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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1253213 |
審判番号 | 不服2011-14757 |
総通号数 | 148 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-07-08 |
確定日 | 2012-03-08 |
事件の表示 | 特願2005- 27776「パチンコ機前面板」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月17日出願公開、特開2006-212200〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、 平成17年2月3日に特許出願されたものであって、 平成22年10月18日付けで拒絶理由が通知され、これに応答して同年12月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、 平成23年4月5日付けで拒絶査定がされたため、これを不服として同年7月8日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。 また、当審において、平成23年9月6日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、平成23年10月31日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成23年7月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年7月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1) 本件補正発明 平成23年7月8日付け手続補正により、特許請求の範囲は、 「 【請求項1】 アクリル樹脂マトリックス成分にゴム成分を配合した、メルトフローレート(測定条件:JIS K7210、230℃、37.3N)が3?13g/10minであるアクリル樹脂組成物を射出成形または射出圧縮成形して得られる単層板であって厚みが2?8mmのパチンコ機前面板。 【請求項2】 前記アクリル樹脂組成物100質量部が、前記アクリル樹脂マトリックス成分75?95質量部と前記ゴム成分5?25質量部とで構成されることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機前面板。 【請求項3】 パチンコ機に所定の間隔を設けて配置される2枚の前面板の外側の前面板である請求項1に記載のパチンコ機前面板。 【請求項4】 アクリル樹脂マトリックス成分にゴム成分を配合した、メルトフローレート(測定条件:JIS K7210、230℃、37.3N)が3?13g/10minであるアクリル樹脂組成物を温度200?270℃で射出成形または射出圧縮成形することを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機前面板の製造方法。 【請求項5】 前記アクリル樹脂組成物100質量部が、前記アクリル樹脂マトリックス成分75?95質量部と前記ゴム成分5?25質量部とで構成されることを特徴とする請求項4に記載のパチンコ機前面板の製造方法。」 に補正された。(以下、この補正を「本件補正」という。) (2) 補正の目的 本件補正は、請求項1において、「成形」を「射出成形または射出圧縮成形」に補正し、「単層板であって厚みが2?8mm」である点を追加したものである。 本件補正は、「成形」の具体的な内容及び「パチンコ機前面板」の構成を技術事項として限定したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。 (3) 特許性についての検討 (3-1) 引用文献に記載された事項 原査定における引用文献1である特開2000-176122号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば、パチンコ遊技機やコイン遊技機等で代表される弾球遊技機およびそれに用いられる前面透視窓に関する。詳しくは、打玉を遊技領域に打込んで遊技が行なわれる弾球遊技機、および、その弾球遊技機の遊技領域の前面側を透視可能な状態で覆う前面透視窓に関する。」 (イ)「【0025】図3(a)は、図4で後述する樹脂成形用金型によって成形された一体成形枠30を示す縦断面図である。この一体成形枠30は、樹脂成形用金型による成形時に、透視板31とガラス固定部33a,33bとが一体成形されている。この一体成形枠30は、たとえば透明のアクリル(PMMA:ポリメタクリル酸メチル)樹脂で成形されている。透明のアクリル樹脂以外では、たとえば、PC(ポリカーボネイト)樹脂や、AS(アクリルニトリル・スチレン共重合)樹脂等であってもよく、ある程度の強度を有する透明な樹脂であれば何でもよい。」 (ウ)「【0029】図4は、樹脂成形用金型の構成を説明するための概略構成図である。この樹脂成形用金型40は、固定金型42と可動金型43とスライド金型45とで構成されており、図3(a)に示す一体成形枠を射出成形するためのものである。・・・」 (エ)「【0031】スライド金型45をスライドガイドピン46によりガイドさせながら固定金型42に接触させた状態にし、さらに可動金型43を固定金型42側(B方向)に移動させて可動金型43に当接させることにより、可動金型43,固定金型42,スライド金型45によって囲まれた閉空間が形成される。この状態で、固定金型42の樹脂注入口D側から樹脂を射出注入し、スプルランナー41,ゲート48を介して前述した閉空間内に樹脂を充填する。そして、注入充填された樹脂が冷却固化された状態で、可動金型43とスライド金型45とを固定金型42から離隔開放される方向に移動させ、製品を取り出す。・・・」 (オ)「【0036】 【課題を解決するための手段の具体例の効果】請求項1に関しては、入賞領域が設けられた遊技領域の前面を透視可能な状態で覆う前面透視窓が、遊技領域に面した側がガラス板で構成されそのガラス板よりも遊技者側に樹脂製の透視板が設けられているために、遊技者がたとえ興奮して前面透視窓を叩いたとしても樹脂製の透視板が叩かれることとなり、ガラス板のように割れて遊技者が怪我をする危険性が極力防止できる。しかも、遊技領域に面した側がガラス板で構成されているために、遊技領域に打込まれた打玉が透視窓に接触したとしてもガラス板に接触することとなる。その結果、たとえば、遊技領域に面した側も樹脂製の透視板で構成した場合に比べて、打玉が接触した場合の傷ができる不都合を防止することができる。」 以上、(ア)?(オ)の記載、及び図面を総合すると、引用文献1には、以下の発明が開示されている。 「透明なアクリル(PMMA:ポリメタクリル酸メチル)樹脂等のある程度の強度を有する透明な樹脂を射出成形して得られる、弾球遊技機に用いられる前面透視窓。」 (以下、この発明を「引用発明」という。) (3-2) 対比 引用発明と本件補正発明とを対比する。 引用発明における「弾球遊技機に用いられる前面透視窓」は、本件補正発明における「パチンコ機前面板」に相当する。 また、引用文献1の(ウ)?(エ)及び図2?4の記載から、引用発明における「弾球遊技機に用いられる前面透視窓」は、「単層板」であると認められる。 引用発明における「透明なアクリル(PMMA:ポリメタクリル酸メチル)樹脂」は、「アクリル樹脂組成物」である点で、本件補正発明における「アクリル樹脂組成物」と共通する。 以上のことから、両者は、 <一致点> 「アクリル樹脂組成物を射出成形して得られる単層板であるパチンコ機前面板。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 本件補正発明における「アクリル樹脂組成物」が「アクリル樹脂マトリックス成分にゴム成分を配合した」ものであるのに対し、 引用発明における「透明なアクリル(PMMA:ポリメタクリル酸メチル)樹脂」は、ゴム成分を配合したものか否か不明である点。 <相違点2> 本件補正発明における「アクリル樹脂組成物」が、「メルトフローレート(測定条件:JIS K7210、230℃、37.3N)が3?13g/10minである」のに対し、 引用発明における「透明なアクリル(PMMA:ポリメタクリル酸メチル)樹脂」は、このようなものか否か不明である点。 <相違点3> 本件補正発明における「パチンコ機前面板」が「厚みが2?8mm」であるのに対し、 引用発明における「弾球遊技機に用いられる前面透視窓」の厚みは不明である点。 (3-3) 判断 <相違点1>について 原査定における引用文献5である特開平10-338792号公報(以下「引用文献2」という。【0002】等参照。)、 平成23年9月6日付け審尋において提示された引用文献7である特開2002-309056号公報(以下「引用文献3」という。【0002】等参照。)、 国際公開第96/32440号(以下「引用文献4」という。第1頁第10行?第2頁第8行、第10頁第7?19行等参照。) に開示されているように、強度や耐衝撃性を高めるためにアクリル樹脂マトリックス成分にゴム成分を配合することは周知である。(以下、「周知技術1」という。) 引用文献1の(イ)に記載されているように、引用発明における「前面透視窓」に使用可能な樹脂は、PMMA等の「ある程度の強度を有する透明な樹脂」であり、 引用文献1の引用文献1の(オ)に記載されているように、引用発明における「前面透視窓」は遊技者により叩かれることが想定されているので、 引用発明における「前面透視窓」に、強度や耐衝撃性が求められることは、自明である。 よって、周知技術1に基づき、引用発明における「前面透視窓」を、アクリル樹脂マトリックス成分にゴム成分を配合したアクリル樹脂組成物で構成することは、当業者が容易に想到しうるものである。 <相違点2>について 前記引用文献2(【0014】、【0027】?【0028】等参照。)、 原査定における引用文献3である特開2003-3033号公報(以下「引用文献5」という。【0023】、【0074】、【0077】等参照。)、 原査定における引用文献4である特開平10-259286号公報(以下「引用文献6」という。【0041】、【0044】、【0050】、【0054】等参照。)、 に開示されているように、アクリル樹脂マトリックス成分にゴム成分を配合したアクリル樹脂組成物において、230℃、37.3Nの条件下でのメルトフローレートが3?13g/10minの範囲内とすることは周知である。(以下、「周知技術2」という。) よって、引用発明及び周知技術2に基づき、<相違点2>に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なしうるものであり、その場合の効果も予測しうる程度のものである。 <相違点3>について 成型品の厚みをどの程度とするかは、成型品の強度及び重量などを考慮した上で、当業者が適宜決定しうるものである。 よって、引用発明における「前面透視窓」の厚みを2?8mmとすることは、強度及び重量などを考慮した上で当業者が適宜決定しうるものであり、その場合の効果も予測しうる程度のものである。 (3-4) 特許性についての検討のまとめ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1?2から、当業者が容易に想到しうるものであるから、 本件補正発明は、特許法第29条第2項に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 (4) むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1) 本願発明 平成23年7月8日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本出願に係る発明は、平成22年12月13日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲により特定されるとおりのものである。 そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「 【請求項1】 アクリル樹脂マトリックス成分にゴム成分を配合した、メルトフローレート(測定条件:JIS K7210、230℃、37.3N)が3?13g/10minであるアクリル樹脂組成物を成形して得られるパチンコ機前面板。」 (2) 引用文献に記載されている事項 引用文献に記載された発明及び周知事項については、前記2.(3)で説示のとおりである。 (3) 対比・判断 本願発明(補正前の請求項1に係る発明)は、前記2.で検討した本件補正発明(補正後の請求項1に係る発明)から、「成形」が「射出成形または射出圧縮成形」である点及び「単層板であって厚みが2?8mm」である点を削除したものである。 そうすると、 前記2.に記載したとおり、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明は、引用発明及び周知技術1?2から、当業者が容易に想到しうるものであるから、 本願発明も、本件補正発明についての理由と同様の理由により、引用発明及び周知技術1?2から、当業者が容易に想到しうるものである。 (4) むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1?2から、当業者が容易に想到しうるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-14 |
結審通知日 | 2011-12-20 |
審決日 | 2012-01-25 |
出願番号 | 特願2005-27776(P2005-27776) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼藤 啓 |
特許庁審判長 |
立川 功 |
特許庁審判官 |
秋山 斉昭 瀬津 太朗 |
発明の名称 | パチンコ機前面板 |
代理人 | 緒方 雅昭 |
代理人 | 緒方 雅昭 |
代理人 | 緒方 雅昭 |
復代理人 | 杉森 修一 |
復代理人 | 杉森 修一 |
代理人 | 宮崎 昭夫 |
代理人 | 宮崎 昭夫 |
復代理人 | 杉森 修一 |
代理人 | 石橋 政幸 |
代理人 | 石橋 政幸 |
代理人 | 宮崎 昭夫 |
代理人 | 石橋 政幸 |