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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 補正却下を取り消す。原査定の理由により拒絶すべきものである。 G06F
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 補正却下を取り消す。原査定の理由により拒絶すべきものである。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す。原査定の理由により拒絶すべきものである。 G06F
管理番号 1254255
審判番号 不服2010-9315  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-30 
確定日 2012-03-21 
事件の表示 特願2000-620463「ネットワーク端末許可プロトコル」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月30日国際公開、WO00/72136、平成15年1月7日国内公表、特表2003-500736〕について、平成21年12月17日付け補正の却下の決定を取り消し、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年5月24日(パリ優先権主張1999年(平成11年)5月25日 オーストラリア)の国際出願であって、平成21年1月21日付けの拒絶理由通知に対し、平成21年4月23日付けで手続補正がなされたが、該手続補正は平成21年12月17日付けで決定をもって却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされた。
これを不服として平成22年4月30日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成21年12月17日付けの補正の却下の決定について
[結論]
平成21年12月17日付けの補正の却下の決定を取り消す。
[理由]
1.補正の却下の決定の理由の概要
『平成21年4月23日付けの手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
よって、この補正は同法第53条第1項の規定により却下とするものである。』

2.補正却下の適法性についての判断
上記手続補正は、平成21年1月21日付けの拒絶理由通知に対してされたものであり、この拒絶理由通知は平成18年改正前特許法第17条の2第1項第1号に規定された最初の拒絶理由通知である。しかしながら、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定は、同法第17条の2第1項第3号及び第4号に掲げる場合、すなわち、最後の拒絶理由通知に対する補正について、及び、拒絶査定不服審判を請求する場合の補正についての規定であるから、上記の最初の拒絶理由通知に対する補正には適用されない。すなわち、この補正の却下は、条文の適用を誤ってなされた不適法なものである。
したがって、平成21年12月17日付けの補正却下の決定には理由がなく、取り消されるべきものである。

第3.平成22年4月30日付けの手続補正について
上述したように、平成21年12月17日付けの補正却下の決定は取り消されたので、平成22年4月30日付けの手続補正の適否を判断する補正前の特許請求の範囲の記載は、平成21年4月23日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲(請求項1ないし15)に記載されたものである。
この手続補正による補正後の特許請求の範囲(請求項1)は、補正前の特許請求の範囲(請求項1ないし15)のうち請求項2ないし15を削除したものである。
したがって、この補正は、特許法第17条の2第4項第1号に規定された請求項の削除を目的とするものであり適法なものである。

第4.本願発明について
1.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成22年4月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「プリンタ、第1サーバ、第2サーバおよびネットワーク端末と、に接続されているネットワークにおいて、
第1サーバに於いて、当該ネットワーク端末がプリンタで印刷されるべき文書を要求する事を許可する、許可レコードを作成するステップと、
ネットワーク端末に於いて、且つ第2サーバに送信された印刷要求を介して、プリンタでの文書の印刷を要求すると共に、当該印刷要求は当該第2サーバに格納されている当該文書を識別するステップと、
第2サーバに於いて、且つ第1サーバに送信された検証要求を介して、当該ネットワーク端末が、当該プリンタに於いて、文書を印刷する事を要求することが許可されていることに付いての検証を要求するステップと、
第1サーバに於いて、且つ当該検証要求に応答して、当該ネットワーク端末がプリンタで印刷することを要求する事が許可されていることを検証するステップと
当該検証が成功した場合には、当該第1サーバによって当該許可を当該第2サーバに送信するステップと、
当該許可の受信に応答して、当該第2サーバによって、当該文書を、印刷するためのプリンタに送信するステップと
を含む、ネットワーク端末の要求に基づいてプリンタに於いて文書の印刷を許可するためのネットワーク端末許可プロトコル。」

2.刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平9-293036号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに、次のア?カの事項が記載されている。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプリント処理装置に関し、特にネットワークに接続された各種クライアントから様々なプロトコルにて送られてくるプリント指示を受け付け、クライアント側の様々なユーザ認証機構に対応させ、かつプリンタに対する各種オペレーションにユーザごとに使用許可があるかどうかのアクセス制御を行うプリント処理装置に関する。」

イ.「【0007】本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、複数のプロトコルからのプリント指示を受け付け、かつ、あるプリンタの使用はあるユーザしか許可しないなどのアクセス制御を行う場合に、クライアントごとに異なるユーザの認証をそのクライアントにとって最も信頼性の高い認証機構でユーザ認証を行うようにしたプリント処理装置を提供することを目的とする。」

ウ.「【0014】図2はネットワークプリント装置の概略を示したブロック図である。図において、ネットワークプリント装置は、プリントサーバ10と、複数のクライアント21,22,・・・と、認証サーバ30とから構成され、それぞれネットワーク40によって相互に接続されている。また、プリントサーバ10には少なくとも1つのプリンタ50が接続されている。
【0015】プリントサーバ10は、クライアント21,22,・・・からのジョブを受け付けるジョブ受付部11と、受け付けたジョブのユーザを確認するユーザ確認部12と、ジョブ制御部13と、オブジェクト管理部14と、アクセス制御部15と、オブジェクトデータベース16とを有している。クライアント21はユーザ情報獲得部21aと、印刷データ生成部21bと、ジョブ生成部21cとを有しており、他のクライアント22,・・・についてもそれぞれ同じ構成を有している。また、プリンタ50はプリンタコントローラ51とプリントエンジン52とを有している。」

エ.「【0017】印刷データ生成部21bは各種アプリケーションソフトウェアによって作成されたドキュメントからテキスト、ページ記述言語、ビットマップなどの印刷データを生成する機能を有するもので、たとえば、Windows(米国Microsoft社の登録商標)環境におけるプリンタドライバに相当するものである。そして、ジョブ生成部21cは印刷データ生成部21bにて生成された印刷データに対する処理方法や印刷データの属性を表す情報を含めて1つのジョブを生成する部分である。印刷データに対する処理方法としては、たとえば印刷部数の指定、片面/両面印刷の指定などがあり、印刷データの属性を表す情報としては、たとえば作成された印刷データの解像度を表すデータ、白黒で作成したかカラーで作成したかのデータなどがある。ここで、ジョブ生成部21cからプリントサーバ10に向けてジョブを送信する場合は、ジョブはユーザが名乗ったユーザ名とユーザ情報獲得部21aにて作成された身分証明書とからなるユーザ情報と一緒に送信される。
【0018】プリントサーバ10においては、たとえばクライアント21からプリント指示とともに印刷データを含むジョブおよびユーザ情報が送られてくると、ジョブ受付部11がこれを受け付け、ユーザ情報からユーザ確認部12を利用してプリント指示をしてきたユーザを確認する。ユーザ確認部12では、ユーザ情報獲得部21aによって示されたユーザに関する情報が正しいかどうかを確認する。ユーザ確認部12はユーザ情報からユーザ確認にどのような認証機構が必要なのかを判定し、必要ならば、認証サーバ30などを利用して身分証明書の正当性を確認する。ユーザが確認されると、ジョブ受付部11はジョブに示されている印刷処理を行うべくジョブをジョブ制御部13に渡す。
【0019】ジョブ制御部13では、ジョブに示された印刷に必要なオブジェクトがあるかどうかをオブジェクト管理部14に問い合わせたり、その印刷に必要なオブジェクトにユーザがアクセスする権利を有しているかどうかをアクセス制御部15に問い合わせながらプリンタ50のプリンタコントローラ51にプリント指示を出したりする。オブジェクト管理部14は、オブジェクトデータベース16に保存されているオブジェクトの状態や存在や情報の内容などに関してジョブ制御部13などからの照会に対して応答する。アクセス制御部15は、ジョブ制御部13から、印刷に必要なオブジェクトに、確認されたユーザがアクセスできる権利を有しているかどうかの問い合わせを受けると、それに対して応答する。
【0020】プリンタ50では、ジョブ制御部13からの指示を受けると、プリンタコントローラ51は、実際に印字を行うプリンタエンジン52に相応した制御コードを生成してプリンタエンジン52に送り、プリンタエンジン52より印刷出力を得る。」

オ.「【0026】次に、プリントサーバに接続されるネットワークシステムが複数ある場合にそれぞれ異なったネットワークに対して異なった認証を行うユーザ認証について説明する。まず、プリントサーバ10のたとえばユーザ確認部12に設けられる認証テーブルの構成例を以下に示す。
【0027】図3は認証テーブルの構成例を示す図である。この図において、(A)は認証テーブルの基本構成を示しており、ユーザごとに「ユーザ環境識別名」の欄121と、「利用者識別名」の欄122と、「権利」の欄123とから構成される。「ユーザ環境識別名」の欄121にはユーザがログインしているネットワーク名(ドメイン名)、マシン名などが記述され、「利用者識別名」の欄122には、そのユーザ環境のユーザ名が記述され、「権利」の欄123には、プリンタに対するオペレーションがその利用者に対して許可するかしないかを表す記述がなされている。
【0028】また、(B)は認証テーブルの具体的記述例であり、2人のユーザの設定例を示している。この例によれば、「ユーザ1」の設定として、ユーザ環境識別名は「NETWORK1」、利用者識別名は「USER1」、権利は「プリント可、削除可」となっており、一方、「ユーザ2」の設定としては、ユーザ環境識別名は「LOCALMACHINE1」、利用者識別名は「USER1」、権利は「プリント可、削除不可」となっている。ここでは、いずれも利用者識別名、すなわち、ユーザ名は同じであるが、ユーザ環境識別名が異なっているので、他のユーザと見做され、権利も異なる。したがって、プリントサーバでは、ユーザ環境識別名と利用者識別名との両方が一致していなければ、ユーザは確認されないとしてオペレーションの受け付けは拒否される。
【0029】認証テーブルにおけるこれらの設定値は、プリントサーバの管理者によって、直接または外部から、すなわち、任意のクライアントから登録・変更が可能である。この認証テーブルの登録・変更も、認証テーブルの「権利」の欄にその旨を登録することによって制御することができる。」

カ.「【0032】まず、第1のクライアント61については、プリントサーバ70の認証テーブル120にはマシン名とユーザ名とが一致するデータがあり、そのデータにはプリント権が設定されているので、マシン名「MACHINE1」のクライアントにユーザ名「USER1」のユーザがログインしていれば、そのユーザによるプリントオペレーションは許可されてプリントすることができる。」

以上の記載から、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている。

プリントサーバと複数のクライアントがネットワークによって相互に接続されており、プリントサーバにはプリンタが接続されているネットワークプリント装置であって、
プリントサーバは、クライアントからのジョブを受け付けるジョブ受付部と、受け付けたジョブのユーザを確認するユーザ確認部と、ジョブ制御部とを有しており、
プリントサーバのユーザ確認部に設けられる認証テーブルは、ユーザごとに、ユーザ環境識別名の欄と、利用者識別名の欄と、権利の欄とから構成され、権利の欄には、プリンタに対するオペレーションをその利用者に対して許可するかしないかを表す記述がなされており、
認証テーブルにおけるこれらの設定値は、プリントサーバの管理者によって、直接または外部から、すなわち、任意のクライアントから登録・変更が可能であり、
プリントサーバにおいては、クライアントからプリント指示とともに印刷データを含むジョブおよびユーザ情報が送られてくると、ジョブ受付部がこれを受け付け、ユーザ情報からユーザ確認部を利用してプリント指示をしてきたユーザを確認し、認証テーブルにそのユーザに対するプリント権が設定されていれば、プリンタに対するプリントオペレーションは許可されてプリントをすることができ、
ジョブ受付部はジョブに示されている印刷処理を行うべくジョブをジョブ制御部に渡し、プリンタでは、ジョブ制御部からの指示を受けるとプリンタエンジンより印刷出力を得るネットワークプリント装置。

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明において、ネットワークには、「プリントサーバ」と「クライアント」(本願発明の「ネットワーク端末」に相当)が接続され、該「プリントサーバ」に「プリンタ」が接続されている。すなわち、刊行物1発明は、プリンタが、本願発明のように直接ネットワークに接続されているわけではなくプリントサーバを介して間接的にネットワークに接続されている点で異なっている。
また、刊行物1発明は、「プリントサーバ」が、本願発明のように、「第1サーバ」と「第2サーバ」の2つのサーバに分かれておらず、1つのプリントサーバが本願発明の第1、第2の2つのサーバに対応している。詳細は後述するが、刊行物1発明の「プリントサーバ」内の「ジョブ受付部及びジョブ制御部」、「ユーザ確認部」は、それぞれ、本願発明の「第2サーバ」、「第1サーバ」と同様の機能を有し、本願発明の「第1サーバ及び第2サーバ」と、刊行物1発明の「プリントサーバ」は、同様の機能を有する「サーバ」といえる点で共通する。
しかしながら、これらの点を除いて、本願発明と刊行物1発明とは、“プリンタ、サーバおよびネットワーク端末と、に接続されているネットワーク”におけるものであるという点では共通しているといえる。(以下、本願発明と刊行物1発明との共通点である“サーバ”が、本願発明においては第1サーバであるか第2サーバであるかについてかっこ書き()で示す)

刊行物1発明の「プリントサーバ」が有する「ユーザ確認部」には、認証テーブルが設けられ、この認証テーブルは、ユーザごとに、ユーザ環境識別名の欄と、利用者識別名の欄と、権利の欄とから構成され、権利の欄には、プリンタに対するオペレーション(本願発明の「当該ネットワーク端末がプリンタで印刷されるべき文書を要求する事」に相当)をその利用者に対して許可するかしないかを表す記述(本願発明の「許可レコード」に相当)がなされており、これらの設定値は、任意のクライアントから登録・変更(本願発明の「(許可レコードの)作成」に相当)が可能なものである。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、“(第1)サーバに於いて、当該ネットワーク端末がプリンタで印刷されるべき文書を要求する事を許可する、許可レコードを作成するステップ”を含む点で共通しているといえる。

刊行物1発明において、「プリントサーバ」は、クライアントからプリント指示(本願発明の「印刷要求」に相当)とともに印刷データを含むジョブおよびユーザ情報が送られてくると、プリントサーバの「ジョブ受付部」がこれを受け付けるものである。
したがって、本願発明と刊行物1発明は、“ネットワーク端末に於いて、且つ(第2)サーバに送信された印刷要求を介して、プリンタでの文書の印刷を要求するステップ”を含む点で共通しているといえる。

刊行物1発明において、「プリントサーバ」は、「ジョブ受付部」が受け付けたジョブに対して、ユーザ確認部の認証テーブルの権利の欄の記述により、プリント指示をしてきたユーザを確認し、認証テーブルにそのユーザに対するプリント権が設定されているか否か(本願発明の「当該ネットワーク端末が、当該プリンタに於いて、文書を印刷する事を要求することが許可されていることに付いての検証」に相当)を判断しているから、このときのジョブ受付部からユーザ確認部へ送られる信号は、本願発明の「検証要求」に相当するものである。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、“(第2)サーバに於いて、検証要求を介して、当該ネットワーク端末が、当該プリンタに於いて、文書を印刷する事を要求することが許可されていることに付いての検証を要求するステップ”、及び、“(第1)サーバに於いて、且つ当該検証要求に応答して、当該ネットワーク端末がプリンタで印刷することを要求する事が許可されていることを検証するステップ”を含む点で共通している。

刊行物1発明では、プリントオペレーションが許可されると、「プリントサーバ」の「ジョブ受付部」はジョブに示されている印刷処理を行うべくジョブを「ジョブ制御部」に渡し、プリンタでは、「ジョブ制御部」からの指示を受けるとプリンタエンジンより印刷出力を得るのであるから、本願発明と刊行物1発明とは、“当該検証が成功した場合には、当該(第2)サーバによって、当該文書を、印刷するためのプリンタに送信するステップ”を含む点で共通している。

刊行物1発明は、クライアントからネットワークを介してのプリント指示に基づいて、プリンタにおいて印刷データを印刷する際に、ユーザ確認部の認証テーブルを用いて印刷の許可を行うネットワークプリント装置であって、その印刷の許可を行う手順は「プロトコル」といえるものであるから、本願発明と刊行物1発明は、「ネットワーク端末の要求に基づいてプリンタに於いて文書の印刷を許可するためのネットワーク端末許可プロトコル」といえる点で一致する。

以上をまとめると、本願発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
プリンタ、サーバおよびネットワーク端末と、に接続されているネットワークにおいて、
サーバに於いて、当該ネットワーク端末がプリンタで印刷されるべき文書を要求する事を許可する、許可レコードを作成するステップと、
ネットワーク端末に於いて、且つサーバに送信された印刷要求を介して、プリンタでの文書の印刷を要求するステップと、
サーバに於いて、検証要求を介して、当該ネットワーク端末が、当該プリンタに於いて、文書を印刷する事を要求することが許可されていることに付いての検証を要求するステップと、
サーバに於いて、且つ当該検証要求に応答して、当該ネットワーク端末がプリンタで印刷することを要求する事が許可されていることを検証するステップと
当該検証が成功した場合には、当該サーバによって、当該文書を、印刷するためのプリンタに送信するステップと
を含む、ネットワーク端末の要求に基づいてプリンタに於いて文書の印刷を許可するためのネットワーク端末許可プロトコル。

[相違点]
(1)プリンタが、本願発明では、直接ネットワークに接続されているのに対し、刊行物1発明では、プリントサーバを介して間接的にネットワークに接続されている点。

(2)サーバが、本願発明においては、ネットワークを介して互いに通信を行う第1サーバと第2サーバから成るものであって、第1サーバは、許可レコードを作成し、検証要求が送信され該検証要求に応答して検証し、当該検証が成功した場合には、当該許可の送信を行うものであり、第2サーバは、印刷要求が送信され、文書を格納し、検証要求を送信し、許可の受信に応答して文書のプリンタへの送信を行うものであるのに対し、刊行物1発明では、ネットワーク上の1つのプリントサーバであって、該プリントサーバ内でそれらの動作を行う点。

(3)本願発明において、印刷要求は第2サーバに格納されている文書を識別するのに対し、刊行物1発明ではそれが明らかではない点。

4.当審の判断
各相違点について検討する。
(1)について
1つのネットワークに、クライアント、プリントサーバ、プリンタを直接接続し、クライアントからプリントサーバへの印刷指示に基づいてプリンタで印刷を行う構成は、刊行物1発明のプリンタをプリントサーバを介して間接的にネットワークに接続する構成とともに、例を挙げるまでもなく一般的な周知のネットワーク構成であって、いずれの構成を採用するかは当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項にすぎないから、刊行物1発明においても、前者の構成を採用することに格別の困難はない。

(2)について
刊行物1発明において、プリントサーバは、上記「3.対比」で述べたように、プリントサーバ内のジョブ受付部及びジョブ制御部で本願発明の第2サーバに相当する動作を、ユーザ確認部で本願発明の第1サーバに相当する動作を行うものである。
ネットワークにおいて、サーバで行う動作を複数の機能に分けて複数サーバで実現することも1つのサーバ内で複数の機能を実現することもいずれも普通に行われていることであるから、刊行物1発明の「ユーザ確認部」(本願発明の「第1サーバ」に相当する動作を行う)を、プリントサーバから独立したネットワーク上の1つのサーバとすること、すなわち、プリントサーバを第1サーバと第2サーバとから成る構成とすることは当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことである。

(3)について
刊行物1発明において、プリント指示は、印刷データに対するものであり、そのようなプリント指示や印刷データは、複数のクライアントから送られるものであるから、それぞれのプリント指示と印刷データとに何らかの対応付けがなされていることは明らかである。
また、プリントサーバは、クライアントからプリント指示とともに印刷データを含むジョブおよびユーザ情報が送られてジョブ受付部がこれを受け付けるのであるから、該印刷データは、一時的にせよプリントサーバに格納されることも明らかである。
さらに、プリント指示に、印刷データを識別する識別子などを含ませることは普通に行われていることであるから、刊行物1発明において、プリント指示(本願発明の「印刷要求」に相当)がプリントサーバ(本願発明の「第2サーバ」に相当)に格納されている印刷データ(本願発明の「文書」に相当)を識別する構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

請求人(出願人)は、第2サーバに格納されている文書に関して、平成21年4月23日付けの意見書において次のように主張している。
「更に、本願発明では、当該ネットワーク端末が当該プリンタで印刷しようとする文書は、当該ネットワーク端末自身が用意するものではなく、当該文書は、当該第2のサーバ内に格納されており、当該ネットワーク端末は単に当該文書の文書IDを送信する様に構成されているのに対し、当該第1のご引例では、ユーザー自身が当該印刷されるべき文書を提供するものであり、かかる点に於いても両者は、技術思想を実質的に相違するものである。」
しかしながら、本願の明細書及び図面には、上記の主張のような「当該ネットワーク端末が当該プリンタで印刷しようとする文書は、当該ネットワーク端末自身が用意するものではなく、当該文書は、当該第2のサーバ内に格納されており、当該ネットワーク端末は単に当該文書の文書IDを送信する様に構成されている」ことは記載も示唆もされていない。本願の【図43】には、アプリケーションがページサーバに対して文書IDとともに文書をも送信することが、また、【0251】には、「アプリケーション(つまり、出版者)は、最初に、IDサーバ12から文書ごとに文書ID51を得る。それから、それは、その文書IDおよびページ記述を含む各文書構造体を、文書の新規に割り当てられたIDを担当するページサーバ10に送信する。」と記載されており、これらの記載はむしろ文書がアプリケーションによって用意されたものであることを示唆している。したがって、上記主張は、明細書及び図面の記載に基づかないものであって、本願発明をそのように解釈することは妥当ではなく、上記主張は採用できない。
なお、仮に、意見書の上記主張を採用して、本願発明が、文書が予めサーバに格納されており、ネットワーク端末からの印刷要求が文書IDのみであるような発明であると解釈したとしても、予めサーバに文書を格納しておき、該文書を指定する文書IDを含む印刷要求をネットワーク端末から行うこと自体は普通に行われている周知慣用の技術であるから、そのことにより本願発明が刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないと結論されるわけではない。

したがって、本願発明は、原査定で引用した刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-21 
結審通知日 2011-10-25 
審決日 2011-11-08 
出願番号 特願2000-620463(P2000-620463)
審決分類 P 1 8・ 571- ZA (G06F)
P 1 8・ 121- ZA (G06F)
P 1 8・ 56- ZA (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 朋広  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 千葉 輝久
溝本 安展
発明の名称 ネットワーク端末許可プロトコル  
代理人 畑 泰之  
代理人 斉藤 武彦  

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