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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1253206
審判番号 不服2011-3938  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-22 
確定日 2012-03-08 
事件の表示 特願2010- 94839「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月15日出願公開、特開2010-155171〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯等
本件は,特願平7-327415号の一部を特許法44条1項の規定により新たな出願として特願2007-178212号とし,その特願2007-178212号の一部を特許法44条1項の規定により新たな出願として特願2010-94839号の出願であり,経緯概要は以下のとおりである。

平成 7年12月15日 原々出願(特願平7-327415号)
平成19年 7月 6日 原出願(特願2007-178212号)
平成22年 4月16日 本件出願(特願2010-94839号)
平成22年 5月19日 拒絶理由通知
平成22年 7月20日 手続補正
平成22年10月 5日 拒絶理由通知(最後)
平成22年11月24日 手続補正A
平成22年12月13日 補正却下(手続補正A)、拒絶査定
平成23年 2月22日 本件審判請求,手続補正B
平成23年 7月13日 審尋
平成23年 8月31日 回答書
平成23年11月 4日 補正却下(手続補正B)、拒絶理由通知(最後)
平成23年11月29日 手続補正

第2.平成23年11月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年11月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成23年2月22日付けの手続補正は平成23年11月4日付けで却下され、平成22年11月24日付けの手続補正は平成22年12月13日付けで却下されているので、本件補正は平成22年7月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面を補正するものであって、その補正の前後の特許請求の範囲は以下のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
複数の図柄を可変表示してから停止表示する可変表示ゲームを実行することが可能な表示装置を備え、
前記可変表示ゲームの停止表示結果に基づいて、変動入賞装置を遊技球が入賞しない閉状態から遊技球が入賞可能な開状態に変換して遊技者に有利な遊技状態を発生することが可能な遊技機において、
遊技領域に放出された遊技球が流入可能な球流入部と、
前記球流入部に流入した遊技球を検出する遊技球検出手段と、
前記可変表示ゲームを実行するための始動記憶を記憶することが可能な始動記憶手段と、
前記遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づいて、前記始動記憶を記憶するための始動入賞を成立させるか否かの決定を行う始動入賞決定手段と、
前記始動入賞決定手段が始動入賞を決定したことに基づいて、前記始動記憶手段に前記始動記憶を記憶させる制御を行うことが可能な制御手段と、
前記始動記憶手段に記憶された前記始動記憶を減数して前記表示装置で前記可変表示ゲームを実行する可変表示ゲーム実行手段と、を備え、
前記可変表示ゲームにおいて停止表示される図柄の種類には、前記複数の図柄を再度可変表示させるためのリスタート図柄が含まれ、
前記可変表示ゲーム実行手段は、前記可変表示ゲームにおける前記複数の図柄の前記可変表示の開始時に前記リスタート図柄を停止するか否かを決定し、当該可変表示の結果として前記リスタート図柄を停止表示する毎に、前記始動記憶を減数することなく前記複数の図柄を再度可変表示することによって、一の始動記憶に基づいて前記複数の図柄の可変表示と停止表示とを繰り返し実行可能であることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記表示装置に画像始動口を表示するとともに、前記遊技球検出手段が遊技球を検出する毎に画像遊技球を表示させて移動する画像制御手段と、
予め設定された最大数の範囲内で前記始動記憶手段に前記始動記憶を記憶させることが可能な記憶制御手段と、を備え、
前記始動入賞決定手段は、前記遊技球検出手段による遊技球の検出毎に前記画像始動口へ前記画像遊技球を入賞させるか否かを抽選により決定し、
前記画像制御手段は、前記始動入賞決定手段によって前記画像始動口への前記画像遊技球の入賞が決定されたことに基づいて前記画像始動口へ前記画像遊技球を入賞させるように移動表示し、
前記記憶制御手段は、前記画像制御手段によって前記画像遊技球が移動表示されて前記画像始動口へ入賞したことに基づいて前記始動記憶手段に前記始動記憶を記憶させることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記可変表示ゲーム実行手段は、
前記始動記憶手段に記憶された始動記憶を減数して第1乱数を取得し、該第1乱数に基づいて前記可変表示ゲームにおいて停止表示する停止表示図柄を決定する停止表示図柄決定手段を備え、
前記停止表示図柄決定手段によって前記リスタート図柄の停止表示が決定された場合に
前記リスタート図柄を停止表示するよう構成され、
前記停止表示図柄決定手段は、前記可変表示ゲーム実行手段によって前記リスタート図柄が停止表示される毎に前記始動記憶を減数することなく前記第1乱数を再度取得して前記停止表示図柄を決定し、
前記始動入賞決定手段は、前記遊技球検出手段によって検出された遊技球数が予め設定されたゲーム設定値となることを一単位とし、該一単位に達する毎に第2乱数を取得して該第2乱数が当りである場合、又は、前記第2乱数が二度続けて当りでない場合に、前記画像始動口へ前記画像遊技球を入賞させると決定することを特徴とする請求項2に記載の遊技機。

(補正後)
「【請求項1】
複数の図柄を可変表示してから停止表示する可変表示ゲームを実行することが可能な表示装置を備え、
前記可変表示ゲームの結果に基づいて、変動入賞装置を遊技球が入賞しない閉状態から遊技球が入賞可能な開状態に変換して遊技者に有利な遊技状態を発生することが可能な遊技機において、
遊技領域に放出された遊技球が流入可能な球流入部と、
前記球流入部に流入した遊技球を検出する遊技球検出手段と、
前記可変表示ゲームを実行するための始動記憶を記憶することが可能な始動記憶手段と、
前記遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づいて、前記始動記憶を記憶するための始動入賞を成立させるか否かの決定を行う始動入賞決定手段と、
前記始動入賞決定手段が始動入賞を決定したことに基づいて、前記始動記憶手段に前記始動記憶を記憶させる制御を行うことが可能な制御手段と、
前記始動記憶手段に記憶された前記始動記憶を減数して前記表示装置で前記可変表示ゲームを実行する可変表示ゲーム実行手段と、を備え、
前記可変表示ゲームにおいて停止表示される図柄の種類には、前記複数の図柄を再度可変表示させるためのリスタート図柄が含まれ、
前記リスタート図柄は、前記可変表示ゲームを終了させることがなく、前記有利な遊技状態を発生させるための機能がない図柄であり、 前記可変表示ゲーム実行手段は、 前記可変表示ゲームにおける前記複数の図柄の前記可変表示の開始時に前記リスタート図柄を停止表示するか否かの決定を行うよう構成されるとともに、 前記可変表示の結果として前記リスタート図柄を停止表示する毎に、前記始動記憶を減数することなく再び前記複数の図柄の可変表示を開始することによって、一の始動記憶に基づく一の可変表示ゲームにおいて前記複数の図柄の可変表示と停止表示とを繰り返し実行可能であることを特徴とする遊技機。」

2.補正事項及び補正目的の検討
本件補正は、特許請求の範囲について、補正前の請求項2、3を削除するとともに、補正前の請求項1の「可変表示ゲームの停止表示結果に基づいて」を「可変表示ゲームの結果に基づいて」と補正して明確化し、補正前の「リスタート図柄」について「前記リスタート図柄は、前記可変表示ゲームを終了させることがなく、前記有利な遊技状態を発生させるための機能がない図柄であり、」との限定を付加し、補正前の「前記可変表示ゲーム実行手段は、前記可変表示ゲームにおける前記複数の図柄の前記可変表示の開始時に前記リスタート図柄を停止するか否かを決定し、当該可変表示の結果として前記リスタート図柄を停止表示する毎に、前記始動記憶を減数することなく前記複数の図柄を再度可変表示することによって、一の始動記憶に基づいて前記複数の図柄の可変表示と停止表示とを繰り返し実行可能である」を「前記可変表示ゲーム実行手段は、前記可変表示ゲームにおける前記複数の図柄の前記可変表示の開始時に前記リスタート図柄を停止表示するか否かの決定を行うよう構成されるとともに、前記可変表示の結果として前記リスタート図柄を停止表示する毎に、前記始動記憶を減数することなく再び前記複数の図柄の可変表示を開始することによって、一の始動記憶に基づく一の可変表示ゲームにおいて前記複数の図柄の可変表示と停止表示とを繰り返し実行可能である」と限定するものであるから、
請求項1に関する補正は、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮(平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号、4号該当)を目的とするものと認める。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

3.引用文献について
本件出願前に頒布された特開平6-218121号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

【特許請求の範囲】【請求項1】予め定められた種々の図柄を変動表示する複数の図柄表示器によって構成され、球検知装置を備えた始動口を遊技球が通過すると、球検知装置からの球検知信号に基づいて各図柄表示器の表示図柄が変動を開始し、停止して種々の組合わせの図柄を表示する図柄組合わせ表示装置と、前記図柄組合わせ表示装置の各停止図柄が所定の組合わせである場合に開放作動する特別入賞口とを備えたものにあって、
図柄組合わせ表示装置の図柄表示器の表示図柄として、特定の図柄からなる更新図柄を含み、図柄表示器が前記更新図柄で停止表示又は停止に近い緩速度で表示された場合に、他の図柄表示器が停止表示又は停止に近い緩速度で表示された後に、更新図柄を表示した該図柄表示器を変化させて、再び図柄を表示させる制御指令手段を具備したことを特徴とするパチンコ機。
【0007】図1は、パチンコ機1の正面図であって、その機枠2の図示しない下部には玉受皿と、玉発射用の回転式ハンドル等が設けられる。遊技盤3の盤面中央には、図2で拡大して示すように装着ケース(図示せず)の前部に固定されたセンターケース4が配設され、該センターケース4内に図柄組合わせ表示装置6を構成する三個の表示器7a,7b,7cが横方向に並設され、センターケース4の中央に形成した窓孔5から透孔板を介して表示器7a,7b,7cの表面に示された図柄を視認し得るようにしている。
【0010】この入賞口開閉装置15は、図柄組合わせ表示装置6を駆動して表示器7a,7b,7cを図柄変動表示するものとして設けられているものであり、その上部及び両側部を始動口14として、その開閉翼片対16,16の起立状態で上部の始動口14からの遊技球の落入のみを有効とする閉鎖位置と、開閉翼片対16,16が逆八形傾動してその側方の始動口14,14をも有効として、内部へ遊技球を案内する開放位置とに電気的駆動手段を介して変換制御されるものである。
【0011】そして前記入賞口開閉装置15内の玉流路には光電スイッチ、リミットスイッチ等により構成される球検知スイッチが備えられ、該球検知スイッチによる玉通過検知に伴って、図柄組合わせ表示装置6を駆動すると共に、連続的に通過した場合には、待機記録ランプ列11が順次点灯し最高四回まで保留される。またこの作動と共に、遊技球の通過に伴って所定数の景品球が提供される。
【0012】前記入賞口開閉装置15のさらに下方には、幅広の特別入賞口23を備えた入賞装置22が配設されている。この入賞装置22は、蓋体24をソレノイドにより前後方向に開放することにより、該蓋体24の案内作用により、特別入賞口23に遊技球を案内する公知構成からなり、前記特別入賞口23の中央部を特定領域23aとして、後述するように該特定領域23aに遊技球が入ると、連続開放作動を生ずるようにしている。
【0014】前記始動口14又は開放された入賞口開閉装置15の側方から遊技球が流入すると、景品球の供給と共に図柄組合わせ表示装置6が駆動する。尚、連続的に通過した場合には、上述のように待機記録ランプ列11が順次点灯し最高四回まで保留される。
【0015】そして図柄組合わせ表示装置6が駆動すると、図柄表示器7a,7b,7cは図柄変動を開始し、約5秒程度経過すると、図柄表示器7a,7b,7cの順番に図柄が変動停止する。
【0017】ここで図柄表示器7a,7b,7cの表示図柄は「0」?「9」、「¥」、「$」及び「☆」の13種があって、循環順序はあらかじめ定められている。そして、「☆」を更新図柄xとしている。
【0020】前記始動口14への入賞に伴って、あらかじめ記憶装置ROMに格納された当たり特別乱数から値を抽出する。これは、例えば「0」?「244」の245 コマとし、その内のいずれか(例えば「56」)を当たりとする。そして、この値が記憶される。この記憶数は、待機記録ランプ列11に対応して4個までとする。
【0022】この当たりルーチン作動を図4に従って説明する。
【0023】まず、前記当たり選択により、同一図柄の組合わせ(例「1,1,1」、「2,2,2」)からなる13種の当たり図柄のうちからいずれかを抽選する。これは、各表示器7a,7b,7cに最終的に表示される図柄となり、一旦記憶保持される。
【0024】そして次に、更新図柄xである「☆」を表示して変化制御するかどうかを選択する。これは、CPU内のリフレッシュカウンタの最下位1ビットを抽選し、例えば「0」値の場合には「☆」を表示せず、「1」値の場合には「☆」を表示するようにする。そして、「0」値の場合には、既に決定された当たり図柄を各表示器7a,7b,7cで表示させる。これには、「☆,☆,☆」も含まれる。
【0025】一方、「☆」を表示する場合には、その発生位置の選定を行なう。この表示組合わせは6種類あり、これを抽選する。すなわち、「☆,X,X」、「☆,☆,X」、「☆,X,☆」、「X,☆,X」、「X,☆,☆」、「X,X,☆」である。ここでXは☆以外の図柄を示す。
【0026】これもCPU内のリフレッシュカウンタを用いる等により行なわれ得る。尚、全て、「☆」で揃う場合は、変化を生じさせず、そのまま大当りとするから、この組合わせは除かれ、「☆」の無いときと同様の作動となる。
【0028】そして、既に決定された当たり組合わせのうち、上記で選定された位置を、「☆」に置き換えて、表示器7a,7b,7cの順序で表示する。そして、各図柄が停止、または停止に近い緩速度で表示されてから、更新図柄xである「☆」が表示された表示器7a,7b,7cのみを変化させ、既に定められた当たり図柄を表示させる。このときも、更新図柄xが二つ出現した場合には、表示器7a,7b,7cの順で更新図柄xを変化させる。
【0030】ところで、「☆」が変化する直前において、各図柄は停止、又は停止に近い緩速度で表示されるが、ここで、停止に近い緩速度とは、視覚的には、停止していると同じ程度にわずかに動いていて、図柄の確定を認識し得るような状態を意味する。
【0031】次に、外れルーチン作動につき説明する。
【0032】まず、各表示器7a,7b,7cに対応する三つの外れ図柄乱数を用いて、前記表示器7a,7b,7cの順で、13種の図柄から順次選択する。尚、各図柄が揃った場合には、表示器7cの図柄を1コマ移動させ、外れ図柄を確定し、一旦記憶保持する。
【0033】次に、当たり図柄ルーチンと同様に、更新図柄xである「☆」を表示して変化させるかどうかを決める。そして、「☆」を表示しない場合には、上述の確定外れ図柄を表示器7a,7b,7cの順で停止して表示する。一方、「☆」を表示する場合には、上述した6種類の配置例からいずれかを選定する。そして、既に決定された外れ図柄のうち、上記で選定された位置を、「☆」に置き換えて、表示器7a,7b,7cの順序で表示する。そして、各図柄が停止、または停止に近い緩速度で表示されてから、更新図柄xである「☆」が表示された表示器のみを変化させ、既に定められた外れ図柄を表示させる。
【0034】このように、表示器7a,7b,7cを「☆」で一旦表示し、これを変化させるようにしたものであるから、遊技者は、「☆」が二つ又は、単一の場合で他の図柄が揃っている場合には、表示器7a,7b,7cの表示が確定するまで、更新図柄xの変化による大当りの発生を期待することとなる。

以上の記載事項を含む全記載及び図面によれば、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。
「各図柄表示器7a,7b,7cの複数の表示図柄が変動を開始し、停止して種々の組合わせの図柄を表示する図柄組合わせ表示装置6と、
前記図柄組合わせ表示装置6の各停止図柄が所定の組合わせである場合に蓋体24を開放作動させて特別入賞口23に遊技球を案内する入賞装置22とを備えたパチンコ機において、
遊技盤3の盤面中央に設けられた、遊技球の落入可能な入賞口開閉装置15と、
入賞口開閉装置15内の球流路に設けられ、球通過を検知する球検知スイッチと、
球検知スイッチによる球検知に伴って、図柄組合わせ表示装置6を駆動すると共に、連続的に通過した場合には、最高四回まで保留する手段とを備え、
図柄組合わせ表示装置6の図柄表示器7a,7b,7cの表示図柄として、特定の図柄からなる更新図柄xを含み、
変動開始後、最終的に停止表示される表示図柄を決定するとともに、更新図柄xを表示するか否か決定し、
更新図柄xで停止表示した図柄表示器7a,7b,7cを変化させて、再び図柄を表示させる、パチンコ機。」(以下、引用発明」という。)

4.対比
引用発明の「表示図柄」は、本願補正発明の「図柄」に相当し、以下同様に、「図柄組合わせ表示装置6」は「表示装置」に、「入賞装置22」は「変動入賞装置」に、「球検知スイッチ」は「遊技球検出手段」に、「パチンコ機」は「遊技機」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明について以下のことがいえる。
(1)「各図柄表示器7a,7b,7cの複数の表示図柄が変動を開始し、停止して種々の組合わせの図柄を表示する図柄組合わせ表示装置6と(・・を備え)」について
複数の表示図柄が変動を開始した後、停止して種々の組合わせの図柄を表示することは、本願補正発明の「複数の図柄を可変表示してから停止表示する可変表示ゲームを実行する」に相当することは明らかである。
そうすると、引用発明は、本願補正発明の「複数の図柄を可変表示してから停止表示する可変表示ゲームを実行することが可能な表示装置を備え」に相当する構成を実質的に具備している。
(2)「前記図柄組合わせ表示装置6の各停止図柄が所定の組合わせである場合に蓋体24を開放作動させて特別入賞口23に遊技球を案内する入賞装置22とを備えたパチンコ機において」について
「前記図柄組合わせ表示装置6の各停止図柄が所定の組合わせである場合に」が本願補正発明の「可変表示ゲームの結果に基づいて」に相当することは明らかである。また、「蓋体24を開放作動させて特別入賞口23に遊技球を案内する」ことが、いわゆる「大当り」を意味し、本願補正発明の「遊技球が入賞しない閉状態から遊技球が入賞可能な開状態に変換して遊技者に有利な遊技状態を発生する」に相当することは明らかである。
そうすると、引用発明は、本願補正発明の「前記可変表示ゲームの結果に基づいて、変動入賞装置を遊技球が入賞しない閉状態から遊技球が入賞可能な開状態に変換して遊技者に有利な遊技状態を発生することが可能な遊技機において」に相当する構成を実質的に具備している。
(3)「遊技盤3の盤面中央に設けられた、遊技球の落入可能な入賞口開閉装置15と、入賞口開閉装置15内の球流路に設けられ、球通過を検知する球検知スイッチと」について
「遊技盤3の盤面中央」は遊技領域であって発射装置によって遊技球が放出される領域であることは自明であり、遊技領域に放出された遊技球は入賞口開閉装置15に落入し「入賞口開閉装置15内の球流路」に流入可能であるから、「入賞口開閉装置15内の球流路」は本願補正発明の「球流入部」に相当する。
そうすると、引用発明は、本願補正発明の「遊技領域に放出された遊技球が流入可能な球流入部と、前記球流入部に流入した遊技球を検出する遊技球検出手段と」に相当する構成を実質的に具備している。
(4)「球検知スイッチによる球検知に伴って、図柄組合わせ表示装置6を駆動すると共に、連続的に通過した場合には、最高四回まで保留する手段とを備え」について
パチンコ機において、図柄変動を実行するための始動記憶を記憶することが可能な始動記憶手段と、始動記憶手段に始動記憶させる制御を行うことが可能な制御手段と、始動記憶手段に記憶された始動記憶を減数して表示装置で図柄変動を実行する手段を設けることは、常套手段である。そして、「球検知スイッチによる球検知に伴って、図柄組合わせ表示装置6を駆動すると共に、連続的に通過した場合には、最高四回まで保留する手段」との記載からみて、引用発明もパチンコ機における上記常套手段に係る構成を有していることは自明である。
また、4回まで保留している時には更に球検知されたとしても、更なる保留を行わないということであるから、引用発明は「始動記憶を記憶するための始動入賞を成立させるか否かの決定を行う始動入賞決定手段」を実質的に具備していることは明らかである。
そうすると、引用発明は、本願補正発明の「前記可変表示ゲームを実行するための始動記憶を記憶することが可能な始動記憶手段と、前記遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づいて、前記始動記憶を記憶するための始動入賞を成立させるか否かの決定を行う始動入賞決定手段と、前記始動入賞決定手段が始動入賞を決定したことに基づいて、前記始動記憶手段に前記始動記憶を記憶させる制御を行うことが可能な制御手段と、前記始動記憶手段に記憶された前記始動記憶を減数して前記表示装置で前記可変表示ゲームを実行する可変表示ゲーム実行手段と、を備え」に相当する構成を実質的に具備している。
(5)「図柄組合わせ表示装置6の図柄表示器7a,7b,7cの表示図柄として、特定の図柄からなる更新図柄xを含み、変動開始後、最終的に停止表示される表示図柄を決定するとともに、更新図柄xを表示するか否か決定し、更新図柄xで停止表示した図柄表示器7a,7b,7cを変化させて、再び図柄を表示させる」について
引用発明の表示図柄に含まれる「更新図柄x」は、これが停止表示されたときには変化させて再び図柄を表示させるものであるから、図柄を再変動させる点において「リスタート図柄」に相当する。
そうすると、引用発明と本願補正発明は、「前記可変表示ゲームにおいて停止表示される図柄の種類には、前記複数の図柄を再度可変表示させるためのリスタート図柄が含まれ」という点で共通している。
また、「更新図柄x」は変動開始後に停止表示するか否か決定されるものであり、「更新図柄x」が表示される場合は、一つの始動記憶で「可変表示」、「更新図柄xを含む表示図柄の停止」、「可変表示」、「表示図柄の停止」が行われ、これは「一の始動記憶に基づく一の可変表示ゲームにおいて複数の図柄の可変表示と停止表示とを繰り返し実行」するものといえ、この2回目の「可変表示」の開始においては始動記憶の減数が行われないことは引用文献の全体の記載から明らかである。そして、引用発明は「更新図柄x」が停止表示される「毎に」再び「可変表示」が行われるものとはいうことできないが、引用発明も本願補正発明も「リスタート図柄を停止表示した場合には」再び可変表示を開始する点では共通している。
そうすると、引用発明と本願補正発明は、「前記可変表示ゲーム実行手段は、前記リスタート図柄を停止表示するか否かの決定を行うよう構成されるとともに、前記可変表示の結果として前記リスタート図柄を停止表示した場合には、前記始動記憶を減数することなく再び前記複数の図柄の可変表示を開始することによって、一の始動記憶に基づく一の可変表示ゲームにおいて前記複数の図柄の可変表示と停止表示とを繰り返し実行可能である」という点で共通している。

したがって、本願補正発明と引用発明は、
「複数の図柄を可変表示してから停止表示する可変表示ゲームを実行することが可能な表示装置を備え、
前記可変表示ゲームの結果に基づいて、変動入賞装置を遊技球が入賞しない閉状態から遊技球が入賞可能な開状態に変換して遊技者に有利な遊技状態を発生することが可能な遊技機において、
遊技領域に放出された遊技球が流入可能な球流入部と、
前記球流入部に流入した遊技球を検出する遊技球検出手段と、
前記可変表示ゲームを実行するための始動記憶を記憶することが可能な始動記憶手段と、
前記遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づいて、前記始動記憶を記憶するための始動入賞を成立させるか否かの決定を行う始動入賞決定手段と、
前記始動入賞決定手段が始動入賞を決定したことに基づいて、前記始動記憶手段に前記始動記憶を記憶させる制御を行うことが可能な制御手段と、
前記始動記憶手段に記憶された前記始動記憶を減数して前記表示装置で前記可変表示ゲームを実行する可変表示ゲーム実行手段と、を備え、
前記可変表示ゲームにおいて停止表示される図柄の種類には、前記複数の図柄を再度可変表示させるためのリスタート図柄が含まれ、
前記可変表示ゲーム実行手段は、
前記リスタート図柄を停止表示するか否かの決定を行うよう構成されるとともに、
前記可変表示の結果として前記リスタート図柄を停止表示した場合には、前記始動記憶を減数することなく再び前記複数の図柄の可変表示を開始することによって、一の始動記憶に基づく一の可変表示ゲームにおいて前記複数の図柄の可変表示と停止表示とを繰り返し実行可能である遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
リスタート図柄が、本願補正発明においては、可変表示ゲームを終了させることがなく、有利な遊技状態を発生させるための機能がない図柄であるのに対して、引用発明ではそのような図柄でない点。
<相違点2>
リスタート図柄を停止表示するか否かの決定を、本願補正発明においては、可変表示ゲームにおける複数の図柄の可変表示の開始時に行うのに対して、引用発明ではそのような構成でない点。
<相違点3>
始動記憶を減数することなく再び複数の図柄の可変表示を開始するのが、本願補正発明では、リスタート図柄を停止表示する毎であるのに対し、引用発明では更新図柄x(リスタート図柄)を停止表示した場合である点。

5.判断
上記相違点について検討する。
一般遊技状態において、最初にコインを投入して可変表示させてリプレイ図柄が停止表示された時には、コイン投入しなくとも次の可変表示を行うことができるということは、パチスロ機「チェリーバー」(平成5年春)以降、4号機といわれる多くのパチスロ機に採用された機能であって、本件出願前に周知技術である。当該周知技術においては、リプレイ図柄が停止表示された時には、コインの払い出しを行うことは不可能であって、次の可変表示の実行のみが可能であるから、リプレイ図柄の停止表示によってゲームを終了させているものとはいうことができない。
周知例1:特開平6-47130号公報(【図2】等参照)
周知例2:パチスロ必勝ガイド1993年11月号、白夜書房、平成5年11月1日発行、34頁(34頁右下部には、「・・あの”リプレイ”とか称する再ゲーム役、あれに一体何の意味があるというのだろう。少なくとも、客側に何のメリットもない。3枚払い出しの小役と同じと考えればいいじゃん……などと言っているようでは甘い。小役として払い出されるなら、その払い出されたコインはそのまま打とうが精算してヤメようが、その選択は客の手中にある。その選択権を一方的に奪った元凶、それがリプレイだ。」と記載されている。)

<相違点1>について
上記周知技術においては、リプレイ図柄が停止表示された場合には、コイン投入しなくとも次のゲームを行う(「再度可変表示させる」)ことができるという恩典が遊技者に付与されるのみであり、BB賞、RB賞等、有利な遊技状態を発生させることはなく、コインの払い出しも不可能であるから、リプレイ図柄は、「リスタート図柄」であって「可変表示ゲームを終了させることがなく、有利な遊技状態を発生させるための図柄としての機能がない」ものといえる。
そして、引用発明の「更新図柄x」も上記周知技術の「リプレイ図柄」も遊技機の可変表示のための図柄である点で一致しているから、引用発明において更新図柄xを「可変表示ゲームを終了させることがなく、有利な遊技状態を発生させるための図柄としての機能がない」ものとし、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは想到容易である。

<相違点2>及び<相違点3>について
まず、本願補正発明の「可変表示の開始時に(・・決定を行う)」について検討する。
当該構成は、平成22年7月20日付け手続補正により請求項1に加入され、同日付け意見書にはその根拠として「段落[0071][0085]の記載に基づく。」と記載されているが、段落【0071】、【0085】を含め、明細書及び図面には「可変表示の開始時に」の技術的意義を規定する記載ないしは示唆はない。
しかしながら、一般に、パチンコ機においては、可変表示を開始する前、あるいは開始後における、可変表示の開始時点に極く近いタイミングで停止図柄を決定することは普通のことであり、本願明細書及び図面に上記のように記載がないことを踏まえると、本願補正発明の「可変表示の開始時に」も「可変表示を開始する前、あるいは開始後における、可変表示の開始時点に極く近いタイミング」と解するのが自然であって、引用発明と実質的に差異はない。仮に、「可変表示の開始時に」が変動開始のその瞬間という意味であるならば、出願当初明細書及び図面に「変動開始のその瞬間」というような記載がない以上、新規事項を追加したものとなる。更に、可変表示の開始と停止図柄の決定をどちらを先に実行するか(平成22年11月24日付け意見書参照)は、両者が極く近いタイミングであれば作用に差異はなく、設計事項に過ぎないものである。

引用発明では、「更新図柄x」が表示される場合に一つの始動記憶で「可変表示」、「更新図柄xを含む表示図柄の停止」、「可変表示」、「表示図柄の停止」が行われるものであるが、最初の「可変表示」が開始される際に「更新図柄x」を表示するか決定されるものの、2度目の「可変表示」が開始される際には当該決定を行わないものである。
しかしながら、上記周知技術においては、リプレイ図柄が停止表示された後、可変表示を行う際には役の抽選すなわちリプレイ図柄とするか否かの決定を含めた抽選を行っているから、「可変表示の開始時に」決定を行っているものであり、「リスタート図柄を停止表示する毎に」「再度可変表示する」ものといえる。
そうすると、上記周知技術を知悉している当業者にとって、引用発明において、リスタート図柄を停止表示するか否かの決定を可変表示の開始時に決定を行うとともに、再び複数の図柄の可変表示を開始するのをリスタート図柄を停止表示する毎で行うこととし、相違点2、3に係る本願補正発明の構成とすることは想到容易である。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明
1.本願発明の認定
平成23年11月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2.」の「1.補正後の本願発明」において「(補正前)【請求項1】」として記載したものである。

2.進歩性の判断
(1)引用文献
拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「前記リスタート図柄は、前記可変表示ゲームを終了させることがなく、前記有利な遊技状態を発生させるための機能がない図柄であり、」との限定を削除し、「前記可変表示ゲーム実行手段は、前記可変表示ゲームにおける前記複数の図柄の前記可変表示の開始時に前記リスタート図柄を停止表示するか否かの決定を行うよう構成されるとともに、前記可変表示の結果として前記リスタート図柄を停止表示する毎に、前記始動記憶を減数することなく再び前記複数の図柄の可変表示を開始することによって、一の始動記憶に基づく一の可変表示ゲームにおいて前記複数の図柄の可変表示と停止表示とを繰り返し実行可能である」との限定を元に戻し、「可変表示ゲームの結果に基づいて」を「可変表示ゲームの停止表示結果に基づいて」と修正したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用発明、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-06 
結審通知日 2012-01-10 
審決日 2012-01-24 
出願番号 特願2010-94839(P2010-94839)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 秋山 斉昭
吉村 尚
発明の名称 遊技機  
代理人 藤井 正弘  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 高山 裕志  
代理人 後藤 政喜  

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