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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61J |
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管理番号 | 1254140 |
審判番号 | 不服2010-24188 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-27 |
確定日 | 2012-03-19 |
事件の表示 | 特願2006-259598号「プレフィルドシリンジタンパク質溶液製剤」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月28日出願公開、特開2006-346494号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成12年2月22日(優先権主張 平成11年2月22日)に出願した特願2000-44778号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成18年9月25日に新たな出願としたものであって、平成22年7月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。 II.平成22年10月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年10月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「プランジャロッドを具備するタンパク質溶液製剤であって、タンパク質がエリスロポエチン、G-CSFまたは抗体であり、かつプレフィルドシリンジの製造段階でプランジャロッドが装着されたプレフィルドシリンジタンパク質溶液製剤。」(なお、下線は補正箇所を示すものである。) 2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「プランジャロッド」について、「プレフィルドシリンジの製造段階でプランジャロッドが装着された」との限定事項を付加したものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.本願補正発明の優先権主張の効果について 原出願の出願当初の明細書の特許請求の範囲に、 「【請求項1】所定方向に回転される回転テーブルと、前記回転テーブルに設けられ、シリンジ供給域、プランジャロッド挿入域、プランジャロッド締付域及びシリンジ排出域を通して移動されるシリンジ保持手段と、前記シリンジ供給域に設けられ、薬液が充填されたシリンジを前記シリンジ保持手段に供給するシリンジ供給手段と、前記プランジャロッド挿入域に設けられ、前記シリンジの後端側にプランジャロッドを挿入するプランジャロッド挿入手段と、前記プランジャロッド締付域に設けられ、前記シリンジのガスケットに前記プランジャロッドを螺合して締め付けるプランジャロッド締付手段と、前記シリンジ排出域に設けられ、前記鍔部材及び前記プランジャロッドが装着された前記シリンジを前記シリンジ保持手段から排出するシリンジ排出手段と、を具備することを特徴とするプランジャロッド付きシリンジ製剤の組付装置。 (省略) 【請求項13】請求項1乃至9記載の組付装置を用いて製造することができる、安定化したプランジャロッド付きプレフィルドシリンジタンパク質溶液製剤 【請求項14】タンパク質が、エリスロポエチン、G-CSFまたは抗体であることを特徴とする請求項12又は13記載のプレフィルドシリンジタンパク質溶液製剤。」 と記載されているとおり、本願補正発明のすべての発明特定事項は、原出願の出願当初の明細書又は図面に記載されたものである。 しかしながら、原出願の優先権主張の基礎となっている特願平11-43967号(以下、「先の出願」という。)は、「プランジャロッド付きシリンジ製剤の組付装置」に関する出願であり、明細書の段落【0033】に、「このようなシリンジ製剤2の製剤例としては、静脈内投与用、筋肉内投与用、皮下投与用、臓器内直接投与用等が挙げられ、また、バレル8内に充填される薬液としては、各種疾病の治療又は診断に用いる薬液、リンゲル液、生理的に許容し得る各種栄養剤などを挙げることができる。」との記載があるものの、本願補正発明における「タンパク質溶液製剤であって、タンパク質がエリスロポエチン、G-CSFまたは抗体で」あるとの発明特定事項については何ら記載がなく、本願補正発明は先の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明とはいえない。 したがって、本願補正発明についての優先権主張の効果は認められず、本願補正発明の新規性、進歩性等の判断基準日は、原出願が出願された平成12年2月22日である。 3-2.引用刊行物の記載事項 (刊行物1) 原査定の拒絶の理由に引用された、上記判断基準日前に頒布された刊行物である国際公開第99/44630号(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (ア)「顆粒球コロニー刺激因子(以下において、G-CSFということもある)は、好中球の前駆細胞に作用し、その増殖ならびに分化成熟を促進する分子量約2万の糖タンパク質である。」(1ページ10?12行) (イ)「本発明のG-CSF含有製剤は、通常密封、滅菌されたプラスチックまたはガラス容器中に収納されている。容器はアンプル、バイアルまたはディスポーザブル注射器のような規定用量の形状で供給することができ、あるいは注射用バックまたは瓶のような大用量の形状で供給することもできる。好ましくは、バイアル、注射器用アンプル又はプレフィルドシリンジに充填された形態のG-CSF含有製剤として供給する。」(6ページ25行?7ページ1行) (ウ)「実施例4:バイアル又はシリンジ充填製剤の安定性 250mgのG-CSF、0.1gのポリソルベート20.7gの塩化ナトリウムを秤量し、リン酸ナトリウム緩衝液にてpHを6.5に調整した全量1Lの調剤液を無菌的に調製し、濾過を行った後、無菌的にバイアル(同上)又はシリンジ(日本ベクトン・ディッキンソン社製ハイパックSFC、1mLロング)に1mLずつ充填、密封し、表4に示すG-CSF溶液製剤を製造した。」(10ページ24?29行) (エ)「1.顆粒球コロニー刺激因子と、顆粒球コロニー刺激因子1重量部に対して1重量部以下の少なくとも1種の製薬上許容される界面活性剤を含み、pH7以下である、安定な顆粒球コロニー刺激因子含有溶液製剤。」(12ページ3?5行) (オ)「12.バイアル、注射器用アンプル又はプレフィルドシリンジに充填された請求項1記載の顆粒球コロニー刺激因子含有溶液製剤。」(13ページ6?7行) 以上の記載事項及び図示内容から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「プレフィルドシリンジに充填されたG-CSF溶液製剤。」 3-3.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、その意味、構造又は機能からみて、引用発明の「プレフィルドシリンジに充填されたG-CSF溶液製剤」は、本願補正発明の「プレフィルドシリンジタンパク質溶液製剤」に相当するとともに、引用発明は、本願補正発明の「タンパク質溶液製剤であって、タンパク質がエリスロポエチン、G-CSFまたは抗体であり」との発明特定事項を有するといえる。 そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「タンパク質溶液製剤であって、タンパク質がエリスロポエチン、G-CSFまたは抗体であるプレフィルドシリンジタンパク質溶液製剤。」 そして、両者は次の点で相違する。 (相違点) 本願補正発明は、「プランジャロッドを具備」し、かつ「プレフィルドシリンジの製造段階でプランジャロッドが装着された」ものであるのに対し、引用発明は、プランジャロッドを具備するものであるか不明であるから、本願補正発明に係る上記の構成を有するものとはいえない点。 3-4.相違点の判断 上記相違点について検討する。 プレフィルドシリンジの技術分野において、プレフィルドシリンジが、プランジャロッドを具備するとともに、プレフィルドシリンジの製造段階でプランジャロッドを装着することは、広く行われている周知慣用技術にすぎない(例えば、特開平6-7446号公報の段落【0015】、図1、特開平8-207960号公報の段落【0013】、図1?3、特開平10-165500号公報の段落【0008】、図1?2を参照のこと)。 したがって、引用発明において、上記周知慣用技術を採用することに格別の困難性は認められず、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知慣用技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-5.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成22年1月15日付けの手続補正書により補正された、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「プランジャロッドを具備するタンパク質溶液製剤であって、タンパク質がエリスロポエチン、G-CSFまたは抗体であることを特徴とするプレフィルドシリンジタンパク質溶液製剤。」 IV.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、前記II.3-2に記載したとおりである。 V.対比・判断 本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、「プレフィルドシリンジの製造段階でプランジャロッドが装着された」との限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-4に記載したとおり、引用発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 VI.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-26 |
結審通知日 | 2012-01-27 |
審決日 | 2012-02-07 |
出願番号 | 特願2006-259598(P2006-259598) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61J)
P 1 8・ 575- Z (A61J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 敏長 |
特許庁審判長 |
高木 彰 |
特許庁審判官 |
高田 元樹 関谷 一夫 |
発明の名称 | プレフィルドシリンジタンパク質溶液製剤 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 江尻 ひろ子 |