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審決分類 審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  B65D
審判 全部無効 2項進歩性  B65D
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
管理番号 1253767
審判番号 無効2009-800027  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-02-16 
確定日 2012-02-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4143206号「記録媒体用ディスクの収納ケース」の特許無効審判事件についてされた平成21年11月18日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の決定(平成21年(行ケ)第10417号及び平成21年(行ケ)第10436号;平成22年3月9日)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
平成11年 2月24日 特許出願(特願平11-46724号;
平成10年3月9日にした特願平10-
57080号の分割)
平成20年 6月20日 設定登録(特許第4143206号)
平成21年 2月16日 本件無効審判請求
平成21年 5月 8日 答弁書提出(被請求人)
平成21年 5月 8日 訂正請求(被請求人)
平成21年 5月27日 訂正拒絶理由通知(被請求人に対し)
平成21年 5月27日 職権審理結果通知(請求人に対し)
平成21年 6月26日 意見書及び訂正請求書を対象とする手続
補正書提出(被請求人)
平成21年 6月26日 弁駁書提出(請求人)
平成21年10月 9日 口頭審理陳述要領書(1)提出(請求人)
平成21年10月16日 口頭審理陳述要領書(2)提出(請求人)
平成21年10月23日 口頭審理陳述要領書(1)提出(被請求人)
平成21年10月23日 口頭審理陳述要領書(2)提出(被請求人)
平成21年10月23日 口頭審理
平成21年10月27日 証拠方法の申出書提出(請求人)
平成21年11月18日 審決(請求項1については成立,請求項2
及び請求項3については不成立)
平成21年12月22日 知的財産高等裁判所出訴
(平成21年(行ケ)第10417号)
平成21年12月28日 知的財産高等裁判所出訴
(平成21年(行ケ)第10436号)
平成22年 2月15日 訂正審判請求
(訂正2010-390015号)
平成22年 3月 9日 知的財産高等裁判所決定(特許法第181条
第2項の規定に基づく審決取消し(差戻し))
平成22年 3月29日 特許法第134の3第5項の規定に基づく
みなし訂正請求
平成22年 4月16日 訂正拒絶理由通知(被請求人に対し)
平成22年 4月16日 職権審理結果通知(請求人に対し)
平成22年 5月20日 意見書提出(被請求人)
平成22年 5月20日 意見書及び上申書提出(請求人)

第2 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は,審判請求書において,「特許第4143206号の特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めており,平成21年6月26日付けの弁駁書,平成21年10月9日付けの口頭審理陳述要領書(1),平成21年10月16日付けの口頭審理陳述要領書(2),平成22年5月20日付けの意見書及び同日付けの上申書も併せると,請求人の主張は,概略次のとおりである。

(1)特許法第134の3第5項の規定による訂正請求は,実質的に特許請求の範囲を変更するものであり,拒絶されるのが相当である。

(2)請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されていない発明を含むから,特許法第36条第6項第1号の規定に違反したものである。したがって,その特許は,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。

(3)請求項1?3に係る発明は,下記証拠方法に示す甲第1?8号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって,その特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

そして,請求人は,上記(2)の具体的理由として下記(4)及び(5)を主張し,上記(3)に関して下記(6)ないし(10)を主張している。

(4)発明の詳細な説明中には,「略5.2mm」という数値限定の意味が記載されておらず,請求項1に記載された「保持板とカバー体とを閉じた状態におけるケースの厚みが略5.2mmであること」に対応する事項が記載されていない。

(5)本件明細書の発明の詳細な説明には,ケースの薄型化という課題を解決するために,ケースを2枚構成とし,かつ図3に示す中央固定部の構成を備えるものとするという手段のみが発明として記載されているが,請求項1には,図3に示す中央固定部の構成が反映されていない。請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されていない発明を含む。

(6)甲第1号証にいう「突起1a」は,ディスクの内周近傍に当接する台座及び中心穴に圧入される中央部の係合突起部を総称するものである。この「台座」も,「係合突起部」を囲むようにリング形状に隆起して形成されているということに支障はなく,本件発明の「径小のスペーサ台」に相当する。甲第1号証の「突起1a」において,台座とは見なし得ないスリットで区画された水平アーム部分から内側の部分を除いたリング状の台座部分は,ボス部を囲む径小のスペーサ台に相当する。

(7)径小と径大のスペーサ台は,甲第2号証及び甲第3号証にも記載されている。

(8)甲第8号証に記載のコンパクトディスク用ホルダのボス部の構成を,甲第1号証に記載の径小及び径大のスペーサ台を備えたディスク収納ケースに適用することは,当業者が容易になし得る。

(9)径小のスペーサ台の径内側でボス部の沈み込み作用と縮径作用とが生じることにより,破損を減少でき,塵埃の侵入を防止できるという点は,特許公報にも訂正明細書にも何らの記載がない。

(10)下記の技術1?3は,甲第13?15号証,甲第18?30号証から明らかなように,いずれも周知の技術である。
[技術1]ディスク収納ケースにおいて,独立したリング状であろうと,あるいはボス部との間に一段低くなった環状の部分が存在しないボス部と連続した形のリング状であろうと,ボス部を囲む径小のスペーサ台を有し,径小のスペーサ台の径内側において,ボス部に径方向の分断部を周方向に複数本形成して,各分断部間に指掛け可能であってディスクを嵌脱するときに沈み込み作用と縮径作用とが可能な複数の操作片を形成する技術。
[技術2]ディスク収納ケースにおいて,ボス部を囲む独立したリング状の径小のスペーサ台を設ける技術。
[技術3]ディスク収納ケースにおいて,ボス部を,保持板のディスクに対面する上面から立ち上がっていてディスクの中央孔が嵌りかつ径方向内方へ傾き可能な周方向複数の立ち上がり部を有するものとし,ボス部まわりに立ち上がり部の根元部両側に径方向外方へ延びる対の径方向切欠を設け,この対の径方向切欠間にボス部に近い部分が高くなるように傾斜して撓み可能なバネ部を形成する技術。

〈証拠方法〉
甲第1号証:特開昭60-148485号公報
甲第2号証:米国特許第3949872号明細書
甲第3号証:実願昭59-54529号(実開昭60-167795号)
のマイクロフィルム
甲第4号証:特開平10-35761号公報
甲第5号証:実用新案第3011884号公報
甲第6号証:特開平8-276975号公報
甲第7号証:実用新案第3038504号公報
甲第8号証:特開平5-51082号公報
甲第9号証:無効審判(無効2004-80029)の平成17年2月
2日付の審決コピー
甲第10号証:無効審判(無効2004-80029)の平成18年
5月12日付の審決コピー
甲第11号証:無効審判(無効2004-80029)の平成19年
11月14日付の審決コピー
甲第12号証:特開平8-48386号公報
甲第13号証:実願昭63-65164号(実開平1-170684号)
のマイクロフィルム
甲第14号証:米国特許第5586651号明細書
甲第15号証:実用新案第3035495号公報
甲第16号証:特表平9-511203号公報の一部抜粋
甲第17号証:本件特許公報
甲第18号証:米国特許第5685427号明細書
甲第19号証:特開平7-237686号公報
甲第20号証:米国特許第4903829号明細書
甲第21号証:特開平3-275483号公報
甲第22号証:実願昭63-112439号(実開平2-34490号
公報)のマイクロフィルム
甲第23号証:実公平5-1014号公報
甲第24号証:実公平5-1015号公報
甲第25号証:米国特許第5651458号明細書
甲第26号証:実願昭63-148395号(実開平2-69889号
公報)のマイクロフィルム
甲第27号証:米国特許第5244085号明細書
甲第28号証:実用新案第3034957号公報
甲第29号証:特表平10-502599号公報
甲第30号証:特表2000-508997号公報

なお,甲第1号証ないし甲第11号証は審判請求書とともに,甲第12号証ないし甲第15号証は平成21年6月26日付け弁駁書とともに,甲第16号証は平成21年10月16日付け口頭審理陳述要領書(2)とともに,甲第17号証は平成21年10月27日付け証拠方法の申出書とともに,甲第18号証ないし甲第30号証は平成22年5月20日付け上申書とともに,それぞれ提出されたものである。

2.被請求人の主張
被請求人は,明細書の訂正を請求するとともに,答弁書において,「本件請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めており,平成21年10月23日付けの口頭審理陳述要領書(1)(2),平成22年2月15日付けの訂正審判請求書,同日付けの訂正審判手続補正書及び平成22年5月20日付けの意見書も併せると,被請求人の主張は,概略次のとおりである。

(1)請求項1ないし3の訂正はいずれも,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2)請求項1ないし請求項3に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されており,特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではない。

(3)訂正後の請求項1ないし請求項3に係る発明は,甲第1号証から甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく,独立して特許を受けることができるものである。

そして,被請求人は,上記(1)に関して下記(4)を主張し,上記(2)に関して下記(5)及び(6)を主張し,上記(3)に関して下記(7)ないし(10)を主張している。

(4)訂正後の請求項1に係る発明が備える構成要件「前記カバー体の一端部には,前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部と,カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部とが設けられ,」における「端面部」は,カバー体が当然に備える上下ヒンジ部側の端部の構成を明確にして,かつカバー体の上下ヒンジ部との関連構成を明瞭化しており,ケースの厚さを従来ケースより半減しても,上下ヒンジ部の機能,強度が低下しないものであり,訂正前の請求項1が備える構成要件と同質の技術的意義を有する。

(5)請求項1における「前記保持板の径小及び径大のスペーサ台の隆起高さは前記保持板の上面から1mm以下であり,かつ前記保持板とカバー体とを閉じた状態におけるケースの厚みが略5.2mmである」という発明特定事項は,発明の詳細な説明の段落0010,0015及び0016等の記載,記録媒体用ディスクの規格の厚さ及び板材の一般的な肉厚等によって明確に認識し得るものであり,「ケースの厚みが略5.2mm」という数値限定も限界的意義のあるものである。

(6)ボス部に径方向の分断部及び複数の操作片を有し,沈み込み作用と縮径作用とが可能になっていても,ボス部がリング形状の径小のスペーサ台の径内側に位置し,保持板の上面に隆起形成された径小のスペーサ台に囲まれているので,十分な保形強度を確保でき,「ケースの厚みが略5.2mm」を実施可能にする。

(7)甲第1号証の突起1aは,ディスクの内周近傍に当接する台座及びその中心穴に圧入される中央部の係合突起部を有するが,台座は係合突起部の基礎部分になっていて,係合突起部を囲むように隆起して形成されているものではない。

(8)甲第8号証のボス部5は,ディスクを嵌脱するときに,沈み込み作用と縮径作用が可能になっているが,収納ケースを構成する保持板自体に形成されているものではない。また,補強リブ11の近傍から中央へ延びる当接片8は,各支持片7と同じく,下方へ弾性変形可能であり,当接片8の先端の当接部8Aは,ディスク2を取り外すときにディスク2を支持する不動の台とはなり難い。さらに,コンパクトディスク2の下方隙間とホルダ本体1の外部とはスリット6A,6Bで連通しており,スリット6A,6Bからコンパクトディスク2の記憶領域へ塵埃が侵入するのを防止していない。

(9)「リング形状の径小のスペーサ台の径内側において,各分断部間に指掛け可能であって記録媒体用ディスクを嵌脱するときに沈み込み作用と縮径作用とが可能な複数の操作片を形成している」という構成によれば,リング形状の径小のスペーサ台の径内側で沈み込み作用と縮径作用とを行う変形を生じさせることができ,その変形部分の周囲で補強ができ,保持板自体の底から操作片を形成することにより,変形に十分なストロークを与えることが可能になり,分断部の端部から操作片の上端までの距離を長くできることにより,分断部間の僅かな動きでディスクを嵌脱することができ,変形量を少なくできるので,破損を減少できる。また,スペーサ台でディスクの移動を止めて嵌脱を確実に行わせ,ボス部を取り囲む径小のスペーサ台がディスクと当接することにより,記憶領域への塵埃の侵入を防止できる。

(10)訂正後の請求項1?3に係る発明のカバー体は,カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部を設けることにより,平板部分の耐久性を確保し,その上で,この端面部の上下端部をカバー体の上下ヒンジ部とそれぞれ正面視鉤型に繋げることにより,更なる耐久性の確保と,上下ヒンジ部の耐久性の向上を図っている。そして,端面部の存在がカバー体の開放動作の障害とならないよう,カバー体の上下ヒンジ部を保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置させている。これらの構成については,甲第1号証,甲第4号証,甲第5号証,甲第12号証,甲第16号証等に記載されていない。

第3 訂正について
1.訂正の内容
特許法第134条の3第5項の規定に基づき平成22年3月29日になされた訂正請求(以下,「本件訂正」という)は,特許第4143206号の特許時の明細書(以下,「本件明細書」という)を,平成22年2月15日付け訂正審判請求書に添付した訂正明細書(以下,単に「訂正明細書」という)のとおりに訂正しようとするものであり,以下の訂正事項を含む。なお,平成21年5月8日付けでなされた訂正請求は,特許法第134条の2第4項の規定に基づき,取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項a
本件明細書の特許請求の範囲の請求項1に
「記録媒体用ディスクの記録面側を覆う樹脂製の保持板を有し,前記保持板に,記録媒体用ディスクの中央孔に対して着脱自在に嵌まるボス部が設けられていると共に,該保持板の一端部には上下ヒンジ部を介して樹脂製のカバー体が回動自在に枢支されている記録媒体用ディスクの収納ケースであって,前記保持板のディスクに対面する上面には,前記ボス部を囲む径小のスペーサ台と,この径小のスペーサ台の外側を囲む径大のスペーサ台とが隆起して形成され,前記径小のスペーサ台と径大のスペーサ台とが記録媒体用ディスクの記憶領域を除く部分に当接可能になっており,前記保持板の径小及び径大のスペーサ台の隆起高さは前記保持板の上面から1mm以下であり,かつ前記保持板とカバー体とを閉じた状態におけるケースの厚みが略5.2mmであることを特徴とする記録媒体用ディスクの収納ケース。」
とあるのを次のとおりにする訂正(アンダーラインは訂正審判の請求人による)。
「記録媒体用ディスクの記録面側を覆う樹脂製の保持板を有し,前記保持板に,記録媒体用ディスクの中央孔に対して着脱自在に嵌まるボス部が設けられていると共に,該保持板の一端部には上下ヒンジ部を介して樹脂製のカバー体が回動自在に枢支されている記録媒体用ディスクの収納ケースであって,前記保持板のディスクに対面する上面には,前記ボス部を囲む径小のスペーサ台と,この径小のスペーサ台の外側を囲む径大のスペーサ台とが隆起して形成され,前記径小のスペーサ台と径大のスペーサ台とが記録媒体用ディスクの記憶領域を除く部分に当接可能になっており,前記保持板の径小及び径大のスペーサ台の隆起高さは前記保持板の上面から1mm以下であり,かつ前記保持板とカバー体とを閉じた状態におけるケースの厚みが略5.2mmであり,前記カバー体の一端部には,前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部と,カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部とが設けられ,前記カバー体の上下ヒンジ部は保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置していて,前記カバー体の上ヒンジ部は保持板の上ヒンジ部に下側から対面しかつ前記カバー体の下ヒンジ部は保持板の下ヒンジ部に上側から対面しており,かつ前記カバー体の上下ヒンジ部は前記端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されていることを特徴とする記録媒体用ディスクの収納ケース。」

(2)訂正事項b
本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】に「【課題を解決するための手段】・・・ることである。」とあるのを次のとおりにする訂正(アンダーラインは訂正審判の請求人による)。
「【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決する本発明の技術手段は,第1に,記録媒体用ディスクの記録面側を覆う樹脂製の保持板を有し,前記保持板に,記録媒体用ディスクの中央孔に対して着脱自在に嵌まるボス部が設けられていると共に,該保持板の一端部には上下ヒンジ部を介して樹脂製のカバー体が回動自在に枢支されている記録媒体用ディスクの収納ケースであって,前記保持板のディスクに対面する上面には,前記ボス部を囲む径小のスペーサ台と,この径小のスペーサ台の外側を囲む径大のスペーサ台とが隆起して形成され,前記径小のスペーサ台と径大のスペーサ台とが記録媒体用ディスクの記憶領域を除く部分に当接可能になっており,前記保持板の径小及び径大のスペーサ台の隆起高さは前記保持板の上面から1mm以下であり,前記保持板とカバー体とを閉じた状態におけるケースの厚みが略5.2mmであり,前記カバー体の一端部には,前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部と,カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部とが設けられ,前記カバー体の上下ヒンジ部は保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置していて,前記カバー体の上ヒンジ部は保持板の上ヒンジ部に下側から対面しかつ前記カバー体の下ヒンジ部は保持板の下ヒンジ部に上側から対面しており,かつ前記カバー体の上下ヒンジ部は前記端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されていることである。」

(3)訂正事項c
本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0023】,段落【0032】及び【符号の説明】中に「スペーサ台部」とあるのを「スペーサ台」とする訂正。

訂正事項aは,請求項1に「前記カバー体の一端部には,前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部と,カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部とが設けられ,前記カバー体の上下ヒンジ部は保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置していて,前記カバー体の上ヒンジ部は保持板の上ヒンジ部に下側から対面しかつ前記カバー体の下ヒンジ部は保持板の下ヒンジ部に上側から対面しており,かつ前記カバー体の上下ヒンジ部は前記端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されている」との発明特定事項を追加するものである。請求項2及び請求項3は請求項1を引用するから,訂正事項aは,請求項2及び請求項3についても,実質的に上記と同じ内容の訂正をすることを含む。
そこで,以下,訂正前の請求項1ないし請求項3に係る発明を「本件発明1」ないし「本件発明3」といい,訂正後の請求項1ないし請求項3に係る発明を「訂正発明1」ないし「訂正発明3」という。また,特許時の明細書及び図面を「本件明細書等」という。

2.訂正拒絶理由通知
当審で通知した訂正拒絶理由の概要は,以下のとおりである。

訂正発明1は,「カバー体の一端部」に「カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部」を備えるところ,訂正明細書には,この「端面部」について,次のように記載されている。
「【0014】図9に示すように,この保持板2と前記カバー体3とを,互いのヒンジ部2a,3aで揺動させて閉じた状態にしたとき,カバー体3におけるヒンジ部3a寄りの端部は,保持板2におけるヒンジ部2a寄りの端部よりも外方へ突出するようになっており,この突出部分には断面鉤形に立ち上がる端面部30が設けられている。この端面部30は,この収納ケース1をケースラック(図示略)等へ収納した場合にあって,個別に引き出すときの指掛け部として便利に活用できるものとなっている。また,この端面部30には,その内側又は外側にラベルシール(図示略)等を貼り付けるようにして,インデックスとして使用することもできる。」
すなわち,訂正明細書によれば,「カバー体の一端部」に「カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部」を設けることの技術的意義は,収納ケースをケースラック等から引き出すときの指掛け部として活用できるようにし,また,ラベルシール等を貼り付けることができるようにすることである。
一方,本件発明1が備える構成要件がもつ技術的意義に関係すると考えられる記載箇所を本件明細書から抽出すると,以下のとおりである。
「本実施形態において収納ケース1は,保持板2とカバー体3との2枚構成になっていることと,中央固定部の形状を図3に示す形状としたこととがあいまって,全体厚を極めて薄く形成できるものとなっている。すなわち,従来のこの種,収納ケースの多くでは,一対のカバー体と,その中に入れる保持板とを有した3枚構成であったため,その全体厚は,10.4mm前後となっていたが,本実施形態の場合は,その半分の5.2mm程度に抑えることに成功している。」(段落【0015】)
「保持板において,記録媒体用ディスクにおける記録面側の記録領域を除く部分,例えばディスク外周寄りや中心寄り等に対して当接可能となるスペーサ台部を設けておけば,ボス部に対する押込み操作力が記録媒体用ディスクに伝わったときに,記録媒体用ディスクではこの操作力を安定して受けることができるものとなる。」(段落【0032】)
「記録媒体用ディスクにおける記録面側において,その記録領域が保持板に直接的に接触するのを防止できるため,傷から保護できる」(段落【0033】)
「【発明の効果】本発明によれば,収納ケースは,保持板とカバー体の二部材からなり,従来の三部材のものに比べ厚みが薄くなるので,保管場所をとらない。」(段落【0036】)
したがって,本件訂正により追加された構成要件である,「カバー体の一端部」に「カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部」を設けることの技術的意義は,本件発明1が備える構成要件がもつ技術的意義とは何ら関係がないものである。
よって,本件訂正は,実質上特許請求の範囲を変更するものというべきであるから,特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合しない。

3.訂正の適否についての検討
(1)目的要件
訂正事項aは,請求項1に「前記カバー体の一端部には,前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部と,カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部とが設けられ,前記カバー体の上下ヒンジ部は保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置していて,前記カバー体の上ヒンジ部は保持板の上ヒンジ部に下側から対面しかつ前記カバー体の下ヒンジ部は保持板の下ヒンジ部に上側から対面しており,かつ前記カバー体の上下ヒンジ部は前記端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されている」との発明特定事項を追加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項bは,請求項1の訂正に伴い,発明の詳細な説明中の対応する箇所を整合させるものであり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
訂正事項cは,誤記の訂正を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の有無
本件明細書等には,以下の事項が記載されている。
(イ)「本発明に係る収納ケース1は,図4及び図5に示すように,保持板2とカバー体3とが,それぞれの一端側に設けられたヒンジ部2a,3aを介して互いに揺動開閉自在に連結されたもので,」(段落【0008】)
(ロ)「図9に示すように,この保持板2と前記カバー体3とを,互いのヒンジ部2a,3aで揺動させて閉じた状態にしたとき,カバー体3におけるヒンジ部3a寄りの端部は,保持板2におけるヒンジ部2a寄りの端部よりも外方へ突出するようになっており,この突出部分には断面鉤形に立ち上がる端面部30が設けられている。」(段落【0014】)
(ハ)図5を参照すると,カバー体3の一対のヒンジ部3aは,端面部30の長手方向両端部から該長手方向と直角な向きに延びており,保持板2の一対のヒンジ部2aの内側に接するように配置されていることが看てとれる。
訂正事項aにおける「前記カバー体の一端部には,前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部と,カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部とが設けられ,」との発明特定事項は,上記記載事項(イ)及び(ロ)から明らかなように,本件明細書等に記載されていたものであり,訂正事項aにおける「前記カバー体の上下ヒンジ部は保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置していて,前記カバー体の上ヒンジ部は保持板の上ヒンジ部に下側から対面しかつ前記カバー体の下ヒンジ部は保持板の下ヒンジ部に上側から対面しており,前記カバー体の上下ヒンジ部は前記端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されている」との発明特定事項は,上記記載事項(ハ)から明らかなように,本件明細書等に記載されていたものといえる。
したがって,訂正事項aは,本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり,このことは訂正事項bについてもあてはまる。誤記の訂正を目的とした訂正事項cが本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
本件発明1は,「保持板の一端部には上下ヒンジ部を介して樹脂製のカバー体が回動自在に枢支されている」との要件を備えており,保持板とカバー体が上下一対のヒンジ部を介して相対回動自在に連結された,記録媒体用ディスクの収納ケースに係る発明である。訂正事項aにおける「前記カバー体の一端部には,前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部と,カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部とが設けられ,前記カバー体の上下ヒンジ部は保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置していて,前記カバー体の上ヒンジ部は保持板の上ヒンジ部に下側から対面しかつ前記カバー体の下ヒンジ部は保持板の下ヒンジ部に上側から対面しており,かつ前記カバー体の上下ヒンジ部は前記端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されている」との発明特定事項は,本件発明1における保持板とカバー体の上下ヒンジ部の構成を具体化したものといえる。
また,記録媒体用ディスクの収納ケースにおける保持板やカバー体にはある程度の強度をもたせる必要があることは自明な課題といえるところ,本件発明1は,保持板とカバー体とを閉じた状態におけるケースの厚みを略5.2mmとし,収納ケースの全体厚を薄くしようとするものであって,薄型化に伴う保持板やカバー体の強度の低下が懸念されるものであるから,ヒンジ部を含めたカバー体の構成について強度を配慮したものとすべきことは,本件発明1がもつ技術的意義との関連において理解し得る。カバー体の一端部に断面鉤形に立ち上がる端面部が設けられることや,カバー体の上下ヒンジ部が端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されることは,被請求人の主張も参酌すると,ヒンジ部を含めたカバー体の強度について配慮したものといえる。
訂正拒絶理由通知においては,訂正明細書に「この端面部30は,この収納ケース1をケースラック(図示略)等へ収納した場合にあって,個別に引き出すときの指掛け部として便利に活用できるものとなっている。また,この端面部30には,その内側又は外側にラベルシール(図示略)等を貼り付けるようにして,インデックスとして使用することもできる。」と記載されていることを理由に,「カバー体の一端部」に「カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部」を設けることの技術的意義は,収納ケースをケースラック等から引き出すときの指掛け部として活用できるようにし,また,ラベルシール等を貼り付けることができるようにすることであるとした上で,該技術的意義は,本件発明1が備える構成要件がもつ技術的意義とは何ら関係がないとしている。しかしながら,収納ケースをケースラック等から引き出すときの指掛け部として活用できることは,図9に示される好適な実施例において奏するに過ぎない作用・効果ということもでき,「カバー体の一端部」に「カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に・・・端面部」を設けることの技術的意義が上記のとおりであるとは限らないし,仮に,上記のとおりであるとしても,訂正事項aにより追加された発明特定事項は,全体としてみれば,本件発明1がもつ技術的意義との関連において理解し得るものである。
したがって,訂正事項aが実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであるとまではいえない。

4.訂正の許否の結論
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第134条の2第1項だたし書き第1号,第2号及び第3号に掲げる事項を目的とし,かつ同条第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。したがって,本件訂正を認めることとする。

第4 本件特許発明
訂正発明1ないし訂正発明3は,訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(請求項1については再掲)。
「【請求項1】記録媒体用ディスクの記録面側を覆う樹脂製の保持板を有し,前記保持板に,記録媒体用ディスクの中央孔に対して着脱自在に嵌まるボス部が設けられていると共に,該保持板の一端部には上下ヒンジ部を介して樹脂製のカバー体が回動自在に枢支されている記録媒体用ディスクの収納ケースであって,前記保持板のディスクに対面する上面には,前記ボス部を囲む径小のスペーサ台と,この径小のスペーサ台の外側を囲む径大のスペーサ台とが隆起して形成され,前記径小のスペーサ台と径大のスペーサ台とが記録媒体用ディスクの記憶領域を除く部分に当接可能になっており,前記保持板の径小及び径大のスペーサ台の隆起高さは前記保持板の上面から1mm以下であり,かつ前記保持板とカバー体とを閉じた状態におけるケースの厚みが略5.2mmであり,前記カバー体の一端部には,前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部と,カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部とが設けられ,前記カバー体の上下ヒンジ部は保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置していて,前記カバー体の上ヒンジ部は保持板の上ヒンジ部に下側から対面しかつ前記カバー体の下ヒンジ部は保持板の下ヒンジ部に上側から対面しており,かつ前記カバー体の上下ヒンジ部は前記端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されていることを特徴とする記録媒体用ディスクの収納ケース。
【請求項2】前記径小のスペーサ台の径内側において,前記ボス部に径方向の分断部を周方向に複数本形成して,各分断部間に指掛け可能であって記録媒体用ディスクを嵌脱するときに沈み込み作用と縮径作用とが可能な複数の操作片を形成していることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体用ディスクの収納ケース。
【請求項3】前記径小のスペーサ台の径内側において,前記ボス部は保持板のディスクに対面する上面から立ち上がっていて記録媒体用ディスクの中央孔が嵌りかつ径方向内方へ傾き可能な周方向複数の立ち上がり部を有し,前記保持板のボス部まわりには,前記各立ち上がり部の根元部両側に径方向外方へ延びる対の径方向切欠を設け,この対の径方向切欠間にボス部に近い部分が高くなるように傾斜して撓み可能なバネ部を形成していることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体用ディスクの収納ケース。」

第5 記載要件(特許法第36条第6項第1号)
1.訂正明細書の記載事項
訂正明細書の発明の詳細な説明には,以下の事項が記載されている。
(1)「【0004】
また,従来のケースは,一対のカバー体と保持板との3部材で構成されていたため,その厚みが約10mm以上あった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の収納ケースでは,その厚みが約10mm程度あり,厚いものであり,保管・収納に嵩張るものであった。
本発明は,上記事情に鑑みてなされたものであって,保管場所をとらないようにした,記録媒体用ディスクの収納ケースを提供することを目的とする。」
(2)「【0010】
なお,各スペーサ台6,7の隆起高さは,1mm以下でも十分である。本実施形態では0.7mm程度とした。」
(3)「【0015】
なお,上記のように,本実施形態において収納ケース1は,保持板2とカバー体3との2枚構成になっていることと,中央固定部の形状を図3に示す形状としたこととがあいまって,全体厚を極めて薄く形成できるものとなっている。すなわち,従来のこの種,収納ケースの多くでは,一対のカバー体と,その中に入れる保持板とを有した3枚構成であったため,その全体厚は,10.4mm前後となっていたが,本実施形態の場合は,その半分の5.2mm程度に抑えることに成功している。
【0016】
また,現在公知の2枚構成のCD・DVD等のケ-スも存在するが,現状では上記構成の収納ケ-ス(図3)に示す様な中央の固定部の形状を持つものは存在しないことから,従来の約半分である5.2mm程度の厚みのこの種のケ-スは存在しない。それゆえ,この種のケ-スの50%のスリム化というのは上記構成の収納ケ-スにより,実用的な形で実施することが可能になったのである。」

2.判断
上記記載事項(2)及び(3)から明らかなように,訂正明細書の発明の詳細な説明には,訂正発明1における「前記保持板の径小及び径大のスペーサ台の隆起高さは前記保持板の上面から1mm以下であり,かつ前記保持板とカバー体とを閉じた状態におけるケースの厚みが略5.2mmである」との特定事項が明確に記載されている。
次に,上記記載事項(3)によれば,ケースの厚みを5.2mm程度に薄くすることは,「保持板2とカバー体3との2枚構成になっていることと,中央固定部の形状を図3に示す形状としたこととがあいまって」可能になったとされているが,訂正発明1が,中央固定部の形状が特定されていないものであるからといって,訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていない発明であるとまではいえない。「中央固定部の形状を図3に示す形状とした」との記載は,図3に示された形状と同一の形状とすることを意味するとは限らず,ボス部と径小のスペーサ台との平面視上の位置関係について,「前記保持板のディスクに対面する上面には,前記ボス部を囲む径小のスペーサ台・・・が隆起して形成され,」との要件を備える訂正発明1は,図3に示される構成と少なからず関わりをもつものといえる。そもそも,中央固定部が特定の構造のものでなければ,ケースの厚みを5.2mm程度に薄くすることができないとすることに合理性はなく,「保持板2とカバー体3との2枚構成になっていることと,中央固定部の形状を図3に示す形状としたこととがあいまって」との記載を文言とおりに厳格に解釈することは適当でない。
また,上記記載事項(1)及び(3)によれば,訂正発明1は,厚みが約10mmもあった従来の収納ケースに対して,その半分の5.2mm程度としたものであることが理解される。単に厚みを薄くするというのでは,発明を特定したことにならないところ,訂正発明1では,具体的に「略5.2mm」という数値をもって発明を特定したものといえる。この「略5.2mm」という数値が選択された理由やその限界的意味が訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていないことは,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されていないとする理由にならない。
訂正発明1における他の特定事項についても,訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。なお,訂正明細書の発明の詳細な説明において,適宜図面が参照されているから,図面に記載された事項も訂正明細書の発明の詳細な説明に記載された事項と同視できる。
したがって,訂正発明1は,発明の詳細な説明に記載されていない発明を含むものではなく,特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではない。

第6 進歩性(特許法第29条第2項)
1.刊行物及び刊行物に記載された発明
(1)甲第1号証
請求人が甲第2号証として提出した,本願の原出願日よりも前に頒布された刊行物である,特開昭60-148485号公報には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1-a)「第1図は従来のコンパクトディスク収納ケースで,本体1と,その一端側に蝶番3を介して回転自在に取付けられた蓋2から構成されており,材質は共にプラスチックである。本体1の中央には,コンパクトディスクの中心穴に圧入されてディスクを保持するための突起1aがある。」(1頁左欄下から2行?同頁右下欄4行)
(1-b)「第2図は従来のコンパクトディスク収納ケース本体1にコンパクトディスク4を収納した時の側面図である。この収納時において,コンパクトディスク4の信号記録面とコンパクトディスク収納ケース本体1の上面との間は,約1mmぐらいの隙間があり,コンパクトディスク収納静止状態でコンパクトディスク4の信号記録面とコンパクトディスク収納ケース本体1の上面と接触してコンパクトディスク4の信号記録面に傷がつくことはない。」(1頁右下欄8?17行)
(1-c)「第3図に,本発明の一実施例を示す。第3図において,第1図,第2図と同一機能をもつ部分には同一符号を付して説明を省略する。1cは収納ケース1の上面に設けた凸部であり,コンパクトディスクの外周近傍の無信号部に当接する位置に配設している。」(2頁左上欄下から2行?同頁右上欄4行)
(1-d)第1図ないし第3図によれば,突起1aは,本体1の中央に設けられた円形の台座部分と,該台座部分の上面から上方に突出して形成され,円形に並んで配置される多数の突起部分とからなることが読み取れる。
(1-e)第3図によれば,凸部1cは,収納ケース本体1の中央から離れた位置に左右対称に二つ設けられ,円形リングの一部の形状を呈することが読み取れる。

ここで,コンパクトディスク収納ケース本体1にコンパクトディスク4を収納したとき,記載事項(1-d)の台座部分の上面が,コンパクトディスク4の中心穴近傍の無信号部に当接し,同じく記載事項(1-d)の突起部分がコンパクトディスク4の中心穴に嵌まると考えられる。また,記載事項(1-b)における「この収納時において,コンパクトディスク4の信号記録面とコンパクトディスク収納ケース本体1の上面との間は,約1mmぐらいの隙間があり,」との記載及び第2図の記載から,台座部分の高さと凸部1cの高さはともに約1mmであると解される。さらに,蝶番3については,第1図,第3図及び第4図では,手前側のものしか示されていないが,反対側にも蝶番3が存在することは明らかである。
以上のことを総合すると,甲第1号証には,次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「収納ケース本体1と,その一端側に一対の蝶番3を介して回転自在に取付けられた蓋2から構成されるディスク収納ケースであって,収納ケース本体1及び蓋2の材質はプラスチックであり,収納ケース本体1の中央には,高さが約1mmの円形の台座部分と,該台座部分の上面から上方に突出して形成され,円形に並んで配置される多数の突起部分とからなる突起1aが設けられる一方,収納ケース本体1の中央から離れた位置には,高さが約1mmであって円形リングの一部の形状を呈した二つの凸部1cが設けられ,収納ケース本体1にコンパクトディスク4を収納したとき,前記複数の突起部分がコンパクトディスク4の中心穴に嵌まり,前記台座部分の上面がコンパクトディスク4の中心穴近傍の無信号部に当接し,凸部1cの上面がコンパクトディスク4の外周近傍の無信号部に当接するようにしたディスク収納ケース。」

(2)甲第2号証
請求人が甲第2号証として提出した,本願の原出願日よりも前に頒布された刊行物である,米国特許第3949872号公報には,スペーサ台に関し,図面とともに次の事項が記載されている(和訳は当審による)。
(2-a)「It is essential that the grooved area G of the record be protected from all contact and all friction. According to the present invention, this result is obtained by arranging, both in the body 1 of the case 20 and the lid 2, annular bearing zones 13 and 14 in the body 1 of the case 20, and 15 and 16 in the lid2, these zones being the only ones in which the record contacts the case.」(第2欄64行?第3欄2行;記録体の溝領域Gは,あらゆる接触及び摩擦から保護されていることが重要である。この発明によれば,この結果は,ケース20の本体1と蓋2において,ケース20の本体1側の環状支持帯13及び14と,蓋2側の環状支持帯15及び16を組み合わせることによって達成され,これらの帯は,記録体がケースに接触する唯一の箇所である。)
(2-b)「Moreover, according to the present invention, a centering pin 10 is formed in the body 1 of the case 20. FIG.2 clearly shows that this pin 10 extends upward after engaging the center hole of record D to the wall of lid 2 which it supports at its center, thus resisting crushing of the case when several such cases are stacked.」(第2欄27?32行;さらに,この発明によれば,中心ピン10がケース20の本体1に形成される。第2図を参照すると,このピン10は,記録体Dの中心穴に係合した後,蓋2の壁面に達するまで上方に延び,蓋2をその中心において支持する。このことにより,複数のケースが積み重ねられたとき,ケースの破損を防ぐ。)
(2-c)FIG1?3によれば,「pin10」の周りに,径小の「annular bearing zones 14」と径大の「annular bearing zones 13」が形成されており,かつそれらが「record D」に当接していることが読み取れる。

(3)甲第3号証
請求人が甲第3号証として提出した,本願の原出願日よりも前に頒布された刊行物である,実願昭59-54529号(実開昭60-167795号)のマイクロフィルムには,スペーサ台及びケースの厚みに関し,図面とともに次の事項が記載されている。
(3-a)「本体(3)は,第4図に示すように一辺がデイスク(1)の直径より僅かに大きい値をもつほぼ方形をなす板体(6)を有し,その一面上即ち蓋体(4)との対接面上においてそのほぼ中央にはデイスク(1)の中心孔(図示せず)と係合する第1の係合部(7)が形成されている。」(4頁15?20行)
(3-b)「上述した板体(6)の一面上において,第1の係合部(7)のまわりの部分と,第1の係合部(7)の中心を中心として所定の半径をもつ円周上とにおいて,夫々デイスク(1)の保持面(8a)及び(8b)が環状に形成されている。これらの保持面(8a)及び(8b)はコンパクトデイスク(1)の中央部分の無記録部分と,外周部分の無記録部分とに対接するように選ばれている。」(5頁8?15行)
(3-c)「又この本体(3)(但し蓋体取付板(11)を除く)の全体の厚味は4.5mm程度に選ぶことができる。・・・厚さ1mm程度の方形状の板体(18)が設けられ,」(7頁14?17行)

(4)甲第4号証
請求人が甲第4号証として提出した,本願の原出願日よりも前に頒布された刊行物である,特開平10-35761号公報には,ケース基板部の厚みに関し,図面とともに次の事項が記載されている。
(4-a)「なお,先端壁部40の高さhは,強度向上のためには高い方がよく,前述のように1mm以上で,基板部21の厚さt以上であることが好ましい。一方,冊子26の組み込みの妨げにならないためには低い方がよく,前述のように1.5mm 以下であることが好ましい。」(段落【0016】)

(5)甲第5号証
請求人が甲第5号証として提出した,本願の原出願日よりも前に頒布された刊行物である,実用新案第3011884号公報には,ケースの厚みに関し,図面とともに次の事項が記載されている。
(5-a)「一般に,この種のCDの収納に適用される汎用収納ケースは,従来からよく知られている如く,表面にCDを嵌装して保持する収納凹部を形成した収納本体,及び該収納本体を嵌着したケース本体と,該ケース本体の上下両端面の一側部側に開閉自在に枢支されたケース蓋体とで構成されている。また,FD用収納ケースとしては,前記CD用収納ケースにおいて前記収納本体を具備しない構成のものが従来からよく知られている。通常の場合には,前記ケース本体における蓋体枢支側の一側面にあって,収納するCDやFDの記録内容等を表わすためのタイトル標記がなされている。」(段落【0002】)
(5-b)「上記のように構成される従来のCD,FDの汎用収納ケースにおいては,ケース本体の蓋体枢支側での一側面の幅寸法が,約6mm程度で比較的狭くされている」(段落【0003】)

(6)甲第6号証
請求人が甲第6号証として提出した,本願の原出願日よりも前に頒布された刊行物である,特開平8-276975号公報には,ケースの厚みに関し,図面とともに次の事項が記載されている。
(6-a)「そこで,本発明は,上記した問題点を解決するべく,CDメディアを収納し保管するケ-スとしてのCDメディア収納容器の厚みを一層薄くするとともに,CDメディア収納容器の構造を簡易なものとすることを第1の課題とする。」(段落【0008】)
(6-b)「従って,CDメディア収納容器の厚さは,たとえ蓋部131を蓋着した状態であっても,「収納面121の厚みの1mm」+「CDメディア101のの厚みの1.5mm」+「蓋面131の厚みの1mm」=2.5mmに過ぎず,殆どCDメディア101の厚みと変わることのない薄さとすることが可能である。」(段落【0029】)
なお,上記記載事項(6-b)中の「2.5mm」は「3.5mm」の誤記と思われる。

(7)甲第7号証
請求人が甲第7号証として提出した,本願の原出願日よりも前に頒布された刊行物である,実用新案第3038504号公報には,ケースの厚みに関し,図面とともに次の事項が記載されている。
(7-a)「ディスク体を載置したトレー部1にカバー部2を重ねた状態では,包装封筒本体は幅12cm×長さ14.5cm(中央部3の0.5cm含む)×厚み4.5mm(凹部10分の厚み0.5mm含む),重さ30gなので,」(段落【0021】)

(8)甲第8号証
請求人が甲第8号証として提出した,本願の原出願日よりも前に頒布された刊行物である,特開平5-51082号公報には,図面とともに次の事項が記載されている。
(8-a)「凹部3の底板3aは中心に行くにしたがい緩やかな上り勾配に傾斜する傘形状に形成され,」(段落【0006】)
(8-b)「ボス部5は,その中心からほぼ120度の間隔をおいて外方に伸びるスリット6Aにより三つに等分割され,更に,各スリット6Aの端部には底板3a上で二股状に外方に伸びる二つのスリット6Bが連設されている。これらスリット6A,6Bによりボス部5を含む三つの支持片7と,三つの当接片8とが交互に放射状に形成され,この実施例では当接片8の先端が当接部8Aに相当している。各支持片7はボス部5の上面に加えられる押圧力により下方へ弾性変形可能で,下方への弾性変形時,ボス部5の径がコンパクトディスク2の中央孔2aから抜ける大きさの径に縮小されるように構成されている。」(段落【0007】)
(8-c)「コンパクトディスク2をホルダ本体1から取り外す場合について述べる。この場合は,図7に示す状態にあるボス部5の上面を指先により下方に押圧する。すると,各支持片7が底板3aとの連接基部7Aを支点にして下方へ弾性変形するから,ボス部5が縮径され,このとき,コンパクトディスク2の中央孔2aの周辺に,当接片8の先端の当接部8Aが当たるので,コンパクトディスク2が下方へ移動することができず,従って,ボス部5の上端角部5aが中央孔2aの縁部から外れ,中央孔2aを通して図8に示すようにコンパクトディスク2の下面側へ抜ける。」(段落【0009】)
(8-d)「コンパクトディスク2をホルダ本体1内に収容保持する場合は,図3に示すようにコンパクトディスク2の中央孔2aをボス部5に合わせてホルダ本体1上に載せ,中央孔2aの周辺部を指先で下方へ押圧する。これにより,中央孔2aの周辺部に押されてボス部5が縮径し,ボス部5の上端部が図7に示すように中央孔2aを通して上方へ突出し,図7に示すように,その外周角部5aが中央孔2aの内周縁に係止することで抜け止めが行なわれ同時に,支持片7の弾性力によって中央孔2aの周辺部を底板3aの中央部分に押し付ける。」(段落【0011】)

2.対比・判断
(1)訂正発明1について
訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「コンパクトディスク4」,「収納ケース本体1」,「突起部分」,「一対の蝶番3」,「プラスチック」,「蓋2」,「凸部1c」及び「無信号部」は,それぞれ訂正発明1の「記録媒体用ディスク」,「保持板」,「ボス部」,「上下ヒンジ部」,「樹脂」,「カバー体」,「径大のスペーサ台」及び「記録媒体用ディスクの記憶領域を除く部分」に相当し,甲1発明の「台座部分」は,コンパクトディスク4の無信号部に当接し,凸部1cよりも中央寄りに設けられて凸部1cよりも径小であるから,訂正発明1の「径小のスペーサ台」に相当する。
甲1発明は,収納ケース本体1の一端側に一対の蝶番3を介して蓋2が回転自在に取付けられるものであるから,訂正発明1における「前記カバー体の一端部には,前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部」「が設けられ」との要件を備える。
また,訂正発明1における「1mm以下」は,1mmを含むものである。

したがって,訂正発明1と甲1発明は,訂正発明1の表記にしたがえば,
「記録媒体用ディスクの記録面側を覆う樹脂製の保持板を有し,前記保持板に,記録媒体用ディスクの中央孔に対して着脱自在に嵌まるボス部が設けられていると共に,該保持板の一端部には上下ヒンジ部を介して樹脂製のカバー体が回動自在に枢支されている記録媒体用ディスクの収納ケースであって,前記保持板のディスクに対面する上面には,径小のスペーサ台と,この径小のスペーサ台の外側を囲む径大のスペーサ台とが隆起して形成され,前記径小のスペーサ台と径大のスペーサ台とが記録媒体用ディスクの記憶領域を除く部分に当接可能になっており,前記保持板の径小及び径大のスペーサ台の隆起高さは前記保持板の上面から1mm以下であり,前記カバー体の一端部には,前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部が設けられている,記録媒体用ディスクの収納ケース。」である点で一致し,次の点で相違する。
[相違点1]
訂正発明1は,径小のスペーサ台がボス部を囲むのに対して,甲1発明は,突起部分が台座部分の上面から上方に突出して形成されるものであるため,台座部分は突起部分を囲むものではない点。
[相違点2]
訂正発明1では,保持板とカバー体とを閉じた状態におけるケースの厚みが略5.2mmであるのに対して,甲1発明では,収納ケース本体1と蓋2を閉じた状態におけるケースの厚みは特定されていない点。
[相違点3]
訂正発明1は,カバー体の一端部には,カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部が設けられ,カバー体の上下ヒンジ部は保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置していて,カバー体の上ヒンジ部は保持板の上ヒンジ部に下側から対面しかつカバー体の下ヒンジ部は保持板の下ヒンジ部に上側から対面しており,かつカバー体の上下ヒンジ部は前記端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されているものであるのに対して,甲1発明は,そのような構成を備えない点。
相違点1について検討する。甲第2号証には,ケース20の本体1に記録体Dの中心穴に係合する中心ピン10を形成し,その周りに記録体Dに接触する径小の環状支持帯14と径大の環状支持帯13を形成することが記載されている(記載事項(2-a)?(2-c)参照)。この「中心ピン10」及び「環状支持帯14」は,訂正発明1の「ボス部」及び「径小のスペーサ台」に相当するものであり,したがって,甲第2号証には,ディスク収納ケースの保持板にディスクの中心穴に嵌まるボス部を設けるとともに,該ボス部を囲み,かつ,ディスクの記憶領域を除く部分に当接する径小のスペーサ台を設けることが記載されているといえる。甲1発明の突起部分は,コンパクトディスク4の中心穴に嵌まって,コンパクトディスク4が径方向に移動しないように支持するものであり,同じく甲1発明の台座部分は,コンパクトディスク4の中心穴近傍の無信号部に当接してコンパクトディスク4を厚さ方向に支持するものであるところ,この突起部分と台座部分に代えて,これと同等な作用を奏する甲第2号証の中心ピン10及び環状支持帯14を用いること,すなわち相違点1は,当業者が容易に想到し得たというべきである。
相違点2について検討する。甲第6号証には,CDメディアと容器との間に厚み方向の隙間を設けない場合,CDメディア収容容器の厚みを3.5mmまで薄くすることが可能であることが記載されているといえる(記載事項(6-a)及び(6-b)参照)。この甲第6号証における「3.5mm」というのは,「収納面121」すなわち保持板の厚みと,「CDメディア101」すなわちディスクの厚みと,「蓋面131」すなわちカバー体の厚みを合わせたものであるから,甲1発明について,これら個々の部材の厚みをそのまま適用すれば,収納ケース本体1と蓋2を閉じた状態における収納ケース全体の厚みは,上記3.5mmに,突起1aの台座部分の厚みと,コンパクトディスク4と蓋2との間の隙間とを加えたものとなるところ,この値を略5.2mmに設定すること,すなわち相違点2は,当業者が適宜なし得た程度の事項に過ぎないというべきである。甲第5号証にも,全体の厚さが6mm程度のCD,FDの収納ケースが記載されており(記載事項(5-a)参照),全体の厚さを略5.2mmとすることが格別に困難な数値であったということはできない。
相違点3について検討する。相違点3に係る訂正発明1の構成要件,すなわち,カバー体の一端部には,カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部が設けられ,カバー体の上下ヒンジ部は保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置していて,カバー体の上ヒンジ部は保持板の上ヒンジ部に下側から対面しかつカバー体の下ヒンジ部は保持板の下ヒンジ部に上側から対面しており,かつカバー体の上下ヒンジ部は前記端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されている,記録媒体用ディスクの収納ケースは,甲第2号証ないし甲第8号証のいずれにも記載されていない。したがって,相違点3について当業者が容易に想到し得たということはできない。
そして,相違点3について当業者が容易に想到し得たということができないのであるから,訂正発明1は,甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)訂正発明2について
訂正発明2と甲1発明とを対比すると,両者は,前記相違点1ないし相違点3で相違するほか,以下の点で相違する。
[相違点4]
訂正発明2は,径小のスペーサ台の径内側において,ボス部に径方向の分断部を周方向に複数本形成して,各分断部間に指掛け可能であって記録媒体用ディスクを嵌脱するときに沈み込み作用と縮径作用とが可能な複数の操作片を形成しているのに対して,甲1発明は,そのような構成を備えていない点。

前述のとおり,相違点3について当業者が容易に想到し得たということはできず,したがって,訂正発明2についても,甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえないのであるが,念のため,上記相違点4についても検討する。
訂正発明2は,径小のスペーサ台の径内側に設けられ,かつ,該スペーサ台によって囲まれるボス部に,沈み込み作用と縮径作用とが可能な複数の操作片が形成されるものであり,径小のスペーサ台とボス部のそれぞれが保持板に形成されると解するのが相当である。そして,訂正発明2は,この構成により,沈み込み作用と縮径作用を行うのに十分なストロークを与えることができ,径小のスペーサ台でディスクの移動を止めて嵌脱を確実に行わせることができるものである。
甲第8号証には,ボス部5がスリット6Aにより扇状に三つに等分割され,スリット6Aに続くスリット6Bにより,ボス部5を含む三つの支持片7と,三つの当接片8とが交互に放射状に形成され,支持片7がボス部5の上面に加えられる押圧力により下方へ弾性変形したとき,ボス部5の径がコンパクトディスク2の中央孔2aから抜ける大きさの径に縮小されるように構成されたコンパクトディスク用ホルダが記載されている(記載事項(8-a)?(8-c)参照)。この「スリット6A」及び「ボス部5の上面」は,訂正発明2の「径方向の分断部」及び「操作片」に相当するから,相違点4に係る訂正発明2の構成のうち,「ボス部に径方向の分断部を周方向に複数本形成して,各分断部間に指掛け可能であって記録媒体用ディスクを嵌脱するときに沈み込み作用と縮径作用とが可能な複数の操作片を形成している」点は,甲第8号証に記載されているといえる。しかし,そのような構成のボス部が,径小のスペーサ台の径内側に設けられ,かつ,該スペーサ台によって囲まれることについては,甲第8号証に記載されていない。
したがって,相違点4は,甲第8号証を参酌することによって当業者が容易に想到し得たということはできない。また,甲第2号証ないし甲第7号証のいずれにも,相違点4に係る構成は記載されていない。
以上のとおりであるから,相違点3及び相違点4について容易想到とはいえず,訂正発明2は,甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)訂正発明3について
訂正発明3と甲1発明とを対比すると,両者は,前記相違点1ないし相違点3で相違するほか,以下の点で相違する。
[相違点5]
訂正発明3は,径小のスペーサ台の径内側において,ボス部は保持板のディスクに対面する上面から立ち上がっていて記録媒体用ディスクの中央孔が嵌りかつ径方向内方へ傾き可能な周方向複数の立ち上がり部を有し,保持板のボス部まわりには,前記各立ち上がり部の根元部両側に径方向外方へ延びる対の径方向切欠を設け,この対の径方向切欠間にボス部に近い部分が高くなるように傾斜して撓み可能なバネ部を形成しているのに対して,甲1発明は,そのような構成を備えていない点。

前述のとおり,相違点3について当業者が容易に想到し得たということはできず,したがって,訂正発明3についても,甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえないのであるが,念のため,上記相違点5についても検討する。
訂正発明3は,径小のスペーサ台の径内側に設けられ,かつ,該スペーサ台によって囲まれるボス部が,径方向内方へ傾き可能な周方向複数の立ち上がり部を有するものであり,また,保持板のボス部まわりに,各立ち上がり部の根元部両側に径方向外方へ延びる対の径方向切欠を設け,この対の径方向切欠間にボス部に近い部分が高くなるように傾斜して撓み可能なバネ部を形成しているものである。ここで,本件特許明細書の段落【0032】に,「保持板において,記録媒体用ディスクにおける記録面側の記録領域を除く部分,例えばディスク外周寄りや中心寄り等に対して当接可能となるスペーサ台部を設けておけば,ボス部に対する押込み操作力が記録媒体用ディスクに伝わったときに,記録媒体用ディスクではこの操作力を安定して受けることができるものとなる。」とある記載を参照しても明らかであるように,訂正発明3の径小のスペーサ台は,記録媒体用ディスクを安定して受け止めるものであるから,バネ部の上に形成されるものではなく,バネ部は,ボス部と同じく,径小のスペーサ台の径内側に設けられると解するのが相当である。そして,訂正発明3は,上記構成により,径小のスペーサ台でディスクの移動を止めて嵌脱を確実に行わせることができるものである。
甲第8号証の「スリット6B」及び「支持片7」は,訂正発明3の「径方向切欠」及び「バネ部」に相当し,甲第8号証のボス部5の外周部は,訂正発明3の「周方向複数の立ち上がり部」に相当するから,相違点4に係る訂正発明3の構成のうち,「ボス部は保持板のディスクに対面する上面から立ち上がっていて記録媒体用ディスクの中央孔が嵌りかつ径方向内方へ傾き可能な周方向複数の立ち上がり部を有し,前記保持板のボス部まわりには,前記各立ち上がり部の根元部両側に径方向外方へ延びる対の径方向切欠を設け,この対の径方向切欠間にボス部に近い部分が高くなるように傾斜して撓み可能なバネ部を形成している」点は,甲第8号証に記載されているといえる。しかし,そのような構成のボス部及びバネ部が,径小のスペーサ台の径内側に設けられ,かつ,該スペーサ台によって囲まれることについては,甲第8号証に記載されていない。
したがって,相違点5は,甲第8号証を参酌することによって当業者が容易に想到し得たということはできない。また,甲第2号証ないし甲第7号証のいずれにも,相違点5に係る構成は記載されていない。
以上のとおりであるから,相違点3及び相違点5について容易想到とはいえず,訂正発明3は,甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3.請求人の主張に対して
請求人は,甲第8号証に記載のコンパクトディスク用ホルダのボス部の構成を,甲第1号証に記載の径小及び径大のスペーサ台を備えたディスク収納ケースに適用することは,当業者が容易になし得る旨主張する。しかし,甲第8号証のボス部は,径小のスペーサ台の径内側に設けられ,かつ,該スペーサ台によって囲まれるものではなく,このボス部を甲第1号証のディスク収納ケースに適用しても,訂正発明2または訂正発明3のボス部の構成は得られない。
また,請求人は,ディスク収納ケースにおいて,独立したリング状であろうと,あるいはボス部との間に一段低くなった環状の部分が存在しないボス部と連続した形のリング状であろうと,ボス部を囲む径小のスペーサ台を有し,径小のスペーサ台の径内側において,ボス部に径方向の分断部を周方向に複数本形成して,各分断部間に指掛け可能であってディスクを嵌脱するときに沈み込み作用と縮径作用とが可能な複数の操作片を形成する技術(技術1)や,ディスク収納ケースにおいて,ボス部を囲む独立したリング状の径小のスペーサ台を設ける技術(技術2)は,周知の技術であるとして,甲第13?15号証及び甲第18?30号証を挙げている。しかし,これらの証拠方法の中には,例えば,本件発明2が備える「径小のスペーサ台の径内側において,ボス部に径方向の分断部を周方向に複数本形成して,各分断部間に指掛け可能であって記録媒体用ディスクを嵌脱するときに沈み込み作用と縮径作用とが可能な複数の操作片を形成している」との要件に関し,進歩性の判断材料として,甲第8号証よりもむしろ適当と思われるものがあり(甲第14号証など),甲第13?15号証及び甲第18?30号証は,「請求項1?3に係る発明は,甲第1?8号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである」とする審判請求の理由の枠組みの中で,単に周知技術を示すために提出された証拠方法であるとは到底認め難い。また,これらの証拠方法は,訂正請求により追加された構成要件について進歩性を否定するために提出の必要が生じたものでもない。したがって,これらの証拠方法は採用しない。

第7 むすび
以上のとおりであるから,訂正発明1は,発明の詳細な説明に記載されていない発明を含むものではなく,特許法第36条第6項第1号の規定に違反して特許がなされたものではない。また,訂正発明1ないし訂正発明3は,甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく,特許法第29条第2項の規定に違反して特許がなされたものではない。したがって,その特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用の負担については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
記録媒体用ディスクの収納ケース
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】記録媒体用ディスクの記録面側を覆う樹脂製の保持板を有し、前記保持板に、記録媒体用ディスクの中央孔に対して着脱自在に嵌まるボス部が設けられていると共に、該保持板の一端部には上下ヒンジ部を介して樹脂製のカバー体が回動自在に枢支されている記録媒体用ディスクの収納ケースであって、
前記保持板のディスクに対面する上面には、前記ボス部を囲む径小のスペーサ台と、この径小のスペーサ台の外側を囲む径大のスペーサ台とが隆起して形成され、前記径小のスペーサ台と径大のスペーサ台とが記録媒体用ディスクの記憶領域を除く部分に当接可能になっており、
前記保持板の径小及び径大のスペーサ台の隆起高さは前記保持板の上面から1mm以下であり、かつ前記保持板とカバー体とを閉じた状態におけるケースの厚みが略5.2mmであり、
前記カバー体の一端部には、前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部と、カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部とが設けられ、
前記カバー体の上下ヒンジ部は保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置していて、前記カバー体の上ヒンジ部は保持板の上ヒンジ部に下側から対面しかつ前記カバー体の下ヒンジ部は保持板の下ヒンジ部に上側から対面しており、
かつ前記カバー体の上下ヒンジ部は前記端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されていることを特徴とする記録媒体用ディスクの収納ケース。
【請求項2】前記径小のスペーサ台の径内側において、前記ボス部に径方向の分断部を周方向に複数本形成して、各分断部間に指掛け可能であって記録媒体用ディスクを嵌脱するときに沈み込み作用と縮径作用とが可能な複数の操作片を形成していることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体用ディスクの収納ケース。
【請求項3】前記径小のスペーサ台の径内側において、前記ボス部は保持板のディスクに対面する上面から立ち上がっていて記録媒体用ディスクの中央孔が嵌りかつ径方向内方へ傾き可能な周方向複数の立ち上がり部を有し、
前記保持板のボス部まわりには、前記各立ち上がり部の根元部両側に径方向外方へ延びる対の径方向切欠を設け、この対の径方向切欠間にボス部に近い部分が高くなるように傾斜して撓み可能なバネ部を形成していることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体用ディスクの収納ケース。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する利用分野】
本発明は、記録媒体用ディスクの収納ケースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
CD、DVD、LD等をはじめとする記録媒体用ディスクの収納ケースには、記録媒体用ディスクの両面を各別に覆うかたちで互いに揺動開閉自在に連結された一対のカバー体と、このうち一方のカバー体における内面側で中敷き状に装填保持される保持板とを有し、この保持板の中央部に、記録媒体用ディスクの中央孔に嵌まるボス部が突設された構造になったものがある(例えば、実公平3-31748号公報等参照)。
【0003】
上記ボス部は、その外径が、記録媒体用ディスクの中央孔を無理嵌め状に嵌めることができる程度の寸法に形成されている。また、このボス部の中心部には貫通孔が設けられ、この貫通孔から径方向外方へ向けて、全体が放射状配置となるように多数本の分断部が設けられている。
従って、この収納ケースでは、保持板のボス部に対し、記録媒体用ディスクの中央孔を押し込むようにするだけで記録媒体用ディスクを保持させることができる。また、記録媒体用ディスクを取り出すときには、ボス部の中心部を押込み操作することで、このボス部が沈み込みを伴いながら記録媒体用ディスクの中央孔より径小に縮径化するため、このままの状態で記録媒体用ディスクを把持して保持板から持ち上げるようにすればよいものであった。
【0004】
また、従来のケースは、一対のカバー体と保持板との3部材で構成されていたため、その厚みが約10mm以上あった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の収納ケースでは、その厚みが約10mm程度あり、厚いものであり、保管・収納に嵩張るものであった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、保管場所をとらないようにした、記録媒体用ディスクの収納ケースを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決する本発明の技術手段は、
第1に、記録媒体用ディスクの記録面側を覆う樹脂製の保持板を有し、前記保持板に、記録媒体用ディスクの中央孔に対して着脱自在に嵌まるボス部が設けられていると共に、該保持板の一端部には上下ヒンジ部を介して樹脂製のカバー体が回動自在に枢支されている記録媒体用ディスクの収納ケースであって、
前記保持板のディスクに対面する上面には、前記ボス部を囲む径小のスペーサ台と、この径小のスペーサ台の外側を囲む径大のスペーサ台とが隆起して形成され、前記径小のスペーサ台と径大のスペーサ台とが記録媒体用ディスクの記憶領域を除く部分に当接可能になっており、前記保持板の径小及び径大のスペーサ台の隆起高さは前記保持板の上面から1mm以下であり、前記保持板とカバー体とを閉じた状態におけるケースの厚みが略5.2mmであり、
前記カバー体の一端部には、前記保持板の一端部の上下ヒンジ部と揺動開閉自在に連結される上下ヒンジ部と、カバー体を閉じた状態のときに保持板におけるヒンジ部寄りの端部よりも外方へ突出する突出部分に断面鉤形に立ち上がる端面部とが設けられ、
前記カバー体の上下ヒンジ部は保持板の上下ヒンジ部の上下内方に位置していて、前記カバー体の上ヒンジ部は保持板の上ヒンジ部に下側から対面しかつ前記カバー体の下ヒンジ部は保持板の下ヒンジ部に上側から対面しており、
かつ前記カバー体の上下ヒンジ部は前記端面部の上下端部とそれぞれ正面視鉤形に繋がって形成されていることである。
【0007】
第2に、前記径小のスペーサ台の径内側において、前記ボス部に径方向の分断部を周方向に複数本形成して、各分断部間に指掛け可能であって記録媒体用ディスクを嵌脱するときに沈み込み作用と縮径作用とが可能な複数の操作片を形成していることである。
第3に、前記径小のスペーサ台の径内側において、前記ボス部は保持板のディスクに対面する上面から立ち上がっていて記録媒体用ディスクの中央孔が嵌りかつ径方向内方へ傾き可能な周方向複数の立ち上がり部を有し、
前記保持板のボス部まわりには、前記各立ち上がり部の根元部両側に径方向外方へ延びる対の径方向切欠を設け、この対の径方向切欠間にボス部に近い部分が高くなるように傾斜して撓み可能なバネ部を形成していることである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。本発明に係る収納ケース1は、図4及び図5に示すように、保持板2とカバー体3とが、それぞれの一端側に設けられたヒンジ部2a,3aを介して互いに揺動開閉自在に連結されたもので、これら保持板2とカバー体3とによって、記録媒体用ディスク100の両面を覆う収納状態とできるようになっている。これら保持板2やカバー体3は、それぞれ透明樹脂や不透明樹脂等により形成されている。
【0009】
保持板2には、その板面の略中央部に、記録媒体用ディスク100の中央孔101に嵌まるボス部5が突設されている。またこのボス部5を囲む径小のリング形状となって隆起したスペーサ台6と、更にこの径小スペーサ台6の外側を囲む径大のリング形状となって隆起したスペーサ台7とが設けられている。
これらスペーサ台6,7は、図1及び図2に示すように、記録媒体用ディスク100の記録面102側に対し、その記録領域(図示は省略するが、記録媒体用ディスク100の中心付近及び外周付近を除いたドーナツ状の領域となっている)を除く部分に当接可能となるものである。
【0010】
なお、各スペーサ台6,7の隆起高さは、1mm以下でも十分である。本実施形態では0.7mm程度とした。
図3及び図5に示すように、上記ボス部5には、その上面の中心部から径方向外方へ向けて複数本(本実施形態では3本としてある)の分断部10が形成されている。そして、これら各分断部10の隣接間で、それぞれ操作片11を設けさせてある。
各操作片11は、ボス部5としての周壁部を形成させている立ち上がり部13と、この立ち上がり部13の上端部からボス部5の外周に沿って円弧状に延びる弾性拡大部14と、この弾性拡大部14の延長先端部からボス部5の上面中心部へ向けて突出する指掛け部15とを有している。
【0011】
これに対し、保持板2におけるボス部5まわりには、上記操作片11における立ち上がり部13の根元だけを支持して、弾性拡大部14を切り離し状態にし、浮かせるための周方向切欠17が設けられている。
また更に、各操作片11の立ち上がり部13の根元部両側で対を成しつつ、ボス部5のまわりで径方向外方へ向けて延びる径方向切欠18が設けられている。この径方向切欠18は、上記した周方向切欠17及びボス部5側の分断部10と互いに連通関係にある。
【0012】
そして、この径方向切欠18のうち、対を成すもの(立ち上がり部13の根元部両側)相互間で、バネ部20が形成されている。このバネ部20は、図2に示すように、ボス部5に近い部分ほど保持板2の板面よりも高くなる傾斜を有しており、この傾斜分が、撓み代となっている。
従って、図8に示すようにボス部5を押込み操作する場合、全部の操作片11における指掛け部15に一斉に押圧力が加えられることになり、各操作片11ごとに、立ち上がり部13の径方向内方へ向けた傾きや、弾性拡大部14の撓み、及びボス部5まわりでのバネ部20の撓み等が生じるようになる。その結果、ボス部5の全体として、沈み込み作用と縮径作用とが生じるものである。
【0013】
なお、これら沈み込み作用と縮径作用とは、弾性復元力に抗しつつ生じるため、ボス部5の押込み操作をやめれば、ボス部5は、自ずと、沈み込みを解消すべく盛り上がりを起こし、また縮径作用を解消すべく拡大化することになる。
このような構造の操作片11には、弾性拡大部14において延長先となる部分、即ち、指掛け部15の根元となる位置で、ボス部5の径方向外方へ向くようにして突起23が突設されている(図1及び図3参照)。
この突起23は、常態では記録媒体用ディスク100における中央孔101の開口縁部と干渉する、即ち、中央孔101の嵌め込み時に邪魔となるようになっている。
【0014】
図9に示すように、この保持板2と前記カバー体3とを、互いのヒンジ部2a,3aで揺動させて閉じた状態にしたとき、カバー体3におけるヒンジ部3a寄りの端部は、保持板2におけるヒンジ部2a寄りの端部よりも外方へ突出するようになっており、この突出部分には断面鉤形に立ち上がる端面部30が設けられている。
この端面部30は、この収納ケース1をケースラック(図示略)等へ収納した場合にあって、個別に引き出すときの指掛け部として便利に活用できるものとなっている。また、この端面部30には、その内側又は外側にラベルシール(図示略)等を貼り付けるようにして、インデックスとして使用することもできる。
【0015】
なお、上記のように、本実施形態において収納ケース1は、保持板2とカバー体3との2枚構成になっていることと、中央固定部の形状を図3に示す形状としたこととがあいまって、全体厚を極めて薄く形成できるものとなっている。すなわち、従来のこの種、収納ケースの多くでは、一対のカバー体と、その中に入れる保持板とを有した3枚構成であったため、その全体厚は、10.4mm前後となっていたが、本実施形態の場合は、その半分の5.2mm程度に抑えることに成功している。
【0016】
また、現在公知の2枚構成のCD・DVD等のケ-スも存在するが、現状では上記構成の収納ケ-ス(図3)に示す様な中央の固定部の形状を持つものは存在しないことから、従来の約半分である5.2mm程度の厚みのこの種のケ-スは存在しない。それゆえ、この種のケ-スの50%のスリム化というのは上記構成の収納ケ-スにより、実用的な形で実施することが可能になったのである。
更にこの種のケ-スをハイインパクトPS樹脂の混ざっていない、透明なPS樹脂のみの構成とする場合、割れやすいというPS樹脂の特徴から、バネ性を持たせるのには限界があり、ワンタッチでCD・DVD等のディスクを取り出す機能等にバネ性を持たせるのに実用的にうまくいかなかったが、上記構成の収納ケ-ス(図3)に示すような中央の固定部の形状にすることによってそれを解決し、可能にしたのである。
【0017】
このような構成の収納ケース1において、その使用状況を説明する。
まず、記録媒体用ディスク100を収納するには、図7に示すように、ボス部5の上部に対し、記録媒体用ディスク100を乗せ、その中央孔101を位置合わせする。このとき、ボス部5の外周部に設けられた各突起23が邪魔となるため、そのままでは記録媒体用ディスク100がボス部5に嵌まり込むことはない。
しかし、記録媒体用ディスク100を軽く押え付けるだけで、図6に示すように、記録媒体用ディスク100の中央孔101の内面で突起23が径方向内方へ押し込められるようになり、全ての操作片11、即ち、ボス部5の全体として多少の沈み込みを伴うか又は伴わないまま縮径し、終極的には、図1及び図2に示すように、ボス部5に対して記録媒体用ディスク100が確実に嵌まり込むようになる。
【0018】
現状のケ-スでは、しばしばケ-スを開いた時にCD・DVD等のディスクが、固定部から外れていることがあったが、上記構成の収納ケ-スでは固定部に正しくはまり込み、固定された後はCD・DVD等のディスクが日常持ち運びする際の揺れ等で外れようとしても、その方向に対してもバネ性が働く為意識的に外そうとしない限り、現状の日常で無意識のうちにCD・DVD等のディスクが固定部より外れている確率は大幅に減少されると考えられる。
そのことから、現状のケ-スでしばしば発生する、ケ-スを開いた時にCD・DVD等のディスクが落下して傷をつけたり、破損したりする事等の事故を防止することに対しても、上記構成の収納ケ-スでは大きな効果をあげることができるものである。
【0019】
勿論、ボス部5に記録媒体用ディスク100が嵌まり込んだ後は、各操作片11が上記縮径作用を解消すべく拡大する。従って、ボス部5(保持板2)から記録媒体用ディスク100が脱落することはない。
一方、記録媒体用ディスク100を取り出すには、図8に示すようにボス部5を押込み操作する。このとき、上記したように全ての操作片11に対してその指掛け部15を押すことになる。
すると、図1に二点鎖線で示すように、突起23には、記録媒体用ディスク100の中央孔101の内面に当接することによる反力が作用し、この反力によって全ての操作片11が径方向内方への縮径作用を生じることになる。従って、ボス部5はその全体として縮径した状態で、記録媒体用ディスク100における中央孔101の下側へと脱出する。
【0020】
ボス部5が記録媒体用ディスク100の中央孔101から脱出すれば、各操作片11が直ぐに上記縮径作用を解消すべく、拡大する。すなわち、このようなボス部5としての拡大化により、記録媒体用ディスク100の中央孔101には嵌まり込み不可能な形体になる。そのため、記録媒体用ディスク100は、その中央孔101の開口縁部がボス部5に乗り上げるかたちとなる。
そこで、ボス部5に対する押込み操作をやめれば、図7に示したように、記録媒体用ディスク100は、ボス部5が沈み込みを解消すべく盛り上がるのに伴って、そのまま、持ち上げられるものである。
【0021】
そこで、この記録媒体用ディスク100を把持して取り出せばよいものである。上記実施の形態によれば、記録媒体用ディスク100の少なくとも記録面102側を覆う保持板2を有し、該保持板2には記録媒体用ディスク100の中央孔101に嵌まるボス部5が突設されており、上記ボス部5は、その中央部に対する押込み操作により沈み込みを伴いながら記録媒体用ディスク100の中央孔101より径小に縮径化し、押込み操作をやめたときには、弾性復元力により、先に縮小化状態から記録媒体用ディスク100の中央孔101に嵌まり込み不可能な形体へ向けて径大化し、その後、沈み込みを復帰可能になされている。
【0022】
また、前記ボス部5には、常態では記録媒体用ディスク100の中央孔101の開口縁部と干渉する状態で径方向外方へ向けて突起23が突設されており、この突起23は、ボス部5に対する押込み操作時、及び記録媒体用ディスク100をボス部5へ嵌め込むときの中央孔101の開口縁部との接触時に、ボス部5の縮径を伴わせるかたちで記録媒体用ディスク100の中央孔101の内側へ退避可能とされている。
また、前記ボス部5では、中心部から径方向外方へ向けて複数本の分断部10が形成されることによって、これら各分断部10の隣接間でそれぞれ操作片11が形成されており、各操作片11は、ボス部5としての周壁部を形成させている立ち上がり部13と、該立ち上がり部13の上端部からボス部5外周に沿って円弧状に延びる弾性拡大部14とを有しており、保持板2におけるボス部5まわりには、上記操作片11における立ち上がり部13の根元だけを支持して弾性拡大部14を切り離し状態にし、浮き上がらせるための周方向切欠17が設けられており、上記操作片11における弾性拡大部14の延長先側に、前記径方向外方へ突設される突起23が位置付けられている。
【0023】
また、前記保持板2におけるボス部5まわりには、各操作片11の立ち上がり部13の根元部両側で対を成しつつ、ボス部5まわりで径方向外方へ向けて延びる径方向切欠18が設けられており、対を成している径方向切欠18の相互間でバネ部20が形成されている。
また、前記操作片11には、弾性拡大部14の延長先端部からボス部5の中心部へ向けて突出する指掛け部15が設けられている。
また、前記保持板2には、記録媒体用ディスク100の記録面102側に対しその記録領域を除く部分に当接可能となるスペーサ台6、7が設けられている。
【0024】
また、前記保持板2には、その一端側にヒンジ部2aが設けられており、該ヒンジ部2aを介して記録媒体用ディスク100の他面側を覆うカバー体3が揺動開閉自在に連結されている。
そして、まず、本発明に係る記録媒体用ディスクの収納ケースは、その基本構成として、記録媒体用ディスクの少なくとも記録面側を覆う保持板を有したものとしてあり、この保持板に、記録媒体用ディスクの中央孔に嵌まるボス部が突設されたものとしている。
【0025】
なお、保持板は、互いに揺動開閉自在に連結された一対のカバー体のうち、その一方のカバー体を兼備するかたちで設けられている。
そして、上記ボス部は、次のようになっている。
すなわち、いま、ボス部に対し、既に記録媒体用ディスクが嵌められているものとし、且つ、ボス部の中央部を押込み操作したものとする。このときボス部は、記録媒体用ディスクの中央孔から脱出する方向へ沈み込みながら、その中央孔より径小化するまで縮径する。従ってボス部は、記録媒体用ディスクの中央孔から容易に脱出する。
【0026】
そこで、この脱出をもってボス部に対する押込み操作をやめると、ボス部には、この時点で、上記沈み込み作用及び縮径作用に抗して蓄えられた弾性復元力が作用しているため、ボス部はこれらの各作用を自己復帰しようとするが、その復帰順として、始めに縮径化状態を解消すべく拡大化を起こしてから、その後、沈み込み作用を復帰すべく、盛り上がりを起こすようになっている。
すなわち、ボス部は、上記のようにまず拡大化を起こすことにより、記録媒体用ディスクの中央孔には嵌まり込み不可能な形体になるため、記録媒体用ディスクは、その中央孔の開口縁部がボス部に乗り上げるかたちとなる。従って、記録媒体用ディスクは、その次に起こるボス部の盛り上がりと共に、保持板上へ持ち上げられるというわけである。
【0027】
言うまでもなく、この段階では、既にボス部に対して手を離した状態にあるから、その後、ボス部から離した手でも又は反対の手でも、好きな方の手で記録媒体用ディスクを把持して、保持板上から取り出せばよい。
なお、ここにおいて、上記のようにボス部が「縮小化状態から記録媒体用ディスクの中央孔に嵌まり込み不可能な形体へ向けて径大化」するとは、ボス部が単純的に外径の拡縮を起こして、記録媒体用ディスクの中央孔に嵌まる状態と嵌まらない状態とに変形する場合を当然に含めるものであるが、次のようにするのが更に効果的である。
【0028】
即ち、ボス部には、常態(押込み操作をしていない状態)にあって、記録媒体用ディスクの中央孔の開口縁部と干渉する状態で、径方向外方へ向けて突起が突設されているものとする。ただ、この突起は、ボス部に対する押込み操作時、及び記録媒体用ディスクをボス部へ嵌め込むときの中央孔の開口縁部との接触時に、ボス部の縮径を伴わせるかたちで記録媒体用ディスクの中央孔の内側へ退避可能とされている。
このようにすることで、突起と記録媒体用ディスクの中央孔内面との接触を、ボス部に対して縮径作用を生起させるための直接で且つ物理的な要因とさせることができることになり、その結果、上記縮径作用が確実で且つメリハリのきいたものとなる。
【0029】
ボス部において、中心部の押込み操作によってその外径に拡縮を起こさせるための構造としては、ボス部中心部から径方向外方へ向けて複数本の分断部を形成して、各分断部の隣接間で操作片を設けるようにすればよい。
これら各操作片は、ボス部としての周壁部を形成させている立ち上がり部と、この立ち上がり部の上端部からボス部外周に沿って円弧状に延びる弾性拡大部とを有したものとする。そして、この弾性拡大部の延長先側に、前記した径方向外方へ突出する突起を位置付けるようにする。
【0030】
また、保持板におけるボス部まわりには、上記操作片における立ち上がり部の根元だけを支持して弾性拡大部を切り離し状態にし、浮き上がらせるための周方向切欠を設けておく。
このような構成を採用すると、操作片は、弾性拡大部が周方向に延びている分だけそのバネ力を豊富にでき、従って突起の上下動量や径方向に沿った移動量を大きくとれることになり、またこれらの各動作を行わせるための操作力を軽減できることになる。
【0031】
すなわち、ボス部に対する押込み操作時において、操作片としての撓み(記録媒体用ディスクの中央孔から脱出する方向への沈み込みや縮径)が渋ることがなく、軽快で確実な操作を可能とするものとなる。
保持板におけるボス部まわりに対し、各操作片の立ち上がり部の根元部両側で対を成しつつ、ボス部まわりで径方向外方へ向けて延びる径方向切欠を設ければ、これら対を成している径方向切欠の相互間でバネ部を形成できることになる。このようなバネ部を設けることで、操作片のバネ力を更に豊富にできる利点がある。
【0032】
操作片における弾性拡大部の延長先端部に、ボス部の中心部へ向けて突出する指掛け部を設けておけば、操作片に対する指の掛かり代を広く、十分にとれるため、操作し易いという利点がある。また、この指掛け部自体によっても幾らかの撓みを得ることができるため、操作片全体として、その押込み操作時におけるバネ力を一層、豊富にできる利点もある。
保持板において、記録媒体用ディスクにおける記録面側の記録領域を除く部分、例えばディスク外周寄りや中心寄り等に対して当接可能となるスペーサ台を設けておけば、ボス部に対する押込み操作力が記録媒体用ディスクに伝わったときに、記録媒体用ディスクではこの操作力を安定して受けることができるものとなる。
【0033】
従って、それだけ押込み操作時における各種動作の確実性が得られるものである。また、記録媒体用ディスクにおける記録面側において、その記録領域が保持板に直接的に接触するのを防止できるため、傷から保護できるという利点もある。
従って、本発明に係る記録媒体用ディスクの収納ケースでは、記録媒体用ディスクが嵌められたボス部を押込み操作した場合、ボス部は沈み込みながら縮径して、記録媒体用ディスクの中央孔から脱出した後、押込み操作の解除と共に、まず、始めに縮径化状態を解消すべく拡大化を起こしてから、その後、沈み込み作用を復帰すべく、盛り上がりを起こすようになっている。そのため、記録媒体用ディスクは、拡大化したボス部に乗り上げるかたちで保持板上へ持ち上げられることになる。
【0034】
この時点では、ボス部に対する押込み操作を継続させておく必要はないため、好きな方の手で記録媒体用ディスクを把持して、保持板上から取り出せばよい。すなわち、この収納ケースに対する記録媒体用ディスクの出し入れは、片手で、しかもワンタッチでできるものであり、従ってその出し入れを行う場所的拘束も受けないものである。
なお、図10に参考例として示すように、前記保持板2を単体で構成すれば、互いに揺動開閉自在に連結された一対のカバー体35,36とは別体として形成しておき、このうちいずれか一方のカバー体35の内面側へ中敷き状に装填するのに使用できる。
【0035】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
保持板2に設けるスペーサ台6,7は、いずれか一方だけとしてもよい。また、その形状は、リング形状にすることが限定されるものではなく、多角形状としてもよいし、また記録媒体用ディスク100の周方向に沿って点在させた小ブロック状のものとして設けてもよい。
記録媒体用ディスク100は、円盤状のものに限定されるものではなく、多角形状その他のものでもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、収納ケースは、保持板とカバー体の二部材からなり、従来の三部材のものに比べ厚みが薄くなるので、保管場所をとらない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図3のA-A線拡大断面図である。
【図2】
図3のB-B線拡大断面図である。
【図3】
図5の一部(ボス部)を拡大して示す正面図である。
【図4】
本発明に係る収納ケースの第1実施形態を概略的に示した斜視図である。
【図5】
第1実施形態の収納ケースを展開状態にして示した正面図である。
【図6】
図1に対応する図面において記録媒体用ディスクをボス部へ嵌め込む状況を説明したものである。
【図7】
図1に対応する図面において記録媒体用ディスクをボス部へ嵌め込む前の段階と取り出した後の段階とを説明したものである。
【図8】
記録媒体用ディスクを取り出す際のボス部への押込み操作状況を図5のC-C線に相当させて示した断面図である。
【図9】
保持板とカバー体とを閉じた状態にしたうえでそれらのヒンジ部まわりを示した側断面図である。
【図10】
保持板の参考例を概略的に示した斜視図である。
【符号の説明】
1 収納ケース
2 保持板
2a 保持板のヒシジ部
3 カバー体
3a カバー体のヒンジ部
5 ボス部
6 スペーサ台
7 スペーサ台
10 分断部
11 操作片
13 立ち上がり部
14 弾性拡大部
15 指掛け部
17 周方向切欠
18 径方向切欠
20 バネ部
23 突起
100 記録媒体用ディスク
101 中央孔
102 記録面
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2009-11-04 
結審通知日 2009-11-06 
審決日 2010-06-22 
出願番号 特願平11-46724
審決分類 P 1 113・ 537- YA (B65D)
P 1 113・ 121- YA (B65D)
P 1 113・ 832- YA (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 市野 要助  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 熊倉 強
鈴木 由紀夫
登録日 2008-06-20 
登録番号 特許第4143206号(P4143206)
発明の名称 記録媒体用ディスクの収納ケース  
代理人 井▲崎▼ 康孝  
代理人 国立 久  
代理人 安田 敏雄  
代理人 中村 理紗  
代理人 安田 幹雄  
代理人 安田 幹雄  
代理人 森本 純  
代理人 山崎 道雄  
代理人 安田 敏雄  
代理人 堀家 和博  
代理人 辻村 和彦  
代理人 井口 喜久治  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 国立 久  
代理人 福田 あやこ  
代理人 堀家 和博  
代理人 野口 繁雄  
代理人 藤野 睦子  
代理人 宇田 浩康  
代理人 辻 淳子  

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