理部,3は生成処理部,4は未定義表示処理部,5は読取装置,6は読取り結果データ,7はOCR定義体,8は帳票位置データ,9はディスプレイ,10は修正画面,11は帳票である。
読取装置5は,帳票11上の各項目に記入された文字をデータとして光学的に読取り,OCR処理部2へ送る。
この読取りのために,帳票位置データ8が用いられる。即ち,帳票位置データ8は,読取り対象である帳票11の各項目についての位置情報であり,読取るべき領域を示す。
OCR処理部2は,読取装置5からのデータを読取結果データ6としてメモリに格納する。また,OCR処理部2は,このデータ即ち読取りの結果を修正するための修正画面10をディスプレイ9上に表示する。
生成処理部3は,帳票位置データ8に従って,帳票11に即した修正画面10を生成する。」(第2頁左下欄第17行-同頁右下欄第19行)

(キ)「〔作 用]
生成処理部3は,本来は帳票11の読取りのためのものである帳票位置データ8を用いて修正画面10を生成する。即ち,修正画面10上における各項目の位置が,帳票11上における対応する項目の位置を示す帳票位置データ8に従って決定される。この時,帳票11の行数及び桁数と,修正画面10の行数及び桁数(一般的にこれらの方が小さい値をとる)との比が考慮される。
以上によれば,修正画面10についての位置情報を入力することなく,帳票位置データ8を流用することによって,修正画面10を自動生成することができる。従って,修正画面10の設計のための時間を極めて少なくできる。
また,帳票位置データ8に従った画面が生成されるのであるから,帳票11に近い構成の修正画面10を得ることができる。従って,オペレータの誤読の修正作業における操作性を向上することができる。」(第3頁左上欄第1-19行)

(ク)「〔実施例〕
第1図図示の光学文字読取装置について更に説明する。
処理装置1は,CPU(中央処理装置)及び(主)メモリからなる。このメモリには,OCR定義体7がロードされる。OCR定義体7は,OCRにおける種々の処理を行うために,各種の処理に対応したプログラムからなる。CPUとメモリ上のOCR定義体7とによって,OCR処理部2が構成される。OCR定義体7は,予め作成され,DASD等のメモリに格納される。本実施例のOCR定義体7又はOCR処理部2は,修正画面10を生成する生成処理部3と,表示位置の決まっていない項目及び他の項目と重なっている項目(未定義の項目)がある場合にこれを所定のシンボル(未定義シンボル)で表示する未定義処理部4とを有する。
OCR処理部2は,読取装置5で読取ったデータに基づいて,辞書等を参照して,候補文字を1又は2以上生成する。そして,この候補文字を読取結果データ6として,DASD等のメモリに格納する。この格納は,例えば候補文字の順位に従った順で行われる。
また,OCR処理部2は,修正画面10上に読取結果データ6を付加する形でこれを表示する。具体的には,候補文字の順位が第1位の文字のみを,修正画面10の対応する項目(のフィールド)に表示する。また,候補文字は,修正画面10外の画面上に表示される。ここで,表示される候補文字は,例えば,修正画面10上で,カーソルの位置づけられた文字についての候補文字とされる。なお,修正画面10は,この候補文字の他必要事項の表示のため,画面全体の大きさより小さくなる。
オペレータは,修正画面10上の修正したい文字にカーソルを位置づけ,候補文字の中から正しい文字を選択することにより,読取結果データ6を修正する。
修正画面10は生成処理部3によって生成されるが,このために,帳票位置データ8が用いられる。この帳票位置データ8の一例を第3図に示す。また,当該帳票11の一例を第2図に示す。」(第3頁右上欄第1行-同頁右下欄第2行)

(ケ)「〔発明の効果〕
以上説明したように,本発明によれば,OCRで読取ったデータを修正するための修正画面の生成処理において,帳票の読取りのための帳票位置データを用いることにより,修正画面を人手によらず自動性成できるので,修正画面の設計のための時間を大幅に省略することができ,また,当該帳票に即した修正画面を得ることができ,操作性を向上できる。」(第6頁左上欄第2-10行)

上記摘記事項(ア)?(ケ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「読取装置5によって帳票11上のデータを読取り,この読取り結果を修正するための修正画面10をディスプレイ9に表示する光学文字読取装置であって,
読取装置5は,帳票11上の各項目に記入された文字をデータとして光学的に読取り,OCR処理部2へ送るものであり,
この読取りのために,読取り対象である帳票11の各項目についての位置情報であり読取るべき領域を示す帳票位置データ8が用いられ,
OCR処理部2は,読取装置5で読取ったデータに基づいて辞書等を参照して,候補文字を生成し,この候補文字を読取結果データ6としてメモリに格納し,
生成処理部3は,本来は帳票11の読取りのためのものである帳票位置データ8を用いて修正画面10を生成し,その結果,修正画面10上における各項目の位置が,帳票11上における対応する項目の位置を示す帳票位置データ8に従って決定されて帳票11に即した修正画面10が生成され,
OCR処理部2は,修正画面10上に読取結果データ6を付加する形でこれを表示する,
光学文字読取装置。」

4.対比
本願発明と引用例1発明とを対比する。

(a)引用例1発明の「光学文字読取装置」は,読取装置5によって読み取られた帳票上の文字を,辞書等を参照して候補文字を生成してメモリに格納するものであるから,光学文字読取装置は,「少なくとも帳票データを構成する文字データの入力及び記録保存を行う」機能を備えているということができる。
また,当該機能は,処理装置1内のOCR処理部2が備えていることは自明のことである。
してみれば,引用例1発明の「OCR処理部2」は,「少なくとも帳票データを構成する文字データの入力及び記録保存を行う」機能を備えている点で本願発明の「利用者プログラム」と共通している。

(b)引用例1発明の「帳票位置データ8」は,「読取り対象である帳票11の各項目についての位置情報であり読取るべき領域を示す」ものであり,「修正画面10上における各項目の位置が,帳票11上における対応する項目の位置を示す帳票位置データ8に従って決定され」るものであるから,引用例1発明の「帳票位置データ8」は,少なくとも「帳票のどの位置にどのデータが存在するかを示す出力レイアウト情報を含む」点で,本願発明の「画面定義情報」に相当する。
また,引用例1発明の「帳票位置データ8」は,上記した「少なくとも帳票データを構成する文字データの入力及び記録保存を行う」機能を備えた「OCR処理部2」とは「独立して」いるものである。

(c)引用例1発明では,「生成処理部3は,本来は帳票11の読取りのためのものである帳票位置データ8を用いて修正画面10を生成し,その結果,修正画面10上における各項目の位置が,帳票11上における対応する項目の位置を示す帳票位置データ8に従って決定されて帳票11に即した修正画面10が生成され,OCR処理部2は,修正画面10上に読取結果データ6を付加する形でこれを表示する」ものである。
そして,引用例1発明の「修正画面10」が本願発明の「画面出力情報」に相当するから,引用例1発明の「生成処理部3及びOCR処理部2」は,後記する点で相違するものの,「画面定義情報が有する出力レイアウト情報及び利用者プログラムが出力する文字データを取り込んで,この出力レイアウト情報に従って,画面出力情報を作成して出力する」機能を有している点で本願発明の「入出力制御部」と共通している。

(d)引用例1発明の「光学文字読取装置」は,少なくとも,帳票データの入出力処理を行う装置である点で,本願発明の「帳票データ入出力処理装置」に相当する。

(e)引用例1発明の「読取装置5」は,「帳票11上の各項目に記入された文字をデータとして光学的に読取」るものであるから,本願発明の「記入済み伝票のイメージ読み取りを行うスキャナ」に相当する。

(f)引用例1発明では,「生成処理部3」が,「本来は帳票11の読取りのためのものである帳票位置データ8を用いて修正画面10を生成」する一方,「読取装置5」が,「帳票11上の各項目に記入された文字をデータとして光学的に読取ってOCR処理部2へ送り,この読取りのために,読取り対象である帳票11の各項目についての位置情報であり読取るべき領域を示す帳票位置データ8が用いられ,OCR処理部2は,読取装置5で読取ったデータに基づいて辞書等を参照して,候補文字を生成し,この候補文字を読取結果データ6としてメモリに格納」していることから,「修正画面10(画面出力情報)を作成して出力するために用いたのと同じ帳票位置データ8」を用いて,読取り(解析)を行っているものである。
してみれば,引用例1発明の「OCR処理部2」は,後記する点で相違するものの,「読み取った記入済み伝票イメージから,画面出力情報を作成して出力するために用いたのと同じ画面定義情報を用いて,その画面定義情報が有する出力レイアウト情報に基づき,該記入済み伝票イメージを解析して文字データを取得し」ている点で本願発明の「記入済み伝票処理部」と共通している。

(g)引用例1発明では,「生成処理部3」が,「本来は帳票11の読取りのためのものである帳票位置データ8を用いて修正画面10を生成し,その結果,修正画面10上における各項目の位置が,帳票11上における対応する項目の位置を示す帳票位置データ8に従って決定されて帳票11に即した修正画面10が生成され」るものであり,また,「OCR処理部2」が,「修正画面10上に読取結果データ6を付加する形でこれを表示する」から,引用例1発明の「生成処理部3及びOCR処理部2」は,後記する点で相違するものの,「出力レイアウト情報に基づいた所定の位置に,取得した文字データをマッピングした上で画面出力する」機能を有する点で,本願発明の「入出力制御部」と共通している。

(h)引用例1発明では,「読取装置5」が,「帳票11上の各項目に記入された文字をデータとして光学的に読取り,OCR処理部2へ送」り,「OCR処理部2」が,「読取装置5で読取ったデータに基づいて辞書等を参照して,候補文字を生成し,この候補文字を読取結果データ6としてメモリに格納し」ているから,引用例1発明の「OCR処理部2」は,「記入済みの伝票から取得した文字データを帳票データとして取り込んで記録保存する」機能を有する点で,本願発明の「入出力制御部」と共通している。

そうすると,本願発明と引用例1発明とは,
「少なくとも帳票データを構成する文字データの入力及び記録保存を行う利用者プログラムと,これとは独立して,帳票のどの位置にどのデータが存在するかを示す出力レイアウト情報を含む画面定義情報と,前記画面定義情報が有する出力レイアウト情報及び前記利用者プログラムが出力する前記文字データを取り込んで,この出力レイアウト情報に従って,画面出力情報を作成して出力する入出力制御部と,を有する帳票データ入出力処理装置において,
記入済み伝票処理部と,記入済み伝票のイメージ読み取りを行うスキャナとを備え,
前記記入済み伝票処理部は,読み取った記入済み伝票イメージから,前記画面出力情報を作成して出力するために用いたのと同じ画面定義情報を用いて,その画面定義情報が有する出力レイアウト情報に基づき,該記入済み伝票イメージを解析して文字データを取得し,
前記入出力制御部は,前記出力レイアウト情報に基づいた所定の位置に,取得した文字データをマッピングした上で画面出力すると共に,記入済みの伝票から取得した文字データを帳票データとして取り込んで記録保存することを特徴とする帳票データ入出力処理装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
画面出力情報が,本願発明では,「帳票データの画面出力情報」であるのに対して,引用例1発明では,「修正画面10」であり,
取得した文字データをマッピングする所定の位置が,本願発明では,「帳票の所定の位置」であるのに対して,引用例1発明では,「修正画面10上における位置」であり,
画面出力する形態が,本願発明では,「帳票の」形態であるのに対して,引用例1発明では,「帳票11に即した」形態である点。

[相違点2]
本願発明では,記入済み伝票処理部が,「スキャナに対して,記入済み伝票の読み取りを指示して」いるのに対して,引用例1発明は,そのような構成となっていない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。

[相違点1]について
上記摘記事項(ウ)の「この修正画面の構成が当該帳票に近ければ,オペレータの操作性は向上する。そこで,帳票上の位置に近くなるように,修正画面上における項目の各々について,その行位置,桁位置が入力される。」の記載,及び上記摘記事項(キ)の「また,帳票位置データ8に従った画面が生成されるのであるから,帳票11に近い構成の修正画面10を得ることができる。従って,オペレータの誤読の修正作業における操作性を向上することができる。」の記載によれば,引用例1には,「修正画面10の構成を帳票に近くすれば,オペレータの修正作業における操作性を向上することができる」との事項(以下,「引用例1記載事項」という。)が記載されている。
一方で,例えば特開2002-230465号公報(特に第3図,及び【0035】?【0036】段落の記載参照)には,「帳票読取装置において,コード入力画面(修正画面)の項目やデータ領域の配置を,帳票の全体イメージにおける各項目や各枠の配置と同一にすること」が記載されており,「帳票読取装置において,修正画面を帳票の形態とすること」は周知技術である。
してみれば,引用例1発明に引用例1記載事項及び周知技術を適用して,オペレータの修正作業における操作性を向上するために,修正画面を帳票の形態とすること,すなわち,画面出力する形態を「帳票の」形態とすることには何ら困難性がない。
また,修正画面を帳票の形態とすることにともない,画面出力情報を「帳票データの画面出力情報」とすること,取得した文字データをマッピングする所定の位置を「帳票の所定の位置」とすることにも,何ら困難性がなく,当業者が適宜なし得たことである。

したがって,相違点1に係る本願発明の構成は,引用例1発明,引用例1記載事項,及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

[相違点2]について
情報処理装置とスキャナとが接続された構成において,情報処理装置からスキャナに対して,イメージの読み取りを指示することは,例えば特開平10-275209号公報(特に【0039】?【0040】段落の記載参照)等に記載されているように常套手段であるから,引用例1発明に常套手段を適用して,「スキャナに対して,記入済み伝票の読み取りを指示」するように構成することには何ら困難性がない。

したがって,相違点2に係る本願発明の構成は,引用例1発明及び常套手段に基づいて当業者が容易に想到しえたものである。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1発明,引用例1記載事項,周知技術,及び常套手段から当業者が予測できる範囲のものである。

なお,審判請求人は平成23年11月24日付けの意見書において,次のとおり主張している。
「(2)引用例1発明の『帳票位置データ8』について:
引用例1の『帳票位置データ8』が,『修正画面10上における各項目の位置が,帳票11上における対応する項目の位置を示す帳票位置データ8に従って決定されて帳票11に即した修正画面10が生成され』るものであることは,審判長ご認定の通りですが,しかし,本願発明1の『帳票のどの位置にどのデータが存在するかを示す出力レイアウト情報を含む画面定義情報』に相当する(第5頁第19-23行)というご認定には納得できません。また,『帳票位置データ8』は,『修正画面10(帳票データの画面出力情報)を作成して出力するために用いたのと同じ』であるというご認定も納得できません(第6頁第3段落)。
引用例1において,『帳票11』は第2図に,また,それに相当する『修正画面10』は,第4図(A),(B)に例示されています。これら例示の修正画面10が,帳票11に即したものであるとは言えても,第2図の『帳票』が再現されている訳ではありません。引用例1は,画面定義情報に基づき,記入済み伝票イメージを解析して文字データを取得するものである点では,本願発明1と同じであるとは言えても,その文字データを解析したのと同じ画面定義情報(出力レイアウト情報)を用いて,それに基づいた帳票の所定の位置に,取得した文字データをマッピングした上で帳票の形態で画面出力或いは印刷出力するものではありません。
(3)引用例1発明の『生成処理部3及びOCR処理部2』について(第5頁最終段落,第6頁第4段落):
補正により,本願発明1の『入出力制御部』は,『出力レイアウト情報に基づいた帳票の所定の位置に,取得した文字データをマッピングした上で帳票の形態で画面出力或いは印刷出力する』ことを明確にしました。これによって,本願発明1の『入出力制御部』と,引用例1発明の『生成処理部3及びOCR処理部2』の相違は明確になったものと思量致します。
(4)引用例1発明の『光学文字読取装置』について(第6頁第1段落):
簡単に言えば,本発明は,『出力レイアウト情報に従って,帳票データの画面出力情報或いは印刷出力情報を作成して帳票の形態で出力する帳票データ入出力処理装置』であるのに対して,引用例1は,『読取装置によって帳票上のデータを読取り,この読取り結果を修正するための修正画面(読取りデータのみ)をディスプレイに表示する光学文字読取装置』であるという基本的な相違があります。」(意見書第1頁下から17行?第2頁第13行)

しかしながら,この主張の点は,上記「[相違点1]について」で判断したとおりであるから,審判請求人の意見書における主張は採用することができない。

よって,本願発明は,引用例1発明,引用例1記載事項,周知技術,及び常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,引用例1記載事項,周知技術,及び常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-26 
結審通知日 2012-01-10 
審決日 2012-01-23 
出願番号 特願2004-183303(P2004-183303)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小原 正信  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 須田 勝巳
松尾 俊介
発明の名称 帳票データ入出力処理装置  
代理人 大川 譲  

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