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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て成立) F21V |
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管理番号 | 1253404 |
判定請求番号 | 判定2011-600054 |
総通号数 | 148 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2012-04-27 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2011-12-19 |
確定日 | 2012-03-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4883648号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号物件並びにその写真及び図面に示す「LED照明装置」は、特許第4883648号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定請求は、イ号物件並びにその写真及び図面に示す「LED照明装置」(以下「イ号物件」という。)が特許第4883648号の請求項1、16及び17に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」という。)の技術的範囲に属しない、との判定を求めたものである。 第2 本件特許発明 1 本件発明1の構成要件 本件発明1は、特許第4883648号の明細書及び図面(以下「本件明細書等」という。)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであって、構成要件毎に1A?1Eの符号を付して示せば、次のとおりのものと認める(以下「構成要件1A」などという。)。 「【請求項1】 LED照明装置において、 (1A) 上面に窓孔を有するとともに、上面から下方に設けられた垂設部に折曲部を有する蓋体と、前記蓋体の前記上面が配置される上部開口を有する筺体本体とからなり、前記蓋体の前記折曲部が、前記筺体本体の開口部とは逆側に配置されたネジの締付けにより下方に付勢されることによって、前記蓋体が前記筺体本体に固着される筺体と、 (1B) 前記筺体本体に収容され、複数の発光ダイオード(LED)を直線状にかつ均等間隔で配列してなる光源と、 (1C) 光を集める作用を有し、前記筺体本体において前記窓孔の下方に設けられるとともに、前記各発光ダイオードに対応して前記各発光ダイオードの上方に設けられる複数の光学部材とを備え、 (1D) 前記各光学部材が、対応する前記各発光ダイオードの上に着脱自在に設けられている、 (1E) ことを特徴とするLED照明装置。」 2 本件発明1の課題、目的及び作用効果 本件発明1は、本件明細書等において「前記従来のLED照明装置は、出射される光を均一にして光量ムラや色ムラが生じるのを防止することを主眼にしており、このため、照射光の配光特性を変更することまでは考慮されていない。」(段落【0004】参照)と記載されるように、従来のLED照明装置はその照射光の配光特性を変更することに着目していないという問題点を解決することを目的とし、光学部材を発光ダイオードの上に着脱自在に設ける構成としたことによって、「光学部材が発光ダイオードの上に着脱自在に設けられているので、光学部材を配光特性の異なる光学部材に変更したり、また複数の光学部材のうちのいずれかの光学部材を取り去ったりすることが可能であり、これらのような変更により、発光ダイオードからの出射光を、配光特性の異なる光学部材に入射させることで、光学部材から出射される光の配光特性を簡単に変更することができる。」(段落【0007】参照)という本件明細書等に記載された効果を奏するものである。 すなわち、本件発明1は、LED照明装置の照射光の配光特性を簡単に変更できるようにすることをその目的とするものと認められる。 3 本件発明2及び本件発明3 本件発明2及び本件発明3は、本件明細書等の記載からみて、特許請求の範囲の請求項16及び請求項17に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項16】 LED照明装置の配光特性変更方法であって、 前記LED照明装置が、 上面に窓孔を有するとともに、上面から下方に設けられた垂設部に折曲部を有する蓋体と、前記蓋体の前記上面が配置される上部開口を有する筺体本体とからなり、前記蓋体の前記折曲部が、前記筺体本体の開口部とは逆側に配置されたネジの締付けにより下方に付勢されることによって、前記蓋体が前記筺体本体に固着される筺体と、 前記筺体に収容され、複数の発光ダイオード(LED)を直線状にかつ均等間隔で配列してなる光源と、 前記各発光ダイオードに対応して前記各発光ダイオードの上方かつ前記窓孔の下方に着脱自在に設けられ、光を集める作用を有する複数の光学部材とを備え、 当該配光特性変更方法が、 前記複数の光学部材のうちのいずれかの光学部材を取り去ることにより、または前記複数の光学部材のうちのいずれかまたはすべての光学部材をこれらと異なる配光特性を有する別の光学部材に交換することにより、前記LED照明装置の配光特性を変更している、 ことを特徴とするLED照明装置の配光特性変更方法。」 「【請求項17】 LED照明装置の配光特性変更方法であって、 前記LED照明装置が、 上面に窓孔を有するとともに、上面から下方に設けられた垂設部に折曲部を有する蓋体と、前記蓋体の前記上面が配置される上部開口を有する筺体本体とからなり、前記蓋体の前記折曲部が、前記筺体本体の開口部とは逆側に配置されたネジの締付けにより下方に付勢されることによって、前記蓋体が前記筺体本体に固着される筺体と、 前記筺体に収容され、複数の発光ダイオード(LED)を直線状にかつ均等間隔で配列してなる光源と、 前記各発光ダイオードに対応して前記各発光ダイオードの上方かつ前記窓孔の下方に着脱自在に設けられ、光を集める作用を有する複数の光学部材とを備え、 当該配光特性変更方法が、 前記各光学部材と前記各発光ダイオードとの距離を変えることにより、または、前記各発光ダイオードの光軸に対して前記各光学部材の光軸を傾斜させることにより、前記LED照明装置の配光特性を変更している、 ことを特徴とするLED照明装置の配光特性変更方法。」 第3 イ号物件 判定請求書に添付したイ号物件、イ号写真1、2及びイ号図面を参酌すると、イ号物件は、構成毎にイ1A?イ1Eの符号を付して示せば、次のとおりのものと認められる(以下「構成イ1A」などという。)。 「(イ1A) 上面に窓孔を有するとともに、上面から下方に設けられた垂設部に折曲部を有する蓋体と、この蓋体の上面が配置される上部開口を有する筺体本体とからなり、蓋体の折曲部が、筺体本体の上部開口とは逆側に配置されたネジの締付けにより下方に付勢されることによって、蓋体が筺体本体に固着される筺体を備え、 (イ1B) 筺体本体に収容され、複数のLEDを直線状にかつ均等間隔で配列してなる光源を更に備え、 (イ1C) 光を集める作用を有し、筺体本体において窓孔の下方に設けられるとともに、各LEDに対応して各LEDの上方に設けられる複数の光学部材(レンズ体)を更にまた備え、 (イ1D) 各光学部材は、下端に突起を備えた4本の脚部を有しており、4本の脚部それぞれが、LED設置基台に設けられた挿入孔に突起を挿入した形で有機系接着剤によって接着されることによって、各光学部材が対応する各LEDの上に固着して設けられている (イ1E) ことを特徴とするLED照明装置。」 第4 当審の判断 1 イ号物件の本件発明1の技術的範囲への属否 (1)構成要件1A、1B、1C及び1Eの充足性について イ号物件の構成イ1A、イ1B、イ1C及びイ1Eは、それぞれ、本件発明1の構成要件1A、1B、1C及び1Eに相当するから、イ号物件は、本件発明1の各構成要件のうちの構成要件1A、1B、1C及び1Eを充足するものと認められる。 (2)構成要件1Dの充足性について 本件発明1の構成要件1D「各光学部材が、対応する各発光ダイオードの上に着脱自在に設けられている」には「着脱自在」との用語が用いられている。「着脱自在」の技術的意味は、一般に、取り付け及び取り外しを繰り返し行えることである。そして、本件明細書等の記載を参酌すれば、本件発明1における「着脱自在に」との発明特定事項の技術的意義は、光学部材を他のものに置き換えることを簡単にする、というものであると理解される。 一方、イ号物件の構成イ1Dにおける「光学部材」と「LED設置基台」との関係についてみると、光学部材の4本の脚部がその下端の突起をLED設置基台の挿入孔に挿入した形で有機系接着剤を用いて両者間は接着され、そうすることで光学部材が対応するLEDの上に固着して設けられるものとなっている。そして、このような有機系接着剤による接着は、いったん行われると、両者は強固に、言い換えれば、その接着部分を一部でも破壊・侵食すること無しには取り外すことができない程度に、固着されるものと解される。そして、その結果として、イ号物件においては、光学部材を他のものに簡単に置き換えることはできないようになっているものである。 そうすると、上述した本件発明1における「着脱自在に」との発明特定事項の技術的意義に照らして、イ号物件の有機系接着剤による固着は「着脱自在に」なされているものとはいえない。 したがって、イ号物件は構成要件1Dを充足しないということができる。 (3)小括 イ号物件は、構成要件1Dを充足しないから、本件発明1の技術的範囲に属しない。 2 イ号物件の本件発明2及び3の技術的範囲への属否 本件発明2及び3は方法に係る発明であるから、通常は、イ号物件並びにその説明、写真及び図面をもって両者を直接対比することはできない。しかし、本件発明2及び3に係るLED照明装置の配光特性変更方法は、「前記各発光ダイオードに対応して前記各発光ダイオードの上方かつ前記窓孔の下方に着脱自在に設けられ、光を集める作用を有する複数の光学部材とを備え、」との要件を備えるから、本件発明1に係るLED照明装置を前提とし当該LED照明装置を用いてその照射光の配光特性を変更する方法であるものと認められる。そうすると、上記第4の1において検討したように、イ号物件が本件発明1の構成要件1Dを充足しておらず、よって本件特許の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しないことから、イ号物件を使用する場合にあっても、それは本件特許発明2及び3の技術的範囲に属しないということができる。 3 被請求人の主張について 被請求人は、答弁書において、イ号物件の構成イ1Dによれば、光学部材の4本の脚部がその下端の突起をLED設置基台の挿入孔に挿入した状態で有機系接着剤を用いて両者を接着することにより、光学部材が対応するLEDの上に固着されるものであるから、そうすると、光学部材は、対応するLEDとは別個に設けられていて、少なくともその接着前においては、対応するLEDの上の所定の位置に着脱自在に設けられているものである、と主張する(以下「主張1」という。)。 また、判定請求書における請求人の、イ号物件では有機系接着剤としてシアノアクリレート系接着剤を使用しているとの説明を引用し、当該シアノアクリレート系接着剤はアセトンのような有機溶剤に容易に溶解することから、イ号物件において光学部材の脚部が有機系接着剤によってLED設置基台の上に強固に接着固定されているからといって、一旦接着された光学部材を外せないということはなく、接着個所にアセトンを塗布して有機系接着剤を溶解させることにより、光学部材をLED設置基台から簡単に取り外すことができるのであり、イ号物件の光学部材は、有機系接着剤で固着された後であっても、対応するLEDの上に着脱自在に設けられているものである、と主張する(以下「主張2」という。)。 そして、上記各主張1、2を合わせ、イ号物件の光学部材は接着前のみならず接着後においても対応するLEDの上に着脱自在に設けられているとして、イ号物件の構成イ1Dは本件発明1の構成要件1Dを充足する、と論じている。 しかし、光学部材の脚部の下端の突起をLED設置基台の挿入孔に挿入した状態で有機系接着剤を用いて両者を接着する前においては、イ号物件は物として未完成の状態にあるのであって、その状態のLED照明装置は未だイ号物件ではない。有機系接着剤による接着を行う前の、未だイ号物件ではないLED照明装置について本件発明1の構成要件の充足性を調べてみたところで、それは、イ号物件そのものと本件発明1との対比を行っていることにはならないというべきである。よって、被請求人の上記主張1は失当といわざるをえない。 また、一般に、有機系接着剤で接着し固定した物品は、その廃棄等を行う場合は別として、その使用状態においてはその固定を解かないのが通常であると解するのが相当である。したがって、イ号物件において、接着・固定に使用したシアノアクリレート系接着剤をその使用状態においてアセトン等の有機溶剤で溶かすことはしないものというべきであり、被請求人の上記主張2は失当である。 以上のことから、被請求人の上記主張1、2はいずれも採用することができない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、イ号物件は、特許第4883648号の請求項1、16及び17に係る発明の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2012-03-08 |
出願番号 | 特願2008-261149(P2008-261149) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZA
(F21V)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 林 政道 |
特許庁審判長 |
千馬 隆之 |
特許庁審判官 |
栗山 卓也 小関 峰夫 |
登録日 | 2011-12-16 |
登録番号 | 特許第4883648号(P4883648) |
発明の名称 | LED照明装置およびその配光特性変更方法 |
代理人 | 辰巳 富彦 |
代理人 | 高崎 健一 |