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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1254180 |
審判番号 | 不服2010-22312 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-04 |
確定日 | 2012-03-22 |
事件の表示 | 特願2004-134137「光ディスク装置、光ピックアップの制御装置及び光ディスク装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月10日出願公開、特開2005-317112〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成16年4月28日の出願であって、平成21年12月4日付けで通知した拒絶の理由に対し、平成22年1月21日付けで手続補正がなされ、平成22年3月4日付けで通知した拒絶の理由に対し、同年4月8日付けで手続補正がなされ、さらに同年4月22日付けで通知した最後の拒絶の理由に対し、同年6月16日付けで意見書のみ提出されたが、前記最後の拒絶の理由により同年7月1日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年10月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 平成22年4月8日付け手続補正 平成22年4月8日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の記載を以下のとおりに補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。 「【請求項1】 光ディスクに対してレーザ光を照射し、当該レーザ光が当該光ディスクで反射されてなる反射光を検出して受光信号を生成する光ピックアップと、 上記光ピックアップを上記光ディスクの半径方向に駆動する光ピックアップ駆動手段と、 上記受光信号を所定の2値化閾値によって2値化することにより、上記光ディスクに設けられたトラックを上記光ピックアップが横切る都度にパルスを生じるトラバース信号を生成するトラバース信号生成手段と、 上記トラバース信号に基づいて上記光ピックアップの移動量及び移動速度を認識し、当該認識結果に基づいて上記光ピックアップ駆動手段を制御することにより上記光ピックアップをターゲットまでシークさせる移動制御手段と、 上記トラバース信号のパルス間隔が予め設定されたパルス間隔閾値を超えたとき、異常通知を発行する異常監視手段と、 上記異常通知に応じて上記光ピックアップ駆動手段を制御することにより上記光ピックアップのシークを一時停止させる一時停止手段と、 上記光ピックアップのシークが一時停止するまでの上記トラバース信号のパルス数と上記パルス間隔閾値とに基づいて上記光ピックアップの一時停止位置を推測する一時停止位置推測手段と、 上記一時停止位置の上記トラックに応じて当該トラックに対応したアドレスの読出条件を変更する読出条件変更手段と、 上記読出条件で上記アドレスを読み出せたとき、上記一時停止位置が正しいと認識する一時停止位置認識手段と を有し、 上記移動制御手段は、上記光ピックアップ駆動手段を介して、上記一時停止位置認識手段により認識された上記一時停止位置から上記ターゲットまで上記光ピックアップを再度シークさせる 光ディスク装置。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、平成22年4月8日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものである。 (1)平成22年4月22日付けで通知した最後の拒絶の理由には、概略、次のように記載されている。 請求項1-3において「上記光ピックアップのシークが一時停止するまでの上記トラバース信号のパルス数と上記パルス間隔閾値とに基づいて上記光ピックアップの一時停止位置を推測する」とした補正に関して、出願人は発明の詳細な説明の段落【0037】【0039】【0049】の記載に基づくと主張しているが、例えば段落【0037】には「パルス数カウント値(これは移動済みトラック数に相当する)に基づいて光ピックアップ5の現在位置を推定」、【0062】には「トラバース信号TSのパルス数に基づいて当該光ピックアップ5の移動トラック数を認識」等と記載されているものの、パルス数とパルス間隔閾値とに基づいて推測すること(出願人が意見書において主張する、パルス数にパルス間隔閾値を加えること)は記載も示唆もされていない。 (2)また、平成22年7月1日付けでした拒絶の査定では、概略、次のように記載されている。 『補正された事項が「当初明細書等の記載から自明な事項」といえるためには、当初明細書等に記載がなくても、これに接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、その意味であることが明らかであって、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解する事項でなければならない』(審査基準第3部第1節参照)ところ、 本願の発明の詳細な説明には、段落【0037】に「パルス数カウント値(これは移動済みトラック数に相当する)に基づいて光ピックアップ5の現在位置を推定」、【0062】に「トラバース信号TSのパルス数に基づいて当該光ピックアップ5の移動トラック数を認識」等と記載されているのみである。 そして、上記記載でもって、「パルス数とパルス間隔閾値」に基づいて推測することを意味することが当業者にとって明らかであって、そこに記載されているのと同然であると理解できるとは認められない。 第4 請求人の主張 請求人は、平成22年10月4日付けの審判請求書において、概略、次のように主張している。 審査官殿が拒絶理由通知の記において指摘された「パルス数とパルス間隔閾値とに基づいて推測すること(出願人が意見書において主張する、パルス数にパルス間隔閾値を加えること)は記載も示唆もされていない。」については、 「[0036]これに対して本発明の光ディスク装置1では、シーク時においてトラバース信号TSのパルス間隔を監視し、当該パルス間隔が所定のパルス間隔閾値よりも長くなった場合、歯抜けが起きた可能性があるものとして光ピックアップ5の移動を停止する。 [0037]そして光ディスク装置1は、トラバース信号TSのパルス間隔がパルス間隔閾値を越えた時点におけるトラバース信号TSのパルス数カウント値(これは移動済みトラック数に相当する)に基づいて光ピックアップ5の現在位置を推定してアドレスをリードし、この移動停止位置からターゲットアドレスまでのシーク物理トラック数を再算出してシークさせることにより光ピックアップ5をターゲットに到達させる。」 (本願明細書・段落[0036]・[0037]) とあるように、パルス間隔が所定のパルス間隔閾値よりも長くなり、光ピックアップの移動が停止されたときは、トラバース信号のパルスが検出できなくなった時に位置していたトラックよりも、光ピックアップはパルス間隔閾値に相当するトラックの分だけ進んだトラックに位置していることとなる。 また、 「ところがトラッキングエラー信号は光ディスクのディフェクト(欠陥)や付着したゴミ等の様々な原因によってその振幅が減少し、このときトラバース信号は連続的に「Lo」となり(これを「歯抜け」と呼ぶ)、これにより光ディスク装置はシーク量を過小に誤認識するトラックカウントミスを起こしてしまう。」 (本願明細書・段落[0004]) とあるように、トラバース信号のパルスが検出できなくなる要因としては光ディスクのディフェクトや付着したゴミ等がある。ここで光ピックアップが一時停止した際に、仮にパルス間隔閾値を考慮せずに再シークを始めようとすると、もともとトラバース信号が正しく検出できなかったトラックに戻って再シークを始めることになるため、トラバース信号は再び正しく検出できない可能性が高くなってしまう。この場合、それ以上は光ピックアップのシークができなくなったり、シークができたとしてもトラバース信号のパルスが検出できなくなったトラックまで戻るためターゲットアドレスまで再シークして到達するのに時間がかかったりすることとなってしまい、『確実かつ高速な光ピックアップのシークを行い得る』という本願発明の課題を解決し得なくなってしまう。 このため、このような本願発明の技術的思想に基づくと共に、段落[0037]に記載されたパルス数カウント値は単なる適当な時点ではなく「「パルス間隔がパルス間隔閾値を越えた時点(段落[0037])」におけるトラバース信号TSのパルス数カウント値」であることを鑑みれば、光ピックアップのシークが一時停止するまでのトラバース信号のパルス数とパルス間隔閾値とに基づいて光ピックアップの停止位置を推測することは、本願明細書に示唆されていると言えると思慮する。 第5 当審の判断 1.願書に最初に添付された明細書及び図面の記載 本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した)。 (a)「【請求項2】 上記移動制御手段は、上記光ピックアップが一時停止するまでの上記トラバース信号のパルス数に基づいて当該光ピックアップの一時停止位置を推測し、当該推測した一時停止位置に応じた読み出し条件で上記光ディスクのアドレスを読み出すことにより、当該光ピックアップの一時停止位置を認識する ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。」 (b)「【0036】 これに対して本発明の光ディスク装置1では、シーク時においてトラバース信号TSのパルス間隔を監視し、当該パルス間隔が所定のパルス間隔閾値よりも長くなった場合、歯抜けが起きた可能性があるものとして光ピックアップ5の移動を停止する。」 (c)「【0037】 そして光ディスク装置1は、トラバース信号TSのパルス間隔がパルス間隔閾値を越えた時点におけるトラバース信号TSのパルス数カウント値(これは移動済みトラック数に相当する)に基づいて光ピックアップ5の現在位置を推定してアドレスをリードし、この移動停止位置からターゲットアドレスまでのシーク物理トラック数を再算出してシークさせることにより光ピックアップ5をターゲットに到達させる。」 (d)「【0061】 これに対してステップSP26において肯定結果が得られた場合、このことはトラバース信号TSのパルス間隔がパルス間隔閾値より大きく、歯抜けエラーが起きている可能性があることを表しており、このときサーボシグナルプロセッサ28はステップSP27に移り、スレッドモータの駆動を停止して光ピックアップ5を停止させた後、CPU2に対して「シークエラー発生」の通知及びこの時点でのパルス数カウント値を移動済みトラック数として送信した後、ステップSP28で処理を終了する。」 2.判断 上記(b)の記載からすると、「パルス間隔閾値」は、歯抜けが起きたか否かを判定するために用いられることが明らかである。 また、上記(a)(c)及び(d)の記載からすると、歯抜けが起きた可能性があるものとして光ピックアップの移動を一時停止するとき、一時停止位置は、移動済みトラック数に相当するトラバース信号のパルス数カウント値に基づいて推測されるものである。 一方、当初明細書等を全て精査しても、「光ピックアップのシークが一時停止するまでのトラバース信号のパルス数とパルス間隔閾値とに基づいて光ピックアップの一時停止位置を推測する」ことは記載されていない。 請求人は、本願発明の技術的思想とを鑑みれば、光ピックアップのシークが一時停止するまでのトラバース信号のパルス数とパルス間隔閾値とに基づいて光ピックアップの停止位置を推測することは、本願明細書に示唆されていると言える旨主張しているが、上記(a)(c)及び(d)の記載からは、光ピックアップの一時停止位置が、「トラバース信号のパルス数」に基づいて推測又は推定されることが明確であるから、文言上、前記推測又は推定が「パルス間隔閾値と」に基づくものとの記載がないばかりでなく、「パルス間隔閾値と」に基づくことが自明なものであるとも認めるべき根拠もない。 また、請求人が、 「ここで光ピックアップが一時停止した際に、仮にパルス間隔閾値を考慮せずに再シークを始めようとすると、もともとトラバース信号が正しく検出できなかったトラックに戻って再シークを始めることになるため、トラバース信号は再び正しく検出できない可能性が高くなってしまう。」 と主張している点について検討すると、図2のSP11ないしSP13を参照すると明らかなように、一時停止位置の推測は、「スピンドル回転数又はリードクロック変更」、すなわちリード条件の設定変更に用いられており、当該設定変更されたリード条件によって、「現アドレスをリード」できると、更にシークすべきトラック数の算出が行われる(SP3)のであるから、一時停止位置の推測は、現アドレスがリードできる条件を設定できる程度で十分であって(このことは、リードできない場合に最内周へ戻るように制御することからも明らかである)、請求人が主張するように「もともとトラバース信号が正しく検出できなかったトラックに戻って再シークを始めることになる」ものではなく、再シーク自体は一時停止位置から、算出されたトラック数により行われると解されるので、一時停止位置の推測にパルス間隔閾値を考慮しなくとも、「『確実かつ高速な光ピックアップのシークを行い得る』という本願発明の課題を解決し得なくなってしまう」とまではいえない。 以上の検討を総合すると、本件補正により、請求項1に記載された発明において、 「光ピックアップのシークが一時停止するまでの上記トラバース信号のパルス数と上記パルス間隔閾値とに基づいて上記光ピックアップの一時停止位置を推測する」と補正することは、「パルス間隔閾値」を、歯抜けが起きたか否かを判定するために用いることに加え、光ピックアップの一時停止位置のアドレスの推測にも用いることを付け加えるものであるから、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術事項を導入するものである。 3.まとめ 以上のとおりであるから、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内にしておいてしたものとすることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲及び明細書についてした平成22年4月22日付けの手付補正は、特許法第17条の2の第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-17 |
結審通知日 | 2012-01-24 |
審決日 | 2012-02-07 |
出願番号 | 特願2004-134137(P2004-134137) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 則之 |
特許庁審判長 |
山田 洋一 |
特許庁審判官 |
馬場 慎 蔵野 雅昭 |
発明の名称 | 光ディスク装置、光ピックアップの制御装置及び光ディスク装置の制御方法 |
代理人 | 田辺 恵基 |