• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24J
管理番号 1253967
審判番号 不服2011-17327  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-10 
確定日 2012-03-12 
事件の表示 特願2001-102132号「太陽光集光システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月 6日出願公開、特開2002-250566号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成13年2月22日の出願であって、平成23年5月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成23年8月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成23年8月10日の手続補正についての補正却下の決定。

[補正却下の決定の結論]
平成23年8月10日の手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「少なくとも二基以上の太陽を追尾した太陽光反射装置によって反射される複数の異なる方向から照射された太陽光を1箇所に重ね合わせるようにして同時に集光させながら、集光箇所において通常より強い太陽光を照射し、当該集光箇所で集光させた太陽光が強くなり過ぎないように、略ジグザグの経路に沿って走査しながら広範囲の対象物に集光させる太陽光集光システム。」(下線は補正箇所を示す)と補正された。

上記の補正は、発明を特定するために必要な事項である「複数方向からの太陽光」について、「複数の異なる方向から照射」されたものであることを限定し、さらに、発明を特定するために必要な事項である「1箇所に同時に集光」することに対して、「1箇所に重ね合わせるようにして同時」になされることを限定するとともに、「集光しながら」を「集光させながら」と表現を変えたものであって、かつ、本件補正前の特許請求前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項により従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号において規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに実質的に相当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)が独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項により従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載内容
引用刊行物:特開昭61-148412号公報

原査定の理由に引用され、本願出願前に頒布された引用刊行物には、「太陽光反射装置」に関して以下の記載がある。

ア.「イ)主に家の北側に設置し、太陽光をこの場合は家の北側の任意の窓などに向けて連続照射できるように、反射板がモーターにより2軸方向にマイコン制御されている。
ロ)該マイコンには太陽位置計算用ROMの他にデーター設定用として設置位置の経緯度、照射する複数個の窓など設置位置からみた方向、年度も含む現在時間が設置工事時に初期入力されるようになっており、又蓄電地がついている。
ハ)家内には照射位置をかえるリモートコントロールスイッチがつき、それには任意の窓などへ光を持っていくことや、順序だった照射位置や、その時間の設定も可能にする、少なくとも0?9の数字ボタンスイッチがついており、本体とこのリモートコントロールスイッチは、有線または無線で結ばれている。
以上のことを特徴とする太陽光反射装置。」(特許請求の範囲)(下線は当審にて付与。以下同様。)

イ.「第1図に反射装置本体の斜視図を示す。本装置に似たものは、集熱塔へ太陽光を集める反射装置としてすでに実在するため、詳細は省略するが2軸方向に自由にコントロールできる(サーボ)モーターを、構造を簡単にするため一本の支柱先端に取り付けたものである。第2図に使用中の位置関係を示す斜視図を示す。本図の場合は窓Aを照射しているが、これは室内から手動、自動により任意の窓へ切り替えができる。
鏡の向く方向は、太陽の時間移動と連動して変える必要があるが本発明の場合は、太陽装置を数十年先に渡って予測する計算式及び初期値をマイコンロム内へ入れておき、設置後経緯度及び年月日時間をラム内へ書き込むことにより、太陽位置を割り出している。家側被照射位置は使用頻度の高い場所を複数箇所マイコン内へ記憶させ、リモートコントロールスイッチによって選択できるようにするが、その設定方法は本体側からの実測によって計って入れる方法(設置時がたまたま曇りだった場合)と、太陽反射光を上下移動スイッチによって実際に動かして、よいと思った位置で順次記憶させていく方法がある。後者の場合はその時刻における太陽位置も関係するが、それらも含めてプログラム内で処理し、入力はリモートコントロールスイッチによって行なう。ただ、このへんまでは操作が複雑なので設置時に業者側で行ない、ユーザー側としては、窓の選択とその照射時間程度を行なうようにする。 停電は必ずあると見なければならないので数時間程度の電力を補給できる蓄電地をつける。」(公報第2ページ左上欄第6行?右上欄第11行)

ウ.「本装置の使用法は、単に窓を照射するだけにとどまらない。たとえば、建物の北側等には光が当たらずカビなどが発生し、変色し、これがよく問題になるが、本装置をつかって一定時間ずつ連続的に、東側から西側に向けて一日一回上下に振動させながら動かすとカビが生えない、この場合は、鏡面を紫外線を多く通すように作ること、及び一定面積を前述したように走査するプログラムを設け、選択によりそこに分岐するようにさせる。長方形の走査にすると、対角頂点の位置を記憶させるだけでこれができる。夏場などでは、室内への導光はあまり必要と思われないため、壁の走査や、北庭に設けた花壇等への走査照射につかうとよい。通常の使用では、室内で洗濯物を乾かすというような使用法もある。大きな団地などでは平行して北側にある団地の屋上に設置するとよい。本装置は、多少の効率は落ちるが、近くの山の頂に置いて自分の家を照射させるという方法でも使用可能である。又、通常使用においては反射面にガラス等を使用すると紫外線が大部分カットされるため直射日光と比較して害が少ない。」(公報第2ページ左下欄第13行?右下欄第11行)

エ.第2図からは、太陽光反射装置によって反射される太陽光を建物に照射することが看取できる。
以上のア.?ウ.の記載、及びエ.の第2図から看取できる事項を総合すると、引用刊行物には次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「鏡の向く方向を太陽の時間移動と連動して変える太陽光反射装置であって、反射される太陽光を、カビなどの発生を防止するため一定時間ずつ連続的に東側から西側に向けて一日一回上下に振動させながら動かして走査することにより建物に照射する太陽光反射装置。」

3.発明の対比
本願補正発明と、引用発明とを対比すると、引用発明の「鏡の向く方向を太陽の時間移動と連動して変える」ことは、本願補正発明の「太陽を追尾」することに相当し、引用発明の「一定時間ずつ連続的に、東側から西側に向けて一日一回上下に振動させながら動かして走査する」ことは、上下に振動させながら東側から西側に、すなわち第2図を参酌すると建物の左右方向に動かすことであるから、本願補正発明の「略ジグザグの経路に沿って走査」することに相当し、引用発明の「建物」は、本願補正発明の「対象物」にそれぞれ相当する。さらに、引用発明における太陽光を「照射」することと、本願補正発明における太陽光を「集光」することとは、太陽光を「照射」することにおいて共通する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
太陽を追尾した太陽光反射装置によって反射される太陽光を略ジグザグの経路に沿って走査しながら対象物に照射するシステム。

[相違点1]
本願補正発明においては、「太陽光反射装置」が、「少なくとも二基以上」設けられるとともに「複数の異なる方向から照射された太陽光を1箇所に重ねあわせるようにして同時に集光させながら、集光箇所において通常より強い太陽光を照射」したものであるのに対し、引用発明においては、「太陽光反射装置」が、少なくとも二基以上設けられたものか不明である点。

[相違点2]
略ジグザグの経路に沿って走査することに関し、本願補正発明においては、「集光箇所で集光させた太陽光が強くなり過ぎない」ためであるのに対し、引用発明においては、「カビなどの発生を防止するため」である点。

[相違点3]
略ジグザグの経路に沿って走査する範囲が、本願補正発明においては、「広範囲」であるのに対し、引用発明においては、どの程度の範囲であるのか不明な点。

4.当審の判断

[相違点1、2について]
対象物に通常より強い太陽光を照射するため、少なくとも二基以上の太陽光反射装置を設けて1箇所に重ね合わせるようにして同時に集光することは従来、周知の技術的事項(例として、例えば、特開昭60-258621号公報/特開昭62-95611号公報などを参照)であって、引用発明において、カビ防止等の効果を向上するにあたって、より強い太陽光を必要とする際に上記周知の技術的事項を適用し、太陽光反射装置を少なくとも二基以上とし、かつ、1箇所に重ねあわせるようにして同時に集光することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、1箇所に重ねあわせるようにして同時に集光して対象物に照射する際に、太陽光を照射する対象物が過熱するのを防止する等の一般的な課題のもとで、集光箇所で集光させた太陽光が強くなり過ぎないように走査することも、当業者であれば容易に想到し得たことである。
なお、上記周知例においては、少なくとも二基以上の太陽光反射装置同士が隣接しており、隣接した太陽光反射装置同士がどの程度離間しているかは明らかではないが、大陽からみて異なる位置にあることには変わりはなく、微視的にみれば太陽光反射装置毎に異なる方向から照射されるものといえる。

よって、引用発明に上記周知の技術的事項を適用することにより上記相違点1,2に係る発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

[相違点3について]
引用発明において、前記略ジグザグの経路に沿って走査する範囲を太陽光を照射する対象物の大きさ等に応じて「広範囲」となし、上記相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明によって得られる効果も、引用発明及び周知の技術的事項から当業者が予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

5.結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55条改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上述のように却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成23年3月18日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
(以下「本願発明」という)

「少なくとも二基以上の太陽を追尾した太陽光反射装置によって反射される複数方向からの太陽光を1箇所に同時に集光しながら、集光箇所において通常より強い太陽光を照射し、当該集光箇所で集光させた太陽光が強くなり過ぎないように、略ジグザグの経路に沿って走査しながら広範囲の対象物に集光させる太陽光集光システム。」

2.引用刊行物とその記載内容
引用刊行物とその記載内容は、上記「第2.2.」に記載したとおりのものである。

3.発明の対比・判断
本願発明は、上記「第2.」で検討した本願補正発明から、「複数方向からの太陽光」及び「1箇所に同時に集光」することについての限定を省き、「集光させながら」を「集光しながら」と表現を変えたものである。そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2.4.」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.結び
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論の通り審決する。

なお、請求人は回答書において、本願請求項1に係る発明において、「複数の方位から照射される複数の太陽光を1点において交差させることで集光させる」ことが要旨であり、前置報告書においてその点が判断されていない旨述べている。
この点につき、太陽を点光源とみれば、複数設けられた太陽光反射装置同士の間隔が、隣接したものを含めて離間していれば、各太陽光反射装置への照射方向の差は微視的にみると存在するといえる。そして、複数設けられた太陽光反射装置同士の間隔を離間させればさせる程、各太陽光反射装置に対する太陽光の照射角度の差異が大きくなるものと考えられるが、それがどの程度のものであるのかについては本願補正発明において特定されていない。
同じく請求人は回答書において、本願請求項1に係る発明において「集光させた太陽光を対象物上で重ね合わせるように集光(照射)しながら走査すること」について前置報告書において判断がなされていないので進歩性の判断をすべき旨述べている。
この点につき、引用発明はそもそも「太陽光反射装置によって反射される太陽光を略ジグザグの経路に沿って走査しながら対象物に照射する」ものであるから、より多くの効果を得るために太陽光を通常より強いものとするため、太陽光反射装置を少なくとも二基以上とし、かつ、1箇所に重ねあわせるようにして同時に集光するという周知の技術的事項における技術思想を適用した場合、集光させた太陽光を対象物上で重ね合わせるようにしながら、通常より強い太陽光をジグザグの経路に沿って走査するようになることは、当業者が容易に想到し得ることである。
 
審理終結日 2012-01-18 
結審通知日 2012-01-19 
審決日 2012-01-31 
出願番号 特願2001-102132(P2001-102132)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24J)
P 1 8・ 575- Z (F24J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一ノ瀬 覚  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 松下 聡
青木 良憲
発明の名称 太陽光集光システム  
代理人 島袋 勝也  
代理人 大久保 秀人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ