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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1253963
審判番号 不服2010-24033  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-25 
確定日 2012-03-12 
事件の表示 特願2001-522203「有機ポリマ系電子デバイス及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月15日国際公開、WO01/19142、平成15年 3月 4日国内公表、特表2003-508891〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年(2000年)年9月1日(パリ条約による優先権主張 1999年9月3日 米国)を国際出願日とする国際出願(特願2001-522203号)であって、平成22年2月1日付けで拒絶理由が通知され、同年6月7日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年6月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年10月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成22年10月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成22年6月7日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1の、

「基板(122)上に設けられ、互いに反対向きの一対の電極(112、114)と電極間に配置された半導体共役ポリマからなる活性ポリマ層(120)とを備えたポリマ電子デバイス(110)と、
該ポリマ電子デバイスに隣接する内面(132)と、該内面と反対向きで外部大気に隣接する外面とを有する、前記基板上に設けられる蓋(126)からなる気密性エンクロージャ(124)と、
前記内面に隣接し、多孔質構造を有して水分を該多孔質構造内に物理的に吸収することによって捕捉することが可能な乾燥剤(130)とを具備し、
前記気密性エンクロージャは、前記ポリマ電子デバイスを封入して、該ポリマ電子デバイスと前記乾燥剤とを外部大気から隔離することを特徴とする有機ポリマ系電子デバイス。」が

「基板(122)上に設けられ、互いに反対向きの一対の電極(112、114)と電極間に配置された半導体共役ポリマからなる活性ポリマ層(120)とを備えたポリマ電子デバイス(110)と、
該ポリマ電子デバイスに隣接する内面(132)と、該内面と反対向きで外部大気に隣接する外面とを有する、前記基板上に設けられる蓋(126)からなり、前記一対の電極(112、114)に取り付けられたリード線(116,118)が、前記基板(122)上に沿って引き出され、接合剤(128)によってシールされる気密性エンクロージャ(124)と、
前記内面に隣接し、多孔質構造を有して水分を該多孔質構造内に物理的に吸収することによって捕捉することが可能な乾燥剤(130)とを具備し、
前記気密性エンクロージャは、前記ポリマ電子デバイスを封入して、該ポリマ電子デバイスと前記乾燥剤とを外部大気から隔離することを特徴とする有機ポリマ系電子デバイス。」と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

そして、この補正は、本件補正前の請求項1の「気密性エンクロージャ(124)」について「前記一対の電極(112、114)に取り付けられたリード線(116,118)が、前記基板(122)上に沿って引き出され、接合剤(128)によってシールされる」ことを特定する補正事項からなる。これは、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正事項であるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものを含む。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成22年10月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるものである。(上記の「1 本件補正について」の記載参照。)

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-275679号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラス基板上に形成された透明電極とこれに対向する対向電極の間に有機材料からなる発光層を狭持し、両電極からキャリアを発光層に注入することによって発光層を発光させる有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)素子に関する。」

「【0011】図1は、本実施形態に係る有機EL素子の構成を示す図である。ガラス基板10の上面には、透明電極12が形成されている。この透明電極12は、ITO(インジウム・チン・オキサイド)、SnO_(2)などが利用される。この透明電極12の上に有機材料からなる正孔輸送層14、発光層16が積層形成される。正孔輸送層14はTPD(トリフェニルジアミン)、発光層16はAlq(キノリノールアルミ錯体)等により形成される。発光層16の上には、金属陰極18が形成される。この金属陰極18には、MgAg(9:1)、AlLi(9.9:0.1)、Maln(9:1)等が採用される。
【0012】そして、正孔輸送層14、発光層16、金属陰極18の側面を含む全体を囲うように、キャップ状の封止ガラス20を設置して密封室22を形成し、この密封室22内に正孔輸送層14、発光層16、金属陰極18を収容する。
【0013】この封止ガラス20の端部の透明電極12への取り付けは、窒素ガスなどの不活性ガス中においてエポキシ系樹脂等を用いた接着によって行う。従って、密封室22内には、不活性ガスが充満された状態になる。
【0014】さらに、封止ガラス20の内面側には、吸湿性を有する多孔質層24が形成されている。この多孔質層24は、封止ガラス20の内面にゾルゲル法などによってSiO_(2)、TiO_(2)、ゼオライトなどの多孔質層24を予め形成したものである。また、ガラスのアルカリ処理によって、多孔質層24を形成することも好適である。
【0015】このような多孔質層24は、吸湿効果を有している。従って、不活性ガス中の密封室22の形成において、密封室22内部に封入されてしまった水分がこの多孔質層24により吸着される。従って、密封室22内の水分を効果的に除去でき、素子部に対する悪影響を確実に排除することができる。
【0016】このような有機EL素子において、透明電極12と、金属陰極18とに電圧を印加することで、両電極12、18より、正孔、電子が注入され、これが発光層16において再結合し発光する。そして、封止ガラス20によって形成された密封室22内に、正孔輸送層14、発光層16、金属陰極18からなる素子部が収容されているため、大気からの酸素、水分の内部への拡散が有効に防止され、素子特性への悪影響を排除することができる。
【0017】特に、本実施形態の素子においては、封止ガラス20の内面に吸湿性の多孔質層4が形成されている。従って、製造時において、素子部の表面や透明電極12の表面に吸着されている水分がこの多孔質層24によって除去され、密封室22内を水分のない状態に維持できる。よって、素子に対する水分の拡散を確実に防止して、非発光点の発生を防ぎ、素子の長寿命化を図ることができる。特に、高輝度発光させる場合においても、長寿命化を図ることができる。
【0018】また、上述の実施形態では、正孔輸送層14と、発光層16を積層形成したが、混合有機層の一層構成としてもよい。さらに、正孔輸送層14ではなく、電子輸送層を金属陰極18側に設ける構成としてもよい。さらに、透明電極12を陰極とし、対向電極を陽極とすることも可能である。このように、素子部の構成には、現在知られている各種の構成を採用することができる。」

「【図1】



イ 引用例1に記載された発明の認定
上記記載(図面の記載も含む)を総合すれば、引用例1には、
「ガラス基板10の上面には、透明電極12が形成され、透明電極12の上に有機材料からなる正孔輸送層14、発光層16が積層形成され、発光層16の上には、金属陰極18が形成され、
透明電極12の上に、正孔輸送層14、発光層16、金属陰極18の側面を含む全体を囲うように、キャップ状の封止ガラス20をエポキシ系樹脂等を用いた接着によって取付けて密封室22を形成し、
封止ガラス20の内面側には、密封室22内部に封入されてしまった水分を吸着する、吸湿性を有する多孔質層24が形成されている有機EL素子。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

ウ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-153967号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0015】
【課題を解決するための手段】本発明のフルカラー有機EL表示装置は、透明基板上に少なくとも赤、緑、青の各透明画素電極が形成され、赤と緑の透明画素電極上のみに赤色と緑色それぞれの有機発光層、および全面に青色発光層が形成され、さらにこれらの上層に対向電極が形成されていることを特徴とする。」

「【0020】透明基板上に少なくとも赤、緑、青の各透明画素電極が形成され、赤と緑の透明画素電極上のみに赤色と緑色それぞれの正孔注入型高分子有機発光層が、青の透明画素電極上のみに発色しない正孔注入層が形成され、その上全面に電荷輸送型青色発光蒸着層が形成され、さらにこれらの上層に対向電極が形成されていることを特徴とする。
【0021】透明基板上に少なくとも赤、緑、青の各透明画素電極が形成され、赤と緑の透明画素電極上のみに赤色と緑色それぞれの正孔注入型高分子有機発光層が形成され、その上全面に発色しない正孔注入層及び電荷輸送型青色発光蒸着層が形成され、さらにこれらの上層に対向電極が形成されていることを特徴とする。
【0022】前記赤色と緑色の高分子有機発光層がポリパラフェニレンビニレン(以下PPVと記す)およびその誘導体、またそれらを基本単位とする共重合体あることを特徴とする。
【0023】前記EL表示体において、対向電極上に保護膜を形成することを特徴とする。
【0024】前記EL表示体において、対向電極上に不活性気体または不活性液体を介して、第二の基板で封止することを特徴とする。」

「【0034】(実施例1)第1図に示すように、ガラス基板104上にITO透明画素電極101、102および103をフォトリソグラフィー技術により、100ミクロンピッチ、0.1ミクロン厚のパターンを形成する。ITOパターン間を樹脂ブラックレジストにより埋めて、光遮断層とインク垂れ防止壁を兼ねた構造105をフォトリソグラフィーにて形成する。ブラックレジストの幅は、20ミクロン、厚さは1.0ミクロン。
【0035】次に、インクジェットプリント装置108により赤、緑を発色する発光材料をパターニング塗布し、厚さ0.05ミクロンの発色層106、107を形成する。赤色発光材料にはシアノポリフェニレンビニレン前駆体、緑色発光材料にはポリフェニレンビニレン前駆体を使用する。これらの有機EL材料はケンブリッジ・ディスプレイ・テクノロジー社製であり、液状で入手可能である。ポリマー前駆体はインクジェット吐出後、加熱処理により高分子化され、発光層106、107が形成される。」

「【0056】(実施例6)ガラス板上に、薄膜トランジスタを形成してから、ITO透明画素電極を形成する。その後、実施例1と同様のプロセスを通す。次に、第5図に示すように、有機EL表示体を周辺シール509および封孔材508により、アルゴン506雰囲気中に封止する。これにより、フルカラー有機EL表示体の寿命は飛躍的に伸びる。」

「【図5】



(3)本願補正発明と引用発明の対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

引用発明の「ガラス基板10」が、本願補正発明の「基板(122)」に相当し、引用発明の「透明電極12」及び「金属陰極18」が、本願補正発明の「互いに反対向きの一対の電極(112、114)」に相当する。

引用発明の「透明電極12の上」に形成され、その上に「金属陰極18」が形成される「有機材料からなる正孔輸送層14、発光層16」と、本願補正発明の「電極間に配置された半導体共役ポリマからなる活性ポリマ層(120)」とは、「電極間に配置された有機層」である点で一致する。

引用発明の「有機EL素子」と、本願補正発明の「ポリマ電子デバイス(110)」及び「有機ポリマ系電子デバイス」とは、「有機電子デバイス」である点で一致する

引用発明の「透明電極12の上に、正孔輸送層14、発光層16、金属陰極18の側面を含む全体を囲うように」「エポキシ系樹脂等を用いた接着によって取付けて」形成される「キャップ状の封止ガラス20」と、本願補正発明の「該ポリマ電子デバイスに隣接する内面(132)と、該内面と反対向きで外部大気に隣接する外面とを有する、前記基板上に設けられる蓋(126)からなり、前記一対の電極(112、114)に取り付けられたリード線(116,118)が、前記基板(122)上に沿って引き出され、接合剤(128)によってシールされる気密性エンクロージャ(124)」とは、「該有機電子デバイスに隣接する内面と、該内面と反対向きで外部大気に隣接する外面とを有する、前記基板の上方に設けられる蓋」からなり「接合剤によってシールされる」「気密性エンクロージャ」である点で一致する。

引用発明の「封止ガラス20の内面側」に形成されている「密封室22内部に封入されてしまった水分を吸着する、吸湿性を有する多孔質層24」が、本願補正発明の「前記内面に隣接し、多孔質構造を有して水分を該多孔質構造内に物理的に吸収することによって捕捉することが可能な乾燥剤(130)」に相当する。

引用発明の「ガラス基板10の上面には、透明電極12が形成され、透明電極12の上に有機材料からなる正孔輸送層14、発光層16が積層形成され、発光層16の上には、金属陰極18が形成され、透明電極12の上に、正孔輸送層14、発光層16、金属陰極18の側面を含む全体を囲うように、キャップ状の封止ガラス20をエポキシ系樹脂等を用いた接着によって取付けて密封室22を形成し、封止ガラス20の内面側には、密封室22内部に封入されてしまった水分を吸着する、吸湿性を有する多孔質層24が形成されている」ことと、本願補正発明の「前記気密性エンクロージャは、前記ポリマ電子デバイスを封入して、該ポリマ電子デバイスと前記乾燥剤とを外部大気から隔離する」こととは、「前記気密性エンクロージャは、前記有機電子デバイスの少なくとも有機層及び陰極を封入して、該有機電子デバイスの少なくとも有機層及び陰極と前記乾燥剤とを外部大気から隔離する」点で一致する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明は、
「基板上に設けられ、互いに反対向きの一対の電極と電極間に配置された有機層とを備えた有機電子デバイスと、
該有機電子デバイスに隣接する内面と、該内面と反対向きで外部大気に隣接する外面とを有する、前記基板の上方に設けられる蓋からなり接合剤によってシールされる気密性エンクロージャと、
前記内面に隣接し、多孔質構造を有して水分を該多孔質構造内に物理的に吸収することによって捕捉することが可能な乾燥剤とを具備し、
前記気密性エンクロージャは、前記有機電子デバイスの少なくとも有機層及び陰極を封入して、該有機電子デバイスの少なくとも有機層及び陰極と前記乾燥剤とを外部大気から隔離する有機電子デバイス。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

ウ 相違点
(ア)相違点1
互いに反対向きの一対の電極と電極間に配置された有機層とを備えた有機電子デバイスについて、本願補正発明においては、有機層が「半導体共役ポリマからなる活性ポリマ層」であり、本願補正発明の有機電子デバイスが「ポリマ電子デバイス」ないしは「有機ポリマ系電子デバイス」であるのに対して、引用発明においては、その点の限定がない点。

(イ)相違点2
本願補正発明は、蓋からなる気密性エンクロージャが、「基板上に設けられ」、「有機電子デバイス」を封入して「有機電子デバイス」を「外部大気から隔離する」とともに、「一対の電極に取り付けられたリード線が、前記基板上に沿って引き出され」、シールされるものであるのに対して、引用発明は、キャップ状の封止ガラス(上記の蓋からなる気密性エンクロージャに相当)については、「(基板上の)透明電極の上に設けられ」、「有機EL素子」の「有機材料からなる正孔輸送層14、発光層16」及び「金属陰極18」を封入するものであり、また、リード線に関する限定はない点。

(4)当審の判断
ア 上記各相違点について検討する。
(ア)相違点1について
引用例2に、高分子有機発光層が、半導体共役ポリマからなる活性ポリマである「ポリパラフェニレンビニレン(以下PPVと記す)およびその誘導体、またそれらを基本単位とする共重合体」からなる有機EL素子が記載されているように、有機EL素子の有機層を「半導体共役ポリマからなる活性ポリマ層」とすることは、周知技術である。
引用発明においても上記周知技術を適用し、有機EL素子として、有機層が「半導体共役ポリマからなる活性ポリマ層」である有機EL素子を採用し、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点2について
有機EL表示装置において、発光層及び発光層を挟む一対の電極からなる素子(有機電子デバイス)の密封構造として、密封部材(蓋)を、透明電極(陽極)を介在させずに基板上に設けて、上記の「発光層及び発光層を挟む一対の電極からなる素子」を密封することは、例えば、引用例2の【0056】及び【図5】や特開平9-219288号公報(【0003】?【0006】及び【図4】)にも記載されているように周知の技術であり、また、上記密封構造において「一対の電極に取り付けられたリード線が、前記基板上に沿って引き出され、接合剤によってシールされ」ることについても、上記の特開平9-219288号公報(【0003】?【0006】及び【図4】)にも記載されているように周知の技術である。
引用発明においても、外部電源との接続構造及び封止構造として、透明電極を引き出してその上で封止する構造に換えて、上記の周知のリード線を引き出す封止・接続構造を採用し、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年10月25日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年6月7日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成22年10月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成22年10月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2 平成22年10月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」に記載したように、本願発明に対して、「気密性エンクロージャ(124)」について「前記一対の電極(112、114)に取り付けられたリード線(116,118)が、前記基板(122)上に沿って引き出され、接合剤(128)によってシールされる」とする補正事項によって限定して特定したものが本願補正発明である。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、本願発明をさらに限定して特定したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成22年10月25日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(3)本願補正発明と引用発明との対比」及び「(4)当審の判断」において記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-13 
結審通知日 2011-10-14 
審決日 2011-10-26 
出願番号 特願2001-522203(P2001-522203)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 575- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本田 博幸  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
橋本 直明
発明の名称 有機ポリマ系電子デバイス及びその製造方法  
復代理人 加藤 信之  
復代理人 濱中 淳宏  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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