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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C11D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1254134
審判番号 不服2009-18760  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-02 
確定日 2012-03-19 
事件の表示 特願2000-584039「クリーニング組成物の製法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年6月2日国際公開、WO00/31226、平成14年 9月17日国内公表、特表2002-530516〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1998年11月25日を国際出願日とする出願であって、平成20年9月12日付けで拒絶理由が通知され、平成21年3月10日に意見書及び手続補正書が提出され、平成21年5月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年10月2日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、平成23年4月28日付けで審尋がなされ、これに対して、指定期間内に回答書の提出がされなかったものである。

2.平成21年10月2日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年10月2日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成21年10月2日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「(A)少なくとも1種のアルカリ性物質および少なくとも1種の酸活性成分を用意し、
(B)酸活性成分およびアルカリ性物質をミキサーに加え、
(C)酸活性成分をミキサー中で実質上中和して中和洗剤活性成分を調製し、
(D)少なくとも1種の酸感受性重合体を中和洗剤活性成分に加えてスラリーを調製し、
(E)スラリーを常法に従いクリーニング組成物にする
ことを特徴とする、クリーニング組成物の製法。」を、
「(A)少なくとも1種のアルカリ性物質および少なくとも1種の酸形の陰イオン界面活性剤を用意し、
(B)酸形の陰イオン界面活性剤およびアルカリ性物質をミキサーに加え、
(C)酸形の陰イオン界面活性剤をミキサー中で実質上中和して中和洗剤活性成分を調製し、
(D)少なくとも1種の酸感受性重合体を中和洗剤活性成分に加えてスラリーを調製し、
(E)スラリーを常法に従いクリーニング組成物にする
ことを特徴とする、クリーニング組成物の製法。」に改める補正を含むものである。

(2)補正の適否
ア.はじめに
上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1の合計3カ所に記載された「酸活性成分」との記載部分の各々を「酸形の陰イオン界面活性剤」との記載に補正するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明と、補正後の当該請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、当該補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について検討する。

イ.新規性ないし進歩性について
(ア)引用文献及びその記載事項
原査定で引用された本願出願日前に頒布された刊行物である国際公開第98/08928号(以下、「引用文献1」という。)には、和訳にして、次の記載がある。

摘記1a:請求項1
「1.次の工程によって特徴付けられる噴霧乾燥粒状洗剤組成物の製造のためのプロセス:
(a)洗浄性界面活性剤ペーストと水溶性又は水分散性の変性ポリアミンとのミキサー中での予備混合工程、前記変性ポリアミンは次式の対応するポリアミン骨格を有する:…
(b)前記予備混合工程に続く、洗浄性ビルダーと水を前記ミキサー中に混合してスラリーの形態にする工程、及び
(c)前記スラリーを前記噴霧乾燥粒状洗剤組成物の形態にするための噴霧乾燥工程。」

摘記1b:第6頁第34行?第7頁4行
「従って、本発明の目的は、選ばれた変性ポリアミンを完全に配合された洗剤組成物に添合することのできる手段をもたらす、粒状洗剤組成物の製造方法を提供することである。本発明の目的はまた、改良された洗浄性能を得る為に、完全に配合された洗剤を製造する方法の結果として、選ばれた変性ポリアミンの分解を最小限に抑えるか、もしくはなくすような方法を提供することである。本発明の目的はまた、噴霧乾燥粒子をより効率的に乾燥させるのに適した、またそれらの加工性に適した方法を提供することである。」

摘記1c:第8頁第3?10行
「酸前駆体を用いる方法の態様に於いては、界面活性剤の酸前駆体(ペーストを用いない場合)を、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群から選ぶのが好ましい中和剤で中和させる。この中和剤を、本方法を実施する間にミキサーに加える。例えば、本方法に用いる酸前駆体は、線状アルキルベンゼンスルホネート界面活性剤の酸前駆体(「HALS」)であってよい。界面活性剤ペーストを用いるのであれば中和工程は必要なく、本方法の次の工程には、洗剤ビルダーと水を、予備混合済の界面活性剤ペーストと混合してスラリーを形成する工程が含まれる。」

摘記1d:第28頁第15?18行
「電磁攪拌棒を取り付けた500mlの三角フラスコに、分子量が1800であって、窒素1個に対してエトキシ基が約7個となる迄エトキシル化したポリエチレンイミン(PEI-1800、E_(7))(209g、窒素0.595モル、例Iで調製したもの)と、過酸化水素(30重量%水溶液120g、1.06モル)を添加する。」

摘記1e:第30頁第4行?第31頁第33行
「例IV
例Iに従って変性ポリアミンを作り(「PEI1800E7」)、本発明の方法に用いて噴霧乾燥洗濯用微粒子を形成する。…ここで説明する洗剤製造方法は全て、従来の試験規模の装置で実施する。この装置には、予備混合工程と混合工程を行うことのできる(「クラッチャー」と呼ばれる)バッチ・ミキサーと、その後に従来の噴霧乾燥塔(「塔」)が含まれる。PEI1800E7を線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(「LAS」)界面活性剤ペースト(LASは30%で残りは水)と共にクラッチャーに添加して、25℃で約5分間予備混合する。ここでは、予備混合物のpHを約8?10に保つ。その後、シリケート、蛍光増白剤、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)、炭酸ナトリウム、及び水をクラッチャーに添加して、混合する。クラッチャーの内容物を連続的に混合しながら、約120℃の温度の蒸気、硫酸ナトリウム、及びトリポリ燐酸ナトリウムをクラッチャーに添加する。クラッチャーを、バッチモードで運転する。またクラッチャーには、1バッチにつき湿ったクラッチャー混合物が180kg入る。湿ったクラッチャー混合物を高圧力下で、噴霧ノズルを通して塔内にポンプで送って微細なミストを形成する。熱空気(210℃)の向流の流れを噴霧したミストに当てて混合物を乾燥させ、最終的に噴霧乾燥微粒子を形成し、それを塔の出口で集める。クラッチャーからの多数のバッチを溜めて噴霧乾燥塔に連続的に供給する中間タンクを用いて、噴霧乾燥塔の連続運転を行う。所望ならば、付加的な洗剤成分を添加することにより噴霧乾燥微粒子を更に処理して、完全に配合された洗濯用洗剤組成物を形成する。以下の噴霧乾燥粒状洗剤組成物を本方法発明に従って(すなわち組成物C、及び組成物D)、また本発明の範囲外の方法に従って(すなわち組成物A、及び組成物B)作る。…
組成物Bを、LASと予備混合する工程なしに、PE1800E7を最後の湿った成分として添加する方法により作る。クラッチャーへの添加順序は、LASペースト/シリケート/蛍光増白剤/CMC/PEI1800E7/炭酸ナトリウム/水、蒸気/硫酸ナトリウム/トリポリ燐酸ナトリウム(「STPP」)である。トリポリ燐酸ナトリウムとその他の少量成分を混合して吹き込み粉末にし、完成した粒状組成物A?Dとする。それらについての各成分の相対的な割合を、以下に記載する。…
本発明をこのように詳しく説明してきたが、本発明の範囲からそれることなく様々な変更を行ってもよいということは、当業者にとって明らかであり、また本発明は、本明細書に記載されている事柄に限定されるものではない。」

平成20年9月12日付けの拒絶理由通知書において提示された、本願出願前の技術水準を示すための刊行物である国際公開第97/39100号(以下、「参考文献A」という。)には、和訳にして、次の記載がある。

摘記A1:第16頁第28?32行
「本方法の出発または導入洗剤成分には、いかなる追加成分を包含してもよい。これらには、他の洗浄ビルダー、漂白剤、漂白促進剤、起泡増進剤または起泡抑制剤、防錆および腐蝕防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ遊離剤、殺菌剤、pH調整剤、非ビルダーアルカリ源、キレート化剤、スメクタイト粘土、酵素、酵素安定化剤および香料がある。」

摘記A2:第18頁第1?29行
「例 この例は、ここに記載されて請求された本発明の方法について示している。百分率は、別記されない限り、後続させる乾燥の前における混合物での重量ベースである。ここで用いられる「LAS」および「AS」という用語は、「ナトリウム直鎖アルキルベンゼンスルホネート」および「ナトリウムアルキルサルフェート」を各々意味する。C_(14-15)ASおよびC_(12.3)LASからなるいくつかの界面活性剤ペーストは、C_(14-15)アルコールをSO_(3)で硫酸化して、50%苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を用いてC_(12.3)HALSと共に同時中和して作る。…
界面活性剤ペースト、アルミノシリケートおよび任意のコビルダー炭酸ナトリウムを凝集させて、洗剤凝集物を形成させる。…次いで、得られた洗剤凝集物を、流動層乾燥器および流動層冷却器を装備した任意のコンディショニング装置に供給する。流動層冷却器から出た洗剤凝集物を篩分けし、その後補助洗剤成分をそれと混合して、均一粒度分布を有する完全処方洗剤製品を得る。」

平成20年9月12日付けの拒絶理由通知書において提示された、本願出願前の技術水準を示すための刊行物である特表平5-508679号公報(以下、「参考文献B」という。)には、次の記載がある。

摘記B1:第3頁右下欄第24行?第4頁左上欄第7行
「洗剤粒子は、連続中和システムにおいて、酸形の陰イオン界面活性剤を水酸化物約30?75重量%であり且つ化学量論量からわずかに化学量論過剰(水酸化ナトリウムとして表現して0?約5、好ましくは0?約1重量%過剰)まで存在するアルカリ金属水酸化物溶液と反応させて、中和生成物を生成することによって調製される中和ペーストから形成する。」

摘記B2:第4頁右上欄第1?4行
「香料を例えばアルキルサルフェートおよび線状アルキルベンゼンスルホネートの高活性洗剤粒子上に噴霧する時には、それらは、オフホワイトから許容できない暗黄色になる。」

本願出願前の技術水準を示すための刊行物である特開平10-292199号公報(以下、「参考文献C」という。)には、次の記載がある。

摘記C1:段落0003
「蛍光増白剤は酸との接触によって劣化するため、中和段階では添加することができないので、中和が終了してから添加するという複数のステップを必要としていた。」

摘記C2:段落0015
「中和装置としては、任意のタイプのものが選択されるが、粒状を維持しながら中和・造粒を行うために、撹拌造粒装置を使用することが好ましい。例えば、レーディゲミキサー(レーディゲ社)、プロ-シエアミキサー(太平洋機工社)、ハイスピードミキサー(フカエ工業社)等が挙げられる。」

摘記C3:段落0021
「アニオン界面活性剤の酸性前駆体を固体ビルダーで中和した後、蛍光増白剤/非イオン界面活性剤混合物を添加する方法により、高嵩密度粒状洗剤組成物を調製した。なお、この方法では蛍光増白剤をLAS-Hと接触させないため、2段階の工程が必要となる。」

本願出願前の技術水準を示すための刊行物である特開平9-241695号公報(以下、「参考文献D」という。)には、次の記載がある。

摘記D1:段落0019?0021
「実施例1及び比較例1?5
2klシグマ型ニーダーKM-1500〔SHIENG SHUNG MACHINE TOOL CO.,LTD.(台湾)製〕に炭酸ナトリウム(粉末)175kgを入れ、撹拌しながら水5.4kgを添加した。次いで、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(純度93.5%、水分1%)248kgを約30分かけて徐々に添加して、中和反応を行った(このとき、ニーダーには、前記添加物の上面に20℃の空気を10m^(3)/minの流量で導入した。)。また、ニーダーのジャケットには、冷却水を流して、内容物の温度が65℃以下になるように冷却を行った。中和反応後、ゼオライト(無水)粉末284kgを加えて混合し、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム含有物を得た。次いで、これを破砕機で破砕して粒径300?1000μmの粒子に調製し、この粒子に対して5%の重質炭酸ナトリウムと酵素、香料を混合して、高嵩密度粒状洗剤組成物を製造した。…
なお、蛍光増白剤(チノパールCBS-X)0.55kgは、上記の製造工程中で添加位置、添加方法を表2のように変えて添加した。各製造条件において、ゼオライト混合後の物性及び得られた高嵩密度粒状洗剤組成物の1カ月後の色調を合わせて表2に示す。…
【表2】
┌───────┬───┬───────────────────┐
│ │実施例│ 比 較 例 │
│ ├───┼───┬───┬───┬───┬───┤
│ │ 1 │ 1 │ 2 │ 3 │ 4 │ 5 │
├───────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│蛍光増白剤混合│ │ │ │ │ │ │
│物の配合比 │ │ │ │ │ │ │
│蛍光増白剤 │ 1 │ 1 │ 1 │ 1 │ 1 │ 1 │
│非イオン(…) │ 9 │ 9 │ 9 │ 9 │ 9 │ - │
│水 │ 1 │ 1 │ 1 │ 1 │ 1 │ - │
│AES-Na │ - │ - │ - │ - │ - │ 12 │
├───────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│蛍光増白剤の │中和 │中和 │ゼ…ト│破砕後│中和前│中和 │
│添加位置 │反応後│反応時│添加後│ │ │反応後│
├───────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ゼオライト混合│ ○ │ △ │ × │ ○ │ △ │ ○ │
│後の物性 │ │ │ │ │ │ │
├───────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│洗剤粒子色調 │ ○ │ × │ △ │ × │ × │ △ │
│(経日1ケ月)│ │ │ │ │ │ │
├───────┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
│ 総合評価 │ ○ │ × │ × │ × │ × │ × │
└───────┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘」

(イ)引用文献1に記載された発明
摘記1eの「例IV」の「例Iに従って変性ポリアミンを作り(「PEI1800E7」)、本発明の方法に用いて噴霧乾燥洗濯用微粒子を形成する。…PEI1800E7を線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(「LAS」)界面活性剤ペースト(LASは30%で残りは水)と共にクラッチャーに添加して、25℃で約5分間予備混合する。…その後、シリケート、蛍光増白剤、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)、炭酸ナトリウム、及び水をクラッチャーに添加して、混合する。…湿ったクラッチャー混合物を高圧力下で、噴霧ノズルを通して塔内にポンプで送って微細なミストを形成する。熱空気(210℃)の向流の流れを噴霧したミストに当てて混合物を乾燥させ、最終的に噴霧乾燥微粒子を形成し、それを塔の出口で集める。…以下の噴霧乾燥粒状洗剤組成物を本方法発明に従って(すなわち組成物C、及び組成物D)、また本発明の範囲外の方法に従って(すなわち組成物A、及び組成物B)作る。…本発明は、本明細書に記載されている事柄に限定されるものではない。」との記載、摘記1dの「分子量が1800であって、窒素1個に対してエトキシ基が約7個となる迄エトキシル化したポリエチレンイミン(PEI-1800、E_(7)…例Iで調製したもの)」との記載、及び摘記1aの「1.次の工程によって特徴付けられる噴霧乾燥粒状洗剤組成物の製造のためのプロセス:(a)洗浄性界面活性剤ペーストと…変性ポリアミンとのミキサー中での予備混合工程、…(b)前記予備混合工程に続く、洗浄性ビルダーと水を前記ミキサー中に混合してスラリーの形態にする工程、及び(c)前記スラリーを前記噴霧乾燥粒状洗剤組成物の形態にするための噴霧乾燥工程。」との記載からみて、引用文献1には、
『(a)洗浄性界面活性剤ペースト(線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの界面活性剤ペースト)と変性ポリアミン(分子量が1800であって、窒素1個に対してエトキシ基が約7個となる迄エトキシル化したポリエチレンイミン)とのミキサー中での予備混合工程、(b)前記予備混合工程に続く、洗浄性ビルダーと水を前記ミキサー中に混合してスラリーの形態にする工程、及び(c)前記スラリーを前記噴霧乾燥粒状洗剤組成物の形態にするための噴霧乾燥工程によって特徴付けられる噴霧乾燥粒状洗剤組成物の製造のためのプロセス。』についての発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(ウ)対比
補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「洗浄性界面活性剤ペースト(線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの界面活性剤ペースト)」は、摘記1cの「界面活性剤の酸前駆体…を、水酸化ナトリウム…で中和させる。…酸前駆体は、線状アルキルベンゼンスルホネート界面活性剤の酸前駆体(「HALS」)であってよい。」との記載を参酌するに、HLAS(線状アルキルベンゼンスルホネート界面活性剤の酸前駆体)をNaOHで中和してなるものと推認され、補正後の本願明細書の段落0081の「実施例1」の「酸形のLASに対応する酸活性成分約20?25%を用意する。化学量論所要量の約1.2倍の希薄苛性水酸化物溶液を用意して酸活性成分を中和する。酸活性成分およびアルカリ性物質をミキサーに加え、その中で中和して中和洗剤活性成分を調製する。」との記載にある「中和洗剤活性成分」と同様な方法で調製されたものと推認できるから、補正発明の「中和洗剤活性成分」に相当し、
引用発明の「変性ポリアミン(分子量が1800であって、窒素1個に対してエトキシ基が約7個となる迄エトキシル化したポリエチレンイミン)」は、摘記1bの「本発明の目的はまた、改良された洗浄性能を得る為に、…選ばれた変性ポリアミンの分解を最小限に抑えるか、もしくはなくすような方法を提供することである。」との記載からみて、その「分解を最小限に抑える」ということを前提にした「変性ポリアミン」であって、なおかつ、補正後の本願明細書の段落0081の「実施例1」で使用されている「酸感受性重合体(分子量1800の主鎖およびエトキシ化度約7を有する変性ポリエチレンイミン重合体)」と同一の分子量及びエトキシ化度を有する変性ポリアミンであることから、補正発明の「酸感受性重合体」に相当し、
引用発明の「(a)洗浄性界面活性剤ペースト(…)と変性ポリアミン(…)とのミキサー中での予備混合工程」は、補正発明の「酸感受性重合体を中和洗剤活性成分に加えて…調製」に相当し、
引用発明の「(b)前記予備混合工程に続く、洗浄性ビルダーと水を前記ミキサー中に混合してスラリーの形態にする工程、及び(c)前記スラリーを前記噴霧乾燥粒状洗剤組成物の形態にするための噴霧乾燥工程」は、本願出願前の技術水準からみて、クリーニング組成物の技術分野における周知慣用の「常法」にすぎないものと認められるから、補正発明の「常法に従いクリーニング組成物にする」に相当し、
引用発明の「噴霧乾燥粒状洗剤組成物の製造のためのプロセス」は、補正発明の「クリーニング組成物の製法」に相当する。

してみると、補正発明と引用発明は、『(D)少なくとも1種の酸感受性重合体を中和洗剤活性成分に加えて調製し、(E)スラリーを常法に従いクリーニング組成物にする、クリーニング組成物の製法。』に関するものである点において一致し、
(α)補正発明の「中和洗剤活性成分」に相当する成分の供給が、補正発明においては「(A)少なくとも1種のアルカリ性物質および少なくとも1種の酸形の陰イオン界面活性剤を用意し、(B)酸形の陰イオン界面活性剤およびアルカリ性物質をミキサーに加え、(C)酸形の陰イオン界面活性剤をミキサー中で実質上中和して中和洗剤活性成分を調製」する工程によって調製されているのに対して、引用発明においては界面活性剤の酸前駆体を中和剤で予め中和した「洗浄性界面活性剤ペースト(線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの界面活性剤ペースト)」を用いている点、及び
(β)補正発明の(D)に相当する段階の調製が、補正発明においては「スラリー」として調製されているのに対して、引用発明においては対応する段階の調製が「スラリー」となっているか明確ではない点、
の2つの点においてのみ一応相違する。

(エ)判断
上記相違点について検討する。

先ず、上記(α)の点について、例えば、参考文献Aには、汚れ懸濁剤や汚れ遊離剤などの洗剤成分を混合する前に、HALSを水酸化ナトリウムを用いて中和して「ナトリウム直鎖アルキルベンゼンスルホネート」を作ることが記載されており(摘記A1?A2)、参考文献Bには、酸形の陰イオン界面活性剤を水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物溶液と反応させて、中和生成物を生成することによって中和ペーストを調製することが記載されており(摘記B1)、参考文献Cには、洗剤成分が酸との接触によって劣化するため、アニオン界面活性剤の酸性前駆体を固体ビルダーで中和した後、洗剤成分を添加する方法により、洗剤成分をLAS-Hと接触させないこと、及び中和装置としては各種「ミキサー」が用いられることが記載されており(摘記C1?C3)、参考文献Dには、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸と炭酸ナトリウムとの中和反応後、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム含有物を得た後、香料、蛍光増白剤などの洗剤成分を添加することが記載されている(摘記D1)。
また、補正後の本願明細書の段落0002の「クリーニング組成物、特に洗濯組成物は、典型的には、製造プロセス時に存在する酸性種を含有するであろう。例えば、製造プロセスは、酸活性形の陰イオン界面活性剤(製造プロセス時に中和する)を利用してもよい。特定の陰イオン界面活性剤は、事前中和界面活性剤として添加してもよいが、特定の場所では、このような事前中和界面活性剤は、入手できないか、信頼できない品質を有するか、過度に高価であるかのいずれかである。従って、典型的な製造プロセスは、酸活性成分を加え、そこで中和する。」との記載によれば、典型的な製造プロセスは、酸活性形のインイオン界面活性剤は、製造プロセス時に中和するのが普通であることが理解される。
してみると、『アルカリ性物質(水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムないし固体ビルダーなど)と酸形の陰イオン界面活性剤〔直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(HLAS)など〕を用意し、これらをミキサーに加え、ミキサー中で中和して、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)などの中和洗剤活性成分を調製し、その後に、香料、蛍光増白剤、汚れ懸濁剤ないし汚れ遊離剤などの洗剤成分を混合すること』は、本願出願前の技術水準において、当業者にとって「通常の知識」の範囲内の「典型的な製造プロセス」となっていたものと認められる。
しかして、引用発明の「洗浄性界面活性剤ペースト(線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの界面活性剤ペースト)」が補正後の本願明細書における「事前中和界面活性剤」に相当するとしても、当該「洗浄性界面活性剤ペースト」ないし「事前中和界面活性剤」の供給方法としては、『アルカリ性物質と酸形の陰イオン界面活性剤を用意し、これらをミキサーに加え、ミキサー中で中和して、中和洗剤活性成分を調製』するのが本願出願前の技術水準における「典型的な製造プロセス」になっていたものと認められるから、引用発明の「洗浄性界面活性剤ペースト(線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの界面活性剤ペースト)」が、補正発明の「(A)少なくとも1種のアルカリ性物質および少なくとも1種の酸形の陰イオン界面活性剤を用意し、(B)酸形の陰イオン界面活性剤およびアルカリ性物質をミキサーに加え、(C)酸形の陰イオン界面活性剤をミキサー中で実質上中和して中和洗剤活性成分を調製」する工程により供給されたものであることについては、引用文献1に実質的に開示されているに等しい自明事項にすぎないものと認められる。
したがって、この点について両者に実質的な差異は認められない。

また、この点について相違するとしても、補正発明の「(A)少なくとも1種のアルカリ性物質および少なくとも1種の酸形の陰イオン界面活性剤を用意し、(B)酸形の陰イオン界面活性剤およびアルカリ性物質をミキサーに加え、(C)酸形の陰イオン界面活性剤をミキサー中で実質上中和して中和洗剤活性成分を調製」する工程は、本願出願前の技術水準において、当業者にとって「通常の知識」の範囲内の「典型的な製造プロセス」となっていたものと認められるから、引用発明の「洗浄性界面活性剤ペースト(線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの界面活性剤ペースト)」を、当該周知慣用の常套手段によって調製して供給するようにしてみることは、当該技術分野の「通常の知識」を有する当業者にとって格別の創意工夫を要することではない。

次に、上記(β)の相違点について、摘記1eの「予備混合工程と混合工程を行うことのできる(「クラッチャー」と呼ばれる)バッチ・ミキサー…PEI1800E7を線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(「LAS」)界面活性剤ペースト(LASは30%で残りは水)と共にクラッチャーに添加して、25℃で約5分間予備混合する。ここでは、予備混合物のpHを約8?10に保つ。」との記載からみて、引用発明の(a)の「予備混合工程」は、変性ポリアミン(PEI1800E7)と界面活性剤ペースト(LAS)とを「水」の存在下で、クラッチャーと呼ばれる「バッチ・ミキサー」で予備混合しているものであり、ここで、補正後の本願明細書の段落0025の「ここで有用なミキサーの種類としては、市販のバッチ型スラリーミキサー(「クラッチャー」とも呼ばれる)…が挙げられる。」との記載をも参酌すると、引用発明の「(a)洗浄性界面活性剤ペースト(線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの界面活性剤ペースト)と変性ポリアミン(分子量が1800であって、窒素1個に対してエトキシ基が約7個となる迄エトキシル化したポリエチレンイミン)とのミキサー中での予備混合工程」においては、その「洗浄性界面活性剤ペースト」と「変性ポリアミン」との混合物が「水」の存在下で、実質的に「スラリー」の形態で調製されているものと認められる。
したがって、この点について両者に実質的な差異は認められない。

さらに、補正発明の効果について検討する。
まず、例えば、参考文献Bの「香料を例えばアルキルサルフェートおよび線状アルキルベンゼンスルホネートの高活性洗剤粒子上に噴霧する時には、それらは、オフホワイトから許容できない暗黄色になる。」との記載(摘記B2)や、参考文献Cの「蛍光増白剤は酸との接触によって劣化するため、中和段階では添加することができないので、中和が終了してから添加するという複数のステップを必要としていた。」との記載があるところ、洗剤組成物に配合される「線状アルキルベンゼンスルホネート」ないし「酸」によって、香料や蛍光増白剤などの各種の洗剤成分が劣化することは、当業者にとって「通常の知識」の範囲内の技術常識にすぎないことと認められる。
そして、特に引用文献1に記載された発明は、摘記1bの「本発明の目的はまた、改良された洗浄性能を得る為に、完全に配合された洗剤を製造する方法の結果として、選ばれた変性ポリアミンの分解を最小限に抑えるか、もしくはなくすような方法を提供することである。」との記載にあるように「変性ポリアミンの分解」を皆無ないし最小限に抑制してしまう方法に関するものであって、その目的のために、線状アルキルベンゼンスルホネート界面活性剤の酸前駆体である「HALS」を事前に中和してから、変性ポリアミンを配合してなるものである。
してみると、補正後の本願明細書の段落0007に記載された「洗剤製造プロセスに存在する酸活性成分は、特定の重合体を分解して、所望の重合体特性を与える際に有意にそれ程有効ではない低分子量フラグメントに崩壊させることがあることが今や見出された。」という点については、当業者にとって格別予想外の効果であるとは認められない。
また、補正後の本願明細書の発明の詳細な説明に、補正発明に格別予想外の顕著な効果があることを裏付ける比較実験データが記載されているものでもなく、その他、補正発明に当業者にとって格別予想外の顕著な効果があるとは認めるに足る格別の事情は見当たらない。

(オ)小括
結論として、補正発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1に実質的に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
また、補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、その余のことを検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成21年10月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1?9に係る発明は、平成21年3月10日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

(2)原査定の拒絶の理由
原査定に示された拒絶の理由は、「この出願については、平成20年9月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2によって、拒絶をすべきものです。」というものであって、当該「理由1、2」として、平成20年9月12日付けの拒絶理由通知書には、「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」との理由、及び「2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」との理由が示されるとともに、当該「下記の請求項」として「請求項1?4、6?10」が指摘され、なおかつ、当該「下記の刊行物」として前記2.(2)イ.(ア)で示したとおりの「国際公開第98/08928号」が「引用文献1」として提示されている。

(3)引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された「引用文献1」及びその記載事項は、前記2.(2)イ.(ア)に示したとおりである。

(4)対比・判断
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、「酸活性成分」という事項を発明特定事項とするものであって、「酸形の陰イオン界面活性剤」という事項を発明特定事項とする補正発明を包含するものである。
そして、前記2.(2)イ.(エ)において示したように、『アルカリ性物質(水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムないし固体ビルダーなど)と酸形の陰イオン界面活性剤〔直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(HLAS)など〕を用意し、これらをミキサーに加え、ミキサー中で中和して、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)などの中和洗剤活性成分を調製し、その後に、香料、蛍光増白剤、汚れ懸濁剤ないし汚れ遊離剤などの洗剤成分を混合すること』は、本願出願前の技術水準において、当業者にとって「通常の知識」の範囲内の「典型的な製造プロセス」となっていたものと認められる。
また、同様に、洗剤組成物に配合される「線状アルキルベンゼンスルホネート」ないし「酸」によって、香料や蛍光増白剤などの各種の洗剤成分が劣化することも、当業者にとって「通常の知識」の範囲内の技術常識にすぎないことと認められる。
してみると、本願発明は、補正発明について検討した前記2.(2)イ.の理由と同様の理由により、引用文献1に実質的に記載された発明であり、仮に実質的に相違する点を有しているとしても、引用文献1に記載された発明(及び当業者の通常の知識の範囲内の周知技術)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に実質的に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
また、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-25 
結審通知日 2011-10-28 
審決日 2011-11-08 
出願番号 特願2000-584039(P2000-584039)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C11D)
P 1 8・ 121- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子服部 智  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 木村 敏康
村守 宏文
発明の名称 クリーニング組成物の製法  
代理人 吉武 賢次  
代理人 紺野 昭男  
代理人 横田 修孝  
代理人 中村 行孝  
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