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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04B
管理番号 1253962
審判番号 不服2010-23785  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-22 
確定日 2012-03-12 
事件の表示 特願2004- 23864「充填ポンプのピストン芯出し支持体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月19日出願公開、特開2004-232644〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年1月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年1月31日、米国)の出願であって、平成22年6月18日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月22日に拒絶査定不服審判請求がなされると共に、同日付手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「入口と、出口と、その入口およびその出口の間のポンピング・チャンバとを有する形式のピストン・ポンプであって、
シリンダと、
そのシリンダ内を往復移動できるように配置されたピストンと、
そのピストンから前記シリンダへ延在し、シールを形成し、ポンピング・チャンバの反対側のポンプの駆動側端部を定める内側ダイヤフラムと、
ポンプの被駆動側端部にて前記ピストンに作動連結され、前記ピストンに往復移動を行わせる駆動装置と、
前記ピストンに配置された少なくとも三つの芯出し部材を含む芯出し支持体であって、前記各芯出し部材は摩擦の小さい材料から形成され、いずれか二つの隣接する前記芯出し部材の間に形成される円弧が180°未満となるように配置された前記芯出し部材を含み、
前記芯出し支持体と前記駆動装置との間に配置された外側ダイヤフラムを含み、
前記内側ダイヤフラムと前記外側ダイヤフラムの構造はいずれも、ダイヤフラムが前記ピストンの移動によって巻上げられるローリング形式である、
ピストン・ポンプ。」
と補正された。

上記補正は、実質的に、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であるポンピング・チャンバの反対側のポンプの駆動側端部を定める「ダイヤフラム」について「内側ダイヤフラム」と限定し、同じくピストンに配置された少なくとも三つの「芯出し部材」について「芯出し部材を含む芯出し支持体」と限定し、同じく「ピストン・ポンプ」について「芯出し支持体と駆動装置との間に配置された外側ダイヤフラムを含み」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
a)原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第4268042号明細書(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「The invention incorporates a specially modified piston in a modified cylinder, which could be used as a compressor, a pump, or an engine and will be referred to generally as an engine. FIG. 1 illustrates a traditional piston 10 having two slots or grooves 12 and 14 formally for the seating of piston rings. A third groove 16 is an oil ring seat, and in the two outermost grooves are disposed a plurality of ball bearings 18 which are preferably captured in some type of cage such as the split ring cage 20 to maintain the balls properly spaced when in use and to prevent their spilling when the piston is removed for servicing. Note that the balls are of sufficient diameter to extend out to the interior wall of the cylinder 22.
There is now built in to the piston "blow-by", requiring the incorporation of an accordion diaphram 24. As shown, the sides of the diaphram slope inwardly toward the bottom so that the overall configuration is frustoconical, with a continuous bottom 26 and a radially extending flange 28 which is captured between the cylinder head 30 and the top of the block 32 so that the cup shape accordion is simply dropped into the top of the cylinder and the head subsequently bolted into position.
(和訳:本発明は、コンプレッサー、ポンプまたはエンジンとして使用でき、一般的にエンジンと呼べる、改良されたシリンダの中の特別に改良されたピストンに関する。図1は、通常はピストンリングを装着するための2つのスロットまたは溝12,14を有する従来のピストン10を示す。第3の溝16はオイルリングを装着するためのもので、上下両端の溝には多数のボールベアリング18が配置されている。これらのボールベアリング18は、使用中に適切な位置を維持し、ピストンの整備点検における取り外し時の脱落を防ぐために、割りリングケージ20のようなタイプのケージに入れられるのが望ましい。これらのボールはシリンダ22の内壁まで届くのに十分な直径のものであることに留意すべきである。
現在、アコーディオンダイアフラム24の組込を必要とする「ブローバイ」ピストンとして構築されたものがある。図示されるように、全体の形が截頭円錐形となるように底部に向かって内側に傾斜しているダイアフラムの側面は、連続した底部26とシリンダヘッド30とブロック32の上端間に固定された放射状に広がっているフランジ28と共に、カップ形をなす。そして、カップ形のアコーディオンダイアフラムはシリンダの上端面まで下がり、その後、その位置で容易にボルト締めされる。)」(第2欄4?27行)

・「Thus an existing engine, pump or compressor can be easily converted to this less frictional implementation by the removal of the pistons from the cylinder block, removal of the rings from the piston, insertion of the ball cages into the piston ring grooves, reinsertion of the piston, removal of the cylinder head, dropping an accordion diaphram into the cylinder, and bolting on the head.
(和訳:このように、既存のエンジン、ポンプまたはコンプレッサーは、シリンダーブロックからのピストンの取り外し、ピストンからのリングの取り外し、ピストンリング溝へのボール・ケージの挿入、ピストンの再挿入、シリンダーヘッドの取り外し、シリンダーへのアコーディオンダイヤフラムの降下、シリンダーヘッドのボルト留めの行程を経ることで、より摩擦の少ない態様に簡単に転換することができる。)」(第2欄37?44行)

・図1には、ポンプ室と、シリンダ22と、ピストン10と、ピストン10からシリンダ22へ延在し、シールを形成し、ポンプ室のピストン10側の端部を定めるダイヤフラム24と、ポンプのポンプ室と反対側の端部にてピストン10に作動連結される駆動装置と、ボールベアリング18からなる摺動支持体とを含み、ダイヤフラム24の構造は、ダイヤフラムがピストン10の往復移動によって伸縮されるアコーディオン形式であるピストン・ポンプが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「ポンプ室を有する形式のピストン・ポンプであって、
シリンダ22と、
そのシリンダ22内を往復移動できるように配置されたピストン10と、
そのピストン10から前記シリンダ22へ延在し、シールを形成し、ポンプ室のピストン10側の端部を定めるダイヤフラム24と、
ポンプのポンプ室と反対側の端部にて前記ピストン10に作動連結され、前記ピストン10に往復移動を行わせる駆動装置と、
前記ピストン10の溝12,16に配置された多数のボールベアリング18からなる摺動支持体とを含み、
前記ダイヤフラム24の構造は、ダイヤフラムが前記ピストン10の移動によって伸縮されるアコーディオン形式である、
ピストン・ポンプ。」

b)同じく、引用された実願昭58-145584号(実開昭60-54784号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「ところで、このようにクランク室に冷却口を設けた圧縮機にあっては、冷却効果を奏しうるものの空気とともに多量の塵埃を吸い込む場合も考えられ、この塵埃がピストンの摺動面に付着した状態で作動を続けると摺動面にキズが付き圧縮効率の低下を生起するおそれがあった。」(明細書2頁3?8行)

・「第1図において、1はシリンダであり、該シリンダ1はシリンダボアlaを有し、上端には弁座2およびシリンダヘッド3が設けられている。
シリンダボア1a内には、ピストン4が摺動自在に嵌合されており、該ピストン4には弁座2側よりピストンリング5、自己潤滑性を有するライダリング6の順で両リングが嵌合されている。
該ライダリンダ6の下端側すなわち、本実施例では下端に一体的に環状リップ形状のダストリップシール7が形成されている。
8はコンロッドで、一端がピストン4に他端がクランク軸9に連結されており、モータ(図示略)の回転をピストン4に伝達する。
10はクランク室でありシリンダ1の下端に設けられており、コンロッド8及びクランク軸9を収容する。クランク室10には内部を大気に大幅に開放すべく、冷却口11が形成されている。
さて、以上の構成にかかる圧縮機を作動すると、ピストン4の往復動に伴ない圧縮作用を開始するが同時に冷却口11よリクランク室10内に冷却風を導入できるので、ピストン4摺動部等を効率よく冷却する。
圧縮機を塵埃の多い場所で使用したときは、ピストン4の往復動に伴ない冷却口11よりクランク室10内に塵埃が侵入してシリンダボア1aに付着する。
しかしながら、本考案ではライダリング6の下端にはダストリップシール7が設けてあるので、ピストン4の移動に伴ないダストリップシール7が塵埃を除去する。したがって、塵埃をピストンリング5およびライダリング6が直接シリンダボア1aにこすりつけることがなくなり、キズがつくのを防止しうる。」(同書2頁18行?4頁13行)

・「第2図は他の実施例を示すものであり、本実施例では、ダストリップシール7をライダリング6とは別体にしライダリング6よりも下端に形成したものである。基本的な作用については前述の実施例と同様であるため省略するが、本例ではダストリップシール7をライダリング6とは別体にしているためシール7の材質が自由に選択できるため良好な除去作用を成しうることができる。」(同書4頁14行?5頁2行)

・第2図には、第1図を踏まえれば、ピストン4の先端側にピストンリング5を設けると共に、ピストン4のライダリング6とコンロッド8及びクランク軸9を収容したクランク室10との間にダストリップシール7を配置することにより、クランク室10側からピストン4の摺動面への異物の侵入を防止し得るようにしたピストン・ポンプが示されている。

c)同じく、引用された特開昭63-25379号公報(以下、「引用例3」という。)には、「ピストン・ポンプ」と題し、図面と共に次の事項が記載されている。

・「本発明は、ピストンとシリンダボアの間の気密部品を展開膜とするピストンに加えた改良に関するものである。」(2頁左上欄9?11行)

・「第1図は発明を通用した吸込・押出ポンプの縦断面図、ピストン位置は吸込行程の終りにあたる。第2図はピストン位置は押出行程の初めを示た第1図同様図、第3図から第5図は溝に対して様々な位置にあるピストン・リング位置を示している。
図に示した本発明による吸込・押出ポンプの主たる構成は、下部2と上部3からなるシリンダ1、ピストン4と、展開膜5で、膜の側壁下部はシリンダ1の上部下部3、2の間に挟まれ、その底はピストン4の上部に結合されている。」(2頁右下欄1?10行)

・「このように、膜はピストン4の下死点まで正しく伸張する。 リング13は元の位置に止まっている(第5図)、 下死点を越えると同時に、静止しているリング13に対して溝12が移動した後(第4図)、第3図の状態に戻って室24を大気圧にし、寿命を損うような運動なしに膜の伸展が可能になる。」(3頁右下欄8?14行)

・第1図及び第2図には、シール機能を有する展開膜5を、ピストン4の移動によって巻上げられるローリング形式としたものが示されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

まず、ピストン・ポンプにおけるポンプ室(即ち、ポンピング・チャンバ)は、通常、入口と出口の間に設けられているものであるから、後者の「ポンプ室を有する形式のピストン・ポンプ」は前者の「入口と、出口と、その入口およびその出口の間のポンピング・チャンバとを有する形式のピストン・ポンプ」に相当している。

次に、後者の「ポンプ室のピストン10側の端部」は前者の「ポンピング・チャンバの反対側のポンプの駆動側端部」に、後者の「ダイヤフラム24」は前者の「内側ダイヤフラム」に、後者の「ポンプのポンプ室と反対側の端部」は前者の「ポンプの被駆動側端部」に、それぞれ相当している。

また、後者の「ピストン10の溝12,16に配置された多数のボールベアリング18」は、前者の「ピストンに配置された少なくとも三つの芯出し部材」及び「いずれか二つの隣接する芯出し部材の間に形成される円弧が180°未満となるように配置された前記芯出し部材」に相当し、後者の「摺動支持体」は前者の「芯出し支持体」に相当し、後者の「多数のボールベアリング18」は摩擦の小さい構成とされたものであるため、これと前者の「各芯出し部材は摩擦の小さい材料から形成され」た態様とは、「各芯出し部材は摩擦を小さく構成され」たとの概念で共通するから、結局、後者の「ピストン10の溝12,16に配置された多数のボールベアリング18からなる摺動支持体」と前者の「ピストンに配置された少なくとも三つの芯出し部材を含む芯出し支持体であって、前記各芯出し部材は摩擦の小さい材料から形成され、いずれか二つの隣接する前記芯出し部材の間に形成される円弧が180°未満となるように配置された前記芯出し部材」とは、「ピストンに配置された少なくとも三つの芯出し部材を含む芯出し支持体であって、前記各芯出し部材は摩擦を小さく構成され、いずれか二つの隣接する前記芯出し部材の間に形成される円弧が180°未満となるように配置された前記芯出し部材」との概念で共通している。

さらに、後者の「伸縮されるアコーディオン形式」と前者の「巻上げられるローリング形式」とは、「変形される可変長形式」との概念で共通するから、結局、後者の「ダイヤフラム24の構造は、ダイヤフラムがピストン10の移動によって伸縮されるアコーディオン形式である」態様と前者の「内側ダイヤフラムと外側ダイヤフラムの構造はいずれも、ダイヤフラムがピストンの移動によって巻上げられるローリング形式である」態様とは、「内側ダイヤフラムの構造は、ダイヤフラムがピストンの移動によって変形される可変長形式である」との概念で共通している。

したがって、両者は、
「入口と、出口と、その入口およびその出口の間のポンピング・チャンバとを有する形式のピストン・ポンプであって、
シリンダと、
そのシリンダ内を往復移動できるように配置されたピストンと、
そのピストンから前記シリンダへ延在し、シールを形成し、ポンピング・チャンバの反対側のポンプの駆動側端部を定める内側ダイヤフラムと、
ポンプの被駆動側端部にて前記ピストンに作動連結され、前記ピストンに往復移動を行わせる駆動装置と、
前記ピストンに配置された少なくとも三つの芯出し部材を含む芯出し支持体であって、前記各芯出し部材は摩擦を小さく構成され、いずれか二つの隣接する前記芯出し部材の間に形成される円弧が180°未満となるように配置された前記芯出し部材を含み、
前記内側ダイヤフラムの構造は、ダイヤフラムが前記ピストンの移動によって変形される可変長形式である、
ピストン・ポンプ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
各芯出し部材の「摩擦を小さく構成され」た態様に関し、本願補正発明は、「摩擦の小さい材料から形成され」ているのに対し、引用発明は、材料の特定がなされていない点。
[相違点2]
本願補正発明は、「芯出し支持体と駆動装置との間に配置された外側ダイヤフラム」を含んでいるのに対し、引用発明は、かかる外側ダイヤフラムを備えていない点。
[相違点3]
内側ダイヤフラムの構造は、ダイヤフラムがピストンの移動によって「変形される可変長形式」である態様に関し、本願補正発明は、内側ダイヤフラム「と外側ダイヤフラム」の構造は「いずれも」、ダイヤフラムがピストンの移動によって「巻上げられるローリング形式」であるのに対し、引用発明は、「伸縮されるアコーディオン形式」である点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1について
一般に、ピストン・ポンプの駆動力を軽減するために、ピストンの摺動摩擦力を小さく抑えることが望ましいことは明らかであり、引用発明において、前記摺動摩擦力のさらなる低減は当然に要求されるべき課題であるといえるから、かかる課題の範囲内で、摺動摩擦力に影響する芯出し部材を摩擦の小さい材料から形成することにより、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項にすぎないものというべきである。

・相違点2について
例えば、引用例2にも開示されているように、ピストンの先端側に内側シール部材(「ピストンリング5」が相当)を設けると共に、ピストンの芯出し支持体(「ライダリング6」が相当)と駆動装置(「コンロッド8及びクランク軸9を収容したクランク室10」が相当)との間に外側シール部材(「ダストリップシール7」が相当)を配置することにより、駆動装置側からピストンの摺動面への異物の侵入を防止し、ピストンの摺動面の損傷を防止し得るようにすることは、ピストン・ポンプの分野における周知技術である。

引用発明において、ピストンの摺動面の損傷防止は当然に要求されるべき課題であるといえるから、かかる課題の下に、上記周知技術を採用し、芯出し支持体と駆動装置との間に外側シール部材を配置することは、当業者が容易に想到し得たものというべきであり、その際、外側シール部材を内側シール部材(内側ダイヤフラム)と同様にダイヤフラムで構成することも任意である。

そうすると、相違点2は格別のものとはいえない。

・相違点3について
例えば、引用例3にも開示されているように、シール機能を有するダイヤフラム(「展開膜5」が相当)として、ピストンの移動によって巻上げられるローリング形式のものを使用することは、ピストン・ポンプの分野における常套手段であるといえる。

そうすると、上記「相違点2について」での検討を踏まえ、引用発明において外側ダイヤフラムを設けた場合に、内側ダイヤフラムと外側ダイヤフラムの構造をいずれも、上記常套手段に倣い、ピストンの移動によって巻上げられるローリング形式とすることで、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜改変し得る設計的事項にすぎないものというべきである。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明、上記周知技術及び上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、上記周知技術及び上記常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、平成22年10月22日付の審判請求書(5頁(d)の項参照)において、本願補正発明は、内側ダイヤフラムを有することで「製品P」から離絶し、外側ダイヤフラムを有することで「製品P」によって生ずる摩耗や汚損を防止する旨主張しているが、そもそも「製品P」なるものは本願補正発明の発明特定要件とはなっていないものであるから、請求人の上記主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものとして採用することができない。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成22年1月4日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「入口と、出口と、入口および出口の間のポンピング・チャンバとを有する形式のピストン・ポンプであって、
シリンダと、
シリンダ内を往復移動できるように配置されたピストンと、
ピストンからシリンダへ延在し、シールを形成し、ポンピング・チャンバの反対側のポンプの駆動側端部を定めるダイヤフラムと、
ポンプの被駆動側端部にてピストンに作動連結され、ピストンに往復移動を行わせる駆動装置と、
ピストンに配置された少なくとも三つの芯出し部材であって、摩擦の小さい材料から形成され、いずれか二つの隣接する芯出し部材の間に形成される円弧が180°未満となるように配置された芯出し部材を含み、
前記ダイヤフラムの構造は、ダイヤフラムが前記ピストンの移動によって巻上げられるローリング形式である、
ピストン・ポンプ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである(「引用例1」及び「引用例3」を参照)。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から実質的に、ポンピング・チャンバの反対側のポンプの駆動側端部を定める「ダイヤフラム」について「内側ダイヤフラム」への限定を省き、ピストンに配置された少なくとも三つの「芯出し部材」について「芯出し部材を含む芯出し支持体」への限定を省き、「ピストン・ポンプ」について「芯出し支持体と駆動装置との間に配置された外側ダイヤフラムを含み」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明と引用発明とを対比した際の相違点は、前記「2.(3)」で抽出した相違点1及び相違点3の一部のみとなるため、前記「2.(4)」での検討を踏まえれば、本願発明は、引用発明及び上記常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記常套手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-07 
結審通知日 2011-10-11 
審決日 2011-10-31 
出願番号 特願2004-23864(P2004-23864)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F04B)
P 1 8・ 121- Z (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 笹木 俊男  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 神山 茂樹
田村 嘉章
発明の名称 充填ポンプのピストン芯出し支持体  
代理人 金井 建  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 森 徹  

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