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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1254207 |
審判番号 | 不服2011-22987 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-25 |
確定日 | 2012-03-22 |
事件の表示 | 特願2000-208615「眼鏡型又はゴーグル型の視認装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月23日出願公開、特開2002- 23098〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、平成12年7月10日の出願であって、その請求項に係る発明は、平成23年10月25日に補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「赤外線を受光する1つの赤外線センサと、赤外線センサにより受光した赤外線に基づく周囲の情報を可視画像として表示する赤外線画像表示部と、装着者の瞳Ep側から順に第1の鏡面(2)及び第2の鏡面(3)を含み、赤外線センサ及び赤外線画像表示部と一体的に設けられた光学系と、赤外線センサ及び赤外線画像表示部と電気的に接続される電源とを有し、現場で両手を使った作業をするための顔面装着型の視認装置であって、 可視光に基づく周囲の情報は、前記第2の鏡面(3)及び前記第1の鏡面(2)を順次透過して前記装着者の2つの瞳Epに結像され、 前記1つの赤外線センサにより受光した赤外線に基づく周囲の情報は、光学的または電気的に分割されて可視画像として、前記第1の鏡面(2)及び前記第2の鏡面(3)で反射された後、前記第1の鏡面(2)を透過して前記装着者の2つの瞳Epに結像されることにより赤外線に基づく周囲の情報と可視光に基づく周囲の情報を同時に視認できることを特徴とする眼鏡型又はゴーグル型の視認装置。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-341399号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の記載がある。 ア 「【0016】図1Aは、本発明に係る眼鏡型画像表示装置の一実施の形態として、眼鏡型画像表示装置1の概略構成図(斜視図)を示す。 【0017】この眼鏡型画像表示装置1には、左右一対の液晶表示パネル即ちLCD(Liquid Crystal Display)3と、これらLCD3を上方から照明するバックライト2と、これらLCD3に対応して設けられた左右一対のハーフミラー4及び左右一対の凹面ハーフミラー5と、さらに後述するAF(自動焦点調節機能)カメラ6を有して成る。 【0018】左右に設けられたLCD3(3L,3R)のうち、左側に設けられたLCD3Lには左目用の映像が表示され、右側に設けられたLCD3Rには右目用の映像が表示される。」 イ 「【0020】このLCD3(3L,3R)に表示された映像は、ハーフミラー4により反射され、さらに凹面ハーフミラー5で拡大されると共にハーフミラー4側即ち利用者Pの目Eの側に反射されて、再びハーフミラー4を通り利用者Pの目Eに虚像として結像する。」 ウ 「【0022】そして、本実施の形態においては、さらに眼鏡型画像表示装置1のバックライト2の上方に、AF(自動焦点調節機能)カメラ6を配置して構成する。 【0023】このAFカメラ6は、例えばCCD固体撮像素子、その他等によって被写体の撮像を行う撮像デバイスを備えて構成することができる。 【0024】このAFカメラ6によって利用者Pが見た像を撮像すると共に、この撮像した映像を後述する処理回路によって眼鏡型画像表示装置1の画面上に拡大表示し、大型の映像として見せることができる。」 エ 「【0029】また、AFカメラ6にIR(赤外線)カメラを用いれば、暗視用カメラに適用して、夜間の監視用に用いることができる。」 オ 「【0032】尚、本実施の形態では、AFカメラ6を複眼としているが、AFカメラは単眼であっても複眼であってもよい。ただし、前述のように立体表示を行う場合には、AFカメラ6を複眼で構成する。」 上記エには、AFカメラ6にIR(赤外線)カメラを用いて、眼鏡型画像表示装置1を夜間の監視用に用いることが記載され、また、上記オには、AFカメラは単眼であってよい旨記載されている。 これらの点を踏まえて、上記ア?ウをみれば、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。 「左右一対の液晶表示パネル即ちLCD(Liquid Crystal Display)3と、これらLCD3を上方から照明するバックライト2と、これらLCD3に対応して設けられた左右一対のハーフミラー4及び左右一対の凹面ハーフミラー5と、単眼のIR(赤外線)カメラを有して成り、左右に設けられたLCD3(3L,3R)のうち、左側に設けられたLCD3Lには左目用の映像が表示され、右側に設けられたLCD3Rには右目用の映像が表示され、LCD3(3L,3R)に表示された映像は、ハーフミラー4により反射され、さらに凹面ハーフミラー5で拡大されると共にハーフミラー4側即ち利用者Pの目Eの側に反射されて、再びハーフミラー4を通り利用者Pの目Eに虚像として結像し、前記単眼のIR(赤外線)カメラは、バックライト2の上方に配置されて構成され、このIR(赤外線)カメラが撮像した映像は眼鏡型画像表示装置の画面上に表示される、夜間の監視用に用いられる眼鏡型画像表示装置。」(以下「引用発明」という。) 3.対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「IR(赤外線)カメラ」は「単眼のIR(赤外線)カメラ」であるから、本願発明と同様に「1つの赤外線センサ」を備えるものであることは当業者に明らかである。 引用発明において、「IR(赤外線)カメラが撮像した映像は眼鏡型画像表示装置の画面上に表示される」ところ、この「眼鏡型画像表示装置の画面」とは「液晶表示パネル」のことであるから、引用発明の「液晶表示パネル」は、本願発明の「赤外線センサにより受光した赤外線に基づく周囲の情報を可視画像として表示する赤外線画像表示部」に相当する。 引用発明において、「表示された映像は、ハーフミラー4により反射され、さらに凹面ハーフミラー5で拡大されると共にハーフミラー4側即ち利用者Pの目Eの側に反射されて、再びハーフミラー4を通り利用者Pの目Eに虚像として結像」するから、引用発明の「ハーフミラー4」及び「凹面ハーフミラー5」は、「利用者Pの目Eの側」からこの順に配置されているものと認められ、本願発明の「第1の鏡面(2)」及び「第2の鏡面(3)」にそれぞれ相当するところであり、また、引用発明は、「左右一対の液晶表示パネル即ちLCD(Liquid Crystal Display)3と、これらLCD3を上方から照明するバックライト2と、これらLCD3に対応して設けられた左右一対のハーフミラー4及び左右一対の凹面ハーフミラー5と、単眼のIR(赤外線)カメラを有して成り」、「前記単眼のIR(赤外線)カメラは、バックライト2の上方に配置されて構成され」た「眼鏡型画像表示装置」であるから、引用発明において、「IR(赤外線)カメラ」、「液晶表示パネル」、「ハーフミラー4」及び「凹面ハーフミラー5」が一体となっていることは明らかであり、引用発明は、本願発明と同様に「装着者の瞳Ep側から順に第1の鏡面(2)及び第2の鏡面(3)を含み、赤外線センサ及び赤外線画像表示部と一体的に設けられた光学系」を有するものといえる。 引用発明は、「IR(赤外線)カメラが撮像した映像」を「液晶表示パネル」に表示するものであるから、そのための電源装置を必要とすることは当業者に明らかであり、本願発明と同様に「赤外線センサ及び赤外線画像表示部と電気的に接続される電源」を有するものと推認される。 引用発明の「眼鏡型画像表示装置」は、液晶パネルに表示された映像が利用者Pの目Eに結像するものであるから、「視認装置」であり、また、前記のとおり、「IR(赤外線)カメラ」、「液晶表示パネル」、「ハーフミラー4」及び「凹面ハーフミラー5」が一体となっている「眼鏡型」のものであるから、顔面装着時に両手を使った作業を行うことができることは明らかであり、本願発明と同様に「現場で両手を使った作業をするための顔面装着型の視認装置」といえる。 引用発明において、「液晶表示パネルに表示された映像」、すなわち、IR(赤外線)カメラが撮像した映像を可視画像として液晶表示パネルに表示した映像は、「ハーフミラー4により反射され、さらに凹面ハーフミラー5で拡大されると共にハーフミラー4側即ち利用者Pの目Eの側に反射されて、再びハーフミラー4を通り利用者Pの目Eに虚像として結像」するから、引用発明は、本願発明と同様に「前記1つの赤外線センサにより受光した赤外線に基づく周囲の情報は、可視画像として、前記第1の鏡面(2)及び前記第2の鏡面(3)で反射された後、前記第1の鏡面(2)を透過して前記装着者の瞳Epに結像されることにより赤外線に基づく周囲の情報を視認できる」ものといえる。 以上のことから、両者は、 「赤外線を受光する1つの赤外線センサと、赤外線センサにより受光した赤外線に基づく周囲の情報を可視画像として表示する赤外線画像表示部と、装着者の瞳Ep側から順に第1の鏡面(2)及び第2の鏡面(3)を含み、赤外線センサ及び赤外線画像表示部と一体的に設けられた光学系と、赤外線センサ及び赤外線画像表示部と電気的に接続される電源とを有し、現場で両手を使った作業をするための顔面装着型の視認装置であって、 前記1つの赤外線センサにより受光した赤外線に基づく周囲の情報は、可視画像として、前記第1の鏡面(2)及び前記第2の鏡面(3)で反射された後、前記第1の鏡面(2)を透過して前記装着者の瞳Epに結像されることにより赤外線に基づく周囲の情報を視認できる眼鏡型又はゴーグル型の視認装置。」の点で一致する。 一方、両者は、次の点で相違する。 a.本願発明は、「可視光に基づく周囲の情報は、前記第2の鏡面(3)及び前記第1の鏡面(2)を順次透過して前記装着者の2つの瞳Epに結像され、」というものであるのに対し、引用発明がこのようなものであるか直ちには明らかでない点。 b.本願発明は、「前記1つの赤外線センサにより受光した赤外線に基づく周囲の情報は、光学的または電気的に分割されて?2つの瞳Epに結像される」とされているのに対し、引用発明がこのようなものであるか不明な点。 c.本願発明は、「赤外線に基づく周囲の情報と可視光に基づく周囲の情報を同時に視認できる」とされているのに対し、引用発明がこのようなものであるか直ちには明らかでない点。 4.相違点についての検討 上記相違点a及びcについて検討する。 引用発明において、ハーフミラー4により反射された映像をハーフミラー4側即ち利用者Pの目Eの側に反射する「凹面ハーフミラー5」は、「ハーフミラー」であるから、その鏡面に入射した可視光は、半分反射され、半分透過するものと認められる。 してみると、「凹面ハーフミラー5」の反射面とは反対側の面から利用者Pの目Eに向かう可視光は、「凹面ハーフミラー5」を透過し、次に「ハーフミラー4」を通り利用者Pの目Eに結像することとなる。(この点、必要ならば、例えば、原査定の拒絶理由に引用された特開平7-333551号公報の【0010】?【0012】に、凹面ミラー2がハーフミラーの場合には、表示手段4の映像が外の風景にスーパーインポーズされるのに対し、表示手段4の映像をみるだけなら、凹面ミラー2は(ハーフミラーではなく)鏡となる旨記載されていることを参照されたい。) また、引用発明は、「ハーフミラー4」及び「凹面ハーフミラー5」を左目用と右目用に左右一対有している。 したがって、引用発明は、本願発明の上記相違点に係る「可視光に基づく周囲の情報は、前記第2の鏡面(3)及び前記第1の鏡面(2)を順次透過して前記装着者の2つの瞳Epに結像され、」との事項を備えるものといえ、上記相違点aは、実質的な相違点とはいえない。 そして、引用発明は、上記相違点aに係る構成を有するものであるから、「赤外線に基づく周囲の情報と可視光に基づく周囲の情報を同時に視認できる」ものであることは明らかであり、上記相違点cについても実質的な相違点とはいえない。 なお、請求人は、審判請求書において、引用例に記載された眼鏡型画像表示装置は、ビデオシースルー型の装置である旨の主張をしているが、引用発明の「凹面ハーフミラー5」は「ハーフミラー」であるから、外界の光は「凹面ハーフミラー5」及び「ハーフミラー4」を順に透過して利用者の目に到達することは明らかであって、引用例に記載された眼鏡型画像表示装置が(装着すると外の様子を見ることができない)「ビデオシースルー型の装置」であるとする請求人の主張は採用できない。 請求人が主張の根拠とする引用例【0025】の「AFカメラ6で撮像した映像をLCD3に表示するようにすれば、眼鏡型画像表示装置を通常の眼鏡として用いることができる。」との記載にしても、「通常の眼鏡を用いなくても、AFカメラ6で撮像した映像を見ることで代用できる」という程度のことを意味するものと解されるところであり、引用発明の「凹面ハーフミラー5」が「ハーフミラー」であってはならないことを意味するものとはいえない。 仮に、引用発明の「凹面ハーフミラー5」が「ハーフミラー」でない、すなわち、鏡面に入射した可視光を半分反射し、半分透過するものでないとしても、表示手段に表示された映像を利用者の目側に凹面鏡により反射する画像表示装置において、この凹面鏡を可視光を半分反射し、半分透過するものとして、表示される映像が外の風景にスーパーインポーズされるようにすることは、上記特開平7-333551号公報に記載されるように、また、原査定の拒絶理由に引用された特開平9-73005号公報の【0058】に「尚、本実施形態において後面1gを半透過面とし、外景の画像情報と表示手段2の映像情報の虚像とを空間的に重畳して、所謂シースルーとして双方を同一視野で同一視度として観察するようにしても良い。」と記載されるように周知であり、さらに、原査定の拒絶理由に引用された特開平7-13084号公報には、夜間の可視像に赤外光の像を重畳することも記載されているから、引用発明の「凹面ハーフミラー5」を可視光を半分反射し、半分透過するものとして、上記相違点a及びcに係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものと認められる。 相違点bについて検討する。 引用発明は、左目用と右目用の「左右一対の液晶表示パネル」を有するものであるところ、IR(赤外線)カメラが撮像した映像を液晶パネルに表示するにあたり、左右いずれかの液晶パネルのみに表示しなければならないとする格別の理由はなく、IR(赤外線)カメラが撮像した映像を左右一対の液晶パネルの双方に表示させるべく、左の液晶パネル用と右の液晶パネル用の映像信号に電気的に分割して、上記相違点bに係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 5.請求書における請求人の主張について (1)引用例に記載された眼鏡型画像表示はビデオシースルー型の装置であるから、引用例は「現場で両手を使った作業をするため」の構成を備えていないとの主張について 上記4.において述べたとおり、引用発明の「凹面ハーフミラー5」は「ハーフミラー」である以上、外界の光は、これを透過して利用者の瞳に到達するから、請求人の主張は採用できない。 (2)引用例はカメラの位置を固定した状態での利用を前提とするものであると理解されるべきであり、少なくとも「現場で両手を使った作業をするため」のものではないとの主張について 上記3.において述べたとおり、引用発明は、「IR(赤外線)カメラ」、「液晶表示パネル」、「ハーフミラー4」及び「凹面ハーフミラー5」が一体となっている「眼鏡型」のものであるから、顔面装着時に両手が自由に使えるものであることは明らかであって、両手を使った作業を行うことができるものと認められるところであり、請求人の主張は採用できない。 (3)本願発明と引用例とは技術分野が異なり、引用例は、「コンピュータやビデオ装置等から入力端子Inを通じて外部入力された映像信号・・・を切り換えて見る」用途のものであり、「現場で両手を使った作業をするため」のものではないとの主張について 引用発明は、「IR(赤外線)カメラが撮像した映像が眼鏡型画像表示装置の画面上に表示される、夜間の監視用に用いられる眼鏡型画像表示装置」であって、「コンピュータやビデオ装置等から入力端子Inを通じて外部入力された映像信号・・・を切り換えて見る」ものではないから、請求人の主張は採用できない。 なお、「現場で両手を使った作業をするため」との事項に関連する本願明細書の記載は、【0010】の「また、この視認装置は、顔面装着型であるので、両手を自由に使える。これにより、火災時の人命救助などの作業を伴う災害現場などでの使用が期待される。」及び【0036】の「また、この視認装置10は、顔面装着型であるので、両手を自由に使え、火災時の人命救助などの作業を伴う災害現場などでの使用が期待される。」との記載のみであり、これによれば、本願発明の「現場で両手を使った作業をするため」の構成とは、「顔面装着型であるので、両手を自由に使え」るということにすぎないものと認められる。 (4)引用例は、ビデオシースルー型の装置であり、赤外線に基づく周囲の情報と可視光に基づく周囲の情報を同時に視認できる構成を備えているとはいえないとの主張について 上記(1)に記載したとおり、引用発明の「凹面ハーフミラー5」は「ハーフミラー」であるから、引用発明は、可視光に基づく周囲の情報を視認できるものと認められ、請求人の主張は採用できない。 請求人は、主張の根拠として、引用例は、「カラー液晶表示パネルに映出される映像を非球面レンズにより前方に拡大投影することにより大画面仮想映像を体感する」「眼鏡型画像表示装置」(段落【0004】)の改良発明に位置付けられるものであるというが、引用発明は、上記のとおり「IR(赤外線)カメラが撮像した映像が眼鏡型画像表示装置の画面上に表示される、夜間の監視用に用いられる眼鏡型画像表示装置」であるから、これが段落【0004】に記載される従来装置と同じ構成を持つものでなければならないとする理由はなく、引用発明は、上記のとおり「凹面ハーフミラー5」が用いられるものであり、請求人の主張は採用できない。 また、請求人は、主張の根拠として、引用例の段落【0036】に「スイッチ13では、撮像デバイス部10で撮像した映像と、入力端子Inを通じて外部入力された映像との切り換えを行う。」との記載及び段落【0038】に「撮像デバイス部10で撮像した映像と、外部入力された映像とを、表示処理部14でMIX(合成)することもできる。」との記載があることをあげているが、これらの記載は、「夜間の監視用に用いられる眼鏡型画像表示装置」である引用発明に直接関係するものとはいえず、引用発明が可視光に基づく周囲の情報を視認できるものであるとする上記認定を覆すものとはいえない。 さらに、請求人は、段落【0021】や段落【0025】の記載からは、引用例はビデオシースルー型の装置であるとの認定がなされるべきであるというが、【0021】には、LCDに表示される画像を52型の大画面で認識できることが例として記載されるだけであって、引用発明の「凹面ハーフミラー5」が「ハーフミラー」であってはならないことの理由にはならない。【0025】の記載については、上記4.において述べたとおりである。 (5)引用発明の「凹面ハーフミラー5」が「ハーフミラー」でない場合にこれをハーフミラーとすることは、想到容易でないとの主張について 請求人は、上記4.であげた特開平7-13084号公報の光学系は大型であるから、引用発明に適用することには阻害要因があるというが、この公報には、夜間の可視像に赤外光の像を重畳することが記載されるところ、可視像と表示手段に表示された像を重畳する手段として、上記4.であげた特開平7-333551号公報や特開平9-73005号公報に記載されるように、引用発明の「凹面ハーフミラー5」を「ハーフミラー」としたものに相当する構成が周知であるから、そのようにすることは当業者が容易に想到すると認められるところであり、請求人の主張は採用できない。 (6)1つのIR(赤外線)カメラで撮影した像を分割して左右1対の液晶表示パネルのそれぞれに表示させることが想到容易でないとの主張について 上記4.の相違点bについての検討において述べたとおりであって、請求人の主張は採用できない。 なお、請求人は、本願発明の「1つの赤外センサ」は軽量化のための構成であるというが、本願明細書にその旨の記載はない。 本願明細書の【0054】に「一層軽量化できる」との記載はあるが、この記載が赤外センサが1つであることと関連するものとは認められない。 また、そもそも、引用発明は、「単眼の赤外線カメラ」を用いるものであるから、当然に複眼のものに比べて軽量化が図られているといえる。 6.むすび 以上のとおりであって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-19 |
結審通知日 | 2012-01-24 |
審決日 | 2012-02-06 |
出願番号 | 特願2000-208615(P2000-208615) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 日夏 貴史 |
特許庁審判長 |
稲積 義登 |
特許庁審判官 |
江成 克己 北川 創 |
発明の名称 | 眼鏡型又はゴーグル型の視認装置及び方法 |
代理人 | 須藤 晃伸 |
代理人 | 須藤 阿佐子 |
代理人 | 須藤 阿佐子 |
代理人 | 須藤 晃伸 |