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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45C
管理番号 1253836
審判番号 不服2010-25385  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-10 
確定日 2012-03-15 
事件の表示 特願2004-242124号「鞄の構造」拒絶査定不服審判事件〔平成18年3月2日出願公開、特開2006-55488号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年8月23日の出願であって、平成22年4月7日付けの拒絶理由通知に対して何らの応答もなく、平成22年8月2日付け(発送日:同10日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「中央に配設されたマチ部の底部両側縁に開閉自在に連設された身衣部を有する鞄本体と、
前記マチ部の内側に重合する内枠体と、
前記内枠体の内側に設けられ、前記内枠体の片面を全面的に遮蔽し得る仕切部材と、
前記仕切部材と前記身衣部との間に介在し、前記内枠体と前記仕切部材との当接部分に取り付けられる取付部材と、
前記取付部材に固定された取手部とを備えることを特徴とする鞄の構造。」

第2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-330812号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(下線は当審で付与。)
ア.段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は牽引式のスーツケースに係り、さらに詳しくは、牽引に用いる伸縮式キャリングバー及び車輪シートをスーツケース辺縁の空間内に収納でき、スーツケース運送の便利性を高め、且つスーツケースの内部空間を占用しないスーツケースの内蔵式キャリングバーと車輪シートの構造に関する。」
イ.段落【0002】
「【従来の技術】・・・さらに図2に示されるように、周知の第2種の牽引可能なスーツケースの、前述の第1種類の周知のスーツケースとの違いは、そのキャリングバー5と車輪6が枢設された車輪シート7が箱体8内に嵌め込まれ、内蔵式設計によりスーツケースの外観が全体性を有し、該箱体8内部に物品収納に便利であるよう、隔板9が設けられて、キャリングバー5と収容空間が隔離され、このため箱体8内部の有効収容空間が減少し、該キャリングバー5、車輪シート7が箱体内容積を占用し、且つキャリングバー5の上端が箱体8の外表面より露出し、該箱体8の運搬、積み重ね(例えば航空運搬)の時に該キャリングバー5が引き伸ばされて、衝突し損壊する欠点があった。」
ウ.段落【0008】?【0010】
「【実施例】図3、4、5に示されるように、本発明のスーツケースの内蔵式キャリングバーと車輪シートの構造の実施例は、主箱体10、キャリングバー20及び二つの車輪シート30を含む。そのうち、該主箱体10はフレーム11の内側と外側をそれぞれ内カバー12と外カバー13で被覆してなる中空状箱体とされ、該内カバー12と外カバー13は軟質の皮材或いは帆布で製造される。該主箱体10は外カバー13の外縁の所定部分にハンドル14が設けられ、該主箱体10を手に下げて携帯、運搬するのに供される。該フレーム11は環状を呈し、並びに主箱体10の上縁、底縁及び両側縁を包囲し、該主箱体10の底縁の、該内カバー12と外カバー13の間に硬質の敷板15が挟設され、該敷板15は該フレーム11に釘止めされ、これにより主箱体10が直立して内容物を積載する。
該主箱体10の背縁に一つの中間層40が当接し、この中間層40の四周の長さと幅は主箱体10と一致し、且つ該中間層40の底縁が主箱体10に、布材或いは皮材の縫合により連接され、並びに両側縁及び上縁がスライドファスナー41で主箱体10と結合され、これにより中間層40の空間の開閉が可能とされている。該フレーム11の底縁の、該中間層40に隣接する部分に、一つの位置決め板42が釘止めされ、該位置決め板42は断面が略L形を呈する板体とされ、その曲がった縁がちょうど主箱体10の底縁の中間層40途隣接する辺縁に当接する。該位置決め板42に二つの嵌め孔421が設けられ、該嵌め孔421は並びに該位置決め板42の曲がった縁の両側に延伸され、これによりそれぞれ各車輪シート30を嵌め止めするのに供される。該車輪シート30は該中間層40の外側縁に当接し、その底板32が延伸されて主箱体10底縁に当接し並びに該外カバー13と離されて該位置決め板42の底縁に釘止めされる。該車輪シート30の立板34は該中間層40の外縁に隣接し、該立板34と該位置決め板42の間に強化パッドブロック44が挟設され、且つ該立板34、該強化パッドブロック44及び位置決め板42が相互に釘で結合されている。並びに該強化パッドブロック44と該位置決め板42の間に該外カバー13が挟設され、該強化パッドブロック44と該立板34の間に該中間層40のカバーが挟設される。該強化パッドブロック44が該車輪シート30の両側において延伸されて保護辺441が形成され、且つ該強化パッドブロック44に中間層40の外縁方向に向けて衝突防止ブロック442が凸伸するように設けられ、これにより該車輪シート30を強化して該主箱体10が地面に落ちたり或いは横向きの衝撃を受けても損壊しないようにしている。また、車輪シート30の曲がった縁の両側の該強化パッドブロック44との連接部分にそれぞれ第1凹孔45が設けられ、これにより中間層40のカバー辺縁が鉄線或いはプラスチック条で結び付けられるか、或いは皮材を縫合して形成したフレーム状の第1管条46の裁断後の両端縁がそれぞれ該第1凹孔45に挿入され、該位置決め板42の曲がった縁の、該強化パッドブロック44との連接部分に、第2凹孔47が設けられ、該外カバー13の辺縁を巻いてなる第2管条16が該第2凹孔47に挿入され、これにより第1管条46、第2管条16間の距離が位置決めされて、該中間層40内部空間が扁縮するのを防止している。
該キャリングバー20は一般に周知のスーツケースのキャリングバーと同じで、ゆえに詳しく内部構成を説明しない。該キャリングバー20は該中間層40内に収容され、その底座22と該位置決め板42が固定され、その中段部分の位置決め座24が該フレーム11の上縁より下向きに延伸された側片17に固定され、これによりキャリングバー20が位置決めされ並びにファームウエア構造の支持を形成し、キャリングバー20を該中間層40内に縮合するのに供される。また、該中間層40の外側が皮或いは布で外界と分離され、軟性で且つ弾性に富む表面が形成され、その内部に若干の収容袋48が設けられ、各種の小物(ディスクシート、電話番号帳、計算機等)の収容に供され、十分に物品収容の空間効果を発揮する。」

エ.図2には、従来技術のスーツケースが記載されており、箱体8のキャリングバー5を収納する収容空間側に対向する面が底部縁に開閉自在に連設されていることが図示されている。また、図3,図6,図7には、主箱体10のキャリングバー20を配置した面と反対側の面の周りには破線が図示されており、図3,図6の図示内容を合わせ見ると破線はスライドファスナーを表しているものと認められる。したがって、従来技術及び実施例の図示内容を総合すると、図3?5に図示された実施例は、中間層40と反対側の面が底部縁に開閉自在に連設されているものと認められる。そこで、中間層40と反対側の面を「蓋面」と呼ぶこととする。
オ.図4,図5の図示内容及び上記ウの「該強化パッドブロック44と該位置決め板42の間に該外カバー13が挟設され」なる記載によれば、外カバー13はフレーム11の中間層40側の面を全面的に遮蔽しているものと認められる。そこで、この外カバー13のフレーム11を遮蔽している面を「遮蔽面」と呼ぶこととする。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「主箱体10はフレーム11の内側と外側をそれぞれ内カバー12と外カバー13で被覆してなる中空状箱体とされると共に、中間層40の底縁が連設され中間層40の空間の開閉が可能とされ、蓋面が底部縁に開閉自在に連設される主箱体10と、
前記外カバー13の内側に重合するフレーム11と、
前記外カバー13はフレーム11の中間層40側の面を全面的に遮蔽する遮蔽面を有しており、
前記遮蔽面と前記蓋面との間に介在し、前記フレーム11の底縁に取り付けられる位置決め板42と、
前記位置決め板42に固定されたキャリングバー20とを備えるスーツケースの構造。」

第3 対比
ア.本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「スーツケース」は、本願発明の「鞄」に相当し、同様に、「フレーム11」は「内枠体」に、「位置決め板42」は「取付部材」に、「キャリングバー20」は「取手部」に、それぞれ、相当する。
イ.引用発明の「主箱体10はフレーム11の内側と外側をそれぞれ内カバー12と外カバー13で被覆してなる中空状箱体とされると共に、中間層40の底縁が連設され中間層40の空間の開閉が可能とされ、蓋面が底部縁に開閉自在に連設される主箱体10」について検討すると、「中空状箱体」のフレーム11を被覆する内カバー12と外カバー13の部分は本願発明の「中央に配設されたマチ部」に相当し、「中空状箱体」の底部の片側には「中間層40」が開閉自在に連設され、もう片側には「蓋面」が開閉自在に連設されるものであるから、引用発明の「中間層40」及び「蓋面」は、本願発明の「身衣部」に相当し、引用発明の「主箱体10」は本願発明の「鞄本体」に相当する。したがって、引用発明の「主箱体10はフレーム11の内側と外側をそれぞれ内カバー12と外カバー13で被覆してなる中空状箱体とされると共に、中間層40の底縁が連設され中間層40の空間の開閉が可能とされ、蓋面が底部縁に開閉自在に連設される主箱体10」は、本願発明の「中央に配設されたマチ部の底部両側縁に開閉自在に連設された身衣部を有する鞄本体」に相当する。
ウ.引用発明の「前記外カバー13の内側に重合するフレーム11」は、上記のとおり外カバー13のフレーム11を被覆する部分は「マチ部」に相当するから、本願発明の「前記マチ部の内側に重合する内枠体」に相当する。
エ.引用発明の「フレーム11の中間層40側の面を全面的に遮蔽する遮蔽面」と本願発明の「内枠体の片面を全面的に遮蔽し得る仕切部材」とは、「内枠体の片面を全面的に遮蔽し得る仕切部分」で共通する。
オ.引用発明の「位置決め板42」は略L形を呈する板体であり、そのフレーム11の底縁から曲がった縁は外カバー13に接するように配置されるものである。そうすると、引用発明の「前記遮蔽面と前記蓋面との間に介在し、前記フレーム11の底縁に取り付けられる位置決め板42」と本願発明の「前記仕切部材と前記身衣部との間に介在し、前記内枠体と前記仕切部材との当接部分に取り付けられる取付部材」とは、「前記仕切部分と前記身衣部との間に介在し、前記内枠体と前記仕切部材との当接部分に取り付けられる取付部材」で共通する。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「中央に配設されたマチ部の底部両側縁に開閉自在に連設された身衣部を有する鞄本体と、
前記マチ部の内側に重合する内枠体と、
前記内枠体の片面を全面的に遮蔽し得る仕切部分と、
前記仕切部分と前記身衣部との間に介在し、前記内枠体と前記仕切部分との当接部分に取り付けられる取付部材と、
前記取付部材に固定された取手部とを備える鞄の構造。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
内枠体の片面を全面的に遮蔽し得る仕切部分について、本願発明は、内枠体の内側に設けられ、内枠体の片面を全面的に遮蔽し得る仕切部材であるのに対し、引用発明は、外カバー13のフレーム11の中間層40側の面を全面的に遮蔽する遮蔽面である点。

第4 相違点の判断
スーツケース等の鞄において、収納空間を区切るために隔板を設けることは、例えば引用例の従来技術(記載事項イ参照)にも示されているように周知であり、引用発明の外カバーの遮蔽面に代えて仕切部材とする程度のことは、当業者における設計事項にすぎず、相違点に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-11 
結審通知日 2012-01-17 
審決日 2012-01-30 
出願番号 特願2004-242124(P2004-242124)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大瀬 円  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 青木 良憲
長浜 義憲
発明の名称 鞄の構造  
代理人 松倉 秀実  
代理人 川口 嘉之  

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