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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q |
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管理番号 | 1253822 |
審判番号 | 不服2010-3455 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-02-17 |
確定日 | 2012-03-15 |
事件の表示 | 特願2000- 44613「伝票処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月31日出願公開、特開2001-236452〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年2月22日の出願であって、平成21年8月13日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年10月5日付けで手続補正がなされ、同年11月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年2月17日付けで拒絶査定不服審判請求及び手続補正がなされた。 その後、平成23年6月22日付けで審尋がなされ、同年8月24日付けで回答書が提出され、当審がした同年10月17日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年12月19日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年12月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 伝票を入力する手段と、 前記入力した伝票の処理優先度が、少なくとも3つの処理優先度のいずれかであるかを判定する優先度判定手段と、 前記伝票に対し、所定の処理を行う伝票処理手段と、 前記入力伝票と該伝票の処理優先度とを一つのキューに格納する場合には、該キューの先頭から順に格納されていた格納伝票の処理優先度を検索し、該格納伝票の処理優先度と前記入力伝票の処理優先度とを比較し、該格納伝票の処理優先度が前記入力伝票の処理優先度より最初に低くなる該格納伝票の処理優先度の格納位置に前記入力伝票と前記入力伝票の処理優先度を格納し、該入力伝票が格納された位置以降に格納されていた該格納伝票および該格納伝票の処理優先度の格納位置を一つずつ下げると共に、該キューに格納されていた前記伝票を前記伝票処理手段に渡す場合には、該キューの先頭にある伝票を取り出すキュー制御手段と、を有することを特徴とする伝票処理装置。」 3.引用例 (1)引用例1 これに対して、当審が通知した拒絶の理由に引用された特開平3-262073号公報(以下、「引用例1」という。)には、従来技術として以下の記載がある(なお、下線は当審が付与した)。 「(従来の技術) 一般に、情報処理装置等においてファイル等の媒体を処理するに当たって一旦キュー(待ち行列)にキューインして処理順番待ちを行い、順番がくるとキューアウトして媒体の処理を行うことが知られている(以下このような媒体をキューイング媒体という)。 ところで、上述のようなキューを管理する際には、キューイング媒体毎に優先度が付けられており、優先度の高いキューイング媒体は優先度の低いキューイング媒体に比べて優先的にキューアウトされている。つまり、優先度の高いキューイング媒体がキューにキューインされる際、すでにキュー内に優先度の低いキューイング媒体があると、優先度の高いキューイング媒体は優先度の低いキューイング媒体を追い越して同一優先度のキューイング媒体の最後にキューインされるようになっている。従って、常に優先度の高いキューイング媒体が優先度の低いキューイング媒体より先にキューアウトされることになる。」(1頁右下欄19行?2頁左上欄18行) 上記従来技術に関する記載事項によれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「ファイル等の媒体を一旦キューにキューインして処理順番待ちを行い、順番がくるとキューアウトして媒体の処理を行う情報処理装置であって、 上記キューを管理する際には、上記媒体毎に優先度が付けられており、優先度の高いキューイング媒体がキューにキューインされる際、すでにキュー内に優先度の低いキューイング媒体があると、優先度の高いキューイング媒体は優先度の低いキューイング媒体を追い越して同一優先度のキューイング媒体の最後にキューインされ、常に優先度の高いキューイング媒体が優先度の低いキューイング媒体より先にキューアウトされるようにした情報処理装置。」 (2)引用例2 同じく当審が通知した拒絶の理由に引用された特開平7-226756号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある(なお、下線は当審が付与した)。 ア.「【0047】実施例3.キュー制御部が更にきめ細かな同期データのキューイング調整を行う例を説明する。図18は本実施例でのキュー制御部の構成図であり、キュー制御部14は、同期データを指定された位置にキューイングする同期データ最適キューイング実行部19、同期データをキューイングする位置を検索しキュー内のソーティングを実行する同期データキューイング位置制御部20およびキュー間データ移動制御部18から構成されている。また、図19はキュー制御部中の構成要素である同期データ最適キューイング実行部、同期データキューイング位置制御部の処理動作を示すフローチャート図である。本実施例では、同期データがキュー1内で送信完了余裕時間(送信完了要求時間から現在までのキュー内での経過時間を引いた時間)の小さい順番に並ぶような位置にキューイングする。 【0048】同期データ最適キューイング実行部19および同期データキューイング位置制御部20は、図10の様な処理フローチャートに従って動作する。まず、同期データ最適キューイング実行部19が入力キュー判断部13から同期データを受け取り、同期データキューイング位置制御部20にキューイング位置を示すポインタの制御を依頼する(ステップS501)。同期データキューイング位置制御部20は、該同期データの送信完了余裕時間を基にキュー1内の同期データが送信完了余裕時間の小さい順に並ぶ位置を検索し、ポインタをその位置に移動する(ステップS601)。更に同期データキューイング位置制御部20は移動したポインタの後ろに同期データをキューイングできる領域を確保し、制御を同期データ最適キューイング実行部19に返す(ステップS602)。同期データ最適キューイング実行部19はポインタの示す場所に該同期データをキューイングする(ステップS502)。」 イ.受け取った同期データをキューイングできる領域の確保(S602)は、受け取った同期データをキューイングする位置以降にキューイングされていた同期データを全て一つずつ下げることにより行われる。(図19) 上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には、次の発明が記載されている。 「一つのキュー(キュー1)に対する同期データのキューイング調整を行うキュー制御部であって、 同期データを受け取ると、該同期データの送信完了余裕時間を基に一つのキュー(キュー1)内における同期データが送信完了余裕時間の小さい順に並ぶ位置を検索し、ポインタをその位置に移動し、該ポインタの後ろに受け取った同期データをキューイングできる領域を確保するために、受け取った同期データをキューイングする位置以降にキューイングされていた同期データを全て一つずつ下げ、前記ポインタの示す位置に受け取った同期データをキューイングすることにより、同期データが一つのキュー(キュー1)内で送信完了余裕時間の小さい順番に並ぶような位置にキューイングされるようにしたキュー制御部。」 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 (1)引用発明における「キュー」、「優先度」は、本願発明における「キュー」、「処理優先度」に相当する。 また、本願発明における「伝票」と、引用発明におけるファイル等の「媒体」(「キューイング媒体」)とは、「所定媒体」である点で共通する。 (2)引用発明における「ファイル等の媒体を一旦キューにキューインして処理順番待ちを行い、順番がくるとキューアウトして媒体の処理を行う情報処理装置」によれば、引用発明においても、ファイル等の媒体を電子データとして取り扱う等のための何らかの「入力する手段」、及びキューアウトした媒体に対して所定の処理を行う「処理手段」を有することは明かなことであり、本願発明と引用発明とは、「[所定媒体]を入力する手段」と、「前記[所定媒体]に対し、所定の処理を行う[所定媒体]処理手段」とを有する点で共通する。 (3)引用発明における「上記キューを管理する際には、上記媒体毎に優先度が付けられており、優先度の高いキューイング媒体がキューにキューインされる際、すでにキュー内に優先度の低いキューイング媒体があると、優先度の高いキューイング媒体は優先度の低いキューイング媒体を追い越して同一優先度のキューイング媒体の最後にキューインされ、常に優先度の高いキューイング媒体が優先度の低いキューイング媒体より先にキューアウトされる」によれば、 ア.引用発明においても、「媒体毎に優先度が付けられており」、キューイング媒体をキューにキューインする際には、優先度に応じた順にキューインする制御を行っているのであるから、当然、優先度を判定する「判定手段」を有することは自明なことといえ、本願発明と引用発明とは「前記入力した[所定媒体]の処理優先度が、[複数]の処理優先度のいずれかであるかを判定する優先度判定手段」を有する点で共通するということができる。 イ.また上記のように、引用発明においても、優先度に応じた順にキューインする制御に加えて、優先度に応じたキューアウトの制御を行っており、「キュー制御手段」を有することも明らかである。 そして、そのうちのキューインの制御についてみると、引用発明では「優先度の高いキューイング媒体がキューにキューインされる際、すでにキュー内に優先度の低いキューイング媒体があると、優先度の高いキューイング媒体は優先度の低いキューイング媒体を追い越して同一優先度のキューイング媒体の最後にキューインされ」るものであることから、本願発明と引用発明とは「前記入力[所定媒体]と該[所定媒体]の処理優先度とをキューに格納する場合には、該格納[所定媒体]の処理優先度が前記入力[所定媒体]の処理優先度より最初に低くなる該格納[所定媒体]の処理優先度の格納位置に前記入力[所定媒体]と前記入力[所定媒体]の処理優先度を格納」するものである点で共通するといえ、 さらに、キューアウトの制御についてみると、引用発明では「常に優先度の高いキューイング媒体が優先度の低いキューイング媒体より先にキューアウトされる」されるものである点、及び、そもそもキューは通常、FIFO構造であり、キューの先頭にあるキューイング媒体から取り出されるものである点を考慮すると、本願発明と引用発明とは「該キューに格納されていた前記[所定媒体]を前記[所定媒体]処理手段に渡す場合には、該キューの先頭にある[所定媒体]を取り出す」ものである点で共通するといえる。 (5)そして、本願発明における「伝票処理装置」と、引用発明における「情報処理装置」とは、「[所定媒体]処理装置」である点で共通する。 よって、本願発明と引用発明とは、 「[所定媒体]を入力する手段と、 前記入力した[所定媒体]の処理優先度が、[複数]の処理優先度のいずれかであるかを判定する優先度判定手段と、 前記[所定媒体]に対し、所定の処理を行う[所定媒体]処理手段と、 前記入力[所定媒体]と該[所定媒体]の処理優先度とをキューに格納する場合には、該格納[所定媒体]の処理優先度が前記入力[所定媒体]の処理優先度より最初に低くなる該格納[所定媒体]の処理優先度の格納位置に前記入力[所定媒体]と前記入力[所定媒体]の処理優先度を格納し、該キューに格納されていた前記[所定媒体]を前記[所定媒体]処理手段に渡す場合には、該キューの先頭にある[所定媒体]を取り出すキュー制御手段と、を有することを特徴とする[所定媒体]処理装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 処理対象である所定媒体が、本願発明では「伝票」と特定するのに対して、引用発明では「ファイル等の媒体」である点。 [相違点2] 複数の処理優先度が、本願発明では「少なくとも3つ」に分けられるものであるのに対して、引用発明ではいくつに分けられるものであるのか明確な特定がない点。 [相違点3] キュー制御手段について、格納所定媒体の処理優先度が入力所定媒体の処理優先度より最初に低くなる該格納所定媒体の処理優先度の格納位置に前記入力所定媒体と前記入力所定媒体の処理優先度を格納するに際して、本願発明では「一つの」キューに格納するものであり、「キューの先頭から順に格納されていた格納伝票の処理優先度を検索し、該格納伝票の処理優先度と前記入力伝票の処理優先度とを比較」すること、及び「入力伝票が格納された位置以降に格納されていた該格納伝票および該格納伝票の処理優先度の格納位置を一つずつ下げる」ことを行うと特定するものであるのに対し、引用発明ではそのような特定がない(キューに関して言えば、引用例1の実施例の記載や第2図を参照するに、優先度の数に対応して複数のキューに区分されてなるものであるとも解される)点。 5.判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 例えば当審が通知した拒絶の理由に引用された特開昭61-214057号公報に記載(1頁左下欄5?13行、2頁右下欄13行?3頁左上欄1行を参照)のような銀行業務における、一時キューイングした後に順次取出して所定の処理が行われる「伝票」についても、優先度を付けて処理することはごく普通のこと(本願明細書の段落【0003】や、特開平6-60104号公報の段落【0006】、特開平1-296375号公報の2頁左上欄19行?同頁右上欄18行を参照)であり、引用発明においても、処理対象の所定媒体である「ファイル等の媒体」として、銀行業務等で扱われる「伝票」とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 [相違点2]について 引用例1には、実施例として処理の優先度を3つとする例が記載(2頁右下欄を参照)されているところであり、引用発明においても、処理優先度を「少なくとも3つ」とすることは当業者が適宜なし得ることである。 [相違点3]について 引用発明においても、「優先度の高いキューイング媒体がキューにキューインされる際、すでにキュー内に優先度の低いキューイング媒体があると、優先度の高いキューイング媒体は優先度の低いキューイング媒体を追い越して同一優先度のキューイング媒体の最後にキューインされ」るようにするものであり、そのようなキューインすべき位置を知るためには、技術常識からして、入力された媒体とすでにキュー内に格納されている媒体との優先度の検索・比較(例えばキューの先頭から順に)が当然に行われるものであるといえる。そして、前記「3.(2)」に記載したとおり、引用例2には、処理対象(同期データ)が一つのキュー内で処理優先度(送信完了余裕時間)の小さい順番に並ぶような位置にキューイングするキュー制御を行うこと、より具体的には、処理対象を受け取ると、該処理対象の処理優先度を基に一つのキュー内における処理対象が処理優先度の小さい順に並ぶ位置を検索し、検索した位置に受け取った処理対象をキューイングできる領域を確保するために、受け取った処理対象をキューイングする位置以降にキューイングされていた処理対象を全て一つずつ下げ、確保された領域の位置に受け取った処理対象をキューイングするという技術事項が記載されており(なお、この引用例2には、例えば図6に見られるように、同期データ格納キューとしてキュー1とキュー2の複数のキューから構成されたものを用いることや、同期データをキュー1からキュー2に移動させることなどが記載されているものの、上記技術事項は、「一つの」キューに対する制御に関するものであり、図6に示されるような複数のキューからなる特別な構成でなく、単にキューが一つのみで構成されていても何ら問題ないものであることは当業者にとって明らかなことである。)、引用発明においても、かかる技術事項を採用し、格納所定媒体の処理優先度が入力所定媒体の処理優先度より最初に低くなる該格納所定媒体の処理優先度の格納位置に前記入力所定媒体と前記入力所定媒体の処理優先度を格納するに際して、「キューの先頭から順に格納されていた格納所定媒体の処理優先度を検索し、該格納所定媒体の処理優先度と前記入力所定媒体の処理優先度とを比較」し、さらに「入力所定媒体が格納された位置以降に格納されていた該格納所定媒体および該格納所定媒体の処理優先度の格納位置を一つずつ下げる」制御を行うことにより、例えば優先度の数に対応して複数のキューに区分したりすることなく、「一つの」キューに対して格納するようにすることも当業者であれば容易になし得ることである。 そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願発明が奏する効果は、引用発明、引用例2に記載の技術事項及び周知の事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1,2に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-11 |
結審通知日 | 2012-01-17 |
審決日 | 2012-01-30 |
出願番号 | 特願2000-44613(P2000-44613) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関 博文 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
井上 信一 松尾 俊介 |
発明の名称 | 伝票処理装置 |
代理人 | 横山 淳一 |
代理人 | 横山 淳一 |