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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1253839 |
審判番号 | 不服2010-26446 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-11-24 |
確定日 | 2012-03-15 |
事件の表示 | 特願2004-245267「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 9日出願公開、特開2006- 61267〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は平成16年8月25日の出願であって、平成22年8月17日付けで拒絶査定され、これに対し、同年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1?8に係る発明は、平成22年7月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 「【請求項1】 少なくとも始動入賞口を含む入賞口が形成され、床面に対して略垂直な面を有する遊技盤を備え、この遊技盤に遊技球を投入し、前記入賞口に遊技球が入賞したときに所定個数の遊技球を払い出すとともに、前記始動入賞口に遊技球が入賞したときには抽選を行い、該抽選結果に応じて大当り遊技を発生させる遊技機であって、 前記遊技盤に投入された遊技球を取込口から取り込み、内部を通過させた後に、前記始動入賞口よりも上方に配置された当選排出口を含む複数の排出口の何れかからこの遊技球を前記遊技盤上に排出する役物装置と、 前記抽選結果に応じて、前記大当り遊技中の、前記役物装置の内部における遊技球が通過する経路を変更し、前記当選排出口から遊技球が排出される確率を変更する確率変更手段と、 を備えたことを特徴とする遊技機。 【請求項2】 前記役物装置は、該役物装置の遊技球が通過する経路上にて出没自在な突起部材を備え、 前記確率変更手段は、前記抽選結果に応じて、前記突起部材の出没を行うことにより、前記当選排出口から遊技球が排出される確率を変更すること を特徴とする請求項1に記載の遊技機。 【請求項3】 前記役物装置は、複数の突起部材を備え、 前記確率変更手段は、前記各突起部材の出没を行なうことにより、前記当選排出口から遊技球が排出される確率を変更すること を特徴とする請求項2に記載の遊技機。 【請求項4】 前記始動入賞口に遊技球が入賞したときの抽選結果に応じて予め定められた図柄を表示する図柄表示手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の遊技機。 【請求項5】 前記役物装置は、 内部の遊技球が通過する経路上に配置され、お椀状に形成された表面に複数の穴が形成され、この表面にて遊技球を回転させ、前記複数の穴の何れかに遊技球が落下するまで遊技球を保持可能な盤状部材、を備え、 前記突起部材は、前記盤状部材に設けられていること を特徴とする請求項2?請求項4の何れかに記載の遊技機。 【請求項6】 前記役物装置の盤状部材の周囲には、前記当選排出口まで遊技球を導くための溝部材が備えられ、 前記確率変更手段は、前記盤状部材に備えられた突起部材の出没を制御し、遊技球が溝部材に導かれる確率を変更することにより、前記当選排出口から遊技球が排出される確率を変更すること を特徴とする請求項5に記載の遊技機。 【請求項7】 少なくとも始動入賞口を含む入賞口が形成され、床面に対して略垂直な面を有する遊技盤を備え、この遊技盤に遊技球を投入し、前記入賞口に遊技球が入賞したときに所定個数の遊技球を払い出すとともに、前記始動入賞口に遊技球が入賞したときには抽選を行い、該抽選結果に応じて遊技状態を変更する遊技機であって、 前記遊技盤に投入された遊技球を取込口から取り込み、内部を通過させた後に、前記始動入賞口よりも上方に配置された当選排出口を含む複数の排出口の何れかからこの遊技球を前記遊技盤上に排出する役物装置と、 前記抽選結果に応じて、前記役物装置の内部における遊技球が通過する経路を変更し、前記当選排出口から遊技球が排出される確率を変更する確率変更手段と、 を備え、 前記役物装置は、 内部の遊技球が通過する経路上に配置され、お椀状に形成された表面に複数の穴が形成され、この表面にて遊技球を回転させ、前記複数の穴の何れかに遊技球が落下するまで遊技球を保持可能な盤状部材と、 前記盤状部材の周囲に備えられた、前記当選排出口まで遊技球を導くための溝部材と、 前記盤状部材と前記溝部材に設けられ、前記役物装置の遊技球が通過する経路上にて出没自在な突起部材と、 を備え、 前記確率変更手段は、前記抽選結果に応じて、前記盤状部材に備えられた突起部材の出没を制御し、遊技球が溝部材に導かれる確率を変更することにより、前記当選排出口から遊技球が排出される確率を変更すること を特徴とする遊技機。 【請求項8】 少なくとも始動入賞口を含む入賞口が形成され、床面に対して略垂直な面を有する遊技盤を備え、この遊技盤に遊技球を投入し、前記入賞口に遊技球が入賞したときに所定個数の遊技球を払い出すとともに、前記始動入賞口に遊技球が入賞したときには抽選を行い、該抽選結果に応じて遊技状態を変更する遊技機であって、 前記遊技盤に投入された遊技球を取込口から取り込み、内部を通過させた後に、前記始動入賞口よりも上方に配置された当選排出口を含む複数の排出口の何れかからこの遊技球を前記遊技盤上に排出する役物装置と、 前記抽選結果に応じて、前記役物装置の内部における遊技球が通過する経路を変更し、前記当選排出口から遊技球が排出される確率を変更する確率変更手段と、 を備え、 前記役物装置は、 内部の遊技球が通過する経路上に配置され、お椀状に形成された表面に複数の穴が形成され、この表面にて遊技球を回転させ、前記複数の穴の何れかに遊技球が落下するまで遊技球を保持可能な盤状部材と、 前記盤状部材の周囲に備えられた、前記当選排出口まで遊技球を導くための溝部材と、 前記盤状部材に設けられ、前記役物装置の遊技球が通過する経路上にて出没自在な突起部材と、 前記溝部材上における遊技球の位置を検知する位置検知手段と、 該位置検知手段による検知結果に基づいて発光する発光手段と、 を備え、 前記確率変更手段は、前記抽選結果に応じて、前記盤状部材に備えられた突起部材の出没を制御し、遊技球が溝部材に導かれる確率を変更することにより、前記当選排出口から遊技球が排出される確率を変更すること を特徴とする遊技機。」 3.引用文献に記載された発明 原査定の拒絶の理由(平成22年5月26日付け拒絶理由通知)において引用文献1として引用された特開2003-10423号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0016】 この実施の形態の遊技機は第1種パチンコ機で、図1において、1は遊技盤であり、その盤面にはレール2によって遊技領域3が画定されている。そして、遊技領域3の略中央にセンターケース4が設けられ、該センターケース4の中央に特別図柄表示装置5が配置され、特別図柄表示装置5の上方に普通図柄表示装置6が配置され、その上方に天入賞口7が配置されている。また、センターケース4の下方には第1種始動口(特別図柄始動領域を形成する入賞口)8を備えた普通電動役物9が配置され、その直ぐ下には大入賞口10を備えた特別電動役物11が配置されている。」 (イ)「【0018】 センターケース4には、遊技領域3内に発射され流下する遊技球Pを受け入れるよう、左右側方に左球受け部23および右球受け部24が設けられている。また、センターケース4の下部は、左右から中央に向け僅かに下降傾斜する左スロープ25および右スロープ26と、それら左・右スロープ25、26の間で一段下がって正面に向け下降傾斜する中央スロープ27と、中央スロープ27上を通過した遊技球Pを前方に流下させるよう、さらに一段下がって下降傾斜する前面スロープ28とで、前面に開口したステージ状に形成されている。そして、左・右球受け部23、24から受け入られた遊技球Pを、特別図柄表示装置5の後方で、左・右スロープ25、26上に導くよう、左右に左球通路部29および右球通路部30が設けられている。 【0019】 そして、ステージ中央の中央スロープ27には、所定配置で複数箇所に穴31(図3の例では、31A、31B、31C、31Dで示す4箇所の穴)が設けられ、それらの穴31には、ステージ上に突出することにより出現し、また、穴31内に引っ込むことにより退出するよう、突出部材からなる複数の始動記憶表示体32(図3の例では、32A、32B、32C、32Dで示す4個の始動記憶表示体)が配設されている。」 (ウ)「【0023】 そして、遊技球Pが第1種始動口8に流入(入賞)すると、それを契機として、大当たりかハズレかを決めるための大当たり乱数が抽選され、また、大当たり図柄を幾つかの態様の中から選ぶ大当たり図柄乱数等が抽選される。そして、特別図柄表示装置5が作動して、三つの表示領域の図柄変動が開始されるとともに、大当たり乱数の抽選結果から大当たり判定が行われ、所定の態様で図柄が変動した後、所定時間経過後に図柄変動が停止され、三つの表示領域の図柄の組み合わせからなる確定された図柄が停止表示される。そして、大当たり態様の図柄が停止表示されると、大当たり発生となり、特別電動役物11のソレノイドが作動して大入賞口10が開放され、所定開放時間(約30秒)が経過するか、大入賞口10に入賞した遊技球が所定数(例えば10個)に達すると閉じられる。」 (エ)「【0081】 (第5の実施の形態) 図7および図8は、第5の実施の形態における始動記憶表示体の配置および動作の説明図である。 【0082】 第5の実施の形態の遊技機は、やはり第1種パチンコ機で、遊技盤面における各種入賞口、役物等の配置および動作は、始動記憶表示の部分を除いて、第1の実施の形態と同様である。 【0083】 そして、この第5の実施の形態の遊技機は、やはり、ステージ中央の中央スロープ27に、所定配置で、始動情報の最大記憶数(例えば「4」)より多い複数箇所に穴71(図7および図8の例では、71A、71B、71C、71D、71E、71Fで示す6箇所の穴)が設けられ、それらの穴71には、ステージ上に突出することにより出現し、また、穴71内に引っ込むことにより退出するよう、突出部材からなる複数の始動記憶表示体72(図7および図8の例では、72A、72B、72C、72D、72E、72Fで示す6個の始動記憶表示体)が配設されている。 【0084】 図7および図8において、中央スロープ27上の6箇所の穴71(71A、71B、71C、71D、71E、71F)は、2箇所ずつ前後3列の配置とされ、後列は2箇所の穴71A、71Bが左右に大きく離れ、中列は2箇所の穴71C、71Dがやや中央に寄って間隔を置き、前列は2箇所の穴71E、71Fが中央に並んで位置し、それら6箇所の穴71(71A、71B、71C、71D、71E、71F)が正面から見て所定間隔に並ぶよう配置されたもので、いずれも円形で、略同径であり、それに対応して、6個の始動記憶表示体72(72A、72B、72C、72D、72E、72F)は略同径で、突出高さも略同じである。 【0085】 この実施の形態では、6個の始動記憶表示体72(72A、72B、72C、72D、72E、72F)は、いずれも常時は穴71(71A、71B、71C、71D、71E、71F)内に引っ込んでおり、中央スロープ27上に突出することによって、始動記憶数を表現する。そして、始動記憶表示体72(72A、72B、72C、72D、72E、72F)は、所定遊技状態(大当たり遊技時または時間短縮機能時)においては、通常遊技時よりも、中央スロープ27上で遊技球Pが流下する経路が中央寄りとなって、遊技球Pが第1種始動口8へ入賞し易くなり、また、始動記憶数が増えるほど、流下経路が一層中央寄りとなって、一層遊技球Pが第1種始動口8へ入賞し易くなるような態様で、且つ、新たな始動情報の記憶毎に態様を変えて動作する。」 以上、(ア)乃至(エ)の記載、及び図面を総合すると、引用例1には、 「遊技盤1を備え、その盤面にはレール2によって遊技領域3が画定され、遊技領域3の略中央にセンターケース4が設けられ、センターケース4の下方には特別図柄始動領域を形成する入賞口である第1種始動口8を備えた普通電動役物9が配置され、その直ぐ下には大入賞口10を備えた特別電動役物11が配置され、遊技領域3内に遊技球Pを発射し、遊技球Pが第1種始動口8に入賞すると、それを契機として、大当たりかハズレかを決めるための大当たり乱数が抽選され、大当たり図柄を幾つかの態様の中から選ぶ大当たり図柄乱数等が抽選され、特別図柄表示装置5が作動して、三つの表示領域の図柄変動が開始されるとともに、大当たり乱数の抽選結果から大当たり判定が行われ、所定の態様で図柄が変動した後、所定時間経過後に図柄変動が停止され、三つの表示領域の図柄の組み合わせからなる確定された図柄が停止表示され、大当たり態様の図柄が停止表示されると、大当たり発生となり、特別電動役物11のソレノイドが作動して大入賞口10が開放され、所定開放時間が経過するか、大入賞口10に入賞した遊技球が所定数に達すると閉じられる第1種パチンコ機であって、 センターケース4には、遊技領域3内に発射され流下する遊技球Pを受け入れるよう、左右側方に左球受け部23および右球受け部24が設けられており、センターケース4の下部は、左右から中央に向け僅かに下降傾斜する左スロープ25および右スロープ26と、それら左・右スロープ25、26の間で一段下がって正面に向け下降傾斜する中央スロープ27と、中央スロープ27上を通過した遊技球Pを前方に流下させるよう、さらに一段下がって下降傾斜する前面スロープ28とで、前面に開口したステージ状に形成されて、左・右球受け部23、24から受け入られた遊技球Pを、特別図柄表示装置5の後方で、左・右スロープ25、26上に導くよう、左右に左球通路部29および右球通路部30が設けられ、 ステージ中央の中央スロープ27には、所定配置で複数箇所に始動情報の最大記憶数より多い複数箇所に穴71が設けられ、それらの穴71には、ステージ上に突出することにより出現し、また、穴71内に引っ込むことにより退出するよう、突出部材からなる複数の始動記憶表示体72が配設されており、始動記憶表示体72(72A、72B、72C、72D、72E、72F)は、所定遊技状態(大当たり遊技時または時間短縮機能時)においては、通常遊技時よりも、中央スロープ27上で遊技球Pが流下する経路が中央寄りとなって、遊技球Pが第1種始動口8へ入賞し易くなり、また、始動記憶数が増えるほど、流下経路が一層中央寄りとなって、一層遊技球Pが第1種始動口8へ入賞し易くなるような態様で、且つ、新たな始動情報の記憶毎に態様を変えて動作する第1種パチンコ機。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。 4.対比 引用発明と本願発明とを対比する。 引用発明の「第1種始動口8」は、本願発明の「始動入賞口」に相当する。以下同様に、 「遊技球Pが第1種始動口8に入賞すると、それを契機として、大当たりかハズレかを決めるための大当たり乱数が抽選され」は「前記始動入賞口に遊技球が入賞したときには抽選を行い」に、 「大当たり乱数の抽選結果から大当たり判定が行われ」「大当たり発生」は「該抽選結果に応じて大当り遊技を発生」に、 「第1種パチンコ機」は「遊技機」に、 「センターケース4」は「役物装置」に、 「遊技領域3内に発射され流下する遊技球P」は「前記遊技盤に投入された遊技球」に、 「左球受け部23および右球受け部24」は「取込口」に、 「受け入れる」は「取り込み」に、 それぞれ相当する。 さらに、引用例1の記載及び図面から次のことがいえる。 引用発明は、第1種始動口8の他に大入賞口10を備えているから、引用発明は本願発明の「少なくとも始動入賞口を含む入賞口が形成され」に相当する構成を備えているといえる。 また、引用発明は、遊技盤1を備え、その盤面にはレール2によって遊技領域3が画定されており、遊技盤1と床面との位置関係は引用例1には明記されていないものの、遊技機の分野の技術常識から、遊技盤1は床面に対して略垂直な面を備えていることは明らかであるため、引用発明は本願発明の「床面に対して略垂直な面を有する遊技盤」を備えているといえる。 また、引用発明は、遊技球Pが遊技領域3内に発射され流下することから、本願発明の「この遊技盤に遊技球を投入し」に相当する構成を備えているといえる。 また、引用例1には、大当たりが発生すると特別電動役物11のソレノイドが作動して大入賞口10が開放され、所定開放時間が経過するか、大入賞口10に入賞した遊技球が所定数に達すると閉じられることが記載されているのみで、大入賞口10に入賞した場合に、所定個数の遊技球を払い出すことは明記されていないものの、大当たりが発生したときの遊技者への特典として大入賞口10が開放されていることから入賞時に遊技者に所定の利益が付与されることは明らかであること及び遊技機の分野の技術常識から、入賞時に所定個数の遊技球が払い出されることは明らかであるため、引用発明は本願発明の「前記入賞口に遊技球が入賞したときに所定個数の遊技球を払い出す」ことに相当する構成を備えているといえる。 また、引用発明は、センターケース4の下部は、左右から中央に向け僅かに下降傾斜する左スロープ25および右スロープ26と、それら左・右スロープ25、26の間で一段下がって正面に向け下降傾斜する中央スロープ27と、中央スロープ27上を通過した遊技球Pを前方に流下させるよう、さらに一段下がって下降傾斜する前面スロープ28とで、前面に開口したステージ状に形成されて、左・右球受け部23、24から受け入られた遊技球Pを、特別図柄表示装置5の後方で、左・右スロープ25、26上に導くよう、左右に左球通路部29および右球通路部30が設けられ、ステージ中央の中央スロープ27には、所定配置で複数箇所に始動情報の最大記憶数より多い複数箇所に穴71が設けられ、それらの穴71には、ステージ上に突出することにより出現し、また、穴71内に引っ込むことにより退出するよう、突出部材からなる複数の始動記憶表示体72が配設されており、始動記憶表示体72(72A、72B、72C、72D、72E、72F)は、所定遊技状態(大当たり遊技時または時間短縮機能時)においては、通常遊技時よりも、中央スロープ27上で遊技球Pが流下する経路が中央寄りとなって、遊技球Pが第1種始動口8へ入賞し易くなり、また、始動記憶数が増えるほど、流下経路が一層中央寄りとなって、一層遊技球Pが第1種始動口8へ入賞し易くなるような態様で、且つ、新たな始動情報の記憶毎に態様を変えて動作していることから、遊技球Pは、センターケース4の内部を通過した後に、前面スロープ28から遊技盤1上に遊技球Pを排出し、その排出の位置によって、センターケース4より下方にある第1種始動口8へ入賞し易い場合と、そうでない場合があることは明らかであり、前面スロープ28には複数の排出口を有していないものの、引用発明と本願発明とは「内部を通過させた後に、前記始動入賞口よりも上方に配置された始動入賞口に入賞し易い位置を含む複数の排出位置の何れかからこの遊技球を前記遊技盤上に排出する」点で共通しているといえる。 また、引用発明では、センターケース4(本願発明の「役物装置」に相当)内の始動記憶表示体72(72A、72B、72C、72D、72E、72F)は、所定遊技状態(大当たり遊技時(本願発明の「前記抽選結果に応じて、前記大当り遊技中の」に相当)または時間短縮機能時)においては、通常遊技時よりも、中央スロープ27上で遊技球Pが流下する経路が中央寄りとなって(本願発明の「内部における遊技球が通過する経路を変更し」に相当)、遊技球Pが第1種始動口8へ入賞し易くなる(本願発明の「遊技球が排出される確率を変更する」に相当)ことから、排出口であるかどうかはさておき、引用発明と本願発明とは「前記抽選結果に応じて、前記大当り遊技中の、前記役物装置の内部における遊技球が通過する経路を変更し、始動入賞口に入賞し易い位置から遊技球が排出される確率を変更する」点で共通しているといえ、そのように変更していることから本願発明の「確率変更手段」に相当する構成を備えていることは明らかである。 以上を総合すると両者は、 「少なくとも始動入賞口を含む入賞口が形成され、床面に対して略垂直な面を有する遊技盤を備え、この遊技盤に遊技球を投入し、前記入賞口に遊技球が入賞したときに所定個数の遊技球を払い出すとともに、前記始動入賞口に遊技球が入賞したときには抽選を行い、該抽選結果に応じて大当り遊技を発生させる遊技機であって、 前記遊技盤に投入された遊技球を取込口から取り込み、内部を通過させた後に、前記始動入賞口よりも上方に配置された始動入賞口に入賞し易い位置を含む複数の排出位置の何れかからこの遊技球を前記遊技盤上に排出する役物装置と、 前記抽選結果に応じて、前記大当り遊技中の、前記役物装置の内部における遊技球が通過する経路を変更し、前記当選排出口から遊技球が排出される確率を変更する確率変更手段と、 を備えた遊技機。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明では、前記遊技盤に投入された遊技球を取込口から取り込み、内部を通過させた後に、前記始動入賞口よりも上方に配置された当選排出口を含む複数の排出口の何れかからこの遊技球を前記遊技盤上に排出する役物装置を備え、前記抽選結果に応じて、前記大当り遊技中の、前記役物装置の内部における遊技球が通過する経路を変更し、前記当選排出口から遊技球が排出される確率を変更しているのに対して、引用発明では、役物装置内の内部にあるのが当選排出口を含む複数の排出口ではなく第1種始動口8へ入賞し易い位置を含む複数の位置である点。 5.判断 <相違点>について 原査定の拒絶の理由(平成22年5月26日付け拒絶理由通知)において引用文献2として引用された特開平11-333066号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (オ)「【0059】 <第3の実施の形態> 図18ないし図21は本発明の第3の実施の形態を説明するための図である。 ここに、図18は、同第3の実施の形態における入賞装置の要部の構成例を示す斜視図である。図19は、同第3の実施の形態における入賞装置の構成例を示す斜視図である。図20は、同第3の実施の形態におけるスロープの構成例を示す斜視図である。図21は、同第3の実施の形態におけるゲートの構成例を示す図である。この第3の実施の形態においても、第1の実施の形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。 【0060】 この第3の実施の形態における入賞装置10Bは、受入れたパチンコ玉を抽選して当選したパチンコ玉のみを下流に導く第1の抽選手段28と、第1の抽選手段28で当選したパチンコ玉をさらに抽選して当選したパチンコ玉を始動入賞口11に導く第2の抽選手段29とから構成されている。 【0061】 ここで、前記第1の抽選手段28は、玉受入口20からつづら折り状に形成したスロープ30と、前記スロープ30の折り曲がり部分の一方に設けたゲート31と、前記スロープ30の折り曲がり部分の他方に設けた壁面32とを配置してなり、前記ゲート31で跳ね返ったパチンコ玉PTを当選玉として、さらに下降させるようにな構成となっている。また、ゲート31で跳ね返らないパチンコ玉は、遊戯盤2の裏面側に構成された通路33を通って外れ領域34に導かれるようになっている。 【0062】 ここで、スロープ30は、図20に示すように、その中央部に溝35が形成されており、この溝35内をパチンコ玉PTが通るようになっている。 【0063】 また、ゲート31は、図21(a)に示すように図示上端部で回動可能にされた扉36で構成するか、あるいは、図21(b)に示すようにモーターで上下動する扉37で構成してもよい。 【0064】 なお、上記第1の抽選手段28は、図示左右両方に配置されている。 【0065】 また、第2の抽選手段29は、複数の穴38を設けた円形状のクルーン39からなり、前記第1の抽選手段28から導かれたパチンコ玉をクルーン39上に受入れて前記複数の穴38のうちの所定の穴38に落下したパチンコ玉のみを当選パチンコ玉として始動入賞口11に導く通路40を設けたものである。また、他の穴38に落下したパチンコ玉は、抽選に落選したパチンコ玉として外れ領域34に落ちるようになっている。」 (カ)「【0071】 このような第3の実施の形態によれば、パチンコ玉PTがスロープ30上を移動し、このパチンコ玉PTがゲート31で反発されるか通過するかしてパチンコ玉PTが抽選され、このゲート31において反発(当選)したパチンコ玉PTのみがクルーン39上に移動でき、さらにクルーン39上で複数の穴38のうち所定の穴38から落下するか否かでパチンコ玉PTの抽選を行うようにしてあるので、複数の抽選機会が与えられて全体に面白みのあるパチンコ遊戯装置を得ることができる。」 以上、(オ)乃至(カ)の記載、及び図面を総合すると、引用例2には、 「玉受入口20から受入れたパチンコ玉PTを第1の抽選手段28と、第2の抽選手段によって外れ領域34と当選パチンコ玉として始動入賞口11に導く通路40のいずれかに導く入賞装置10Bを備えたパチンコ遊戯装置。」 の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されていると認めることができる。 ここで、引用発明2の外れ領域34及び通路40は、図18の記載によれば、壁を隔てて別の通路として形成されており、通路40は始動入賞口11の上方に配置されていることから、通路40から遊技領域に向けて落下する部分は本願発明の「前記始動口よりも上方に配置された当選排出口」に相当し、外れ領域34から遊技領域に向けて落下する部分は本願発明の当選排出口を含まない「複数の排出口」に相当する。また、引用発明2の「パチンコ玉PT」、「入賞装置10B」、「パチンコ遊戯装置」は本願発明の「遊技球」、「役物装置」、「遊技機」に相当する。 そして、引用発明と引用発明2とは、ともに役物装置に取り込んだ遊技球を所定の部材で複数の経路に振り分けて遊技領域に複数の位置から排出する遊技機である点で共通しているので、引用発明2の外れ領域34及び通路40を引用発明の前面スロープ28に適用して、本願発明の相違点に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 また、本願発明の作用効果は、引用発明及び引用発明2に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。 なお、請求人は審判請求書において「本願発明1の遊技機によれば、抽選結果に応じて、大当り遊技中の、役物装置の内部における遊技球が通過する経路を変更し、当選排出口から遊技球が排出される確率を変更することができます。すなわち、大当り遊技中、役物装置の内部における遊技球が通過する経路、及び当選排出口から遊技球が排出される確率は、一律ではなく、抽選結果に応じて種々に変化しますから、大当たり遊技が実行されているときであっても、役物装置に遊技者の注目を集めることができます。」と主張しているが、請求項1において「遊技球が通過する経路を変更」する「前記抽選結果」は、「前記始動入賞口に遊技球が入賞したときには抽選を行い、該抽選結果に応じて大当り遊技を発生させる」抽選結果であることから、前記主張は請求項1に係る発明の特定事項に基づかない主張であり採用することができない。 6.まとめ 以上のとおり、本願発明は引用発明及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 |
審理終結日 | 2012-01-16 |
結審通知日 | 2012-01-17 |
審決日 | 2012-01-30 |
出願番号 | 特願2004-245267(P2004-245267) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 篠崎 正 |
特許庁審判長 |
立川 功 |
特許庁審判官 |
瀬津 太朗 澤田 真治 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 足立 勉 |