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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61L
管理番号 1254089
審判番号 不服2008-13379  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-26 
確定日 2012-03-23 
事件の表示 平成 9年特許願第501711号「バルーンカテーテル用高強度低コンプライアンス複合バルーン」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月19日国際公開、WO96/40350、平成11年 6月29日国内公表、特表平11-507257〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1996年6月7日(パリ条約による優先権主張1995年6月7日,米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年2月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成20年5月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、さらに平成22年7月15日付けで当審拒絶理由が通知され、これに対して平成22年10月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?9に係る発明のうち、請求項1に係る発明は、平成22年10月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】カテーテルを固定するためのバルーンであって、 膜厚がtであり、内部に加えられる最小作動圧Pによって、膨張していない直径D_(defl)から膨張した直径D_(infl)まで膨張する、中空の圧力膨張可能なエラストマー本体を備え、該エラストマー本体が、
E_(sec) =σ(ε_(infl))/ε_(infl)の正割モジュラスE_(sec)を有し、ここで、σ(ε_(infl))は、ε_(infl)の関数として、エラストマー本体の名目の単軸応力であり、
ε_(infl)=D_(infl)/D_(defl)であり、且つ、
前記バルーンは、前記エラストマー本体に付けられた非伸縮性の膨張可能な拘束構造部材を備え、前記拘束構造部材は、10%未満の破断伸びと1GPaより大きい引っ張り強度を有し、アラミド、ポリエチレン、鋼、ポリエステル、ガラス、カーボン、セラミックス、及び液晶ポリマからなるグループから選択された繊維で形成され、該拘束構造部材は、前記エラストマー本体の膨張を最大直径D_(inf1)に制限し、前記エラストマー本体をD_(inf1)を越えない直径まで膨張させるのに必要な前記最小作動圧Pが、等式
J=(P・D_(defl))/(2E_(sec)・t)≧1
で規定されるバルーン。」

3.引用例
これに対して、原審における拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布されたことの明らかな次の刊行物には各々、以下の事項が記載されている。

・特表昭63-500289号公報(査定の理由で引用された「引用例1」 である。以下、「引用例A」という。)
(a-1)「1.加圧すると膨張するバルン部を備えた膨張式カテーテルにおいて、
フィラメントで補強された弾性材料からなる軸を備え、該軸の一部は内部が加圧されると径が拡大してバルンを形成することができ、バルン部のフィラメントは軸線に対して所定の臨界角よりも小さい角度に置かれていて、バルン部が加圧下で膨張するとフィラメントが臨界角に置かれてバルンの膨張を停止することを特徴とする膨張式カテーテル。」(特許請求の範囲の請求項1)
(a-2)「30.内側チューブと、
内側チューブと共軸をなして配設された外側チューブとを備え、
前記2つのチューブが互いに対して軸線方向に変位しかつ両者間に管状の空間を形成することができるように外側チューブの内径は内側チューブの外径よりも大きく形成され、しかも内側チューブの先端は外側チューブの先端を越えて延びており、
外側チューブはフィラメント状材料によって補強された弾性材料から形成されかつ少なくとも膨張自在のバルン部と細長い部分とを備え、
バルン部のフィラメント状材料は、流体が加圧下で前記チューブ間の空間に導入されたときにフィラメント状材料が臨界角で延ばされるまでバルン部の径が増加するように、軸線に対し臨界角よりも小さい角度に置かれ、
細長い部分のフィラメント材料は細長い部分の長さが流体の圧力に応答して増加するように臨界角よりも大きい角度に置かれ、
バルンが装置の全長を減少させることなく形成されることを特徴とするバルンカテーテル装置。」(特許請求の範囲の請求項30)
(a-3)「本発明のカテーテルにおいては、外側チューブの少なくともバルンと可動部の補強フィラメントは、降伏プラスチック材料(yielding plastic material)に埋め込まれあるいは閉じ込められる編組即ちブレード(braid)の形態をなしている。カテーテルを加圧する前は、バルン部のフィラメントは、バルンの軸線に対し、54.73゜の臨界角よりも小さい角度に置かれている。カテーテルの軸の可動部は、同じフィラメントの連続する編みによって構成されているが、これらのフィラメントは、可動部の軸線に対して、臨界角よりも大きい角度に置かれている。カテーテルに内部圧をかけると、これら2つの部分に逆の作用を及ぼす。圧力を増加させると、バルン部の壁内のフィラメントの角度が臨界角に達するまでバルン部の径は増加し、次に停止する。同時に、外側チューブの可動部の径は、可動部の壁内のフィラメントの角度が臨界角に達するまで、減少する。バルン部の長さが減少するにつれて、外側チューブの可動部の長さは増加し、2つの部分の当初の径と長さとを適宜選択することにより、バルン部の短縮は相殺される。従って、バルンが位置を変えようとする傾向はなくなる。」(公報第3頁右下欄下から6行?第4頁左上欄15行)
(a-4)「本発明の更に別の目的は、体温において、20気圧までの圧力で動作することができるバルンカテーテルを提供することにある。」(公報第4頁右上欄6?8行)
(a-5)「次に、第2図に基づいて、本発明の根拠となる物理的原則の幾つかを説明する。第2(a)及び2(b)図は、カテーテルのバルン部と同じ態様で内部加圧される中空の円筒容器の壁内に作用する軸線方向と周方向の応力をそれぞれ示すのもで、軸線方向の応力δ_(軸線)は次のようにして得られる。
δ_(軸線)xdxπ=面積x圧力=(d^(2)xπ/4)xP
該式において、dは円筒体の直径である。従って、
δ_(軸線)=dxp/4
となる。
同様、周方向の応力δ_(周)は、次のようにして得られる。
δ_(周)xLx2=面積x圧力=dxLxP
該式において、Lは長さである。従って、
δ_(周)=LxP/2
かくして得られた2つの力の角度は、次のように表わすことができる。
tan^(2)=δ_(周)/δ_(軸線)=2
従って、得られるベクトルの角度αは、次のようになる。
α=tan^(-1)√2=54.73°
従って、カテーテルの一部のプラスチック壁にある非弾性繊維が、軸線に対し54.73゜の臨界角に等しい角度にあると、システムは平衡状態となり、カテーテルの内部圧の上昇によるカテーテルの径の変化は生じない。本発明のカテーテルにおいては、かかる事実を利用することにより、カテーテルの軸の可動部の径の減少を制限するとともにバルン部の膨出を制限して、加圧下におけるこれらの部分の長さの変化を互いに相殺することができるようにしている。」(公報第4頁右下欄8行?第5頁左上欄下から3行)
(a-6)「第3(b)図に示すように、加圧後は、カテーテルの3つの部分のフィラメントは、いずれも、システムの軸線に対し、臨界角、即ち、54.73゜にある。好ましい構成の態様においては、軸は実質上非弾性の材料からなる連続した螺旋状のフィラメント即ち繊維を有し、該フィラメント即ち繊維は、編まれ、または編組されて補強チューブを構成しており、該チューブにおいては、フィラメントは、互いに交差するように、チューブの軸線に沿って巻かれている。」(公報第5頁右上欄下から8行?左下欄1行)
(a-7)「第4(a)図のカテーテルの先端部25は、テーパのついた中空のプラスチックチップ(tip)22を有し、該チップ22には、カテーテルの内側チューブ26の先端部24が封着されている。内側チューブ26は、外径が0.72mm、内径が0.50mmのポリテトラフルオロエチレンプラスチックから形成されており、内側チューブ26には、直径が約0.38mm(約0.015インチ)のガイドワイヤを挿通することができる。先端チップ22の首部26は、軸4のバルン部Iの先端に封着されている。第4(a)図に示すように、バルンは膨出されているが、これは、カテーテルの軸4の内壁と内側チューブ26の外面との間の流体空間に圧力を加えることにより、行なわれた。膨張後のバルン部の長さは、20mmであるが、実施されるべき血管形成処置に対して別の寸法が適している場合には、そのような寸法にすることができるのは勿論である。軸部II及びIIIの外側の径(並びにバルン部Iの非膨張時の径)は1.33mmであり、内側の径は1.00mmである。(第4(a)図に示す)バルン部Iの膨張時の直径は、処置の要件によって、2.5mm以下から10mm以上までの範囲とすることができる。
軸の異なる部分は、それぞれ、54.73゜の臨界角よりも小さい角度、臨界角よりも大きい角度及び臨界角と等しい角度となっている連続したナイロン補強フィラメントをポリエレタン本体内に有している。ポリウレタン材料は、フィラメント材料を浸漬しまたはコーティングすることによりフィラメント材料に塗布することができ、中心に心棒を有するチューブの形状に形成さすることができる。これらの部分の非加圧時の長さは、以下に述べるようにして算出した。」(公報第5頁左下欄10行?右下欄13行)
(a-8)「 先づ、膨張によるバルンの長さの変化を計算することができるようにバルンにおける螺旋フィラメントの膨張したときのピッチと収縮したときのピッチとを得るために、編組を形成するフィラメント状主材料が、例えば、張力をかけても殆ど伸長しないナイロンからなるものと仮定する。」(公報第6頁右上欄10?15行)
(a-9)「当業者にとって明白なことであるが、本発明のカテーテルは、用途だけでなく物理的寸法も大きく変えることができる。また、本発明のカテーテルに使用される材料は、生物学的な適合性の原則が認められる限りは、上記した動作例で使用した材料と別のものを使用することができる。」(公報第7頁右上欄14?19行)

・特開昭61-103453号公報(査定の理由で引用された「引用例4 」である。以下、「引用例B」という。)
(b-1)「(1)中空可撓性のカテーテルチユーブと、
上記のカテーテルチユーブ内に同軸に配置されていて長手方向に相対的変位をしないようにそれに固定されており、内部部材の前方端は上記のカテーテルチユーブの前方端を超えて延びており、上記の内部部材は上記の内部部材と上記のカテーテルチューブとの間にそこを流体が流れる長手方向の通路を作るような大きさと形態をなしている可撓性内部部材と、
長手方向の通路を外部の加圧流体源に接続するための接続装置と、
上記の内部部材のまわりに同軸に配置され、バルーンの手元端は上記のカテーテルチューブの前方端に気密に固定されまた前方端は上記の内部部材の前方端に気密に固定されて環状バルーン室を形成し、上記の環状バルーン室は長手方向の通路と流体が流れるように連通し、上記のバルーンはその中の圧力を保持するための不透性の弾力性壁を備え、上記の弾力性壁はバルーンを長さは変わらずに直径を予め定めた最大直径まで膨らますことができるよう編組チューブにより補強されているバルーン、
とを具備したバルーンカテーテル。」(特許請求の範囲の請求項1)
(b-2)「(2)特許請求の範囲第1項に記載のバルーンカテーテルにおいて、上記の編組チューブは大体螺旋状に配列された連続したストランドを有し、その織り糸は一定の間隔を置いたループをなし、各ループは螺旋の一まわりごとに次の一まわり内の隣接したループを通るカテーテル。」(特許請求の範囲の請求項2)
(b-3)「(3)特許請求の範囲第2項に記載のバルーンカテーテルにおいて、連続したストランドは複数の平行な素線を有し、その素線の少なくとも一つは弾力性のものでその素線の少なくとも一つは強くて弾力性のないカテーテル。」(特許請求の範囲の請求項3)
(b-4)「(4)特許請求の範囲第3項に記載のバルーンカテーテルにおいて、上記の弾力性素線はスパンデクスでできており、上記の弾力性のない素線はケブラーでできているカテーテル。」(特許請求の範囲の請求項4)
(b-5)「中間層23を編むストランド39は、多数の素線、すなわちフイラメントからなる。この好適な実施例においては、ストランドは平行な2素線をよつたものでできており、その一つである素綿39Aはバルーンの最大拡張直径を制限するため強い、弾力性のないものであり、もう一つの素線39Bは膨らます圧力がなくなつたときにバルーンを縮めるため弾力性のあるものである。この強い、弾力性のない素線はデユポンの製品であるケブラーで作ることが望ましいが、その他の既知の天然繊維がダクロンのような合成繊維で作ることもできる。ただしバルーンの破裂強度は減少する。弾力性のある素線はスパンデツクスという商品名で知られている材料で作ることが望ましい。」(公報第4頁右上欄11行?左下欄4行)

4.対比
引用例Aにおける「バルン」は本願発明における「バルーン」と同義であることは明らかであるから、上記摘記事項(a-1)?(a-3)からみて、引用例Aには、「膨張式カテーテルに備えられた、加圧すると膨張するバルーンであって、フィラメントで補強された弾性材料からなる軸を備え、該軸は内部が加圧されると径が拡大してバルーンを形成することができ、バルーン部のフィラメントは軸線に対して所定の臨界角である54.73°よりも小さい角度に置かれていて、バルーン部が加圧下で膨張するとフィラメントが臨界角に置かれてバルーンの膨張を停止することを特徴とするバルーン」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
そこで、本願発明と引用発明を対比すると、両者は「カテーテルを固定するためのバルーンであって、膨張可能な弾性材料を備え、且つ前記バルーンは、前記膨張可能な拘束構造部材を備え、該拘束構造部材は、前記弾性剤料の膨張を一定のところで制限するバルーン」である点で一致し、一方、両者は以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は「拘束構造部材」が「10%未満の破断伸びと1GPaより大きい引っ張り強度を有し、アラミド、ポリエチレン、鋼、ポリエステル、ガラス、カーボン、セラミックス、及び液晶ポリマからなるグループから選択された繊維で形成され」るものであるのに対して、引用発明においては、「弾性材料を補強するフィラメント」と記載するに止まる点。

(相違点2)
バルーンを拘束構造部材によって規定される最大直径に至るまで加圧する際に加えられる最小作動圧力Pとして、本願発明においては、弾性材料であるエラストマー本体の正割モジュラス、すなわちその内容がσ(ε_(infl))/ε_(infl)である正割モジュラスをE_(sec)(ここで、σ(ε_(infl))は該エラストマー本体の名目の単軸応力であり、ε_(infl)=D_(infl)(最大直径)/D_(defl)(膨張前の直径)である)としたときに、該エラストマー本体をD_(infl)を超えない直径まで膨張させるのに必要な前記最小作動圧Pが、等式
J=(P・D_(defl))/(2E_(sec)・t)≧1
で規定されるものであるのに対して、引用発明においてはPを求めるこのような式は記載されていない点。

5.判断
(相違点1について)
引用例Aには、拘束構造部材として、「実質上非弾性の材料から成る連続した螺旋状のフィラメントすなわち繊維」(上記摘記事項(a-6))、「張力をかけてもほとんど伸長しないナイロンからなるもの」(上記摘記事項(a-8))と記載されており、具体的に挙げられている「ナイロン」ばかりでなく、張力を受けた際にできるだけ伸長しないものであれば用いることが可能であることが記載されているものと認められ(広くそのような材料が使用可能であることは、上記摘記事項(a-9)にも記載されている)、このことは引用例Aにおいて該拘束構造部材たるフィラメントに期待される、バルーンを引用例Aにいう臨界角(本願明細書でいう中立角)でしっかり拘束するという効果から見ても至極当然のことである。
ところで、引用例Bには、カテーテル用バルーンにおいて、その直径を制限するため強い、弾力性のない素線としてケブラーでできているものが具体的に記載(上記摘記事項(b-4)及び(b-5))されているところ、このケブラーは、アラミドとして代表的なものであり、その破断伸び、引っ張り強度のいずれもがそれぞれ本願発明で規定する10%未満、1GPaより大きい、という条件を満たすものであることは周知(ケブラー29の破断伸びは3.6%、ケブラー49の破断伸びは2.4%、引っ張り強度はいずれも300kg/mm^(2)、すなわち2.94GPa)であるから、引用例Aに記載の「実質上非弾性の材料から成る連続した螺旋状のフィラメントすなわち繊維」としてケブラーに代表されるアラミドを選択、使用することに格別の困難性は認められない。

(相違点2について)
本願発明のJ基準なるものは、最小膨張圧力を数学的に予測することを可能にするものであることは認められるものの、そもそもそのような最小膨張圧力を求めるには、ことさら数学的に予測することをしなくとも、一度圧力をバルーンに加えることによって実験的に容易に確認、決定し得るものであって、過度の実験を経て始めて決定し得る、というようなものではない。
具体的にどの程度の圧力を加えるかについても、まず、バルーンの大きさをみてみると、膜厚tについて、引用例Aにおいては0.33mmであって(上記摘記事項(a-7))、本願明細書における例で記載されている0.22mmと近似したものであり、D_(defl)についても引用例Aでは1.33mmであって(上記摘記事項(a-7))、本願明細書における例で記載されている1.58mmと近似したものであり、さらにD_(infl)についても引用例Aでは2.5mm以下から10mm以上までの範囲であり(上記摘記事項(a-7))、本願明細書における例で記載されている9.8mmはこの意識されている範囲内に入るものであるから、バルーンとしてサイズ的にも極めて近い構造のものということができ、その膨張圧力についても引用例Aの記載を参考にすることができるところ、引用例Aにおいては「20気圧までの圧力で動作することができる」と記載(上記摘記事項(a-4))されており、この数字を参考として、上記のように実験的に最小作動圧Pを決定することは、当業者が容易になし得るものである。実際、本願明細書の「例」(本願公表公報第12頁)において記載されている最小作動圧Pとしては0.4MPa(ほぼ4気圧)という値が記載されており、これは引用例Aで意識されている範囲内のものである。
そうすると、最小作動圧Pを実験的に決定することが困難であるというのであれば格別、上記のようにPを決定することが容易な場合に、そのPを数学的に予測することが可能なJ基準という式を想到することが容易ではないとしても、そのことによって、本願発明を想到することが困難なものであるものとすることはできない。
また、材料としてのエラストマー本体についても、引用例Aにおいては「ポリウレタン材料」が記載(上記摘記事項(a-7))されているところ、本願発明においては通常の膨張圧力でJ基準を満たすものがバルーンの分野において特別のものであるというわけでもなく、本願明細書において「バルーン22の外皮は、内部に作動圧が加えられたとき、容易に膨張するエラストマー材料で形成されていることが好ましい。このエラストマー材料は、十分に弾性を有し、膨張圧がバルーンから除かれるときには、容易に収縮するような材料であるべきである。さらに、エラストマー材料は、繊維28間の領域で、“隆起”するほど可撓性であってはならない。」(本願公表公報10頁3?7行)と記載されているだけであるから、従来からこのようなエラストマー材料に求められていた物性を有するもの、というだけであって、従来から用いられてきたもの、例えばポリウレタン材料、と認められ、あらたに特別なエラストマー本体用の材料を提供するというわけでもないし、そのような特別な材料を見出す手段を提供するというわけでもない。

そして、本願発明が奏する効果についても、格別顕著なものとは認められない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用例A及びBに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-21 
結審通知日 2011-10-27 
審決日 2011-11-08 
出願番号 特願平9-501711
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大宅 郁治小森 潔  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 平井 裕彰
大久保 元浩
発明の名称 バルーンカテーテル用高強度低コンプライアンス複合バルーン  
代理人 小川 信夫  
代理人 中村 稔  
代理人 大塚 文昭  
代理人 渡邊 誠  

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