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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W |
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管理番号 | 1253271 |
審判番号 | 不服2009-22340 |
総通号数 | 148 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-11-16 |
確定日 | 2012-03-07 |
事件の表示 | 特願2001-568640「デジタル無線ネットワーク上でのデータ通信用音声帯域モデム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月27日国際公開、WO01/72067、平成15年11月11日国内公表、特表2003-533908〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、2000年5月15日(パリ条約による優先権主張2000年3月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年12月24日付けの拒絶の理由の通知に対して、平成21年4月3日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、同年7月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。 II.平成21年11月16日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年11月16日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正前・補正後の本願発明 本件補正により、少なくとも特許請求の範囲の請求項44は、次のように補正された。なお、下線部は補正された箇所を示す。 〈補正前〉 「セルラー式電話機のデータを送信する方法であって、 前記セルラー式電話機の番号を呼び出し、 前記セルラー式電話機の音声チャネル上で、呼び出された番号の音声接続を確立し、 前記セルラー式電話機のモデムを起動して、デジタルデータをデータトーンに変換し、 前記呼び出された番号に対するデータトーンを伝送するために、前記セルラー式電話機の切替回路を起動して、前記モデムを前記音声チャネルに接続することを特徴とする方法。」 〈補正後〉 「セルラー式電話機のデータを送信する方法であって、 前記セルラー式電話機の番号を呼び出し、 前記セルラー式電話機の音声チャネル上で、呼び出された番号の音声接続を確立し、 前記セルラー式電話機のモデムを起動して、デジタルデータを、前記音声チャネル上にて前記デジタルデータが劣化するのを防止するために、人間の音声の周波数帯域へと合成したデータトーンに変換し、 前記呼び出された番号に対するデータトーンを伝送するために、前記セルラー式電話機の切替回路を起動して、前記モデムを前記音声チャネルに接続することを特徴とする方法。」 本件補正は、 補正前の請求項44に記載した発明を特定するために必要な事項である「データトーン」について、「前記音声チャネル上にて前記デジタルデータが劣化するのを防止するために、人間の音声の周波数帯域へと合成したデータトーン」と限定するものであるから、本件補正は特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願の補正後の請求項44に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。) 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5786789号明細書(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 A.「FIG. 8 shows a perspective view of an add-on module 124 attached to the cellular telephone device 120 in accordance with the present invention. The add-on module 124 is inserted into the cavity 122 of the cellular telephone device 120. The cellular telephone device 120 includes a keyboard having keys (typically shown as 123) and a display screen 126. In addition to supplying power to the cellular telephone device 120 via, for example, a battery pack, add-on module 124 also includes a built in GPS receiver device. The cellular telephone device 120 is adapted to receive either a standard battery pack or a combined power source and a GPS receiver as embodied in the add-on module 124. Thus, the add-on module 124 allows a user to obtain standard GPS position location information. In the present embodiment, the GPS receiver of the add-on module 124 has no controls or display screen. The cellular telephone keys (typically shown as 123) are used as control keys in combination with a display screen 126. All of the GPS information is displayed on the display screen 126 of the cellular telephone device 120. The present invention is also well suited to having such control and display features included in the add-on module 124. In the present invention, the cellular telephone device 120 can transmit position location information obtained from the GPS receiver of the add-on module 124. In so doing, a user of cellular telephone device 120 has his or her position location information transmitted by cellular telephone device 120 to an interested party. The present invention is also well suited to having position location information obtained from the GPS receiver of add-on module 124 automatically transmitted, via the cellular telephone device 120, to an interested party.」(第5欄50行?第6欄14行) (当審訳:図8は、現在の発明に従ってセルラー電話装置120に付けられた、アドオン・モジュール124の透視図を示す。アドオン・モジュール124はセルラー電話装置120の空洞122に挿入される。セルラー電話装置120は、キー(典型的に123として示される)を持つキーボード、およびディスプレイ・スクリーン126を含んでいる。アドオン・モジュール124は、セルラー電話装置120への電力供給(例えばバッテリーパックによる)に加えて、ビルトインGPSレシーバー装置を含んでいる。セルラー電話装置120は、標準バッテリーパック、あるいは、アドオン・モジュール124としてまとめられるような電力源とGPSレシーバーを結合したもののいずれかを収容できる。したがって、アドオン・モジュール124は、ユーザが標準のGPS位置情報を得ることを可能にする。 本実施例では、アドオン・モジュール124のGPSのレシーバーは、制御部やディスプレイ・スクリーンを有していない。携帯電話のキー(典型的に123として示される)は、ディスプレイ・スクリーン126と結合してコントロールキーとして使用される。GPSの情報はすべて、セルラー電話装置120のディスプレイ・スクリーン126に表示される。本発明は、また、アドオン・モジュール124にそのような制御部とディスプレイを含ませることもできる。本発明は、セルラー電話装置120は、アドオン・モジュール124のGPSのレシーバーから得られた位置情報を送信することができる。その場合、セルラー電話装置120のユーザはセルラー電話装置120によってユーザの位置情報を関係者に送信する。本発明は、また、セルラー電話装置120にアドオン・モジュール124のGPSのレシーバーから得た位置情報を関係者に自動的に送信させるようにすることもできる。) B.「FIG. 9 shows a schematic diagram illustrating the interconnections between the cellular telephone device 120 and the add-on module 124 is shown. The cellular telephone device 120 typically includes such features as a display 126, a keyboard 128 with keys 123, a speaker 129, a microphone 130, a microprocessor 132, a transmitter circuit 134, a receiver circuit 136, and a duplexer circuit 138. The add-on module 124 includes a GPS device 140 including a microprocessor 142, a modem circuit 144, and a power/battery source 146. The interconnections between the cellular telephone device 120 and the add-on module 124 are completed in the present embodiment through a control bus 150, 152, I/O data lines 154, 156, and a power bus 158. Power bus 158 provides power from the power/battery source 146 to GPS device 140. These power/battery source 146 also provides power to the cellular telephone portion. The control connections between the cellular telephone device 120 and the add-on module 124 are accomplished using two UARTs 160, 162, control buses 150, 152 connect the keyboard 128 of the cellular telephone device 120 through the microprocessor 132 to the microprocessor 142 of the GPS device 140. In this manner, the standard functions necessary to operate the GPS device 140 of the add-on module 124 are controlled through the keyboard 128 of the cellular telephone device 120. I/O data is transferred between the cellular telephone device 120 and the add-on module 124 via the modem circuit 144 and the I/O data lines 154, 156. In so doing, data can be transferred in suitable format from either the cellular telephone device 120 to the add-on module 124, or from the add-on module 124 to the cellular telephone device 120. The add-on module 124 also includes a UART 166 disposed between the microprocessor 142 of the GPS device 140 and the modem 144 of add-on module 124. Although the present embodiment shows the UART 166 separate from the microprocessor 142, the present invention is also well suited to directing signals into a microprocessor which has a UART contained therein.」(第6欄34行?第7欄3行) (当審訳:図9は、セルラー電話装置120とアドオン・モジュール124間の相互接続を説明する概略図を示す。セルラー電話装置120は、典型的にはディスプレイ126、キー123を備えたキーボード128、スピーカー129、マイクロホン130、マイクロプロセッサー132、送信機回路134、受信機回路136およびデュプレクサー回路138のような構成を有している。 アドオン・モジュール124は、マイクロプロセッサー142、モデム回路144およびパワー/バッテリー源146を含むGPS装置140を含んでいる。セルラー電話装置120とアドオン・モジュール124の間の相互接続は、制御バス150、152、I/Oデータ・ライン154、156、およびパワー・バス158によって本実施例中で実現される。パワー・バス158は、GPS装置140にパワー/バッテリー源146からのパワーを供給する。これらのパワー/バッテリー源146は、さらに携帯電話部分にパワーを供給する。セルラー電話装置120とアドオン・モジュール124の間のコントロール接続は、2つのUART 160、162、マイクロプロセッサー132とGPS装置140のマイクロプロセッサー142を介してセルラー電話装置120のキーボード128を接続する制御バス150および152を使用して実現される。このように、アドオン・モジュール124のGPS装置140を操作するのに必要な標準機能は、セルラー電話装置120のキーボード128によってコントロールされる。I/Oデータは、モデム回路144とI/Oデータ・ライン154、156を介してセルラー電話装置120とアドオン・モジュール124の間で転送される。その場合、データは、適切なフォーマットで、セルラー電話装置120からアドオン・モジュール124まで、あるいはアドオン・モジュール124からセルラー電話装置120までのどちらかで転送することができる。アドオン・モジュール124は、さらにGPS装置140のマイクロプロセッサー142とアドオン・モジュール124のモデム144の間に配置されたUART 166を含んでいる。本実施例はマイクロプロセッサー142と離れているUART 166を示すが、本発明は、またそこにUARTを含むマイクロプロセッサーに信号を入力することもできる。) C.「Referring again to FIG. 9 in the present embodiment, interconnections between lines 154, 156 of the add-on module 124 and the receiver 136 and the transmitter 134 are accomplished using switches 172, 174. That is, if data from GPS device 140 is to be transmitted to cellular telephone device 120, each of the switches 172, 174 contact point "D". However, when the cellular telephone device 120 is operating in normal voice mode, the switches 172, 174 contact point "V". Although the present embodiment employs switches 172, 174, the present invention is also well suited to using other connection methods.」(第7欄31行?41行) (当審訳:本実施例の図9を再び参照すると、アドオン・モジュール124のライン154、156と、受信機136および送信機134との間の相互接続はスイッチ172および174を使用して実現される。すなわち、GPSの装置140からのデータがセルラー電話装置120に送信される場合、スイッチ172および174の各々は接点「D」に接続される。しかしながら、セルラー電話装置120が正常な音声モードで作動している場合、スイッチ172と174は接点「V」に接続される。本実施例はスイッチ172、174を使用するが、本発明は他の接続方法を使用することもできる。) D.引用例1のFigure 9から、セルラー電話装置120の接点「V」が、ラインを介してスピーカ129とマイク130に接続され、アドオン・モジュール124の接点「D」がモデム回路144に接続されていることが読み取れる。(審決注:Figure 9の、モデム回路144のI/Oデータラインの参照番号「176」は明細書中に「176」の記載がない一方、「I/Oデータライン154」と記載されていることから、「154」の誤記と認める。) 以上のことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「セルラー電話装置120は、典型的にはディスプレイ126、キー123を備えたキーボード128、スピーカー129、マイクロホン130、マイクロプロセッサー132、送信機回路134、受信機回路136およびデュプレクサー回路138のような構成を有し、アドオン・モジュール124は、マイクロプロセッサー142、モデム回路144およびパワー/バッテリー源146を含むGPS装置140を含み、I/Oデータは、モデム回路144とI/Oデータ・ライン154、156を介してセルラー電話装置120とアドオン・モジュール124の間で転送され、その場合、データを、適切なフォーマットでセルラー電話装置120からアドオン・モジュール124まで、あるいはアドオン・モジュール124からセルラー電話装置120までのどちらかで転送することができ、 アドオン・モジュール124は、ユーザが標準のGPS位置情報を得ることを可能とし、セルラー電話装置120は、アドオン・モジュール124のGPSのレシーバーから得られた位置情報を送信することができ、その場合、セルラー電話装置120のユーザはセルラー電話装置120によって位置情報を関係者に送信し、 アドオン・モジュール124のライン154、156と、受信機136および送信機134との間の相互接続はスイッチ172および174を使用して実現され、GPSの装置140からのデータがセルラー電話装置120に送信される場合、スイッチ172および174の各々はモデム回路144に接続する接点「D」に接続され、セルラー電話装置120が正常な音声モードで作動している場合、スイッチ172と174は、ラインを介してスピーカ129とマイク130に接続する接点「V」に接続されるアドオン・モジュール124を収容したセルラー電話装置120。」 3.対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「アドオン・モジュール124を収容したセルラー電話装置120」は、本願補正発明の「セルラー式電話機」に相当する。引用発明において、「セルラー電話装置120」は、「アドオン・モジュール124のGPSのレシーバーから得られた位置情報を送信することができ」、「GPSの装置140からのデータがセルラー電話装置120に送信される場合、スイッチ172および174の各々はモデム回路144に接続する接点「D」に接続され」るので、引用発明は、セルラー式電話機のデータを送信する方法といえる。 引用発明の「モデム回路144」は、本願補正発明の「モデム」に相当する。そして、引用発明において、データを送信する際には、モデム回路144が使用されるので、モデム回路が起動されていることは明らかである。さらに、電話通信の技術分野において、モデムは、デジタルデータを電話回線で送信可能な変調信号へ変換するものであることは技術常識であり、引用発明は、セルラー式電話機のモデムを起動して、デジタルデータを変調信号に変換しているといえる。 引用発明において、「アドオン・モジュール124のライン154、156と、受信機136および送信機134との間の相互接続はスイッチ172および174を使用して実現され、GPSの装置140からのデータがセルラー電話装置120に送信される場合、スイッチ172および174の各々はモデム回路144に接続する接点「D」に接続され、セルラー電話装置120が正常な音声モードで作動している場合、スイッチ172と174は」「接点「V」に接続される」ので、引用発明の「スイッチ172および174」は、本願発明の「切替回路」に相当し、「GPSの装置140からのデータがセルラー電話装置120に送信される場合、スイッチ172および174の各々は接点「D」に接続され」るので、引用発明は、モデム回路144からの変調信号を伝送するために切替回路を起動しているといえる。 したがって、両者は、 「セルラー式電話機のデータを送信する方法であって、 前記セルラー式電話機のモデムを起動して、デジタルデータを変調信号に変換し、 変調信号を伝送するために、前記セルラー式電話機の切替回路を起動することを特徴とする方法。」 で、一致するものであり、次の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明は、セルラー式電話機の番号を呼び出し、前記セルラー式電話機の音声チャネル上で、呼び出された番号の音声接続を確立するのに対し、引用発明は、「セルラー電話装置120のユーザはセルラー電話装置120によってユーザの位置情報を関係者に送信」するものではあるものの、セルラー式電話機の番号を呼び出し、前記セルラー式電話機の音声チャネル上で、呼び出された番号の音声接続を確立するのか明らかではない点。 [相違点2] 本願補正発明は、デジタルデータを、前記音声チャネル上にて前記デジタルデータが劣化するのを防止するために、人間の音声の周波数帯域へと合成したデータトーンに変換するのに対し、引用発明は、デジタルデータがモデムに入力されて変調信号に変換されるものの、音声チャネル上にて前記デジタルデータが劣化するのを防止するために、人間の音声の周波数帯域へと合成したデータトーンに変換するのか明らかでない点。 [相違点3] 本願補正発明は、前記セルラー式電話機の切替回路を起動して、前記モデムを前記音声チャネルに接続するのに対し、引用発明は、スイッチ172および174(本願補正発明の「切替回路」に相当する。)を有し、それらが起動することは明らかであるものの、モデムを前記音声チャネルに接続するか明らかではない点。 [相違点4] 本願補正発明は、呼び出された番号に対するデータトーンを伝送するために、前記モデムを前記音声チャネルに接続するのに対し、引用発明は、「セルラー電話装置120のユーザはセルラー電話装置120によってユーザの位置情報を関係者に送信」するものではあるものの、呼び出された番号に対するデータトーンを伝送するためかどうか明らかではない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 [相違点1] セルラー電話において、通話相手と通話する際には、相手の番号を呼び出し、呼び出された番号の音声接続を確立して、通話を行うことは技術常識である。また、接続を確立した音声通信経路でデータ通信を行うことは周知技術(例えば、米国特許第5625679号明細書の第1欄20行?57行には、相手のコンピュータにデータを送りたい場合、会話を終了して、音声モードからデータモードに切り替えてモデムを電話回線へ接続するAVD(Alternating Voice-Data)モデムに関する技術が記載され、米国特許第5802526号明細書の第6欄50行?第7欄18行には、音声又はデータのどちらかを切り替えて送るAVDモデムや、音声とデータを同時に送るSVD(Simultaneous Voice and Data)モデムが記載され、サポートセンターに電話をかけて、データの通信パスを音声回線上にセットアップして、モデムでサポートセンターとの音声接続と、データの送受信を同じ電話回線上で行うことを可能にすることが記載され、特開平8-256225の【0001】段落には、300?3,400Hzの伝送帯域を有する電話チャネルを使って、音声信号とモデム信号を同時に伝送することが記載されている。)である。 そして、引用発明において、「セルラー電話装置120のユーザはセルラー電話装置120によってユーザの位置情報を関係者に送信」するものであり、この関係者の通信手段としてどのようなものを採用するかは当業者の設計的事項であるので、引用発明において、関係者の通信手段を周知のセルラー式電話機として、位置情報を関係者に送信する際に、関係者のセルラー式電話機の番号を呼び出し、前記セルラー式電話機の音声チャネル上で、呼び出された番号の音声接続を確立してから、ユーザの位置情報を関係者に送信することは当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点2] 音声用の電話回線は人間の音声の周波数帯域に帯域制限されているので、デジタルデータを電話回線で送信するために、デジタルデータをモデムで変調して電話回線の帯域幅に適合するトーン等のアナログ信号(みなし音声)に変換して送信することは、周知技術(例えば、 特表平7-506229号公報の第2頁左下欄7行?25行には、「音声帯域の電話線は帯域幅が制限されているので、ディジタル信号を送るために直接使用することはできない。しかし、まず最初にこの信号を周波数が音声電話線の帯域幅に適合するアナログ信号に変換すれば、その電話線はディジタル信号を送るために使用することができる。そのような変換は、一般に変調器-復調器、または略して「モデム」として知られるデータ通信アダプタで行われる。モデムは、ディジタル計算機からのディジタル・データを音声の電話線上の伝送に適合したアナログ信号に変換し、また同様に、受信されたアナログ信号をディジタル計算機での使用に適合したディジタル・データに変換する。種々の変調技術の中でも、ビットレートが1800bps未満(1秒当たりのビット数)の中低速度で動作するモデムに対しては、周波変調(FM)の一つであり、周波変換キーイング(FSK)として知られる技術が非常に一般的である。FSKでは、「0」(またはスペース)と「1」(またはマーク)のビットを表わすために、2つの異なる周波数トーンが用いられる。」と記載され、 特開平5-231875号公報の【0003】、【0004】段落には、「ディジタル信号を、電話回線のようなアナログ通信回線を使って伝送するためには、通信回線に対応して、ディジタル信号をアナログ信号に変換しなければならない。また、受信側では受信したアナログ信号を元のディジタル信号に変換しなければならない。これらの変換を、それぞれ変調,復調と呼び、このための変換装置がモデム(変復調装置)であり、データ伝送の需要の高まりとともに、変復調技術も周波数変調(FM,FSK),位相変調(PM,PSK),直交振幅変調(QAM)と進歩を遂げた。」「周波数変調方式で、たとえば300bit/s全二重モデムの場合は、上り回線には1850Hzと1650Hzの二つの周波数を割り当て、「0」には1850Hz、「1」には1650Hzを対応させている。また、下り回線には、「0」に980Hz、「1」に1180Hzを対応させている。」と記載され、 特開平11-239092号公報の【0003】段落には、「携帯電話や簡易型携帯電話であるPHS端末などの無線電話の音声帯域で通常のモデムを用いた“みなし音声”によるデータ通信も行われている」ことが記載され、 また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-355857号公報の【0004】、【0005】段落には、「デジタルセルラーアダプタ3を用いてデータ通信を行うには、音声帯域モードとデジタルモードとがあり、音声帯域モードでデータ通信を行う場合は、デジタルセルラーアダプタ3に内蔵されるモデム4によって情報処理装置1からのデジタルデータ信号をアナログ信号に変換し、PCMコーデック5で再びデジタル信号に変換し、さらにデジタル携帯電話2に内蔵されるADPCMコーデック6で符号化してデータ圧縮して無線部7から基地局8に無線電送路を介して通信データを送信する」ことが記載されている。 )である。そして、このようにモデムでデジタルデータを変換するのは、変換した変調信号が音声帯域内で伝送されることにより、当然送信するデジタルデータが劣化するのを防止することを目的としている。したがって、引用発明において、モデム回路144で、デジタルデータを、前記音声チャネル上にて前記デジタルデータが劣化するのを防止するために、人間の音声の周波数帯域へと合成したデータトーンに変換することは当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点3] 引用発明において、「アドオン・モジュール124のライン154、156と、受信機136および送信機134との間の相互接続はスイッチ172および174を使用して実現され」、「GPSの装置140からのデータがセルラー電話装置120に送信されることになっている場合、スイッチ172および174の各々はモデム回路144に接続する接点「D」に接続され」、「セルラー電話装置120が正常な音声モードで作動している場合、スイッチ172と174は、ラインを介してスピーカ129とマイク130に接続する接点「V」に接続される」、すなわち、音声モードで作動している場合は、スピーカ129とマイク130はスイッチ172および174の接点「V」を介して、受信機136および送信機134に接続されることから、受信機136および送信機134とそれらに接続されるスイッチ172と174には音声信号が伝送されると解される。また、一般に電話通信において、モデムはデジタル信号と音声用電話回線で送受信できるアナログ信号とを変換するものであるので、引用発明において、受信機136および送信機134を、音声信号を送受信するための音声チャネルに接続する受信機136および送信機134とし、スイッチ172および174の各々を接点「D」に接続するときに、モデム回路144を受信機136および送信機134を介して音声チャネルに接続することは当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点4] 相違点1の検討で述べたように、セルラー電話において、通話相手と通話する際には、相手の番号を呼び出し、呼び出された番号の音声接続を確立して、通話を行うことは技術常識であるので、引用発明において、ユーザの位置情報を送信する関係者の番号を呼びだし、その番号に位置情報を送信するために、相違点3のようにモデム回路144を音声チャネルに接続することは当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明について 1.本願発明 平成21年11月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項44に係る発明(以下、「本願発明という。」)は、平成21年4月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項44に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「セルラー式電話機のデータを送信する方法であって、 前記セルラー式電話機の番号を呼び出し、 前記セルラー式電話機の音声チャネル上で、呼び出された番号の音声接続を確立し、 前記セルラー式電話機のモデムを起動して、デジタルデータをデータトーンに変換し、 前記呼び出された番号に対するデータトーンを伝送するために、前記セルラー式電話機の切替回路を起動して、前記モデムを前記音声チャネルに接続することを特徴とする方法。」 2.引用例 引用例の記載事項は、前記「II.2」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「II」で検討した本願補正発明の「データトーン」について、「前記音声チャネル上にて前記デジタルデータが劣化するのを防止するために、人間の音声の周波数帯域へと合成した」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要素をすべて含み、さらに限定を付したものに相当する本願補正発明が、前記II.4に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、上記引用発明及び周知技術に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項44に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-09-28 |
結審通知日 | 2011-10-04 |
審決日 | 2011-10-20 |
出願番号 | 特願2001-568640(P2001-568640) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04W)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 望月 章俊 |
特許庁審判長 |
和田 志郎 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 青木 健 |
発明の名称 | デジタル無線ネットワーク上でのデータ通信用音声帯域モデム |
代理人 | 大倉 昭人 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 英 貢 |