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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1254177
審判番号 不服2010-19210  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-25 
確定日 2012-03-22 
事件の表示 特願2008-553450「質問分類のためのメタ学習」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月 9日国際公開、WO2007/090033、平成21年 7月 9日国内公表、特表2009-525547〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成19年1月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年2月1日、アメリカ合衆国、2006年4月24日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成22年2月17日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年4月26日付けで意見書が提出されたが、同年5月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年1月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
第1の質問を自動的に分類するコンピュータを用いた方法であって、
前記コンピュータは、
期待される回答に事前に関連付けられていないデータを含む、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータを入力部から受け付け、
前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータを、制御部を使用して自動的にラベル付けし、
第1の人工神経回路を使用して、回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、
前記第1の人工神経回路は、
第1のウエイトの組を有し、
前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行することによって、前記第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、
前記コンピュータは、
前記第1のウエイトの組を第2の人工神経回路に移転し、
第2の質問及び対応する回答を有する第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを受け付け、
前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータに応じて前記第2の人工神経回路に関連付けられた第2のウエイトの組を修正し、前記第1のウエイトの組を固定することによって、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを使用する前記制御部を用いて前記第2の人工神経回路を訓練し、
前記第1の質問を前記入力部から受け付け、
前記第2の人工神経回路を使用して、前記第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリを前記第1の質問に関連付ける、
ことを特徴とする方法。」

3.原査定の拒絶の理由および請求人の主張について

3-1.平成22年2月17日付けの拒絶理由通知の概要
「この出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



平成22年1月22日付け手続補正書にて補正された(以下、省略する)本願の請求項1には、『第1の質問を自動的に分類するコンピュータを用いた方法であって、前記コンピュータは、期待される回答に事前に関連付けられていないデータを含む、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータを入力部から受け付け、前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータを、制御部を使用して自動的にラベル付けし、第1の人工神経回路を使用して、回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、前記第1の人工神経回路は、第1のウエイトの組を有し、前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行することによって、前記第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、前記コンピュータは、前記第1のウエイトの組を第2の人工神経回路に移転し、第2の質問及び対応する回答を有する第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを受け付け、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータに応じて前記第2の人工神経回路に関連付けられた第2のウエイトの組を修正し、前記第1のウエイトの組を固定することによって、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを使用する前記制御部を用いて前記第2の人工神経回路を訓練し、前記第1の質問を前記入力部から受け付け、前記第2の人工神経回路を使用して、前記第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリを前記第1の質問に関連付ける、ことを特徴とする方法。』と記載されている。
しかしながら、上記記載において、『第1の質問を自動的に分類するコンピュータを用いた方法』とあるが、各種コンピュータの情報処理との対応関係が不明確である。
また、『前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータを、制御部を使用して自動的にラベル付けし』とあるが、どのような具体的な技術的手段により、『自動的にラベル付け』しているのかが不明である。なお、発明の詳細な説明中の記載(例えば、第52?56段落)を参酌しても、どのような具体的技術で実現しているのかが不明である。
また、『第1の人工神経回路を使用して、回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、前記第1の人工神経回路は、第1のウエイトの組を有し、前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行することによって、前記第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し』とあるが、『第1の人工神経回路を使用して』どのような具体的な技術的手段により、『回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し』ているのかが不明である。さらに、『回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータ』とは何かも不明である。さらに、『前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行する』とはどのような情報処理であるのかが不明である。さらに、『前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行する』ことと、『前記第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成』することとの対応関係が不明である。なお、発明の詳細な説明中の記載(例えば、第52?56段落)を参酌しても、どのような具体的技術で実現しているのかが不明である。
また、『前記コンピュータは、前記第1のウエイトの組を第2の人工神経回路に移転し』とあるが、『前記第1のウエイトの組を第2の人工神経回路に移転』するとはどのような情報処理を意味するのかが不明である。
また、『第2の質問及び対応する回答を有する第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを受け付け、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータに応じて前記第2の人工神経回路に関連付けられた第2のウエイトの組を修正し、前記第1のウエイトの組を固定することによって、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを使用する前記制御部を用いて前記第2の人工神経回路を訓練し』とあるが、『前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータに応じて前記第2の人工神経回路に関連付けられた第2のウエイトの組を修正』とはどのような情報処理を意味するのかが不明である。さらに、『前記第1のウエイトの組を固定することによって、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを使用する前記制御部を用いて前記第2の人工神経回路を訓練し』とはどのような情報処理を意味するのかが不明である。なお、発明の詳細な説明中の記載(例えば、第50,51,56段落)を参酌しても、どのような具体的技術で実現しているのかが不明である。
また、『前記第1の質問を前記入力部から受け付け、前記第2の人工神経回路を使用して、前記第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリを前記第1の質問に関連付ける』とあるが、『第1の質問を前記入力部から受け付け』ることと、『前記第2の人工神経回路を使用して、前記第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリを前記第1の質問に関連付ける』こととの対応関係が不明である。さらに、『第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリ』とは何かが不明である。

また、請求項2-25に係る発明について、詳述はしないが、上記と同様に、どのような情報処理であるのかが不明であり、かつ、発明の詳細な説明中の記載に基づき、請求項に係る情報処理をどのようにして実現しているのかが不明である。特に、発明の詳細な説明中の第2?4段落において、本願優先権主張の日において、公開されておらず、周知の技術でもない発明について引用されており、それら発明を用いて実現する技術が、発明の詳細な説明中においては散見され、どこまでが周知の技術であり、どこからが周知の技術でないのかが特定できない。」

3-2.平成22年4月26日付けで提出された意見書の概要
「2.本願が特許されるべき理由
(2-1)請求項1-25は、不明確な箇所がある旨認定されました。以下に代表して請求項1の指摘を受けた箇所を記載し、対応する明細書の箇所を参照しつつ説明を行います。

(2-2)審査官殿は、請求項1の、『前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータを、制御部を使用して自動的にラベル付けし、第1の人工神経回路を使用して、回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、前記第1の人工神経回路は、第1のウエイトの組を有し、前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行することによって、前記第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、』との構成が不明確であるとされています。
しかしながら、当該構成は明細書全体に記載されています。例えば、例えば段落0048?0054は、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータにラベル付けを行い、第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成することが記載されています。段落0048に記載されているように、ラベル付けされていないデータは、そのデータに対する所望の又は期待される回答が事前には利用可能ではないデータを意味し、従来の教師付訓練において使用されるラベル付けされたデータと比較すると、ラベル付けされていないデータの方がより簡便に利用できるという利点があります。段落0048をご参照下さい。
ラベル付けされていないデータが、第1の人工神経回路(ANN)に適用されます。第1の人工神経回路とは、ラベル付けされたデータを作成する“補助ANN”であります。例えば、第1の人工神経回路は、ラベル付けされていないデータからの機能分類を定義するデータ多様体構造を生成します。段落0049をご参照下さい。
ある実施形態においては、第1の人工神経回路は、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータについて異なるタイプの分析を実行します。当該分析のことを“補助タスク”と言います。例えば、第1の人工神経回路によって実行される補助タスクは、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ内の単語から、“何”、“何処”又は“どのように”のような疑問詞を予測し、受け付けた音声又はテキストデータ内の、品詞2-グラム及び3-グラムを予測します。
第1の人工神経回路によって実行される補助タスクは、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ内の単語間の統語的な関係組(relation tuple)も予測します。段落0054、0055をご参照下さい。
段落0015、0057、0058に記載されているように、第1の人工神経回路によって実行された分析結果の出力は、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに“回答”を付す、すなわちラベル付けを行うために使用されます。

(2-3)段落0057は、ラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成するために、1又は複数の補助タスクがどのように使用されるか、という例を提供しています。段落0057の例では、“フローレンスナイチンゲールはいつ生まれたか?(When was Florence Nightingale born?)”というラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータが受け付けられ、第1の人工神経回路は、1又は複数の補助タスクを実行して、当該ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特性を分析します。段落0057の例では、当該ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータは“when”、“was”、“born”及び固有名詞を含むことを補助タスクが識別します。
追加的な補助タスクが、係り受け構文分析ツールを使用して統語的な関係組を識別し、当該ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ内の関係を識別します。したがって、第1の人工神経回路によって使用される補助タスクは、当該ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータをラベル付けするために使用されるセンテンス内のデータの関係及びタイプを識別します。

(2-4)審査官殿は、請求項1の『前記コンピュータは、前記第1のウエイトの組を第2の人工神経回路に移転する』との構成が不明確であるとされています。明細書全体、特に段落0050に記載されているように、第1の人工神経回路は第1のウエイトの組を有します。当該ウエイトは、第1の人工神経回路によって受け付けられたデータの基底予測構造又は基底機能構造を記述しています。段落0049をご参照下さい。
これらのウエイトを第2の人工神経回路に移転すると、第2の人工神経回路が、データを分析する際に第1の人工神経回路の予測構造を使用することが可能になります。段落0049をご参照下さい。第1の人工神経回路から第2の人工神経回路にウエイトを移転することによって、第1の人工神経回路からのウエイトは、第2の人工神経回路がウエイト空間の特定の領域だけを見るように、第2の人工神経回路を帰納的にバイアスするために使用され、第2の人工神経回路に利用可能な仮説空間を削減します。段落0056をご参照下さい。
ある実施形態においては、第1のウエイトの組に対応するプロセッサ内の実装リソースは、第1の補助ANNと第2の補助ANNとの間で共有されます。代替的に、第1のウエイトの組は、第1の補助ANNから第2の補助ANNにコピーされます。段落0050をご参照下さい。

(2-5)審査官殿は、請求項1の『前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータに応じて前記第2の人工神経回路に関連付けられた第2のウエイトの組を修正し、前記第1のウエイトの組を固定することによって、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを使用する前記制御部を用いて前記第2の人工神経回路を訓練し、』との構成が不明確であるとされています。段落0044?0046をはじめ、明細書の多くの箇所が第2の人工神経回路を訓練することを記述しています。
第2の人工神経回路のウエイトは、実際の出力の組と所望の出力の組との間の差分に比例する量だけ変更されます。段落0045の例では、第2の人工神経回路の出力は、別々の質問カテゴリに対応しており、最大値を有する出力が、入力質問に関連付けられたカテゴリを識別します。すなわち、入力質問を“ラベル付け”します。

(2-6)段落0046は、第2の人工神経回路を訓練することについてさらに詳述しています。段落0046に記載されているように、人工神経回路の出力に対応する、関連付けられた所望の回答を有する質問は、“第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータ”の例として使用されます。
段落0046によれば、『質問と対応する正しい回答又は期待回答との組合せは、ラベル付けされたパターン又はラベル付けされた標本と呼ばれる』ことになります。第2の人工神経回路は、ループを繰り返し起動することによって、また、別のラベル付けされた標本、すなわち質問と期待回答との別の組を適用することによって、さらに、第2の人工神経回路に関連付けられたウエイト、すなわち“第2のウエイトの組”を更新することによって、出力誤差が所望の水準に達するまで、訓練されます。

(2-7)請求項1に記載のように、第1の人工神経回路に関連付けられた第1のウエイトの組は、第2の人工神経回路に移転されます。第2のウエイトの組は、ループを繰り返し起動することによって、別のラベル付けされた標本、すなわち質問と期待回答との組を適用することによって、そして、第2のウエイトの組を更新することによって修正されます。
当該修正によって第2のウエイトの組が訓練されているとき、第1のウエイトの組は変更されずに『固定』されています。段落0016、0046、0049、0051をご参照下さい。
第1のウエイトの組を固定すると第2の人工神経回路によって使用される仮説空間が減少し、期待誤差も減少し、関連するタスクの学習が容易になります。

(2-8)請求項1の『前記第1の質問を前記入力部から受け付け、前記第2の人工神経回路を使用して、前記第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリを前記第1の質問に関連付ける、』との構成は、明細書全体に記載されているように、第1の質問を、第1の質問に対する回答を含む可能性が最も高い、データベースのような情報ソースに対してマッピングします。段落0016をご参照下さい。
段落0026?0042は、質問カテゴリの例を記載し、質問カテゴリがデータベースを識別することを記述しています。例えば、質問カテゴリを使用して、オープンデータベースが識別されてもかまいません。『第1の質問』と『質問カテゴリと第1の質問との関連』との関係の例を、段落0042及び図4が示しています。段落0042の例では、第1の質問は、“赤ん坊が泣いていれば、どうすればよいかあなたは知っているか”であります。質問カテゴリは、第1の質問に対する回答を入手するために問合せが行われるデータベースを識別するために使用されます。段落0042をご参照下さい。

(2-9)以上のようにして、請求項1の発明は、人工神経回路を訓練するために必要な時間を削減し、受け付けられた質問に対する回答を含む可能性が高い情報ソースを識別します。第1の人工神経回路は、例えば段落0049に記述されている、その上で機能分類が定義され得るデータ多様体のような、ラベル付けされていないデータの基底予測構造又は基底機能構造を生成します。当該予測構造又は機能構造は、第2の人工神経回路に移転されます。第2の人工神経回路は、第2のウエイトの組を、実際の出力の組と所望の出力の組との間の差分に基づいて修正することによってさらに訓練され、期待回答に予め関連付けられている質問を分類する際の誤差を最小化します。第1の人工神経回路からの学習された基底構造は、第1の人工神経回路から第2の人工神経回路に移転され、その後に受け取られる質問に回答するデータを含む可能性が高い、データベースのような情報ソースを第2の人工神経回路が識別するのを支援します。」

3-3.平成22年5月21日付け拒絶査定の概要
「[第36条第4項第1号及び第6項第2号について]
・・・中略・・・(審決注:省略部分は上記「3-1.」にて摘記した内容と同一)
なお、平成22年4月26日付け意見書を参酌しても、例えば、請求項1に係る『補助タスク』について検討するに、意見書においては、『ある実施形態においては、第1の人工神経回路は、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータについて異なるタイプの分析を実行します。当該分析のことを“補助タスク”と言います。例えば、第1の人工神経回路によって実行される補助タスクは、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ内の単語から、“何”、“何処”又は“どのように”のような疑問詞を予測し、受け付けた音声又はテキストデータ内の、品詞2-グラム及び3-グラムを予測します。』等と、記載されているものの、当該『補助タスク』の技術的範囲は、依然として不明確である。さらに、発明の詳細な説明中の第54段落においては『各補助タスクは、ラベル付けされていないデータについての特定のタイプの分析を行い、こうすることにより、特定のタイプのラベルを割り当て得る。ある補助タスクは、受け付けた質問中に含まれる単語から、“何”、“何処”又は“どのように”のような疑問詞を予測する。他の補助タスクは、受け付けた質問中の連続する単語毎に品詞2-グラム及び3-グラムを予測する。例えば、動詞-名詞-前置詞又は名詞-名詞-動詞のシーケンスを特定する。』と記載されるのみで、その情報処理の技術的範囲が著しく不明であり、かつ、どのような具体的な技術的手段により上記処理を実現しているのかも著しく不明である。
また、その他の点についても同様である。

よって、平成22年2月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由が解消されているとは認められないので、上記の通り結論する。」

3-4.平成22年8月25日付けで提出された審判請求書の概要
「(2)拒絶査定の理由の要点
適用条文:第36条第4項第1号及び第6項第2号
・請求項1について
(i)請求項1において、「第1の質問を自動的に分類するコンピュータを用いた方法」とあるが、各種コンピュータの情報処理との対応関係が不明確である。

(ii)また、「前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータを、制御部を使用して自動的にラベル付けし」とあるが、どのような具体的な技術的手段により、「自動的にラベル付け」しているのかが不明である。なお、発明の詳細な説明中の記載(例えば、第52?56段落)を参酌しても、どのような具体的技術で実現しているのかが不明である。

(iii)また、「第1の人工神経回路を使用して、回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、前記第1の人工神経回路は、第1のウエイトの組を有し、前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行することによって、前記第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し」とあるが、「第1の人工神経回路を使用して」どのような具体的な技術的手段により、「回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し」ているのかが不明である。さらに、「回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータ」とは何かも不明である。さらに、「前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行する」とはどのような情報処理であるのかが不明である。さらに、「前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行する」ことと、「前記第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成」することとの対応関係が不明である。なお、発明の詳細な説明中の記載(例えば、第52?56段落)を参酌しても、どのような具体的技術で実現しているのかが不明である。

(iv)また、「前記コンピュータは、前記第1のウエイトの組を第2の人工神経回路に移転し」とあるが、「前記第1のウエイトの組を第2の人工神経回路に移転」するとはどのような情報処理を意味するのかが不明である。

(v)また、「第2の質問及び対応する回答を有する第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを受け付け、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータに応じて前記第2の人工神経回路に関連付けられた第2のウエイトの組を修正し、前記第1のウエイトの組を固定することによって、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを使用する前記制御部を用いて前記第2の人工神経回路を訓練し」とあるが、「前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータに応じて前記第2の人工神経回路に関連付けられた第2のウエイトの組を修正」とはどのような情報処理を意味するのかが不明である。さらに、「前記第1のウエイトの組を固定することによって、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを使用する前記制御部を用いて前記第2の人工神経回路を訓練し」とはどのような情報処理を意味するのかが不明である。なお、発明の詳細な説明中の記載(例えば、第50,51,56段落)を参酌しても、どのような具体的技術で実現しているのかが不明である。

(vi)また、「前記第1の質問を前記入力部から受け付け、前記第2の人工神経回路を使用して、前記第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリを前記第1の質問に関連付ける」とあるが、「第1の質問を前記入力部から受け付け」ることと、「前記第2の人工神経回路を使用して、前記第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリを前記第1の質問に関連付ける」こととの対応関係が不明である。さらに、「第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリ」とは何かが不明である。

・請求項2-25について
(vii)請求項2-25に係る発明について、詳述はしないが、上記と同様に、どのような情報処理であるのかが不明であり、かつ、発明の詳細な説明中の記載に基づき、請求項に係る情報処理をどのようにして実現しているのかが不明である。特に、発明の詳細な説明中の第2?4段落において、本願優先権主張の日において、公開されておらず、周知の技術でもない発明について引用されており、それら発明を用いて実現する技術が、発明の詳細な説明中においては散見され、どこまでが周知の技術であり、どこからが周知の技術でないのかが特定できない。

(3)記載不備の指摘事項に対する対処
(3-1)拒絶査定において審査官殿は、請求項1が全体的に不明確であると認定されています。さらに、翻訳文の発明の詳細な説明中の記載を参酌してもどのような具体的手段で実現しているのか不明であると認定されています。そこで、請求項1の特徴的な構成について、明細書の翻訳文の対応箇所を示しながら以下に説明します。

(3-2)指摘事項(i)について
審査官殿は、『「第1の質問を分類するコンピュータを用いた方法」とあるが、各種コンピュータの情報処理との関係が不明確である』と認定されています。
しかしながら、請求項1は、コンピュータによって実施される方法の情報処理であることは明らかであり、そのことは、「第1の質問を自動的に分類するコンピュータを用いた方法」という語で明示されています。したがって、請求項1は、第1の質問を自動的に分類するコンピュータを用いた方法であります。翻訳文の図1及び段落0022?0025には、請求項1の方法を実行するコンピュータの実施形態が記載されています。さらに、翻訳文の段落0026、段落0042及び段落0043には、請求項1の方法の情報処理を実行するコンピュータの構成が記載されています。

(3-3)指摘事項(ii)及び(iii)について
審査官殿は、「前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータを、制御部を使用して自動的にラベル付けし」の記載、及び「第1の人工神経回路を使用して、回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、前記第1の人工神経回路は、第1のウエイトの組を有し、前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行することによって、前記第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し」の記載が不明確であると認定されています。しかしながら、当該構成は、翻訳文全体に記載されています。例えば段落0026には、「例えば、マイクロホン130及び入力装置112を介して質問が受け付けられる(ステップ204)。受け付けられた質問は、人工神経回路(ANN)を使用して、解釈され質問カテゴリに関連付けられる(ステップ208)。ANNの形状と操作は後記する通りである。ある実施形態においては、図3のテーブル300に示されるカテゴリセット310のように、1組の質問カテゴリが予め定義されている。」と記載されています。
よって、翻訳文に記載の通り、人工神経回路(ANN)は、ラベル又はカテゴリをデータに関連付けることによって、質問を分類します。質問を正確に分類するために、ANNは最初に、ラベル付けされたデータ及びラベル付けされていないデータを使用して訓練されます。段落0049をご参照下さい。翻訳文全体に亘って開示されているように、2つのANNが分類のために使用されます。第1のANNは、ラベル付けされていないデータを使用して訓練されます。このことは、翻訳文全体に亘って記述されていますが、例えば段落0053?0056には以下の通りです。
・・・中略・・・

(3-4)
したがって、翻訳文中でANN630aとして識別された第1のANNは、最初にラベル付けされていないデータを受け取ります。当該ラベル付けされていないデータは、所望の又は期待された回答が事前に得られないデータです。ラベル付けされていないデータは、従来の教師付訓練において使用されるラベル付けされたデータに比して容易に利用可能です。翻訳文の段落0048をご参照下さい。第1のANN630aは、当該ラベル付けされていないデータから、データ多様体構造を生成します。当該データ多様体構造は、当該ラベル付けされていないデータから機能分類を定義します。翻訳文の段落0049をご参照下さい。ある実施形態においては、第1の人工神経回路は、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータについて異なるタイプの分析、すなわち「補助タスク」を実行します。例えば、第1の人工神経回路によって実行される補助タスクは、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ内の単語から、「何」、「何処」又は「どのように」のような疑問詞を予測し、また、受け取ったラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ内の、品詞2-グラム及び3-グラムを予測します。第1の人工神経回路によって実行される補助タスクは、受け取ったラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ内の単語間の統語的な関係組(relation tuple)を予測します。翻訳文の段落0054及び段落0055をご参照下さい。

(3-5)
さらに、例えば、「前記第1の人工神経回路は、第1のウエイトの組を有し、前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行することによって、前記第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、」(請求項1)とあるように、請求項の用語は、ラベル付けされていないデータの分類に使用される技術的手段を正確に示しています。人工神経回路は、例えば段落0044?0046のように、翻訳文全体に亘って記述されています。
・・・中略・・・

(3-6)
以上より、請求項1が、ラベル付けされていないデータをラベル付けする技術的手段を明示しているだけでなく、翻訳文にも、ラベル付けする技術的手段、すなわち第1の人工神経回路についての詳細が記述されており、請求項1の「前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータを、制御部を使用して自動的にラベル付け」する技術的手段は明らかであります。

(3-7)
さらに、請求項1は、「前記第1の人工神経回路は、・・・前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行することによって、前記第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、」と記載しています。前記段落をはじめ翻訳文全体に亘って記述されている第1の人工神経回路及び制御部は、「回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成」する技術的手段を提供します。

(3-8)指摘事項(iii)について
審査官殿は、「回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータ」の記載が不明確であると認定されています。翻訳文の例えば段落0012に開示されているように、ラベル付けされた例とは、「ペアになった回答が付された質問例」であります。翻訳文の段落0015には、以下の記載があります。
・・・中略・・・

(3-9)
さらに、翻訳文の段落0046に開示されているように、人工神経回路の出力に対応する1つの期待回答を有する質問は、「第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータ」の例として使用されます。翻訳文の段落0046によれば、「質問と対応する正しい回答又は期待回答の組み合わせは、ラベル付けされたパターン又はラベル付けされた標本と呼ばれる」ことになります。

(3-10)
したがって、翻訳文の段落0053?0056に記述されている補助タスクの適用は、ラベル付けされていないデータの特徴を示す回答を提供します。翻訳文の段落0054に記載されているように、第1のANNは、1又は複数の補助タスクを実行し、ラベル付けされていないデータからラベル付けされたデータを作成します。
・・・中略・・・

(3-11)
翻訳文の段落0054?0056は、さらに、どのように補助タスクが特徴を分析するかを記述し、一方で、翻訳文の段落0057は、どのように1又は複数の補助タスクが使用されてラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成するかについての例を提供しています。翻訳文の段落0057の例では、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ「フローレンスナイチンゲールはいつ生まれたか?(When was Florence Nightingale born?)」が受け取られ、第1の人工神経回路が1又は複数の補助タスクを実行し、当該ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析します。翻訳文の段落0057の例では、当該ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータは、「When」、「was」、「born」及び固有名詞を含みます。追加的な補助タスクは、係り受け構文解析ツールを使用して統語的な関係組(relation tuple)を識別し、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ内の関係を識別します。よって、第1の人工神経回路によって実行される補助タスクは、ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータをラベル付けするために使用される、文章内のデータの関係及びタイプを識別します。それぞれの補助タスクがラベル付けされていないデータの特徴を分析するので、それぞれの補助タスクは、当該タスク分析の結果を記述するラベルのタイプを、当該補助タスクに割り当てます。翻訳文の段落0054をご参照下さい。

(3-12)指摘事項(iv)について
審査官殿は、「前記第1のウエイトの組を第2の人工神経回路に移転する」とはどのような情報処理を意味するのか不明であると認定されています。翻訳文の段落0050をはじめとして翻訳文全体に亘って記述され、請求項1にも記載されているように、第1の人工神経回路は、第1のウエイトの組を有し、第1のウエイトの組は、第1の人工神経回路によって受け取られたデータの基底予測構造又は基底機能構造を記述します。翻訳文の段落0049をご参照下さい。これらのウエイトは、第2の人工神経回路に移転され、第2の人工神経回路が、データ分析時に、第1の人工神経回路の予測構造を使用することを可能にします。翻訳文の段落0049をご参照下さい。第1の人工神経回路から第2の人工神経回路にウエイトを移転することによって、第1の人工神経回路からのウエイトは、ウエイト空間の特定の領域だけを見るように第2の人工神経回路に対して帰納的バイアスをかけるために使用されます。そのことによって、第2の人工神経回路が利用できる仮説空間が削減されます。翻訳文の段落0056をご参照下さい。第2の人工神経回路の情報処理については、翻訳文の段落0050に以下の記載があります。
・・・中略・・・

(3-13)
よって、第1の人工神経回路が有するウエイトは、第2の人工神経回路に移転され、第2の人工神経回路を使用して後に受け取られるデータの分類を行うことを容易にします。翻訳文の段落0056には以下の記載があります。
・・・中略・・・

(3-14)
第1のウエイトの組が第2の人工神経回路に移転された後、第2の人工神経回路は、第2の人工神経回路に関連付けられた第2のウエイトの組を修正することによって、第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを使用して訓練されます。一方、第1の人工神経回路から受け取られた第1のウエイトの組は固定されます。よって、第2の人工神経回路は、第1のウエイトの組を変更するのではなく、第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを受け取ると、第2のウエイトの組を修正します。翻訳文の段落0056には、以下の記載があります。
・・・中略・・・

(3-15)指摘事項(v)について
審査官殿は、請求項1の「前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータに応じて前記第2の人工神経回路に関連付けられた第2のウエイトの組を修正し、前記第1のウエイトの組を固定することによって、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを使用する前記制御部を用いて前記第2の人工神経回路を訓練し、」の構成が不明確であると認定されています。翻訳文の段落0045?0046のような翻訳文の様々な箇所が、第2の人工神経回路の訓練を記述しています。例えば、翻訳文の段落0045及び段落0046は以下の通りです。
・・・中略・・・

(3-16)
第2の人工神経回路に関連付けられた第2のウエイトの組は、所望の出力の組と実際の出力の組との差分に比例する量だけ変更を受けます。翻訳文の段落0045に記述された例では、第2の人工神経回路の出力は、別の質問カテゴリに対応します。この例では、最大値を有する出力が、ある入力された質問に関連付けられたカテゴリを識別します。すなわち、入力された質問をラベル付けします。翻訳文の段落0046は、請求項に記載された第2の人工神経回路の訓練についての追加説明を提供します。翻訳文の段落0046に開示されているように、第2の人工神経回路は、反復起動を行い、別のラベル付けされた例、すなわち、質問と所望の回答とがペアになっている例(請求項の「第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータ」)を適用することによって、かつ、期待出力誤差が獲得されるまで第2の人工神経回路に関連付けられたウエイト(請求項の「第2のウエイトの組」)を更新し続けることによって、訓練されます。

(3-17)
請求項1に記載のように、第1の人工神経回路に関連付けられた第1のウエイトの組は、第2の人工神経回路に移転されます。第2の人工神経回路が、反復起動を行い、別のラベル付けされた例、すなわち、質問と所望の回答とがペアになっている例を適用することによって第2のウエイトの組を修正し、第2ウエイトの組を更新することによって、訓練されるとき、第1のウエイトの組は変化しません。すなわち「固定」されています。翻訳文の段落0016、0046、0049及び0051をご参照下さい。第1のウエイトの組を固定することは、第2の人工神経回路によって使用される仮説空間を削減し、関連するタスクの学習を容易にする間、期待誤差を削減します。

(3-18)指摘事項(vi)について
翻訳文の全体に亘って開示されているように、ラベル付けされていないデータ及び第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを使用して訓練された後に、第2の人工神経回路内の第1のウエイトの組及び第2のウエイトの組は、受け取られた質問をカテゴリに関連付けるために使用されます。例えば、翻訳文の段落0026には以下の記載があります。
・・・中略・・・

(3-19)
よって、請求項1の構成「前記第2の人工神経回路を使用して、前記第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリを前記第1の質問に関連付ける」は、データベースのような、第1の質問に対する回答を含む可能性が最も高い情報ソースを識別する質問カテゴリに第1の質問をマッピングすることでああります。翻訳文の段落0016をご参照下さい。翻訳文の段落0026?0042は、質問カテゴリの複数の例を提供し、質問カテゴリはデータベースを識別し得ることを記述しています。翻訳文の段落0042は、「識別されたカテゴリ、客体及び特性は、適当な回答を含む可能性が最も高いデータベースに対して(データベース内のテーブルに対しての場合もある)マッピングされる(ステップ216)べきクエリを定式化するために使用される。」と記載しています。例えば、オープンデータベースが、質問カテゴリを使用して識別されてもかまいません。翻訳文の段落0042及び図4は、質問カテゴリと第1の質問との間の関連付けと、第1の質問との関係の例を提供しています。翻訳文の段落0042の例では、第1の質問は、「赤ん坊が泣いていれば、どうすればよいかあなたは知っているか」であります。質問カテゴリは、第1の質問に対する回答を入手するために検索されるデータベースを識別するために使用されます。翻訳文の段落0042をご参照下さい。

(3-20)
以上より、請求項1の発明は、受け取った質問に対する回答を含む可能性が高いデータベースを識別するために人工神経回路を訓練する時間を短縮します。例えば翻訳文の段落0049に記述されているように、第1の人工神経回路は、その上で機能分類が定義され得るデータ多様体のような、ラベル付けされていないデータの基底予測構造又は基底機能構造を記述する第1のウエイトの組を生成します。当該基底予測構造又は基底機能構造は、第2の人工神経回路に転送され、第2の人工神経回路は、所望の出力の組と実際の出力の組との差分に基づき第2のウエイトの組を修正することによって訓練され、所望の回答に予め関連付けられた質問を分類する誤差を最小化します。よって、学習された基底構造は、第1の人工神経回路から第2の人工神経回路に移転されて、第2の人工神経回路が、後で受け取られる質問に回答するデータを含む可能性の高いデータベースのような情報ソースを識別するのを支援します。

(3-21)指摘事項(vii)について
審査官殿は、翻訳文に引用されている発明について「どこまでが周知の技術であり、どこからが周知の技術でないのか特定できない」と認定しておられます。しかしながら、翻訳文の段落0002?0004は、本願に関連する技術内容の出願を参照によって組み込もうとしたものです。翻訳文の段落0052には以下の記載があります。
・・・中略・・・

(3-22)
したがって、これらの引用文献は、分散データソースからデータを取得するための技術例を提供するものであって、第1の人工神経回路、第2の人工神経回路又は第1の質問の自動分類についての追加的詳細説明を提供するものではありません。むしろ、これらの開示は、データを入手するために使用され得る、データ入手技術の例を示すものです。」

4.当審の判断
当審は、上記「3-1.」に摘記した拒絶理由は依然として解消していないと判断する。
主な理由は以下のとおりである。

(1)上記審判請求書における「(3-2)指摘事項(i)について」に関する部分について
請求項1には「第1の質問を分類するコンピュータを用いた方法であって・・・関連付ける、ことを特徴とする方法。」との記載があるが、該「コンピュータ」によって実施される各種「情報処理」が具体的にどのような処理であるのか不明であり、「第1の質問を分類するコンピュータを用いた方法」との対応関係も不明である。
なお、上記審判請求書において請求人の主張する、図1及び第22?26,42,43段落の記載を参照しても、請求項1の上記記載は依然として不明である。

(2)上記審判請求書における「(3-3)指摘事項(ii)及び(iii)について」に関する部分について
請求項1には「ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータを、制御部を使用して自動的にラベル付けし」との記載があるが、該「制御部」を具体的にどのように「使用」し、「ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ」をどのように「自動的にラベル付け」するのか特定できず不明である。
また、請求項1には「第1の人工神経回路を使用して、回答を前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータに関連付ける第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し、前記第1の人工神経回路は、第1のウエイトの組を有し、前記ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータの特徴を分析する1又は複数の補助タスクを実行することによって、前記第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し」との記載があるが、該「第1の人工神経回路」が有する「第1のウエイトの組」が示す具体的事物の範囲が特定できないこと、該「第1の人工神経回路」と「ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ」の「特徴」を「分析する」「補助タスク」なるものとの対応関係がどのようなものであり、該「第1の人工神経回路」が具体的にどのように「補助タスク」なるものを「実行」するのか特定できないこと、該「補助タスク」なるものが実行する「分析」によって具体的にどのように「第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータ」を作成するのか特定できないこと、等に起因して、該「第1の人工神経回路」を具体的にどのように使用して「回答」を「ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータ」に「関連付ける」のか特定できず不明である。
なお、上記審判請求書において請求人の主張する、第12,15,26,44?46,48,49,53?56段落の記載を参照しても、請求項1の上記記載は依然として不明である。

また、発明の詳細な説明全体の記載を参酌しても、どのような具体的技術によって「ラベル付けされていない音声又はデジタルテキストデータを、制御部を使用して自動的にラベル付け」するのか特定できず不明である。
すなわち、明細書の第54段落の記載「補助ANN630aは、受け付けた質問を自動的にラベル付けするように学習される(ステップ712)。ある実施形態においては、補助ANN630は、3つの補助タスクを有する。各補助タスクは、ラベル付けされていないデータについての特定のタイプの分析を行い、こうすることにより、特定のタイプのラベルを割り当て得る。」を参酌しても、「補助タスク」が、「ラベル付けされていないデータについての特定のタイプの分析を行」うことにより、どのような具体的技術によって「特定のタイプのラベルを割り当て」得るのか(そもそも「特定のタイプのラベル」が何を意味しているのかも)開示も示唆もされておらず、不明である。
なお、上記審判請求書の(3-4)には、「第1のANN630aは、当該ラベル付けされていないデータから、データ多様体構造を生成します。当該データ多様体構造は、当該ラベル付けされていないデータから機能分類を定義します。翻訳文の段落0049をご参照下さい。」との記載があるが、該記載と請求項1の記載「第1のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを作成し」との対応関係が取れず不明であるとともに、明細書の第49段落の記載「第1のANNは、ラベル付けされていないデータからラベル付けされているデータを生成し、その結果、データの基底予測構造又は基底機能構造を学習する。例えば、ラベル付けされていないデータは、その上で平滑機能分類が定義され得るデータ多様体(グラフ構造)を生成するのに使用され得る。」を参酌しても、どのような具体的技術によって「ラベル付けされていない(審決注:審判請求書の(3-4)によれば、所望の又は期待された回答が事前に得られない)データからラベル付けされている(審決注:審判請求書の(3-8)によれば、ペアになった回答が付された)データを生成」し、その結果、どのような具体的技術によって「データの基底予測構造又は基底機能構造を学習」するのか(そもそも「データの基底予測構造又は基底機能構造」が何を意味しているのかも)開示も示唆もされておらず、不明である。

(3)上記審判請求書における「(3-12)指摘事項(iv)について」および「(3-15)指摘事項(v)について」に関する部分について
請求項1には「第1のウエイトの組を第2の人工神経回路に移転し」、「第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータに応じて前記第2の人工神経回路に関連付けられた第2のウエイトの組を修正し、前記第1のウエイトの組を固定することによって、前記第2のラベル付けされた音声又はデジタルテキストデータを使用する前記制御部を用いて前記第2の人工神経回路を訓練し」との記載があるが、該「第1のウエイトの組」および「第2のウエイトの組」が示す具体的事物の範囲が特定できないこと、該「第2の人工神経回路」と「第1のウエイトの組」と「第2のウエイトの組」のそれぞれの対応関係が特定できないこと、等に起因して、具体的にどのように「第1のウエイトの組」なるものを「第2の人工神経回路」(のどの部分)に移転するのか、「第2のウエイトの組」なるものが具体的に何でありどのように「修正」するのか、該「制御部」を用いて具体的にどのように「第2の人工神経回路を訓練」するのか、不明である。
なお、上記審判請求書において請求人の主張する、第16,45,46,49,50,51,56段落の記載を参照しても、請求項1の上記記載は依然として不明である。(なお、明細書の第44段落には、「第一のウエイトの組530(例えば、乗数)は、入力層ノード520上で動作し、中位層すなわち隠れ層を有する他の組のノードによって1組の合計値を生成する。」との記載があり、仮に請求項1の「第1のウエイトの組」が「入力層ノード上で動作するウエイトの組」であると特定できるとしても、明細書の第51段落にあるように、「第2の人工神経回路」は、ANN630aから移転されていない「第1のウエイトの組」である「642b」も有しており、該「642b」は、明細書の第56段落にもあるように「訓練」の際には「固定」されないから、やはり、請求項1の上記記載は依然として不明である。)

(4)上記審判請求書における「(3-18)指摘事項(vi)について」に関する部分について
請求項1には、「第2の人工神経回路を使用して、前記第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリを前記第1の質問に関連付ける」との記載があり、また同請求項には、該「第2の人工神経回路」は「第2の質問及び対応する回答…を受け付け…訓練し」との記載があるが、該「質問」及び「対応する回答」を受け付けて訓練された「第2の人工神経回路」(「対応する回答」を出力するよう訓練された人工神経回路)をどのように使用して、「対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリ」を、受け付けた第1の「質問」に関連付けるのか不明であること、「対応する回答」と「対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源」を識別する「質問カテゴリ」との対応関係が不明(そもそも「質問カテゴリ」がどのようにして得られるどのようなものかも不明)であること、等に起因して、「第1の質問を前記入力部から受け付け」ることと、「前記第2の人工神経回路を使用して、前記第1の質問に対応する回答を記述するテキストデータ又は音声データを取得するための情報源を識別する質問カテゴリを前記第1の質問に関連付ける」こととの対応関係が不明である。
なお、上記審判請求書において請求人の主張する、第16,26?42,49段落の記載を参照しても、請求項1の上記記載は依然として不明である。

したがって、本願請求項1に係る発明は、依然として明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。また、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件も満たしていない。

5.むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。また、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-19 
結審通知日 2012-01-24 
審決日 2012-02-07 
出願番号 特願2008-553450(P2008-553450)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 536- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 和樹  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 飯田 清司
加内 慎也
発明の名称 質問分類のためのメタ学習  
代理人 磯野 道造  

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