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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1254200
審判番号 不服2011-7119  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-05 
確定日 2012-03-22 
事件の表示 特願2008-219191「ビデオゲーム処理装置,およびビデオゲーム処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年3月11日出願公開,特開2010-51514〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成20年8月28日に特許出願されたものであって,平成22年12月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年4月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同時に提出された手続補正書により特許請求の範囲の補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。
その後,平成23年7月21日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年9月20日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を,以下に記載する「補正前」のものから,「補正後」のものに補正しようとする補正事項を含むものである(下線は補正前後で相違する箇所に当審にて付与)。

[補正前](平成22年10月25日受付の手続補正書)
「【請求項1】
プレイヤが操作するプレイヤキャラクタを表示してビデオゲームの進行を制御するビデオゲーム処理装置であって、
該ビデオゲーム処理装置と同様の構成を成す他のビデオゲーム処理装置とデータ通信を行うための通信接続を確立する通信確立手段と、
前記通信確立手段によって通信接続が確立されている前記他のビデオゲーム処理装置において他のプレイヤが操作する他のプレイヤキャラクタとの通信対戦を行うことが決定したことに応じて、前記プレイヤキャラクタに保有させるコマンドである保有コマンドを当該プレイヤキャラクタに付与する保有コマンド付与手段と、
所定の解放条件を満たしたときに、前記プレイヤキャラクタが保有している1又は2以上の保有コマンドを当該プレイヤキャラクタが保有するコマンドから削除することで保有コマンドを解放するとともに、前記プレイヤキャラクタから解放されたコマンドを示す解放コマンドアイコンがバトル画面内で飛び散るコマンド解放演出を行う保有コマンド解放手段と、
前記他のビデオゲーム処理装置において前記他のプレイヤキャラクタから解放されたコマンドを示す解放コマンドアイコンと、前記プレイヤキャラクタとのバトル画面上における衝突判定を行う衝突判定手段と、
衝突判定により前記プレイヤキャラクタが解放コマンドアイコンに衝突したと判定されたことに応じて、衝突した解放コマンドアイコンをバトル画面から消去して、衝突した解放コマンドアイコンが示すコマンドを前記プレイヤキャラクタに保有させる保有コマンドとして当該プレイヤキャラクタに付与する解放コマンド付与手段とを含む
ことを特徴とするビデオゲーム処理装置。」

[補正後](平成23年4月5日付けの手続補正書)
「【請求項1】
プレイヤが操作するプレイヤキャラクタを表示してビデオゲームの進行を制御し、通信機能を利用して必要な情報をデータ通信により送受することで対戦プレイである通信対戦を行うビデオゲーム処理装置であって、
該ビデオゲーム処理装置と同様の構成を成す他のビデオゲーム処理装置とデータ通信を行うための通信接続を確立する通信確立手段と、
前記通信確立手段によって通信接続が確立されている前記他のビデオゲーム処理装置において他のプレイヤが操作する他のプレイヤキャラクタとの前記通信対戦を行うことが決定したことに応じて、前記プレイヤキャラクタに保有させるコマンドである保有コマンドを当該プレイヤキャラクタに付与する保有コマンド付与手段と、
所定の解放条件を満たしたときに、前記プレイヤキャラクタ又は前記他のプレイヤキャラクタが保有している1又は2以上の保有コマンドを当該プレイヤキャラクタ又は他のプレイヤキャラクタが保有するコマンドから削除することで保有コマンドを解放するとともに、前記プレイヤキャラクタ又は前記他のプレイヤキャラクタから解放されたコマンドを示す解放コマンドアイコンがバトル画面内で飛び散るコマンド解放演出を行う保有コマンド解放手段と、
前記他のビデオゲーム処理装置において前記プレイヤキャラクタ又は前記他のプレイヤキャラクタから解放されたコマンドを示す解放コマンドアイコンと、前記プレイヤキャラクタとのバトル画面上における衝突判定を行う衝突判定手段と、
衝突判定により前記プレイヤキャラクタが解放コマンドアイコンに衝突したと判定されたことに応じて、衝突した解放コマンドアイコンをバトル画面から消去して、衝突した解放コマンドアイコンが示すコマンドを前記プレイヤキャラクタに保有させる保有コマンドとして当該プレイヤキャラクタに付与する解放コマンド付与手段とを含み、
前記衝突判定手段は、解放コマンドアイコンの中心座標から特定範囲に設けられた衝突判定範囲と前記プレイヤキャラクタが位置する座標位置との少なくとも一部が重複したときに衝突したと判定する
ことを特徴とするビデオゲーム処理装置。」

2.補正の適否の判断1(目的要件)
本件補正は,以下の補正事項を含むものである。
(α)「保有コマンド解放手段」について,自らのビデオゲーム処理装置における「プレイヤキャラクタ」の保有コマンドを削除することで解放し,この解放されたコマンドに係るアイコンの画面内での演出を行うものから,「又は」以降の記載を追加して,これが他のビデオゲーム処理装置における「他のプレイヤキャラクタ」の保有コマンドを削除することで解放し,この解放されたコマンドに係るアイコンの画面内での演出を行うものであってもよいとする補正。
(β)「他のビデオゲーム処理装置」において「解放された」キャラクタについて,「他のプレイヤキャラクタ」から,「又は」以降の記載を追加して,これが自らのビデオゲーム処理装置における「プレイヤキャラクタ」であってもよいとする補正。

しかしながら,上記補正事項(α)及び(β)は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項に,「又は」という形で選択肢を追加するものであり,追加された選択肢を選択した場合の発明は,補正前の請求項1に係る発明とは異なるものであるから,当該補正の目的が,特許法第17条の2第5項各号に掲げられたいずれの事項にも該当しないことは明らかである。
審判請求人は,審判請求書の(1)欄において,上記補正事項(α)については,「明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。」と説明するものの,上記のとおり,補正後の請求項1に係る発明は,補正前の請求項1に係る発明とは異なるものをも包含することは明らかであり,このような補正が,特許法第17条の2第5項第4号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるとは認められない。なお,審判請求人は,補正事項(β)の補正の目的については,何ら説明していない。
よって,本件補正は,改正前特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。

3.補正の適否の判断2(独立特許要件)
本件補正のうち,以下の補正事項は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
(γ)「衝突判定手段」について,「解放コマンドアイコンの中心座標から特定範囲に設けられた衝突判定範囲とプレイヤキャラクタが位置する座標位置との少なくとも一部が重複したときに衝突したと判定する」ものであることを限定する補正。

よって,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
ここで,本願補正発明の「衝突判定手段」の発明特定事項における「他のビデオゲーム処理装置において」との記載が,「解放されたコマンド」との記載を修飾しているのか,「衝突判定を行う」との記載を修飾しているのかが必ずしも明確ではないが,回答書の(3)欄における審判請求人の主張に鑑み,本欄(「3.補正の適否の判断2」)では,前者を意図した記載であるとして本願補正発明を認定することとする。

(1)引用例
(イ)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である
特開2003-62345号公報(以下,「引用例1」という。)
には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審にて付与)。

(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゲーム機等を用いて行われる対戦型ゲームのプログラムに係り、より詳細にはプレイヤが操作するキャラクタが表示され対戦する対戦型ゲームのプログラムに関する。」

(1b)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述の如く、対戦型ゲームにおいては、戦いの場面で複数のキャラクタが混在して互いに戦闘を繰り広げる場面展開が継続し、ゲームの進行に伴う場面変化に乏しくゲーム進行が単調になっている。」

(1c)「【0008】本発明は上記実状に鑑み、ゲームの場面展開が変化に富み、プレイヤの戦闘行為の任意性が増加し、且つ戦いの勝利感が充足可能な対戦型ゲームのプログラムの提供を目的とする。」

(1d)「【0029】
【発明の実施の形態】以下、実施例を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【0030】本発明の実施例である対戦型ゲームは、複数のプレイヤが例えば、各自、図1に示すゲーム機1(1A、1B、1C1D)を操作することにより自らのキャラクタ画像(以下、キャラクタと称す)を動作制御して、乱闘モード(第1モード)において全キャラクタが参加して互いに戦いを繰り広げ、あるキャラクタが一騎討ち攻撃(第2モード移行攻撃)を敵キャラクタに加え当てた場合に当該キャラクタと敵キャラクタとの一騎討ちモード(第2モード)に移行して一騎討ちの戦いを繰り広げる。」

(1e)「【0035】そして、対戦型ゲームを行うプレイヤが4人の場合には、図2(a)に示すような接続ケーブルJを用いて、図2(b)に示すように、3本の接続ケーブルJa、Jb、Jcを介して、プレイヤ1が操作するゲーム機1A、プレイヤ2が操作するゲーム機1B、プレイヤ3が操作するゲーム機1C、およびプレイヤ4が操作するゲーム機1Dを互いに接続して対戦型ゲームが行われる。」

(1f)「【0042】次に、ゲーム機1(1A、1B、1C1D)内に収納され、対戦型ゲームを進行制御する制御部の構成について図3を用いて説明する。」

(1g)「【0049】CPU(S1_(1))は、例えば32ビットのCPUが使用されており、ゲーム機1の制御部の中枢を司るもので、システムバスS7を介して他の制御構成部と制御信号やデータ信号等の受け渡しを行いゲーム機1全体を統括的に制御している。
【0050】すなわち、CPU(S1_(1))は、対戦型ゲームプログラム並びにプレイヤがゲーム機1の前述の操作部を使用して入力操作する内容に基づいて適宜、各コマンドから描画や音出力のためのタスクを生成して、対戦型ゲームの進行を制御する。」

(1h)「【0070】前記通信部S6は、通信制御部S6_(1)と、通信インタフェースI/F(S6_(2))とを具え構成されている。
【0071】上記通信制御部S6_(1)は、対戦型ゲームを行う場合に、他のゲーム機間で対戦型ゲームデータの送受に係わる通信制御処理を実行している。」

(1i)「【0083】なお、以上説明した対戦型ゲームシステムは、携帯型のゲーム機1に適用した場合を例示したが、<以下略>」

(1j)「【0089】次に、対戦型ゲームのプログラムの実行により進行される対戦型ゲームの全体構成について説明する。
【0090】ここで、プレイヤ1、2、3、4の4人のプレイヤがそれぞれゲーム機1A、1B、1C、1Dを操作することにより対戦型ゲームを行うものとし、プレイヤ1が操作するキャラクタをC1、プレイヤ2が操作するキャラクタをC2、プレイヤ3が操作するキャラクタをC3、プレイヤ4が操作するキャラクタをC4とする。
【0091】対戦型ゲームは、対戦型ゲームに参加している各プレイヤがゲーム機1を操作して自キャラクタを動作制御して、全キャラクタが参加して戦いを繰り広げる乱闘モード(図4参照)と、2人のキャラクタのみが参加して戦いを行う一騎討ちモード(図7参照)とを備え構成されている。
【0092】ゲームが開始されると、まず、図4に示す乱闘モードに移行して、全キャラクタにより互いに戦いが繰り広げられ、あるキャラクタが敵キャラクタの1人に一騎討ち攻撃を試み成功した場合(図5(第1モードのゲーム映像)参照)に、乱闘モードから当該攻撃キャラクタと該攻撃されたキャラクタのみが参加して戦う一騎討ちモード(図7、図8参照)に移行する。」

(1k)「【0098】前記乱闘モードは、対戦型ゲームの基本となる対戦アクションモードであり、十字キー1jや他ボタンの入力操作(攻撃入力操作)で、様々な攻撃や必殺技1、必殺技2、必殺技3を繰り出して、全てのキャラクタC1、C2、C3、C4が混在して戦いを繰り広げるモードである。
【0099】乱闘モードにおいては、敵キャラクタを攻撃することにより「キメ技」を出す必要条件である自身のテンションゲージを上昇させる、或いは、キーアイテムを持つことが「キメ技」を出す必要条件であることからキーアイテムの奪い合いという攻防、例えば、敵キャラクタに特定の攻撃を当てたり、ダウンさせたりして敵キャラクタからキーアイテムを落とさせる、または、落としたキーアイテムを取りにいこうとする敵キャラクタを攻撃して邪魔をする、または、キーアイテムそのものを攻撃して敵キャラクタから遠ざけるように弾き飛ばす等々が行われている。」

(1l)「【0113】以下、攻撃時のゲームシステム処理を示すフローチャートである図11を用いて、上記テンションゲージT_(g)の増減処理が行われる攻撃時の処理について説明する。
【0114】例えば、図4に示すように、キャラクタ(攻撃入力操作キャラクタ)C1がキャラクタ(被攻撃敵キャラクタ)C4に攻撃k_(n)を試みたとする。(ks1)すると、キャラクタC1とキャラクタC4との距離l_(14)が攻撃距離k_(nl)以内かどうか判断され(ks2)、キャラクタ間距離l_(14)>攻撃距離k_(nl)の場合は攻撃無効となる。
【0115】キャラクタ間距離l_(14)<=攻撃距離k_(nl)の場合、攻撃k_(n)は有効とされ、攻撃k_(n)の得点k_(nt)がキャラクタC1のテンションゲージT_(g1)に加算(T_(g1)=T_(g1)+k_(nt))され、キャラクタC4のテンションゲージT_(g4)から得点k_(nt)が減算(T_(g4)=T_(g4)-k_(nt))されテンションゲージT_(g)に表示される。(ks3) <以下略>」

(1m)「【0122】そこで、各プレイヤは、乱闘モードにおいて、所定数のキーアイテムを争奪する戦いを互いに繰り広げ、例えば、図4に示すように、キャラクタC1がキーアイテムkm1を所持しているキャラクタC4に攻撃を仕掛けて成功すると、キャラクタC4はダウンする際にキーアイテムkm1を落とす、すなわちキャラクタC4内から外方にキーアイテムkm1が出現してフィールドFに落下し残存する。
【0123】また、落としたキーアイテムkm1を取りに行こうとするキャラクタC4を攻撃して邪魔をすることも有効な戦術であり、例えば、キーアイテムkm1、km2を攻撃して成功すると攻撃した方向に弾き飛ばされるように製作されているので、故意にキーアイテムkm1、km2を敵キャラクタから遠ざけるように弾き飛ばす戦術も可能となっている。」

(1n)「【0176】次に、対戦型ゲームの処理動作の手順について説明する。
【0177】なお、対戦型ゲームの処理動作は対戦型ゲームのプログラムが実行されることにより遂行されるものである。
【0178】図2(b)に示すように、複数のプレイヤ1、2、3、4の使用するゲーム機1A、1B、1C1Dを互いに接続ケーブルJa、Jb、Jcを介して接続する。
【0179】そして、全プレイヤ1、2、3、4がそれぞれのゲーム機1A、1B、1C1Dの電源を入れスタートボタン1sを押下すると、タイトル画面に「対戦モード」、「ストーリーモード」、「ギャラリーモード」が表示される。
【0180】各プレイヤは、十字キー1jを用いてカーソルを移動させて「対戦モード」を選択してAボタン1aを押下してゲームモードを決定する。
【0181】すると、接続ケーブルJの接続状況が認識され、何人のプレイヤのゲーム機1が接続ケーブルJを介して接続されているかを確認する画面が表示される。
【0182】ここでは、4人のプレイヤが対戦型ゲームに参加することを表示する画面が表示される。
【0183】そこで、プレイヤ全員がゲーム機1A、1B、1C1DのAボタン1aを押下すると参加人数が決定される。
【0184】引き続いて、各プレイヤが使用するキャラクタの選択、チームの選択、ゲーム開始と遷移する。
【0185】対戦型ゲームが開始されると、対戦型ゲームのフローチャートである図16に示すように、まず乱闘モードに移行する。」

(1o)「【0192】また、キーアイテムを自身のキャラクタC1、C2、C3、C4が所持するためのキーアイテムの奪取の攻防、例えば、敵キャラクタに特定の攻撃を当てダウンさせたりして敵キャラクタからキーアイテムを落とさせる、または、落としたキーアイテムを取りにいこうとする敵キャラクタを攻撃して邪魔をする、または、キーアイテムそのものを攻撃して敵キャラクタから遠ざけるように弾き飛ばす等が行われる。」

(1p)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わる対戦型ゲームのプログラムの実施例である対戦型ゲームを稼動するゲーム機を示す平面図。
【図2】(a)および(b)は、図1に示すゲーム機を互いに接続するための接続ケーブルを示す平面図、および該接続ケーブルを用いて複数のゲーム機を互いに接続する状態を示す平面図。
【図3】図1に示すゲーム機の制御部の構成を示す図。
【図4】本発明に関わる対戦型ゲームのプログラムの実施例である対戦型ゲームにおける乱闘モードのゲーム画面を示す図。
<以下略>」

また,引用例1に記載されたゲーム機が,上記各摘記事項に記載された情報処理を行うためのハードウェア資源としての手段を有することは自明である。
さらに,引用例1には,上記摘記事項(1o)に記載されるところの,キャラクタが敵キャラクタから落下した「キーアイテムそのものを攻撃」する場合に,攻撃の有効性の判定に係る処理をどのように行うのかについての直接的記載はないものの,同摘記事項において,キャラクタが被攻撃敵キャラクタを攻撃することと,キャラクタがキーアイテムを攻撃することとが並列して記載されていることや,攻撃対象の相違によって処理を相違させる必要性を示唆する記述がないことを考慮すれば,上記摘記事項(1l)に記載された,キャラクタC1が被攻撃敵キャラクタC4を攻撃する場合における攻撃の有効性の判定に係る処理と同様な処理が,キャラクタがキーアイテムを攻撃する場合にも行われていることが,引用例1に記載されているに等しいと考えるのが合理的である。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「プレイヤが操作するキャラクタを表示してゲームの進行を制御し,通信部S6を利用して対戦型ゲームを行うゲーム機1と,
該ゲーム機1と接続ケーブルJで接続され,同様の構成をなす他のゲーム機1間で対戦型ゲームデータの送受に係わる通信制御処理を実行する通信制御部S6_(1)と,
接続ケーブルJで接続されたゲーム機1のプレイヤ全員がゲーム機のAボタン1aを押下し,引き続いて,各プレイヤが,使用するキャラクタの選択,チームの選択をしてゲームが開始されると,キーアイテムの奪い合いをする乱闘モードに移行して,全キャラクタにより互いに戦いを繰り広げるための手段と,
乱闘モードにおいて,敵キャラクタに特定の攻撃を当てたり,ダウンさせたりしたときに,敵キャラクタからキーアイテムを落とさせることでキーアイテムを所持しないようにするとともに,所持しないこととなったキーアイテムをフィールドFに落下して残存するようにゲーム画面に表示する手段と,
前記他のゲーム機1の敵キャラクタから落下したキーアイテムを攻撃したことを判別する手段と,
当該判別する手段によって攻撃したと判別されたときに,キーアイテムを敵キャラクタから遠ざけるように突き飛ばす処理を行う手段とを含み,
前記攻撃したことを判別する手段は,キャラクタと敵キャラクタから落下したキーアイテムとの間距離l_(14)が攻撃距離k_(nl)以下の場合に,攻撃k_(n)を有効と判別する
ゲーム機。」

(ロ)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である
特開2003-79941号公報(以下,「引用例2」という。)
には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審にて付与)。

(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオゲームのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、プログラム、ビデオゲーム処理方法及びビデオゲーム処理装置に関する。」

(2b)「【0046】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態の全体構成を示すブロック図である。
【0047】先ず、本発明の一実施形態に係わるビデオゲーム機について説明する。ゲーム機10は、ゲーム機本体11と、ゲーム機本体11の入力側に接続されるキーパッド50とにより構成され、CRT(Cathode Ray Tube)、スピーカ等を有するテレビジョンセット100がゲーム機本体11の出力側に接続される。
【0048】ゲーム機本体11は、CPU(Central Processing Unit) 12と、ROM(Read Only Memory)13と、RAM(Random Access Memory)14と、ハードディスクドライブ15と、グラフィック処理部16と、サウンド処理部17と、ディスクドライブ18と、通信インターフェース部19と、メモリカード・リーダ・ライタ20と、入力インターフェース部21とを有すると共に、これらを相互に接続するバス22とを有している。また、ゲーム機本体11は、入力インターフェース部21を介して操作入力部としてのキーパッド50に接続される。」

(2c)「【0064】従って、ゲーム機本体11は、CPU12及び各部のメモリに格納されたデータに基づくソフトウェア処理により従来のビデオゲームを実施するのに必要な機能の他に、特徴的な機能としてゲーム進行中、複数種のコマンドのうち少なくとも1つのコマンドを画面に表示する機能と、ゲーム進行の変化を検出する機能と、ゲーム進行の変化が検出された場合にその変化したときのゲーム進行の状態を示す情報に対応するコマンドを抽出する機能と、画面に表示させるコマンドを現時点で表示されているコマンドから抽出されたコマンドに切り替える機能とを備える。」

(2d)「【0105】また、ステップS2、ステップS7?ステップS11、ステップS14の処理が繰り返される待機状態で以てステップS11において、○ボタン52aが押されたと判定された場合には、ステップS12に移行し、選択されているコマンドに応じたプレイヤキャラクタの行動が実行され、ステップS13において、その行動に伴った各種情報が生成され、ステップS5に移行する。」

(2e)「【0116】例えば、プレイヤキャラクタが松明を持った状態になると、プレイヤキャラクタの行動状況を示す情報による優先順位によって、コマンド表示が「-」から「なげる」に変化する。
【0117】また、所定の設定ゾーンにプレイヤキャラクタが位置している場合には、位置情報による優先順位によって、「まほう」の代わりに「雄叫び」が表示される。さらに、ターゲットに設定されたオブジェクトとの距離が離れている場合には、「たたかう」が「ダッシュ攻撃」に変化する。
【0118】このようにプレイヤキャラクタの状態や周囲の状況に応じたコマンドが表示され、前回抽出されたものと異なるコマンドが抽出された場合には、当然、表示が変化する。また、プレイヤキャラクタの状態や周囲の状況が変化した場合にも所定のコマンドが抽出されることにより、コマンドの表示が変化する。そして、ステップS86において、使用不可コマンドが識別され、ステップS87において、識別結果に基づいて使用不可コマンドが存在するか否かが判定される。」

(2f)「【0125】図7は、上述した一実施形態に係わる具体的な表示画面の一例を示す説明図であり、図8、図9、図10、図11、図12及び図13は、コマンド表示の変化を模式的に示す説明図である。これらの図7?図13を用いて上述した一実施形態における選択可能なコマンド(A,B,C,D)の表示の動作についてさらに具体的に説明する。
【0126】図7において502で示されるのがプレイヤキャラクタであり、図7に示すようにプレイヤキャラクタ502の近傍には、コマンド表示用のウィンドウ501が開かれている。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例2には以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「通信インターフェース19を有するビデオゲーム処理装置であって,
ゲームの進行中に,プレイヤキャラクタ502の近傍に,当該プレイヤキャラクタの状態や周囲の状況に応じたコマンドが表示され,プレイヤが選択したコマンドに応じたプレイヤキャラクタの行動が実行される
ビデオゲーム処理装置。」

(ハ)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である
コロコロコミック特別編集,「ボンバーマン ストーリー 公式ガイドブック」,初版第2刷,2002年3月10日発行,株式会社小学館,P.87?91(以下,「引用例3」という。)
には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審にて付与)。

(3a)「今回のボンバーマンストーリーは、なんと携帯ゲーム機で最大4人までの通信対戦が可能になっているぞ!!
しかも、ゲームカートリッジが1本だけあれば通信プレイが楽しめる、「1カートリッジプレイ」に対応しているのだ。コレ、1人だけがソフトを持っていれば、あとの人はソフトがなくても持っている人のゲームボーイアドバンスに通信ケーブルを差し込むだけで、通信プレイが楽しめる新システム。いつでもどこでも、白熱バトルができちゃうのだ!!」(第88頁本文第1?12行目)

(3b)「バトルに勝つのにいちばん大切なのは、アイテム。勝負が始まったら、まずアイテム集めに集中しよう。キックやグローブが手に入ったら、強引にでも相手を攻めまくる。アイテム運が悪いときはでいるだけ逃げて、他のプレイヤーが倒れるのを待つのもいい作戦,誰かが倒れるとバラまかれるアイテムを拾って、反撃にうつろう。経験を積むことも、もちろん大切!!」(第91頁本文第1?12行目)

(3c)「(グローブがあれば楽勝?)バトルの最強アイテム。相手に直接ぶつければ、アイテムを落とさせられる!」(第91頁中段右)

ここで,上記摘記事項(3b)の「誰かが倒れる」との記載における「誰か」とは,プレイヤ自身ではなく,ゲーム内におけるプレイヤの分身たるプレイヤキャラクタであることは自明である。また,引用例3に記載された携帯ゲーム機が,上記各摘記事項に記載された情報処理を行うためのハードウェア資源としての手段を有することも自明である。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例3には以下の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「通信対戦が可能な携帯ゲーム機であって,
相手を攻めまくるか待つことにより他のプレイヤキャラクタが倒れると,倒れたプレイヤキャラクタが所有するアイテムをバラまく表示をする手段,
バラまかれたアイテムを拾ってアイテム集めをする手段とを含む
携帯ゲーム機。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると,
(α)引用発明1の「キャラクタ」は,本願補正発明の「プレイヤキャラクタ」に相当し,以下同様に,
(β)「ゲーム」は,「ビデオゲーム」に,
(γ)「通信部S6」は,「通信機能」に,
(δ)「対戦型ゲームを行う」ことは,「対戦プレイである通信対戦を行う」ことに,
(ε)「ゲーム機1」は,「ビデオゲーム処理装置」に,
(ζ)「他のゲーム機1間で対戦型ゲームデータの送受に係わる通信制御処理を実行する」ことが,「他のビデオゲーム処理装置とデータ通信を行うための通信接続を確立する」こと,及び,「通信機能を利用して必要な情報をデータ通信により送受すること」に,
(η)「通信制御部S6_(1)」は,「通信確立手段」に,
それぞれ相当する。
また,
(θ)引用発明1の「接続ケーブルJで接続されたゲーム機1のプレイヤ全員がゲーム機のAボタン1aを押下」することは,本願補正発明の「通信確立手段によって通信接続が確立されている他のビデオゲーム処理装置において他のプレイヤが操作する他のプレイヤキャラクタとの前記通信対戦を行うことが決定したこと」に相当するから,
(ι)引用発明1の上記決定したことに応じて「各プレイヤが,使用するキャラクタの選択,チームの選択をしてゲームが開始されると,乱闘モードに移行して,全キャラクタにより互いに戦いを繰り広げるための手段」と,本願補正発明の「プレイヤキャラクタに保有させるコマンドである保有コマンドを当該プレイヤキャラクタに付与する保有コマンド付与手段」とは,「所定の開始処理を行う手段」において共通する。
さらに,
(κ)引用発明1の「敵キャラクタに特定の攻撃を当てたり,ダウンさせたりしたとき」は,本願補正発明の「所定の解放条件を満たしたとき」に相当し,同様に,
(λ)「敵キャラクタ」は,「他のプレイヤキャラクタ」に相当する。
また,
(μ)引用発明1の「キーアイテム」と,本願補正発明の「保有コマンド」とは,「キャラクタが使用できる機能に対応するデータ」である点で共通するから,
(ν)引用発明1の「敵キャラクタからキーアイテムを落とさせることでキーアイテムを所持しないようにする」ことと,本願補正発明の「プレイヤキャラクタ又は他のプレイヤキャラクタが保有している1又は2以上の保有コマンドを当該プレイヤキャラクタ又は他のプレイヤキャラクタが保有するコマンドから削除することで保有コマンドを解放する」こととは,「他のプレイヤキャラクタが保有している1又は2以上のキャラクタが使用できる機能に対応するデータを当該他のプレイヤキャラクタが保有しているキャラクタが使用できる機能に対応するデータから削除することでキャラクタが使用できる機能に対応するデータを解放する」ことである点で共通し,
(ξ)引用発明1の落下して残存するように表示され又は突き飛ばされる「キーアイテム」と,本願補正発明の「解放コマンドアイコン」とは,「キャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示」である点で共通するから,
(ο)引用発明1の「(敵キャラクタが)所持しないこととなったキーアイテムをフィールドFに落下して残存するようにゲーム画面に表示する手段」と,本願補正発明の「プレイヤキャラクタ又は他のプレイヤキャラクタから解放されたコマンドを示す解放コマンドアイコンがバトル画面内で飛び散るコマンド解放演出を行う保有コマンド解放手段」とは,「他のプレイヤキャラクタから解放されたキャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示をバトル画面内で所定の態様で行う手段」である点で共通する。
さらに,引用発明1は「キャラクタと敵キャラクタから落下したキーアイテムとの間距離l_(14)が攻撃距離k_(nl)以下の場合に,攻撃k_(n)を有効と判別する」ものであるから,
(π)引用発明1の「落下したキーアイテムを攻撃したことを判別する」ことと,本願補正発明の「解放されたコマンドを示す解放コマンドアイコンと、プレイヤキャラクタとのバトル画面上における衝突判定を行う」ことは,「解放されたキャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示と,プレイヤキャラクタとのバトル画面上における衝突判定を行う」ことである点で共通し,以下同様に,
(ρ)「攻撃したと判別されたときに,キーアイテムを敵キャラクタから遠ざけるように突き飛ばす処理を行う」ことと,「プレイヤキャラクタが解放コマンドアイコンに衝突したと判定されたことに応じて、衝突した解放コマンドアイコンをバトル画面から消去して、衝突した解放コマンドアイコンが示すコマンドを前記プレイヤキャラクタに保有させる保有コマンドとして当該プレイヤキャラクタに付与する」こととは,「プレイヤキャラクタがキャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示に衝突したと判定されたことに応じて,衝突したキャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示を元に所定の処理を行う」ことで共通し,
(σ)「キャラクタと敵キャラクタから落下したキーアイテムとの間距離l_(14)が攻撃距離k_(nl)以下の場合に,攻撃k_(n)を有効と判別する」ことと,「解放コマンドアイコンの中心座標から特定範囲に設けられた衝突判定範囲とプレイヤキャラクタが位置する座標位置との少なくとも一部が重複したときに衝突したと判定する」こととは,「キャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示とプレイヤキャラクタとの距離が所定の関係となったときに衝突したと判定する」ことにおいて共通する。

してみると,両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「プレイヤが操作するプレイヤキャラクタを表示してビデオゲームの進行を制御し,通信機能を利用して必要な情報をデータ通信により送受することで対戦プレイである通信対戦を行うビデオゲーム処理装置であって,
該ビデオゲーム処理装置と同様の構成を成す他のビデオゲーム処理装置とデータ通信を行うための通信接続を確立する通信確立手段と,
前記通信確立手段によって通信接続が確立されている前記他のビデオゲーム処理装置において他のプレイヤが操作する他のプレイヤキャラクタとの前記通信対戦を行うことが決定したことに応じて,所定の開始処理を行う手段と,
所定の解放条件を満たしたときに,前記他のプレイヤキャラクタが保有している1又は2以上のキャラクタが使用できる機能に対応するデータを当該他のプレイヤキャラクタが保有しているキャラクタが使用できる機能に対応するデータから削除することでキャラクタが使用できる機能に対応するデータを解放するとともに,前記他のプレイヤキャラクタから解放されたキャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示をバトル画面内で所定の態様で行う手段と,
前記他のビデオゲーム処理装置において前記他のプレイヤキャラクタから解放されたキャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示と,プレイヤキャラクタとのバトル画面上における衝突判定を行う手段と,
衝突判定により前記プレイヤキャラクタがキャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示に衝突したと判定されたことに応じて,衝突したキャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示を元に所定の処理を行う手段とを含み,
前記衝突判定を行う手段は,キャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示とプレイヤキャラクタとの距離が所定の関係となったときに衝突したと判定する
ビデオゲーム処理装置。」

[相違点1](μ,ν関係)
「キャラクタが使用できる機能に対応するデータ」が,本願補正発明では,本願明細書の段落【0034】に「コマンド」について「行動パターン」であると定義したうえで,「保有コマンド」であるのに対して,引用発明1では,「キーアイテム」である点。

[相違点2](ξ,ο,π,ρ,σ関係)
相違点1に関連して,「解放されたキャラクタが使用できる機能に対応するデータを示す表示」が,本願補正発明では,「解放コマンドアイコン」であるのに対して,引用発明1では,「キーアイテム」であり,また,表示の態様が,本願補正発明では,「解放コマンドアイコンがバトル画面内で飛び散るコマンド解放演出を行う」ものであるのに対して,引用発明1では,「キーアイテムをフィールドFに落下して残存するよう」なものである点。

[相違点3](ι関係)
相違点1に関連して,「所定の開始処理を行う手段」が,本願補正発明では,「プレイヤキャラクタに保有させるコマンドである保有コマンドを当該プレイヤキャラクタに付与する保有コマンド付与手段」であるのに対して,引用発明1では,「保有コマンド」を「付与する」手段ではない点。

[相違点4](ρ関係)
相違点2に関連して,衝突したと判定されたことに応じて行われる「所定の処理」が,本願補正発明では,「衝突した解放コマンドアイコンをバトル画面から消去して、衝突した解放コマンドアイコンが示すコマンドをプレイヤキャラクタに保有させる保有コマンドとして当該プレイヤキャラクタに付与する」処理であるのに対して,引用発明1では,「キーアイテムを敵キャラクタから遠ざけるように突き飛ばす処理」については開示されているものの,当該「キーアイテム」を「画面から消去」したり,攻撃した「キャラクタ」に付与したりする処理を行うか不明な点。

[相違点5](σ関係)
相違点2に関連して,衝突の判定が,本願補正発明では,「解放コマンドアイコンの中心座標から特定範囲に設けられた衝突判定範囲とプレイヤキャラクタが位置する座標位置との少なくとも一部が重複したとき」に行われるのに対して,引用発明1では,距離が所定の関係にあることを判別するものの,「キャラクタ」の「中心座標」が距離計算の起点となっているか不明であり,その結果,当該「中心座標から特定範囲に設けられた衝突判定範囲とプレイヤキャラクタが位置する座標位置との少なくとも一部が重複」することを判別しているかも不明な点。

(3)判断
上記各相違点について以下に検討する。

(イ)相違点1について
引用例2には,引用発明2として,「プレイヤキャラクタの近傍に…に表示され,…プレイヤキャラクタの行動」を規定する「コマンド」が開示されており,当該「コマンド」が本願補正発明の「保有コマンド」に相当する。
引用発明1と2とは,通信機能を有するロールプレイングゲーム機という共通の技術分野に属し,また,引用発明1の「キーアイテム」は,上記摘記事項(1k)に,これを「持つことが『キメ技』を出す必要条件である」と記載されるように,プレイヤキャラクタで実行できる行動を規定するものである点において,引用発明2の「コマンド」と共通の機能を有するものであるから,引用発明1の「キーアイテム」を,引用発明2の「コマンド」に置き換えてゲーム内で使用することにより,上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(ロ)相違点2について
上記(イ)欄で検討した置き換えにより,「解放されたキャラクタが使用できる機能に対応するデータ」が「解放されたコマンド」になることは自明である。そして,当該「コマンド」の表示の態様は,ゲーム画面におけるストーリー展開との整合性や視覚効果等を考慮して当業者が適宜設定し得た事項であり,その態様として「アイコン」を利用すること,及び,当該アイコンが「画面内で飛び散る」ような演出を行うことは,引用例3に引用発明3として開示されるように,一般的な態様にすぎない。
よって,上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(ハ)相違点3について
ロールプレイングゲームにおいて,ゲームの開始処理として,キャラクタの属性を表すデータの初期設定を行うことは,特に公知文献を例示するまでもなく周知である。
そして,上記(イ)欄で検討した置き換えにより,引用発明1のゲーム機において「キーアイテム」に代えて「コマンド」が使用されるようになった場合,上記周知技術に基づいて,各キャラクタが保有する「コマンド」の初期設定を行うようにすることにより,上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(ニ)相違点4について
引用発明1の「乱闘モード」は,「キーアイテムの奪い合い」をするものである。なお,引用例1には,「奪い合い」の中でアイテムを収集することについての直接的な開示はないものの,ゲーム展開の中でアイテム集めをすることは,例えば,引用例3に引用発明3として開示されるように,電子ゲーム機の技術分野において周知技術である。
そして,上記(ロ)欄で検討したようにコマンドをアイコン化した場合,奪われたコマンドに対応するアイコンを画面から消去することは,当業者が通常行う画面演出であり,また,当該コマンドを,これを奪ったキャラクタが使用できるデータとして保有させるようにすることは自明である。
よって,引用発明1のように「突き飛ばす処理」をすることに代えて,あるいは,「突き飛ばす処理」をすることに加えて,「キーアイテム」を「画面から消去」したり,攻撃した「キャラクタ」に付与したりする処理を行うようにすることにより,上記相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(ホ)相違点5について
電子ゲーム機の技術分野において,衝突されるものに対応する表示の中心から所定の範囲を設定し,その範囲内に衝突するものに対応する表示が入ったときに,衝突したと判定することは,例えば,審尋において提示した文献である
A.特開2008-346号公報
(特に,段落【0023】の記載を参照)
B.特開平10-333834号公報
(特に,段落【0042】の記載を参照)
に開示されるように周知技術である。
一方,上記(ロ)欄で検討したように,上記(イ)欄で検討した置き換えにより,「解放されたキャラクタが使用できる機能に対応するデータ」が「解放されたコマンド」になることは自明であるから,引用発明1に記載された衝突の判定に当たり,上記周知技術を適用することによって,上記相違点5に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(へ)審判請求人の主張について((イ)?(ホ)欄で扱ったものを除く)
審判請求人は,上記相違点5に関連して,審判請求書の(3)7.欄及び回答書(2)欄において,本願補正発明の発明特定事項である「特定範囲」が「飛散の予想軌跡」であるとの前提のもと,「各引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、少なくとも、本願発明のような『衝突判定において、飛散の予想軌跡を衝突判定範囲とする』といった構成は採用し得ないものと思料いたします。」と主張するものの,本願の特許請求の範囲の請求項1には,「特定範囲」の範囲が「飛散の予想軌跡」であることを示す又は示唆する記載はなく,当該主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものではないから,採用できるものではない。

(ト)効果の予測性について
本願補正発明の全体構成により奏される作用・効果は,引用発明1?3及び周知技術から当業者が予測できた範囲内のものである。

(チ)まとめ
よって,本願補正発明は,引用発明1?3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)独立特許要件についての判断
以上のとおり,本願補正発明は,引用発明1?3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

4.むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,第2.[理由]1.[補正前]欄に記載したとおりのものと認める。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1?3及びその記載事項は,上記第2.[理由]3.(1)欄に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は,上記第2.欄で検討した本願補正発明から,上記第2.[理由]3.に記載した補正事項(γ)による限定を削除し,同2.に記載した補正事項(α)及び(β)による,「又は」以降の記載の追加を削除したものに相当する。
なお,本件補正において,「通信機能を利用して必要な情報をデータ通信により送受することで対戦プレイである通信対戦を行う」との記載を追加した点は,明りょうでない記載の釈明であるから,この記載が削除されても,特許請求の範囲が実質的に変わるものではない。
そうすると,本願発明と引用発明1との相違点は,上記相違点5を除く相違点1?4と,以下に示す相違点6である。

[相違点6]
自らのビデオゲーム装置で解放する「キャラクタが使用できる機能に対応するデータ」が,本願発明では自らの「プレイヤキャラクタ」のデータであるのに対して,引用発明1では「他のプレイヤキャラクタ」のデータであり,他のビデオゲーム装置で解放された「キャラクタが使用できる機能に対応するデータ」が,本願発明では「他のプレイヤキャラクタ」のデータであるのに対して,引用発明1では自らの「プレイヤキャラクタ」のデータである点。

上記各相違点について検討する。
まず,上記相違点1?4については,上記第2.[理由]3.(3)欄に記載したように,当業者が容易に想到し得た事項である。
つぎに,上記相違点6について検討するに,自らのビデオゲーム装置で自らの「プレイヤキャラクタ」が使用できる機能に対応するデータを解放するか,「他のプレイヤキャラクタ」が使用できる機能に対応するデータを解放するかは当業者が適宜選択し得た事項であり,引用発明1を,上記相違点6に係る本願発明の構成のように設計変更することは,当業者が容易に想到し得た事項である。

よって,本願発明も,引用発明1?3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-19 
結審通知日 2012-01-24 
審決日 2012-02-08 
出願番号 特願2008-219191(P2008-219191)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植田 泰輝  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
仁科 雅弘
発明の名称 ビデオゲーム処理装置、およびビデオゲーム処理プログラム  
代理人 須藤 浩  

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