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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1253190
審判番号 不服2010-16266  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-20 
確定日 2012-03-08 
事件の表示 特願2008- 76690「コンテンツ編集装置、映像表示装置、コンテンツ編集方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月 8日出願公開、特開2009-230822〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年3月24日に出願したものであって、平成21年12月14日付け拒絶理由通知に対して、平成22年2月22日付けで手続補正がなされたが、同年4月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月20日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正がなされた。
その後、平成23年7月7日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、同年9月5日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成22年7月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年7月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成22年7月20日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、補正前に、
「【請求項1】
同一のコンテンツデータに対して入力された複数のユーザーによる再生操作コマンドに応じた操作データと、前記操作データに関連付けられた前記コンテンツデータの再生位置とを有する操作ログデータを記録媒体に記録する記録制御部と、
前記操作ログデータに基づく注目度と、一のユーザーによって設定された前記注目度の閾値に基づいて、前記コンテンツデータを抽出して再生する再生制御部と、
を備えることを特徴とする、コンテンツ編集装置。
【請求項2】
前記操作データは、前記再生操作コマンドに応じた係数によって算出される得点を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項3】
前記再生制御部は、前記記録媒体に記録された前記操作データの前記得点に基づく前記注目度に応じて、前記コンテンツデータを再生することを特徴とする、請求項2に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項4】
前記再生制御部は、前記閾値を適用して、前記記録媒体に記録された前記操作データの前記得点に基づく前記注目度に応じて前記コンテンツデータを分割し、前記分割されたコンテンツデータを前記閾値に基づいて抽出し再生することを特徴とする、請求項3に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項5】
前記再生制御部は、前記操作データに記録されて新たに生成された前記再生操作コマンドに基づいた再生操作を使用して、前記コンテンツデータを再生することを特徴とする、請求項3に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項6】
前記再生制御部は、前記操作データに記録されて新たに生成された前記再生操作コマンドに基づいた再生操作のうち再生速度又はズーム倍率を使用して、前記コンテンツデータを再生することを特徴とする、請求項5に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項7】
前記操作データの前記得点の時間変化分布を視覚的に表示装置に表示する表示制御部を更に備えることを特徴とする、請求項2に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記コンテンツデータ前記得点に基づく前記注目度に応じて分割するための閾値を視覚的に前記表示装置に表示し、
前記再生制御部は、前記一のユーザーによる前記閾値の変更コマンドに基づいて変更された前記閾値を適用して前記コンテンツデータを分割し、前記分割されたコンテンツデータを前記閾値に基づいて抽出し再生することを特徴とする、請求項7に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項9】
前記記録媒体に記録された前記操作データの前記得点に基づく前記注目度に応じて、前記閾値を適用して前記コンテンツデータを分割し、前記分割されたコンテンツデータを前記閾値に基づいて抽出し、抽出した前記分割されたコンテンツデータを結合して結合済コンテンツデータを生成するファイル化処理部を更に備えることを特徴とする、請求項2に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項10】
前記ファイル化処理部は、二つの前記分割されたコンテンツデータを、クロスフェードを使用して結合することを特徴とする、請求項9に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項11】
前記記録制御部は、新たに入力された前記再生操作コマンドに応じて、前記記録媒体に既に記録された前記操作データを更新することを特徴とする、請求項1に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項12】
前記再生操作コマンドは、再生方向指示操作、再生速度指示操作又はズーム操作を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項13】
前記操作ログデータは、前記ユーザーによる再生操作コマンドに応じた再生制御毎の複数のログからなることを特徴とする、請求項1に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項14】
前記複数のログのそれぞれは、前記操作データと、前記コンテンツデータの再生位置に加えて、前記再生制御の順序を表すインデックスを更に有することを特徴とする、請求項13に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項15】
同一のコンテンツデータに対して入力された複数のユーザーによる再生操作コマンドに応じた操作データと、前記操作データに関連付けられた前記コンテンツデータの再生位置とを有する操作ログデータに基づく注目度と、一のユーザーによって設定された前記注目度の閾値に基づいて、前記コンテンツデータを抽出して再生することを特徴とする、映像表示装置。
【請求項16】
同一のコンテンツデータに対して入力された複数のユーザーによる再生操作コマンドに応じた操作データと、前記操作データに関連付けられた前記コンテンツデータの再生位置とを有する操作ログデータを記録媒体に記録するステップと、
前記操作ログデータに基づく注目度と、一のユーザーによって設定された前記注目度の閾値に基づいて、前記コンテンツデータを抽出して再生するステップと、
を含むことを特徴とする、コンテンツ編集方法。
【請求項17】
同一のコンテンツデータに対して入力された複数のユーザーによる再生操作コマンドに応じた操作データと、前記操作データに関連付けられた前記コンテンツデータの再生位置とを有する操作ログデータを記録媒体に記録する手段と、
前記操作ログデータに基づく注目度と、一のユーザーによって設定された前記注目度の閾値に基づいて、前記コンテンツデータを抽出して再生する手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。」
とあったものを、

「【請求項1】
ネットワークを介して接続された複数のユーザー端末から同一のコンテンツデータに対して入力された複数のユーザーによる再生操作コマンドに応じた操作データと、前記操作データに関連付けられた前記コンテンツデータの再生位置とを有する操作ログデータを記録媒体に記録する記録制御部と、
前記操作ログデータに基づく注目度と、前記複数のユーザー端末のうち一のユーザー端末から一のユーザーによって設定された前記注目度の閾値に基づいて、前記コンテンツデータを抽出して、前記一のユーザー端末に対して抽出した前記コンテンツデータを再生する再生制御部と、
を備えることを特徴とする、コンテンツ編集装置。
【請求項2】
前記操作データは、前記再生操作コマンドに応じた係数によって算出される得点を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項3】
前記再生制御部は、前記記録媒体に記録された前記操作データの前記得点に基づく前記注目度に応じて、前記コンテンツデータを再生することを特徴とする、請求項2に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項4】
前記再生制御部は、前記閾値を適用して、前記記録媒体に記録された前記操作データの前記得点に基づく前記注目度に応じて前記コンテンツデータを分割し、前記分割されたコンテンツデータを前記閾値に基づいて抽出し再生することを特徴とする、請求項3に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項5】
前記再生制御部は、前記操作データに記録されて新たに生成された前記再生操作コマンドに基づいた再生操作を使用して、前記コンテンツデータを再生することを特徴とする、請求項3に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項6】
前記再生制御部は、前記操作データに記録されて新たに生成された前記再生操作コマンドに基づいた再生操作のうち再生速度又はズーム倍率を使用して、前記コンテンツデータを再生することを特徴とする、請求項5に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項7】
前記操作データの前記得点の時間変化分布を視覚的に表示装置に表示する表示制御部を更に備えることを特徴とする、請求項2に記載のコンテンツ
編集装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記コンテンツデータ前記得点に基づく前記注目度に応じて分割するための閾値を視覚的に前記表示装置に表示し、
前記再生制御部は、前記一のユーザーによる前記閾値の変更コマンドに基づいて変更された前記閾値を適用して前記コンテンツデータを分割し、前記分割されたコンテンツデータを前記閾値に基づいて抽出し再生することを特徴とする、請求項7に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項9】
前記記録媒体に記録された前記操作データの前記得点に基づく前記注目度に応じて、前記閾値を適用して前記コンテンツデータを分割し、前記分割されたコンテンツデータを前記閾値に基づいて抽出し、抽出した前記分割されたコンテンツデータを結合して結合済コンテンツデータを生成するファイル化処理部を更に備えることを特徴とする、請求項2に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項10】
前記ファイル化処理部は、二つの前記分割されたコンテンツデータを、クロスフェードを使用して結合することを特徴とする、請求項9に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項11】
前記記録制御部は、新たに入力された前記再生操作コマンドに応じて、前記記録媒体に既に記録された前記操作データを更新することを特徴とする、請求項1に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項12】
前記再生操作コマンドは、再生方向指示操作、再生速度指示操作又はズーム操作を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項13】
前記操作ログデータは、前記ユーザーによる再生操作コマンドに応じた再生制御毎の複数のログからなることを特徴とする、請求項1に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項14】
前記複数のログのそれぞれは、前記操作データと、前記コンテンツデータの再生位置に加えて、前記再生制御の順序を表すインデックスを更に有することを特徴とする、請求項13に記載のコンテンツ編集装置。
【請求項15】
ネットワークを介して接続された複数のユーザー端末から同一のコンテンツデータに対して入力された複数のユーザーによる再生操作コマンドに応じた操作データと、前記操作データに関連付けられた前記コンテンツデータの再生位置とを有する操作ログデータに基づく注目度と、前記複数のユーザー端末のうち一のユーザー端末から一のユーザーによって設定された前記注目度の閾値に基づいて、前記コンテンツデータを抽出して、前記一のユーザー端末に対して抽出した前記コンテンツデータを再生することを特徴とする、映像表示装置。
【請求項16】
ネットワークを介して接続された複数のユーザー端末から同一のコンテンツデータに対して入力された複数のユーザーによる再生操作コマンドに応じた操作データと、前記操作データに関連付けられた前記コンテンツデータの再生位置とを有する操作ログデータを記録媒体に記録するステップと、
前記操作ログデータに基づく注目度と、前記複数のユーザー端末のうち一のユーザー端末から一のユーザーによって設定された前記注目度の閾値に基づいて、前記コンテンツデータを抽出して、前記一のユーザー端末に対して抽出した前記コンテンツデータを再生するステップと、
を含むことを特徴とする、コンテンツ編集方法。
【請求項17】
ネットワークを介して接続された複数のユーザー端末から同一のコンテンツデータに対して入力された複数のユーザーによる再生操作コマンドに応じた操作データと、前記操作データに関連付けられた前記コンテンツデータの再生位置とを有する操作ログデータを記録媒体に記録する手段と、
前記操作ログデータに基づく注目度と、前記複数のユーザー端末のうち一のユーザー端末から一のユーザーによって設定された前記注目度の閾値に基づいて、前記コンテンツデータを抽出して、前記一のユーザー端末に対して抽出した前記コンテンツデータを再生する手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。」
と補正しようとするものである。

上記本件補正の請求項1ないし17は本件補正前の請求項1ないし17にそれぞれ対応するものである。
本件補正の具体的内容は、本件補正前の【請求項1】【請求項15】【請求項16】及び【請求項17】において、「同一のコンテンツデータに対して入力された複数のユーザーによる再生操作コマンド」について、「ネットワークを介して接続された複数のユーザー端末から」と、「一のユーザーによって設定された前記注目度の閾値に基づいて」について、「前記複数のユーザー端末のうち一のユーザー端末から」そして、「再生する」について、「前記一のユーザー端末に対して抽出した前記コンテンツデータを」とそれぞれ限定するものであり、これらはいずれも発明特定事項を限定するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。

2.先願発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日(公開基準日である平成20年3月24日)前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願2008-47056号(特開2009-206841号公報参照)の願書の最初に添付された特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【0001】
本発明は、コンテンツ再生システム及びプログラムに関し、より詳細には、コンテンツの注目されている部分だけから構成される要約コンテンツを再生するための再生制御情報を生成する技術に関する。また複数のコンテンツから、それらのコンテンツの要約コンテンツとしてひとつの再生制御情報を生成する技術に関する。」

(2)「【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明のコンテンツ再生システムは、ネットワークに接続された少なくとも二つ以上の情報処理装置のうち少なくとも一つは、コンテンツの再生操作を行う第1の情報処理装置とし、他の少なくとも一つはこの第1の情報処理装置からの要求によりコンテンツデータをこの第1の情報処理装置に送信する第2の情報処理装置から構成され、前記第1の情報処理装置は、再生操作を行う操作部と、コンテンツを表示するコンテンツ表示部とを備え、前記第2の情報処理装置は、前記第1の情報処理装置からの再生操作情報を受け取る入力部と、前記入力部で受け取った再生操作情報を認識し前記コンテンツの再生制御を行う再生制御部と、前記再生制御部から出力される再生操作情報を記録する再生操作記録部と、前記コンテンツの任意の再生区間毎の前記再生操作情報に関する累積度数分布情報を生成する統計処理部と、前記統計処理部の出力から一回当たりの再生における度数情報が所定の閾値以上の再生区間の抽出及び、前記再生区間を再生制御するための再生制御情報を生成する再生制御情報生成部と、前記累積度数分布情報と前記再生制御情報を前記コンテンツと関連付けて管理する情報管理部とを有し、前記第1の情報処理装置から前記コンテンツの前記再生制御情報をもとに再生するよう要求を受けた場合には、前記再生制御部が前記再生制御情報に従って前記コンテンツを再生制御することを特徴とするものである。
【0008】
さらにコンテンツ再生システムにおいて、前記統計処理部は、前記累積度数値が所定のしきい値より大きな値の再生区間を抽出することにより、前記抽出した再生区間を連続再生するものである。
【0009】
さらにコンテンツ再生システムにおいて、前記再生操作情報は、少なくとも再生開始位置情報、再生方向情報、再生速度情報、から構成されることを特徴とするものである。
【0010】
さらにコンテンツ再生システムにおいて、前記統計処理部は、前記再生操作情報のうち、再生方向情報が通常再生、もしくは再生速度情報がスロー再生の時に高い重み付けで度数分布情報を作成することを特徴とするものである。
【0011】
さらにコンテンツ再生システムにおいて、前記統計処理部は、前記コンテンツに対する第1の情報処理装置に生成された度数分布情報と、他の情報処理装置に生成された度数分布情報と累積することにより前記再生操作情報の累積度数分布情報を生成することを特徴とするものである。」

(3)「【0029】
図1は、本発明の実施の形態1によるコンテンツ再生方法における統計情報を生成する一実施例を表したフローチャートである。図1では、クライアントからコンテンツの再生要求を受信(ステップS101)するところから開始しており、まずはクライアントからの要求のあったコンテンツを再生制御するとともに(ステップS102)、クライアントからの再生制御情報をコンテンツの再生時間と対応させて記録し続ける(ステップS103)。
【0030】
次にコンテンツを任意の再生区間に分割し、各再生区間における再生操作情報を数値化(ステップS104)し、他のクライアントによって生成された同じコンテンツの統計情報に累積して累積度数分布情報を生成することで、再生制御情報に関する統計を生成する(ステップS105)。ここで再生しているコンテンツが着脱可能な記録媒体上に記録されている場合(ステップS106)で、かつ、記録媒体への書込みが可能な場合(例えばDVD-RAMメディア)(ステップS108)は、生成した統計情報をコンテンツと関連付けて記録媒体上に保存する(ステップS109)。また着脱可能な記録媒体が書込み不可能な場合(例えばDVD-ROM)、もしくは再生コンテンツがサーバ内の記録装置内に記録されている場合は、生成した統計情報をサーバ内でコンテンツと関連付けて保存し管理する(ステップS107)。ステップS103、S104、S105のそれぞれの具体的な処理内容やデータについては後述する。
【0031】
図2は、図1のステップS103で示したサーバ内で保存し管理している再生操作情報の一例である。具体的にはクライアントからコンテンツAを再生制御するための要求を受信し、再生操作情報として保存しているものであり、受信した順に時系列にサーバ内で記録し管理しているものの一例である。つまり図2には、クライアントから5回の再生制御要求が発行され、最初に受け取ったNo.1から時系列にNo.5まで記録されていることを示している。各再生操作情報は、コマンド受信時間、再生開始時間、再生方向、再生速度から構成されている。コマンド受信時間、再生開始時間は、コンテンツの先頭を0秒とした相対時間として表現されるものとし、それらの詳細は後述する。またコマンド受信時間と再生開始時間が一致しているコマンドは、現在再生している方向、速度で次のコマンド受信時間まで再生動作を続けることを意味し、コマンド受信時間と再生開始時間が一致していないコマンドは、スキップ再生であり、コマンド受信時間と再生開始時間の間の区間は再生されていないことを意味している。従ってユーザが意図する各再生要求内容を「内容」の列に記載している。」

(4)「【0040】
図8は、本実施の形態1での図1のステップS105の結果によって、複数のクライアントによるコンテンツAの再生操作情報を累積した累積度数情報の一例であり、コンテンツAが100回再生されたときの再生操作情報を数値化し累積したものである。
【0041】
図9は、図8で示した累積度数情報からコンテンツを要約した部分コンテンツを再生するための再生制御情報を生成する方法について説明したフローチャートである。
【0042】
まずクライアントからコンテンツAを統計情報である累積度数情報に従って再生するよう要求を受信した場合(ステップS901)、図8で示した累積度数情報を取得する(ステップS902)。次に再生区間を抽出するためのしきい値を決定する(ステップS903)。このしきい値は累積度数情報から再生すべき再生区間を抽出するために使用する値であり、本実施の形態1では、累積度数の最大値の半分をしきい値とする。またほかの方法として、一回あたりの度数の平均値により決定する方法や、次の再生区間の累積度数との変化率により決定する方法があり、クライアントが注目している区間を抽出することができればどのような方法でもよく、ここで示した方法に限られたものではない。
【0043】
ステップS903で決定したしきい値を元に、最初の再生区間からしきい値以上かどうか判定し(ステップS904)、しきい値以上であればその再生区間を抽出し一時的に記録しておき(ステップS905)、次の再生区間の判定を行うことで(ステップS906)コンテンツ全体の再生区間について判定する。
【0044】
コンテンツ全体についての判定完了後、抽出した再生区間を時系列にそって連続して再生するための再生制御情報を生成する。これらを連続したコンテンツとして再生するための制御情報は、本実施の形態1では、例えば、SD Associationにより管理、規格化されているSD Video規格のプレイリストのような再生制御情報として生成すればよい。」

(5)「【0067】
図14は、本発明の実施の形態1によるコンテンツ再生装置の構成図である。図14では、本発明を実施するサーバ装置1300と、ユーザの操作端末であるクライアント装置1310がネットワーク1320を介して接続されていることを表している。
【0068】
またネットワーク1320は、サーバ装置1300とクライアント装置1310を接続するものであれば有線無線を問わずどのようなものでもよいが、ここでは、IEEE802.3u(Institute of Electrical and Electronic Engineers 802.3u)として標準化されている最大伝送速度100Mbpsの100BASE-TXを用いるものとする。
【0069】
次にクライアント装置1310の内部構造について説明する。クライアント装置1310は、操作部1311と、コンテンツ表示部1312を論理的、もしくは物理的に備えており、操作部1311はユーザの操作をサーバへリクエストコマンドとして発行し、またコンテンツ表示部1312は、サーバ装置からネットワーク1320を介して送られるコンテンツデータを、必要なら伸張、デコードなどの再生表示処理をして表示する。リクエストコマンドには、再生するコンテンツの指定、再生開始位置、再生方向、再生速度などが含まれる。
【0070】
次にサーバ装置1300の内部構成について説明する。サーバ装置1300は、入力部1301と、再生制御部1302と、コンテンツ管理部1303と、出力部1304と、再生操作記録部1305と、統計処理部1306と、再生制御情報生成部1307と、情報管理部1308を論理的、もしくは物理的に備えており、それぞれの役割を順に説明する。
【0071】
入力部1301は、ネットワーク1320を介して送られるクライアント装置からのリクエストコマンドを受信し、再生制御部へ受け渡す。受信するコマンドの一例は図2に示したものがある。具体的にはRJ45のコネクタによってネットワーク1320と接続しているネットワークI/F装置である。
【0072】
再生制御部102は、クライアント装置1310からの再生操作情報であるリクエストコマンドの内容をチェックし、コンテンツ管理部1303を制御し、クライアント装置1310へ送るためのコンテンツを生成させつつ、同時に再生操作情報の受信時刻を再生操作情報に加えて再生操作記録部1305へ渡す。またリクエストコマンドに対するレスポンスコマンドを出力部1304経由でクライアント装置1310へ送信し、また情報管理部1308に管理されている再生制御情報を読み出し、前記再生制御情報に従ってコンテンツを再生するための制御を行う。したがって再生制御部102の処理内容の一例は図1で示した内容であり、サーバ装置1300全体の制御を行う。
【0073】
コンテンツ管理部1303は、コンテンツをコンテンツ付属情報と関連付けて管理、保持し、またクライアント装置1310へ送るためにコンテンツを読み出し出力部1304へ渡す。コンテンツ管理部1303には、例えばHDD(Hard Disk Drive)ストレージデバイスやDVD-RAM(Digital Versatile Disc-Random Access Memory)などの光ディスクデバイスや、SD Card(Secure Digital Memory)などの半導体メモリや着脱式のHDDストレージなどがある。
【0074】
出力部1304は、ネットワーク1320を介してクライアント装置1310へレスポンスコマンドやコンテンツを送信する。具体的には入力部1301と同じRJ45コネクタを持つネットワークI/F装置であり、本実施の形態1では概念上入力と出力をわけで説明しているが、入力部1301を出力用として併用することも可能である。
【0075】
再生操作記録部1305は、再生制御部1302より渡された再生操作情報から、通常再生された区間、特殊再生された区間、未再生の区間の再生時間情報に変換し、統計処理部1306と情報管理部1308へ渡す。再生操作記録部1305が生成する再生時間情報の一例は図2で示したものがある。
【0076】
統計処理部1306は、再生操作記録部1305からの再生時間情報からコンテンツに対する注目点数を算出して、コンテンツの任意の再生区間に対する注目点数の度数分布情報を作成する。またコンテンツに対応する度数分布情報を情報管理部1308から読み込み、作成した度数分布情報を読み込んだ情報を累積して、情報管理部1308へ渡す。したがって統計処理部1306の処理内容は図5で示したものであり、一回の再生制御によって生成される統計情報の一例は図7であり、これらを累積することによって図8や図13で示した情報が作成される。
【0077】
再生制御情報生成部1307は、統計処理部1306が管理する各コンテンツの度数分布情報から、注目点数の多い区間を連続した区間として再生するための再生制御情報を生成する。具体的な内容は図9、10、11で示したものがある。
【0078】
情報管理部1308は、再生操作記録部1305、統計処理部1306、再生制御情報生成部1307の各情報をコンテンツと関連付けて記録、管理する。また前記情報の読み出し要求が発生した場合は、情報を読み出して渡す。具体的にはHDDがあり、コンテンツ管理部1303の空き領域を使用する方法がある。
【0079】
また本実施の形態1では、各コンテンツの統計情報をユーザの区別なく収集することにしたが、ユーザ別の統計情報として蓄積して、各ユーザの注目している再生区間を再生制御情報として生成してもよい。
【0080】
以上のことから、コンテンツを保持しているコンテンツ再生装置は、コンテンツを再生する際に、ユーザの注目している部分を数値化し累積することで、ユーザによる編集作業が必要なく、自動でコンテンツの要約コンテンツを生成、再生することが可能である。」

上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、先願明細書等には、結局、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認める。

「ネットワークを介して接続された複数のクライアント装置からの同じコンテンツに対するユーザ操作コマンドに応じた、再生開始位置情報と再生方向情報と再生速度情報とから構成される再生操作情報を記録する再生操作記録部と、
前記コンテンツを任意の再生区間に分割し、各再生区間における再生操作情報を数値化し、他のクライアントによって生成された同じコンテンツの統計情報を累積して累積度数情報を生成し、
クライアントからコンテンツの累積度数情報に従った再生要求を受信した場合、累積度数情報と決定されたしきい値を元にクライアントが注目している再生区間を抽出し、抽出した前記再生区間をコンテンツとして再生する再生制御部と
を備えるコンテンツ再生システム。」

3.対比
そこで、本願補正発明と先願発明とを比較する。

(1)先願発明の「ネットワーク」「クライアント装置」「コンテンツ」及び「ユーザ操作コマンド」は、本願補正発明の「ネットワーク」「ユーザー端末」「コンテンツデータ」及び「再生操作コマンド」にそれぞれ相当する。そして、先願発明の「再生方向情報」及び「再生速度情報」は、本願補正発明の「操作データ」に相当し、先願発明の「再生開始位置情報」は、本願補正発明の「再生位置」に相当する。また、先願発明は、再生操作情報を記録するものであり、記録するための記録媒体を有していることは明らかである。
先願発明の「再生操作記録部」は、本願補正発明の「記録制御部」に相当する。
すると、先願発明と本願補正発明とは、「ネットワークを介して接続された複数のユーザー端末から同一のコンテンツデータに対して入力された複数のユーザーによる再生操作コマンドに応じた操作データと、前記操作データに関連付けられた前記コンテンツデータの再生位置とを有する操作ログデータを記録媒体に記録する記録制御部」で共通する。
(2)先願発明の「累積度数情報」は、再生操作情報を数値化したものであり、再生操作情報に基づくものといえるから、本願補正発明の「注目度」に相当する。そして、先願発明の「しきい値」は、本願補正発明の「閾値」に相当する。
先願発明と本願補正発明の「再生制御部」は共通する。
すると、先願発明と本願補正発明とは、「前記操作ログデータに基づく注目度と、」「設定された前記注目度の閾値に基づいて、前記コンテンツデータを抽出して、」「一のユーザー端末に対して抽出した前記コンテンツデータを再生する再生制御部」で共通する。
(3)先願発明の「コンテンツ再生システム」と本願補正発明の「コンテンツ編集装置」とは、文言上相違する程度でコンテンツの一部を再生するシステム(装置)に関する発明である点で一致している。

そうすると、本願補正発明と先願発明とは次の点で一致する。

<一致点>
「ネットワークを介して接続された複数のユーザー端末から同一のコンテンツデータに対して入力された複数のユーザーによる再生操作コマンドに応じた操作データと、前記操作データに関連付けられた前記コンテンツデータの再生位置とを有する操作ログデータを記録媒体に記録する記録制御部と、
前記操作ログデータに基づく注目度と、設定された前記注目度の閾値に基づいて、前記コンテンツデータを抽出して、一のユーザー端末に対して抽出した前記コンテンツデータを再生する再生制御部と、
を備えるコンテンツ編集装置。」

一方、次の点で一応相違する。

<一応の相違点>
「閾値」について、本願補正発明は、「前記複数のユーザー端末のうち一のユーザー端末から一のユーザーによって」設定されたものであるのに対し、先願発明は、そのような閾値ではない点。

4.判断
そこで、上記一応の相違点について検討する。
先願発明は、クライアントからコンテンツを統計情報である累積度数情報(注目度)に従った再生要求を受信した場合、しきい値を決定してクライアントが注目している区間を抽出するものである。また、先願明細書等には、クライアントが注目している区間を抽出する方法はどのような方法でもよいことも記載されている。
そうすると、クライアントが注目する再生区間を抽出して再生する先願発明において、クライアントの再生要求を受信した場合にしきい値が決定されるのであるから、再生要求に必要なパラメータとしてしきい値を挿入すること、すなわち「前記複数のユーザー端末のうち一のユーザー端末から一のユーザーによって」閾値を設定することは単なる課題解決のための設計的事項に過ぎず、新たな作用効果を奏するものではない。

したがって、本願補正発明は先願発明と実質的に同一であり、しかも、本願補正発明のの発明者が先願発明をした者と同一でなく、またこの出願時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年7月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成22年2月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として掲げたものである。

2.先願発明
原査定の拒絶の理由で引用された先願明細書及びその記載事項は、前記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]3.4.」で検討した本件補正発明から「ネットワークを介して接続された複数のユーザー端末から」「前記複数のユーザー端末のうち一のユーザー端末から」及び「前記位置のユーザー端末に対して抽出した前記コンテンツデータを」を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2[理由]2.」に記載したとおり、先願発明と実質的に同一であるから、本願発明も、同様の理由により、先願発明と実質的に同一である。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-06 
結審通知日 2012-01-10 
審決日 2012-01-23 
出願番号 特願2008-76690(P2008-76690)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮下 誠  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 早川 学
関谷 隆一
発明の名称 コンテンツ編集装置、映像表示装置、コンテンツ編集方法及びプログラム  
代理人 萩原 康司  
代理人 松本 一騎  
代理人 亀谷 美明  
代理人 亀谷 美明  
代理人 金本 哲男  

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