• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24C
管理番号 1253850
審判番号 不服2011-1831  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-26 
確定日 2012-03-15 
事件の表示 特願2008-240923「引出し型加熱調理器」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 2日出願公開、特開2010- 71585〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成20年9月19日の出願であって、平成22年10月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年1月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成23年1月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年1月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「内部に加熱室が形成されている調理器本体と、
側壁と奥面に隔壁を有し前側に端部を有する容器状の形状を有しており被加熱物を収容可能であるとともに前記加熱室内から引出し可能な加熱容器及び前記加熱室を閉鎖可能な開閉扉を備える引出し体と、
前記開閉扉の内側に連結され、前記引出し体を前記加熱室の外側で引出し方向にスライド案内させるスライド機構と、
伝達機構を介して前記スライド機構に接続されており前記引出し体を出し入れ方向に駆動する駆動機構とを備え、
前記引出し体の前記加熱容器に載置した被加熱物のマイクロ波による加熱を行う引出し型加熱調理器において、
前記引出し体の前記加熱容器を、前記加熱容器の後端において前記加熱室の底面に対して当該底面上を引出し方向に転動可能なローラーで支持するとともに、前記加熱容器の前側の前記端部の上部において前記開閉扉の内側壁に対して電気的な絶縁物を介して上方から係止しまた上方に分離可能に連結したことを特徴とする引出し型加熱調理器。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「加熱容器」について、「側壁と奥面に隔壁を有し前側に端部を有する容器状の形状を有しており」との限定を付加するとともに、前記「加熱容器」を、「前記加熱容器の後端において前記加熱室の底面に対して当該底面上を引出し方向に転動可能なローラーで支持するとともに、前記加熱容器の前側の前記端部の上部において・・・上方から係止しまた上方に」分離可能に連結したとの限定を付加するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野および解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭54-35440号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「本発明は比較的大きな加熱室を有する高周波加熱装置に関する。」(明細書第1頁左下欄第17?18行目。下線は当審にて付与。以下同様。)

b)「以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。第1図は高周波加熱装置で食品を調理しているところを示し、本体(1)内には食品を加熱調理する加熱室(2)が設けられ、加熱室(2)の後壁(2a)には高周波発生装置であるマグネトロン(3)に連設されたマグネトロンアンテナ(4)に導波管(5)で結合された給電口(6)が設けられ、前記マグネトロンアンテナ(4)から放射された電波が前記給電口(6)を通して前記加熱室(2)内に導かれ、該加熱室(2)内の受皿(7)に載置された食品類(8)を加熱調理するようになつている。また前記加熱室(2)の前面開口部を開閉するドア(9)の下部には移動用ローラ(10)付きレール(11)が固着され、ドア(9)の開閉に応じて前記レール(11)は固定ローラ(12)に案内されて前後に移動する。また、前記ドア(9)の加熱室(2)に面した側面には前記受皿(7)の周縁部を支持すべく金属棒を第2図に示すように方形状に形成した受皿取付金具(13)の一端縁を支持する支持具(14)が装着されている。
・・・従つて前記受皿(7)のみを持ち上げることによつて、そのまゝ持ち運びできることになる。」(明細書第1頁右下欄第17行?第2頁左上欄第20行目。)

c)「次に、前記取付金具(13)と前記支持具(14)との係合を解除するには、前記取付金具(13)の後部を矢印方向へ持ち上げるようにすればよく、逆に前記取付金具(13)を前記支持具(14)に装着するには第3図に示す如く、前記取付金具(13)の2本の金属棒(ホ)(ヘ)が前記支持具(14)に接当するようにすればよい。なお、前記取付金具(13)および支持具(14)は高周波動作時に放電するのを防止するため、その表面にホーロ等の絶縁処理(15)が施されている。」(明細書第2頁右上欄第1?9行目。)

d)「受皿(7)」および「ドア(9)」は、加熱室(2)内から引出されるものであるから、「引出し体」であると認められる。

e)上記b)の「受皿(7)のみを持ち上げることによつて、そのまゝ持ち運びできることになる」の記載、上記c)の「前記取付金具(13)と前記支持具(14)との係合を解除するには、前記取付金具(13)の後部を矢印方向へ持ち上げるようにすればよく」の記載、および、第1?3図から、受皿(7)は、ドア(9)の内側壁に対して、取付金具(13)および支持具(14)を介して上方から係止しまた上方に分離可能に連結されていると認められる。

上記a)?c)の記載事項、上記d)?e)の認定事項および第1?3図の図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「内部に加熱室(2)が形成されている本体(1)と、
食品類(8)を載置可能であるとともに前記加熱室(2)内から引出し可能な受皿(7)及び前記加熱室(2)の前面開口部を開閉するドア(9)を備える引出し体と、
前記ドア(9)の下部に固着され、前記引出し体を前記加熱室(2)の外側で前後に移動させる移動用ローラ(10)付きレール(11)とを備え、
前記引出し体の前記受皿(7)に載置した食品類(8)の高周波電波による加熱を行う高周波加熱装置において、
前記引出し体の前記受皿(7)を、前記ドア(9)の内側壁に対して、その表面にホーロ等の絶縁処理(15)が施された取付金具(13)および支持具(14)を介して上方から係止しまた上方に分離可能に連結した高周波加熱装置。」

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭51-120450号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「この発明は、食品のマイクロ波加熱装置の改良に関するものである。」(明細書第1頁左下欄第11?12行)

b)「また、前記開閉扉30の外側面には、開閉扉ロック機構(図示せず)と連動する把手36を設け、内側面には係止突起38を複数個設け、この係止突起38に被加熱物受台40を取付ける。前記被加熱物受台40はマイクロ波の透過性が良好で耐熱性にも優れたポリプロピレン等の材料でL型に一体成型し、前記係止突起38に対向する位置に係止孔42を設けて前記開閉扉と取外し自在に構成する(第4図参照)。なお、前記被加熱物受台40は箱形あるいは任意形状に構成することもできる。」(明細書第2頁左下欄第13行?右下欄第3行)

c)第1図から、引用例2に記載された装置は「引出し型加熱調理器」であると認められる。

上記a)?b)の記載事項、上記c)の認定事項および図面の図示内容を総合すると、引用例2には、次の事項が記載されていると認められる。
「被加熱物受台40に載置した食品のマイクロ波による加熱を行う引出し型加熱調理器において、前記被加熱物受台40は開閉扉30と取外し自在に、かつ、箱形あるいは任意形状に構成すること。」

(3)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-207913号公報(以下「引用例3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「この発明は、開いた扉を通して加熱室内に投入された被調理物を加熱し、開閉扉が自動的に開閉する加熱調理器に関する。」(段落【0001】)

b)「引き出し体2は、矢印で示す方向(図2、図3)に調理器本体1の加熱室内から外側へ引き出すことができるように、後述するスライド機構4,4によって調理器本体1内で移動可能に配置されている。引き出し体2は、加熱室を開閉するための開閉ドア(以下、「ドア」と略す)2aと、ドア2aが取り付けられ且つ被加熱物を載置状態に収容するための加熱容器3とを備えている。加熱容器3は、ドア2aに取り付けられる前板、前板の左右から後方に延びる左右側の側板と、側板に対してその背面(奥)側でつながる後板と、側板及び後板につながる底板とを有しており、上部に被加熱物を出し入れ可能な容器開口部が形成されている。・・・
図2?図4に示すように、加熱調理器は、引き出し体2を調理器本体1内で移動させるために、加熱容器3の左右両外側に配置され且つ固定レール4aに対して可動レール4bをスライド可能としたスライドレールから成る入れ子式のスライド機構4を備えている。・・・」(段落【0022】?段落【0023】)

c)「前記開閉ドアの開閉運動に変換される回転力を出力するモーターを備えており、前記モーターの回転信号に基づいて前記開閉ドアが前記全閉位置及び前記手前位置に到達したことを検知することを特徴とする請求項4又は5に記載の加熱調理器。」(請求項6)

上記a)?c)の記載事項および図面の図示内容を総合すると、引用例3には、次の事項が記載されていると認められる。
(引用例3の記載事項1)
「引き出し体2の加熱容器3に載置した被加熱物の加熱を行う引出し型加熱調理器において、前記加熱容器3は、ドア2aに取り付けられる前板、前板の左右から後方に延びる左右側の側板と、側板に対してその背面(奥)側でつながる後板と、側板及び後板につながる底板とを有しており、上部に被加熱物を出し入れ可能な容器開口部が形成されていること」
(引用例3の記載事項2)
「引き出し体2の加熱容器3に載置した被加熱物の加熱を行う引出し型加熱調理器において、開閉ドアの開閉運動に変換される回転力を出力するモーターを備えること。」

(4)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭59-182596号(実開昭61-96211号)のマイクロフィルム(以下「引用例4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「この考案は、厨房用として使用するテーブルこんろのグリルに関する。」(明細書第2頁第5?6行)

b)「図面において、(1)はこんろ器体(A)に設けたグリル庫(B)の扉、(2)は断面円形のガイド棒で、ガイド棒(2)は左、右に2本の丸棒を平行に配してその基端を取付板(12)に固設し、該取付板(12)を介して上記扉(1)に蝶ナツト(13)により着脱が自由に行えるよう連設され、グリル庫(B)内に固定せるグリル本体ケース(3)の下面にその開口(4)の下部に穿つた水平状のガイド面(5a)をもつガイド孔(5)に挿通して配設し、該ガイド棒(2),(2)の先端にストッパ(6),(6)を直角に立ち上げかつ内向きに屈曲して設け、その端部(6a),(6a)をグリル本体ケース(3)の底面下部に当接させるとともに、基端部には引掛け杆(7),(7)を屈曲して左右方向に延出させて起立して設け、該引掛け杆(7),(7)にはグリル本体ケース(3)内に摺動自由に出し入れされる水入れ皿(9)の前上縁に一体的にカールして形成された引掛け部(10),(10)を引掛けて水入れ皿(9)をガイド棒(2),(2)に吊り下げ結合せしめるとともに、後端部底面に球状のスライド凸起(8)を突設し、該凸起(8)がグリル本体ケース(3)の底面に当接した状態でグリル本体ケース(3)に対し水入れ皿(9)を水平状に保持している。・・・
しかして、扉(1)に着脱可能としたガイド棒(2),(2)に水入れ皿(9)が着脱自由に結合され、かつ、水入れ皿(9)はグリル本体ケース(3)に対し水平状に保持されているから把手(15)を把持して扉(1)を出し入れ操作すれば水入れ皿(9)はガイド棒(2),(2)とともに水平を保つて進退移動し、・・・」(明細書第6頁第3行?第8頁第5行)

上記a)?b)の記載事項および図面の図示内容を総合すると、引用例4には、次の事項が記載されていると認められる。
「テーブルこんろのグリルにおいて、引掛け杆(7),(7)にグリル本体ケース(3)内に摺動自由に出し入れされる水入れ皿(9)の前上縁に一体的にカールして形成された引掛け部(10),(10)を引掛けて水入れ皿(9)をガイド棒(2),(2)に吊り下げ結合せしめるとともに、後端部底面に球状のスライド凸起(8)を突設し、該凸起(8)がグリル本体ケース(3)の底面に当接した状態でグリル本体ケース(3)に対し水入れ皿(9)を水平状に保持すること。」

(5)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭54-60971号(実開昭55-159916号)のマイクロフィルム(以下「引用例5」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「従来、いわゆる引き出し式ドアータイプの高周波加熱装置等で、磁気駆動式ターンテーブルを備えたものはないが、この磁気駆動方式ターンテーブルの場合、次のような欠点がある。」(明細書第2頁第9?12行)

b)「(2) 引き出し式ドアーを、いっぱいに引き出した状態で仮に第1図a,bに示すように、片側を支持具12で支持し、もう片側を支持ローラ15で支持するような、いわゆる両持ち式引き出しドアーにすると、受皿13が容易に引き出せる為には、加熱室2の奥行が必要以上に・・・」(明細書第2頁第18行?第3頁第3行)

c)「・・・第2図矢印↓に示すように重い被加熱物を載せると、受皿の支持台11が下がってしまい、・・・」(明細書第3頁第15?17行)

d)第1図a,bから、ドアー6の内側壁に支持具12が設けられていると認められる。

e)第1図a,bおよび技術常識から、支持ローラ15は、「加熱室2」の底面に対して当該底面上を引出し方向に転動可能であると認められる。

上記a)?c)の記載事項、上記d)?e)の認定事項および第1図a,bの図示内容を総合すると、引用例5には、次の事項が記載されていると認められる。
「引き出し式ドアータイプの高周波加熱装置において、受皿の支持台11の片側をドアー6の内側壁に設けられた支持具12で支持し、もう片側を加熱室2の底面に対して当該底面上を引出し方向に転動可能な支持ローラ15で支持すること。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「加熱室(2)」は、本願補正発明の「加熱室」に相当し、以下同様に、
「本体(1)」は「調理器本体」に、
「食品類(8)」は「被加熱物」に、
「受皿(7)」は「加熱容器」に、
「ドア(9)」は「開閉扉」に、
「移動用ローラ(10)付きレール(11)」は「スライド機構」に、
「高周波電波による加熱を行う」ことは「マイクロ波による加熱を行う」ことに、
「高周波加熱装置」は「引出し型加熱調理器」に、
それぞれ相当する。
また、引用発明の「加熱室(2)の前面開口部を開閉するドア(9)」は、本願補正発明の「加熱室を閉鎖可能な開閉扉」に相当し、引用発明の「引出し体を前記加熱室(2)の外側で前後に移動させる移動用ローラ(10)付きレール(11)」は、本願補正発明の「引出し体を前記加熱室の外側で引出し方向にスライド案内させるスライド機構」に相当し、引用発明の「その表面にホーロ等の絶縁処理(15)が施された取付金具(13)および支持具(14)」は、高周波動作時に放電するのを防止するためにその表面にホーロ等の絶縁処理(15)が施されているものであるから、本願補正発明の「電気的な絶縁物」に相当する。

さらに、引用発明の「食品類(8)を載置可能である」ことと、本願補正発明の「被加熱物を収容可能である」こととは、「被加熱物を載置可能である」という点で共通するとともに、引用発明の「ドア(9)の下部に固着され」ることと、本願補正発明の「開閉扉の内側に連結され」ることとは、「開閉扉に連結され」るという点で共通する。

したがって、両者は、
「内部に加熱室が形成されている調理器本体と、
被加熱物を載置可能であるとともに前記加熱室内から引出し可能な加熱容器及び前記加熱室を閉鎖可能な開閉扉を備える引出し体と、
前記開閉扉に連結され、前記引出し体を前記加熱室の外側で引出し方向にスライド案内させるスライド機構とを備え、
前記引出し体の前記加熱容器に載置した被加熱物のマイクロ波による加熱を行う引出し型加熱調理器において、
前記引出し体の前記加熱容器を、前記開閉扉の内側壁に対して電気的な絶縁物を介して上方から係止しまた上方に分離可能に連結した引出し型加熱調理器。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では、「加熱容器」が「側壁と奥面に隔壁を有し前側に端部を有する容器状の形状を有しており」被加熱物を「収容可能である」のに対し、引用発明では、「受皿(7)」が食品類(8)を「載置可能である」が、側壁と奥面に隔壁を有し前側に端部を有する容器状の形状を有しているか不明な点。

[相違点2]
本願補正発明では、「スライド機構」が「開閉扉の内側に連結され」ているのに対し、引用発明では、「移動用ローラ(10)付きレール(11)」が「ドア(9)の下部に固着され」ている点。

[相違点3]
本願補正発明は、「引出し型加熱調理器」が「伝達機構を介して前記スライド機構に接続されており前記引出し体を出し入れ方向に駆動する駆動機構」を備えているのに対し、引用発明は、当該駆動機構を備えていない点。

[相違点4]
本願補正発明では、「加熱容器」を「前記加熱容器の後端において前記加熱室の底面に対して当該底面上を引出し方向に転動可能なローラーで支持するとともに、前記加熱容器の前側の前記端部の上部において」開閉扉の内側壁に対して上方から係止して連結しているのに対し、引用発明では、当該構成を備えていない点。

4.判断
[相違点1]について
本願補正発明と引用例2の記載事項とを対比すると、引用例2の「被加熱物受台40」は本願補正発明の「加熱容器」に相当し、引用例2の「食品」は本願補正発明の「被加熱物」に相当し、引用例2の「開閉扉30」は本願補正発明の「開閉扉」に相当するから、引用例2の記載事項は、「加熱容器に載置した被加熱物のマイクロ波による加熱を行う引出し型加熱調理器において、前記加熱容器は開閉扉と取外し自在に、かつ、箱形あるいは任意形状に構成すること。」と言い換えることができる。
つまり、開閉扉と分離可能な加熱容器の形状を箱形にすることは、本願出願前から公知である。

また、本願補正発明と引用例3の記載事項1とを対比すると、引用例3の「引き出し体2」は本願補正発明の「引き出し体」に相当し、引用例3の「加熱容器3」は本願補正発明の「加熱容器」に相当し、引用例3の「ドア2a」は本願補正発明の「開閉扉」に相当するから、引用例3の記載事項1は、「引き出し体の加熱容器に載置した被加熱物の加熱を行う引出し型加熱調理器において、前記加熱容器は、開閉扉に取り付けられる前板、前板の左右から後方に延びる左右側の側板と、側板に対してその背面(奥)側でつながる後板と、側板及び後板につながる底板とを有しており、上部に被加熱物を出し入れ可能な容器開口部が形成されること。」と言い換えることができる。
つまり、加熱容器の形状を、前板、前板の左右から後方に延びる左右側の側板と、側板に対してその背面(奥)側でつながる後板と、側板及び後板につながる底板とを有しており、上部に被加熱物を出し入れ可能な容器開口部が形成されたものにすることは、本願出願前から公知である。

そうすると、引用発明において、「加熱容器」である「受皿(7)」の形状を加熱容器として共通する引用例2および3に記載された公知の構成にすることにより、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]について
スライド機構を開閉扉のどこに連結するかは、装置の形状等を踏まえて当業者が適宜選択し得る設計事項であり、開閉扉の下部の代わりに内側に連結することに特段の困難性は認められない。
そうすると、引用発明において、「移動用ローラ(10)付きレール(11)」をドア(9)の下部の代わりに内側に連結して、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3]について
本願補正発明と引用例3の記載事項2とを対比すると、引用例3の「引き出し体2」は本願補正発明の「引き出し体」に相当し、引用例3の「加熱容器3」は本願補正発明の「加熱容器」に相当し、引用例3の「開閉ドア」は本願補正発明の「開閉扉」に相当するから、引用例3の記載事項2は、「引き出し体の加熱容器に載置した被加熱物の加熱を行う引出し型加熱調理器において、開閉扉の開閉運動に変換される回転力を出力するモーターを備えること。」と言い換えることができる。
つまり、「引出し型加熱調理器」において、開閉扉の開閉運動に変換される回転力を出力するモーター、言いかえると、伝達機構を介して引出し体を出し入れ方向に駆動する駆動機構、を備えたものは、本願出願前から公知である。

そうすると、引用発明に引出し型加熱調理器として共通する引用例3の記載事項2を適用することにより、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点4]について
本願補正発明と引用例4の記載事項とを対比すると、引用例4の「テーブルこんろのグリル」は本願補正発明の「引出し型加熱調理器」に相当し、引用例4の「グリル本体ケース(3)」は本願補正発明の「加熱室」に相当する。また、引用例4の「水入れ皿(9)」と本願補正発明の「加熱容器」とは、「容器」という点で共通し、引用例4の「球状のスライド凸起(8)」と本願補正発明の「底面上を引出し方向に転動可能なローラー」とは、「(容器後端の)支持部」という点で共通する。
さらに、引用例4の「引掛け杆(7),(7)」は「扉(1)」の内側壁に連設された「部材」であるから、引用例4の「引掛け杆(7),(7)に」「水入れ皿(9)の前上縁に一体的にカールして形成された引掛け部(10),(10)を引掛けて水入れ皿(9)をガイド棒(2),(2)に吊り下げ結合せしめる」ことと本願補正発明の「加熱容器の前側の前記端部の上部において前記開閉扉の内側壁に対して電気的な絶縁物を介して上方から係止しまた上方に分離可能に連結」することとは、「容器の前側の端部の上部において開閉扉の内側壁に対して部材を介して上方から係止して連結」するという点で共通するから、引用例4の記載事項は、「引出し型加熱調理器において、加熱室内に摺動自由に出し入れされる容器の前側の端部の上部において開閉扉の内側壁に対して部材を介して上方から係止して連結するとともに、後端部底面に支持部を突設し、該支持部が加熱室の底面に当接した状態で加熱室に対し容器を水平状に保持すること。」と言い換えることができる。
つまり、引出し型加熱調理器において、加熱室内に摺動自由に出し入れされる「容器」の後端部底面に支持部を突設し、該支持部が加熱室の底面に当接した状態で「容器」を保持するとともに、「容器」の前側の端部の上部において開閉扉の内側壁に対して部材を介して上方から係止して連結することは、本願出願前から公知である。

また、本願補正発明と引用例5の記載事項とを対比すると、引用例5の「引き出し式ドアータイプの高周波加熱装置」は本願補正発明の「引出し型加熱調理器」に相当し、引用例5の「受皿」は本願補正発明の「加熱容器」に相当し、引用例5の「ドアー6」は本願補正発明の「開閉扉」に相当し、引用例5の「加熱室2」は本願補正発明の「加熱室」に相当し、引用例5の「支持ローラ15」は本願補正発明の「ローラー」に相当する。また、引用例5の「支持台11の片側」は「前側の端部」であり、「(支持台11の)もう片側」は「後端」であるから、引用例5の記載事項は、「引出し型加熱調理器において、加熱容器の支持台11の前側の端部を開閉扉の内側壁に設けられた支持具12で支持し、後端を加熱室の底面に対して当該底面上を引出し方向に転動可能なローラーで支持すること。」と言い換えることができる。
つまり、引出し型加熱調理器において、「加熱容器」の支持台11を、前記「加熱容器」の支持台11の後端において加熱室の底面に対して当該底面上を引出し方向に転動可能なローラーで支持するとともに、前記「加熱容器」の支持台11の前側の端部において開閉扉の内側壁に対して上方から係止して連結することは、本願出願前から公知である。

そうすると、引用発明において、「加熱容器」である「受皿(7)」の支持について、引出し型加熱調理器として共通する引用例4および5の記載事項を適用することにより、相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の奏する作用効果も、引用発明及び引用例2?5の記載事項から当業者が予測できる範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2?5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成23年1月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年7月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「内部に加熱室が形成されている調理器本体と、
被加熱物を収容可能であるとともに前記加熱室内から引出し可能な加熱容器及び前記加熱室を閉鎖可能な開閉扉を備える引出し体と、
前記開閉扉の内側に連結され、前記引出し体を前記加熱室の外側で引出し方向にスライド案内させるスライド機構と、
伝達機構を介して前記スライド機構に接続されており前記引出し体を出し入れ方向に駆動する駆動機構とを備え、
前記引出し体の前記加熱容器に載置した被加熱物のマイクロ波による加熱を行う引出し型加熱調理器において、
前記引出し体の前記加熱容器を前記開閉扉の内側壁に対して電気的な絶縁物を介して分離可能に連結したことを特徴とする引出し型加熱調理器。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2.2.」に記載したとおりである。

2.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、前記「第2.3.」と同様の検討により、両者は
「内部に加熱室が形成されている調理器本体と、
被加熱物を載置可能であるとともに前記加熱室内から引出し可能な加熱容器及び前記加熱室を閉鎖可能な開閉扉を備える引出し体と、
前記開閉扉に連結され、前記引出し体を前記加熱室の外側で引出し方向にスライド案内させるスライド機構とを備え、
前記引出し体の前記加熱容器に載置した被加熱物のマイクロ波による加熱を行う引出し型加熱調理器において、
前記引出し体の前記加熱容器を前記開閉扉の内側壁に対して電気的な絶縁物を介して分離可能に連結した引出し型加熱調理器。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、「加熱容器」が被加熱物を「収容可能である」のに対し、引用発明では、「受皿(7)」が食品類(8)を「載置可能である」点。

[相違点2]
本願発明では、「スライド機構」が「開閉扉の内側に連結され」ているのに対し、引用発明では、「移動用ローラ(10)付きレール(11)」が「ドア(9)の下部に固着され」ている点。

[相違点3]
本願発明は、「引出し型加熱調理器」が「伝達機構を介して前記スライド機構に接続されており前記引出し体を出し入れ方向に駆動する駆動機構」を備えているのに対し、引用発明は、当該駆動機構を備えていない点。

3.判断
[相違点1?3]について
前記「第2.4.[相違点1]について?[相違点3]について」で検討したとおり、引用発明において、「加熱容器」である「受皿(7)」の形状を引用例2および3に記載された公知の構成にすること、「移動用ローラ(10)付きレール(11)」をドア(9)の下部の代わりに内側に連結すること、および、引用発明に引用例3の記載事項2を適用することにより、相違点1?3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
そうすると、本願発明は、引用発明及び引用例2?3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2?3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-11 
結審通知日 2012-01-17 
審決日 2012-01-30 
出願番号 特願2008-240923(P2008-240923)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24C)
P 1 8・ 575- Z (F24C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 翔平  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 青木 良憲
長浜 義憲
発明の名称 引出し型加熱調理器  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ