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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1253275 |
審判番号 | 不服2010-10161 |
総通号数 | 148 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-05-12 |
確定日 | 2012-03-07 |
事件の表示 | 特願2004-520197「同期マルチチャネルユニバーサルシリアルバス」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月22日国際公開、WO2004/008330、平成17年11月 4日国内公表、特表2005-533305〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 出願の経緯 本願は、2003年7月17日(パリ条約による優先権主張 2002年7月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年3月4日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成21年9月9日付けで手続補正がなされたが、平成22年1月5日付けで拒絶査定され、これに対し、平成22年5月12日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同時に手続補正(平成22年5月31日付け手続補正指令書(方式)に応答して、同年7月1日付けの手続補正により、特許請求の範囲の全文を単位とした補正の内容に訂正された。)がなされたものである。 第2 平成22年5月12日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年5月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正前及び本件補正後の本願発明 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「同期マルチチャネルユニバーサルシリアルバス(USB)を提供する方法」について、「複数のUSBデバイスを備えるUSBトポロジー内で」との限定を付与するとともに、「USBデバイス」の数を「複数」とする補正であるから、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものである。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「以下、本願補正発明」という。)について以下に検討する。 本願補正発明は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数のUSBデバイスを備えるUSBトポロジー内で同期マルチチャネルユニバーサルシリアルバス(USB)を提供する方法であって、 前記複数のUSBデバイスの、USB仕様で定義された、USB信号チャネルの同期情報に、外部ソースから同期情報を供給するステップと; 少なくとも前記外部ソースからの同期情報を用いて前記複数のUSBデバイスを同期させるステップと;を備える方法。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2001-147706号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 (イ)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ロボット、汎用組立機器、ロボット・ハンド機器、その他の多軸制御装置などのような複数のアクチュエータで構成される機械装置に対して適用されるアクチュエータ駆動制御方式に係り、特に、複数のアクチュエータを同期協調的に駆動することができるアクチュエータ駆動制御方式に関する。 【0002】更に詳しくは、本発明は、シリアル通信を用いることで、少ない配線数によって複数のアクチュエータを同期協調的に駆動することができるアクチュエータ駆動制御方式に係り、特に、短時間のシリアル通信によって、複数のアクチュエータを同期協調的に駆動することができるアクチュエータ駆動制御方式に関する。」(第2欄第22?35行) (ロ)「【0020】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、複数のアクチュエータからなる多軸機械装置の駆動を制御するためのアクチュエータ駆動制御方式であって、各アクチュエータに対する指示データを発行する中央コントローラと、指示データに従ってアクチュエータの駆動を制御する、各アクチュエータ毎に設けられた駆動制御部とで構成され、前記駆動制御部の各々は指示データを受信するデータ入力手段と指示データを送信するデータ出力手段を含み、駆動制御部同士は一方のデータ出力手段が他方のデータ入力手段に接続されてデイジー・チェーンを形成し、前記中央コントローラは、前記デイジー・チェーンの先頭に指示データを送出する、ことを特徴とするアクチュエータ駆動制御方式である。 【0021】本発明の第1の側面に係るアクチュエータ駆動制御方式では、USB(Universal Serial Bus)に代表されるような同期シリアル通信、又は、RS-232Cに代表されるような調歩同期シリアル通信などのシリアル・インターフェースによって指示データの転送を行うことができる。シリアル・インターフェースを用いて各駆動制御部の間をデイジー・チェーン接続することにより、配線数を増大させることなく指示データを転送することができる。 【0022】また、さらに前記中央コントローラ及び駆動制御部の各々に対して共通のクロック信号を供給するクロック供給手段を含み、前記中央コントローラは該クロック信号によって規定される制御周期毎に指示データを発行するとともに、前記駆動制御部の各々は制御周期に同期して受信した指示データの処理を実行するようにしてもよい。 【0023】指示データをシリアル転送することにより、各駆動制御部が指示データを受信する時刻は区々となるが、制御周期に同期して一斉に指示データの処理を実行することにより、各アクチュエータの同時的且つ協調的な動作を実現することが可能となる。」(第5欄第7?42行) (ハ)「【0038】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳解する。 【0039】図1には、多軸ロボット100のハードウェア構成を模式的に示している。同図に示すように、多軸ロボット100は、中央コントローラ10と、中央コントローラに対してデイジー・チェーン形式に接続された複数の駆動系20-1,20-2…で構成される。同図に示す例では、駆動系の個数は4個であるがその数は特に限定されない。以下、各部について説明する。 【0040】各駆動系20-1…は、駆動制御部21-1…と、アクチュエータ22-1…と、エンコーダ23-1…とのセットで構成される。駆動制御部21-1…は、中央コントローラ10から発行された指示データを処理して、アクチュエータ22-1…に対して駆動信号を供給する。また、エンコーダ23-1…は、アクチュエータ22-1…の駆動量を検出して駆動制御部21-1…にフィードバックし、駆動制御部21-1…はこの検出信号を基にしてアクチュエータ22-1…に対する適応的な制御を実現することができる。 【0041】各駆動制御部21-1,21-2…は、指示データ入力用のシリアル・ポートと、指示データ出力用のシリアル・ポートを各1つずつ有している。図示のように、隣接する駆動制御部どうしは、一方の出力用シリアル・ポートが他方の入力用シリアル・ポートにシリアル・ケーブルによって接続されており、駆動系全体としては1本のデイジー・チェーン接続構成となる。シリアル・ポートを介したデータ転送方式(通信プロトコル)の詳細については後述に譲る。」(第7欄第39行?第8欄第17行) (ニ)「【0043】中央コントローラ10は、1MHzの同期通信用クロック信号と20MHzのモータ制御演算用周期信号とを生成する。これらの同期クロック信号は、各駆動制御部21-1…に対して、共通の同期制御のクロック信号として供給されている。 【0044】各駆動制御部21-1…は、モータ制御演算用の周期信号をさらに分周して、1kHzのソフトウェア・サーボ周期を生成する。したがって、駆動制御部21-1…に接続されている各アクチュエータ22-1…は全て、同期的に制御される。この代替として、中央コントローラ10は、1MHzの同期通信用クロックのみを各駆動制御部21-1…に供給して、各駆動制御部21-1…において20KHzのモータ制御演算用周期信号と1kHzのソフトウェア・サーボ信号の双方を生成することも可能である。 【0045】このように、1kHzというソフトウェア・サーボ周期により、1msec以内に指示データの転送が完了するので、全てのアクチュエータ22-1,22-2…を同期的に制御することができる。 【0046】同期制御を実現するためには、各駆動系は、中央コントローラからの同期用制御クロック信号を入力することで各々の制御同期を同一にすることができる。すなち、各駆動系の駆動制御部21-1…は、指示データを受信した後は一旦待機して、クロック信号で規定される制御周期を用いて指示データの処理を同期的に実行することができる。この結果、各駆動系全体は協調的に動作することができる。」(第8欄第29行?第9欄第5行) (ホ)「【0057】ホストとしての中央コントローラ10は、アクチュエータ22-1…の制御周期TSVとしての1msec毎に指定した1つのアクチュエータ22の駆動制御部21に対する指示データを発行して、シリアル・ポートから送出する。この指示データは、図1に示すようなデイジー・チェーン接続された順番に従って、各駆動制御部21-1…によって順次受信される。 【0058】指示データが各駆動制御部21-1…を順次シリアル転送される間、指定されたアクチュエータ22に関する駆動制御部21以外は、単に指示データをデイジー・チェーンの下方に転送するだけで自らはデータを取り込まない。これに対して、指定されたアクチュエータ22の駆動制御部21は、指示データを受信すると、これを取り込んでから下方に転送する。そして、指示データ受信に応答して、これを処理してアクチュエータ制御用のデータに変換する。」(第10欄第14?29行) 上記引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「中央コントローラと複数の駆動系で構成され、各駆動系のアクチュエータの駆動制御部は、USB(Universal Serial Bus)に代表される同期シリアル通信のシリアル・インターフェースを用い、シリアル・ケーブルによってデイジー・チェーン接続され、ホストとしての中央コントローラは、指定した1つのアクチュエータの駆動制御部に対する指示データを発行して送出し、指定されたアクチュエータの駆動制御部は、指示データを受信すると、これを取り込み、中央コントローラは、各駆動制御部に対して、共通の同期制御のクロック信号を供給し、各駆動制御部に接続されている各アクチュエータは全て、同期的に制御される、アクチュエータ駆動制御方式。」 3.対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明において、「ホストとしての中央コントローラ」と、「アクチュエータの駆動制御部」を有する「各駆動系」とを「USB(Universal Serial Bus)に代表される同期シリアル通信のシリアル・インターフェースを用い」、「デイジー・チェーン接続」したものが、本願補正発明の「複数のUSBデバイスを備えるUSBトポロジー」に相当する。 次に、引用発明において、「ホストとしての中央コントローラ」は、「指定した1つのアクチュエータの駆動制御部に対する指示データを発行して送出し、指定されたアクチュエータの駆動制御部は、指示データを受信すると、これを取り込」んでいるから、引用発明において、「ホストとしての中央コントローラ」と、該「ホストとしての中央コントローラ」が「指定した1つのアクチュエータの駆動制御部」を有する「駆動系」との間に論理的な通信路、すなわち「チャネル」が設けられていることは明らかである。 よって、引用発明において、「USB(Universal Serial Bus)に代表される同期シリアル通信のシリアル・インターフェースを用い、シリアル・ケーブルによってデイジー・チェーン接続」された「各駆動系」が、「各駆動系」に対応したチャネルにより「ホストとしての中央コントローラ」と接続され、「全て、同期的に制御」されるようにする方法が、本願補正発明の「複数のUSBデバイスを備えるUSBトポロジー内で同期マルチチャネルユニバーサルシリアルバス(USB)を提供する方法」に相当する。 次に、引用発明において、「USB(Universal Serial Bus)に代表される同期シリアル通信のシリアル・インターフェースを用い、シリアル・ケーブルによってデイジー・チェーン接続」された「各駆動系」と「ホストとしての中央コントローラ」との間の論理的なチャネルが、本願補正発明の「USB仕様で定義された、USB信号チャネル」に相当する。 次に、引用発明において、「各駆動系」は、「各駆動系」の外部である「中央コントローラ」から「同期制御のクロック信号」を供給されているから、引用発明において、「中央コントローラは、各駆動制御部に対して、共通の同期制御のクロック信号を供給」することと、本願補正発明の「外部ソースから同期情報を供給する」ことは、USBデバイスの外部から同期情報を供給する、点で共通する。 次に、引用発明において、「中央コントローラ」から「供給」される「同期制御のクロック信号」により「各駆動制御部に接続されている各アクチュエータは全て、同期的に制御される」ことと本願補正発明の「少なくとも前記外部ソースからの同期情報を用いて前記複数のUSBデバイスを同期させるステップ」とは、前記USBデバイスの外部からの同期情報を用いて前記複数のUSBデバイスを同期させるステップ、である点で共通する。 すると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 複数のUSBデバイスを備えるUSBトポロジー内で同期マルチチャネルユニバーサルシリアルバス(USB)を提供する方法であって、 前記複数のUSBデバイスの、USB仕様で定義された、USB信号チャネルの同期情報に、USBデバイスの外部から同期情報を供給するステップと; 少なくとも前記USBデバイスの外部からの同期情報を用いて前記複数のUSBデバイスを同期させるステップと;を備える方法。 一方で、両者は、次の点で相違する。 <相違点> 本願補正発明では、「同期情報」が「外部ソース」から供給されるのに対し、引用発明では、「同期制御のクロック信号」(本願補正発明の「同期情報」に相当する。以下同じ。)が「ホストとしての中央コントローラ」から提供されているものの、外部ソースから供給されるとは記載されていない点。 4.判断 そこで、上記相違点について検討すると、各機器が互いに同位相で動作するための同期信号を、伝送路に接続されていない同期信号発生器(外部ソース)から供給することは、例えば、特開平6-268976号公報の「従来の技術」の欄に「同期信号発生器1から発生されたブラックバースト信号は被制御映像機器6?8の数mだけ分配器5で分配され、各映像機器が映像信号を処理するときに互いに同位相で動作するための基準信号となる。」(第【0004】段落、図5)と記載されているとおり、周知技術である。 よって、引用発明において、「同期制御のクロック信号」(同期情報)を「USB(Universal Serial Bus)に代表される同期シリアル通信のシリアル・インターフェースを用い、シリアル・ケーブルによってデイジー・チェーン接続」されていない同期信号発生器(外部ソース)から供給することは、当業者が容易になし得たことである。 また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得たものである。 5.本件補正についてのむすび したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成22年5月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本 願の請求項1?12に係る発明は、平成21年9月9日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 同期マルチチャネルユニバーサルシリアルバス(USB)を提供する方法であって、 USB仕様で定義されたUSB信号チャネルの同期情報に少なくとも外部ソースからの同期情報を供給するステップと; 前記外部ソースからの同期情報を用いて複数のUSBデバイスを同期させるステップと;を備える方法。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 [理由]2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、「同期マルチチャネルユニバーサルシリアルバス(USB)の提供する方法」についての「複数のUSBデバイスを備えるUSBトポロジー内で」との限定を解除するとともに、「USBデバイス」が「複数」であるとの記載を省いたものに相当する。 すると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]4.」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-10-06 |
結審通知日 | 2011-10-11 |
審決日 | 2011-10-25 |
出願番号 | 特願2004-520197(P2004-520197) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 梅景 篤、菅原 浩二 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
近藤 聡 佐藤 匡 |
発明の名称 | 同期マルチチャネルユニバーサルシリアルバス |
代理人 | 三浦 邦夫 |