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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R |
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管理番号 | 1254274 |
審判番号 | 不服2010-24962 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-11-05 |
確定日 | 2012-03-21 |
事件の表示 | 特願2008-519801「コネクタアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月18日国際公開、WO2007/006335、平成21年 1月 8日国内公表、特表2009-500797〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成17年7月7日を国際出願日とする出願であって平成22年6月30日付けで拒絶査定がなされ(平成22年7月6日発送)、これに対し、平成22年11月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。 II.平成22年11月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年11月5日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項7(旧請求項8)は、次のように補正された。 「コネクタ(9)の端子受容部(7)と相手側コネクタ(10)の端子ヘッダ(1)とを接続するための接続システムにおいて、 - 前記コネクタ(9)のフレーム(4)内の中間位置に前記端子受容部(7)を維持するための係止手段(79)と、 - 前記中間位置から前記端子受容部(7)を解放するための係止解除手段(82)と、を具備し、 前記係止手段(79)は、前記コネクタ(9)と前記相手側コネクタ(10)とが嵌合している間、前記中間位置内に前記端子受容部(7)を前記中間位置に係止し、 前記端子受容部(7)は、前記コネクタ(9)と前記相手側コネクタ(10)とが完全に嵌合したときに前記フレーム(4)から解放されることを特徴とする接続システム。」(下線部は補正個所を示す) 2.補正の目的 本件補正は、請求項8に記載した発明を特定するために必要な事項である「係止手段」に、「前記係止手段(79)は、前記コネクタ(9)と前記相手側コネクタ(10)とが嵌合している間、前記中間位置内に前記端子受容部(7)を前記中間位置に係止し」との限定を付加するとともに、端子受容部がフレームから解放されるタイミングについて、「前記コネクタ(9)と前記相手側コネクタ(10)との嵌合が部分的に進行した後」とあったものを「前記コネクタ(9)と前記相手側コネクタ(10)とが完全に嵌合したとき」と限定したものであり、かつ、補正後の請求項7に記載された発明は、補正前の請求項8に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項7に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-273787号公報(以下「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア「図1?図3に示すように、コネクタ10は、車輌のインナパネル(被取付体)11の略矩形の取付孔12に取り付けられる合成樹脂製で略四角筒状のホルダー20と、このホルダー20内に収納状態で仮係止されると共に、その前後方向に摺動自在に設けられた合成樹脂製で略四角筒状のカバー30と、このカバー30に基端部41が回動自在に支持されて後述する雄,雌両コネクタハウジング50,60をてこ作用により嵌合させる合成樹脂製で一対のレバー40,40と、上記カバー30内に嵌合待機状態(いわゆる待ち受け状態)に仮係止されると共に、該カバー30内に往復スライド移動自在に設けられた合成樹脂製の雄コネクタハウジング(一方のコネクタハウジング)50と、嵌合待機状態にある該雄コネクタハウジング50に嵌脱(嵌合、離脱)される合成樹脂製の雌コネクタハウジング(他方のコネクタハウジング)60とで構成されている。」(段落【0011】) イ「図1,図3に示すように、雌コネクタハウジング60の両脚部62,62には矩形板状の可撓性アーム64をフード部61の側壁61aと平行になるようにそれぞれ一体突出形成してある。この各可撓性アーム64の外側先端には、ホルダー20の各可撓性アーム25の突起25aとカバー30の各可撓性係止片33の係合孔33aの仮係止状態を保持する保持手段と、両コネクタハウジング50,60の嵌合完了時及び離脱時にホルダー20の各可撓性アーム25の突起25aとカバー30の各可撓性係止片33の係合孔33aの仮係止状態を解除する解除手段とを兼ねた突起(仮係止保持・解除手段)65を一体突出形成してある。この各突起65は略三角柱状に形成してあり、その前側がテーパ面(係止面)65aになっていると共に、後側もテーパ面(離脱面)65bになっている。」(段落【0026】) ウ「雄コネクタハウジング50側をホルダー20を介してインナパネル11の取付孔12に取り付けた後で、雌コネクタハウジング60を嵌合待機状態にある雄コネクタハウジング50に嵌合する。これら雄,雌両コネクタハウジング50,60の嵌合を、図3,図5,図6,図12?図14によって説明すると、図3,図5,図6に示すように、雌コネクタハウジング60のフード部61をカバー30の外壁31と内壁32との間に挿入する両コネクタハウジング50,60の嵌合初期状態において、雄コネクタハウジング50の嵌合待機状態は、ホルダー20の各可撓性アーム25の突起25aとカバー30の各可撓性係止片33の係合孔33aの係止状態、及び、カバー30の上下各一対の可撓性アーム38,38と雄コネクタハウジング50の上下各一対の他方のストッパ凸部56,56の係止状態により確実に仮係止される。」(段落【0032】) エ「次に、図12(a)に示すように、両コネクタハウジング50,60の嵌合途中において、雌コネクタハウジング60の各可撓性アーム64の突起65の押圧力によりカバー30の各可撓性係止片33が外側に弾性変形し、該カバー30の各可撓性係止片33の係合孔33aがホルダー20の各可撓性アーム25の先端面にそれぞれ当たって、上記ホルダー20の各可撓性アーム25の突起25aとカバー30の各可撓性係止片33の係合孔33aとの仮係止状態はより確実に維持される。これと同時に、図13に示すように、雌コネクタハウジング60の各突起66がカバー30の各可撓性のストッパアーム34の内側の凸部34aに乗り上げて該各ストッパアーム34を外側に弾性変形させ、該カバー30の各可撓性のストッパアーム34の先端部がホルダー20の前端部20dに突き当たり、カバー30がホルダー20内の後方へ下がるのを確実に防止する。 そして、図12(b)に示すように、両コネクタハウジング50,60の嵌合が完了すると、雌コネクタハウジング60の各突起65がカバー30の各可撓性係止片33の係合孔33a内に入る。また、図14に示すように、雌コネクタハウジング60の各突起66がカバー30の各可撓性のストッパアーム34の内側の凸部34aを乗り越えるため、該各ストッパアーム34が元の状態に戻る。これらにより、嵌合が完了した両コネクタハウジング50,60は、図18に示すように、カバー30内を共に後方にスライド可能となる。このスライドの際に、カバー30の各ストッパ凸部35a,35bがホルダー20の各ガイド溝26,27に沿って摺動するので、カバー30は左右方向及び上下方向にガタ付くことなくホルダー20内の後方にスムーズに移動する。」(段落【0035】?【0036】) オ 「・・・図17に示すように、雌コネクタハウジング60を嵌合方向に更に押し込むと、レバー40のてこ作用(レバー40の基端部41を回動自在に支持する支軸36cを力点、雄コネクタハウジング50のガイド部53の円弧面53aを作用点、雌コネクタハウジング60のリブ68の突起68aを支点とするてこ作用)により、カバー30の外壁31と内壁32との間に雌コネクタハウジング60のフード部61が引き込まれて両コネクタハウジング50,60相互が嵌合する。その結果、レバー40のてこ作用により、雌コネクタハウジング60を嵌合方向に小さな操作力によりスライド操作するだけで、両コネクタハウジング50,60相互の嵌合作業を容易に行うことができる。」(段落【0037】) そして、図3には、記載ウに関連して、雄コネクタ組立体のカバー30の係合孔33aにホルダー20の可撓性アーム25の突起25aが係合することにより、雄コネクタ組立体がホルダー20に仮係止されている状態が示されている。 また、図12aには、記載エに関連して、雌コネクタハウジング60の嵌合途中において、その突起65が雄コネクタ組立体のカバー30の可撓性係止片33を外側に弾性変形させ、ホルダー20の可撓性アーム25との仮係止状態をより確実にすることが示され、同様に、図13には、雌コネクタハウジング60の嵌合途中において、その突起66がカバー30の可撓性のストッパアーム34を外側に弾性変形させ、その先端部をホルダー20の前端部20dに突き当てて仮係止をより確実にすることが示されている。 さらに、図12bには、記載エに関連して、コネクタハウジングの嵌合が完了した時点で、雌コネクタハウジング60の仮係止保持・解除手段である突起65(記載イ参照)が、カバー30の可撓性のストッパアーム34との係合から離れ、同時にホルダー20の可撓性アーム25を外側に弾性変形させることにより、ホルダー20の可撓性アーム25の内側にカバー30の可撓性のストッパアーム34を伴って入り込み、雄コネクタ組立体とホルダーとの仮係止状態が解除される状態が示されている。 同じく図14には、記載エに関連して、両コネクタハウジング50,60の嵌合が完了すると、雌コネクタハウジング60の突起66が可撓性のストッパアーム34の内側の凸部34aを乗り越えるので、ストッパアーム34が元の状態に戻り、ホルダ20に対する雄コネクタ組立体の仮係止状態が解除される状態が示されている。 上記記載事項について検討すると、記載アには、車輌のインナパネルに取り付けられるホルダー20と、このホルダー20内に収納状態で仮係止されるカバー30と、雄,雌両コネクタハウジング50,60をてこ作用により嵌合させる合成樹脂製で一対のレバー40,40と、カバー30内に嵌合待機状態に仮係止される雄コネクタハウジング50(以下、便宜上、カバー30,レバー40,雄コネクタハウジング50からなる構造を「雄コネクタ組立体」という)と、雌コネクタハウジング60とを含んでなるコネクタ10及び、コネクタ10の接続システムが示されている。 記載イには、雌コネクタハウジング60が、ホルダー20と雄コネクタ組立体のカバー30の仮係止状態を保持する保持手段と、両コネクタハウジング50,60の嵌合完了時にその仮係止状態を解除する解除手段を兼ねた突起65を形成した可撓性アーム64を有することが示されている。 記載イ及びウには、雄コネクタ組立体のカバー30の各可撓性係止片33の係合孔33aがホルダー20の各可撓性アーム25の突起25aに係止して、ホルダー20に仮係止することが示されている。すなわち、カバー30の可撓性係止片33とホルダー20の可撓性アーム25とは、雄コネクタ組立体をホルダー20に仮係止するための手段であるといえる。 記載エには、両コネクタハウジング50,60の嵌合途中において、雌コネクタハウジング60の各可撓性アーム64の突起65が、雄コネクタ組立体のカバー30の各可撓性係止片33を外側に弾性変形させ、ホルダー20の各可撓性アーム25の突起25aと雄コネクタ組立体のカバー30の各可撓性係止片33の係合孔33aとの仮係止状態をより確実に維持し、さらに、雌コネクタハウジング60の各突起66が雄コネクタ組立体のカバー30の各可撓性のストッパアーム34の内側の凸部34aに乗り上げて該各ストッパアーム34を外側に弾性変形させ、その先端部をホルダー20の前端部20dに突き当て、カバー30がホルダー20内の後方へ下がるのを確実に防止することが示されている。 この記載より、カバー30の可撓性のストッパアーム34とホルダー20の前端部20dも、雄コネクタ組立体をホルダー20に仮係止するための手段であるといえる。 さらに、記載エには、両コネクタハウジング50,60の嵌合が完了すると、雌コネクタハウジング60の各突起65がカバー30の各可撓性係止片33の係合孔33a内に入り、各ストッパアーム34が元の状態に戻り、仮係止状態が解除されるので、雄コネクタ組立体のカバー30はホルダー20内の後方に移動可能となる、すなわち、雄コネクタ組立体がホルダー20への仮係止から解放されることが示されている。 この記載と、記載イの、雌コネクタハウジング60が、仮係止の保持手段と解除手段を兼ねた突起65を形成した可撓性アーム64を有する旨の記載より、雌コネクタハウジングは仮係止解除手段である可撓性アーム64を有するといえる。 記載オには、雄コネクタハウジング50側を、カバー30,レバー40,雄コネクタハウジング50からなる雄コネクタ組立体とすることについて、レバー40のてこ作用により、雌コネクタハウジング60を嵌合方向に小さな操作力によりスライド操作するだけで、両コネクタハウジング50,60相互の嵌合作業を容易に行うことができる旨記載されている。すなわち、この記載より、雄コネクタ組立体は、小さな操作力により嵌合を可能とする手段(以下、便宜上「嵌合補助手段」という)を備えているといえる。 上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。 「コネクタの一方側の嵌合補助手段を有する雄コネクタ組立体と、コネクタの他方側の雌コネクタハウジングとを接続するための接続システムにおいて、 - 前記コネクタの一方側のホルダー内の中間位置に前記雄コネクタ組立体を維持するための、雄コネクタ組立体の可撓性係止片及び可撓性のストッパアームと、ホルダーの可撓性アーム及び前端部を含む仮係止手段と、 - 前記中間位置から前記雄コネクタ組立体を解放するための雌コネクタハウジングの突起及び可撓性アームからなる仮係止解除手段と、を具備し、 前記仮係止手段は、前記コネクタの一方側と前記コネクタの他方側とが嵌合している間、前記中間位置内に前記雄コネクタ組立体を前記中間位置に仮係止し、 前記雄コネクタ組立体は、前記一方側のコネクタと前記他方側のコネクタとの嵌合が完了したときに前記ホルダーから解放される接続システム。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「コネクタの一方側」は、本願補正発明の「コネクタ(9)」に相当し、以下同様に、「コネクタの他方側の」は「相手側コネクタ(10)」に、「雌コネクタハウジング」は「端子ヘッダ(1)」に、「接続システム」は「接続システム」に、それぞれ相当する。 引用発明の「嵌合補助手段を有する雄コネクタ組立体」は、雌コネクタハウジング(端子ヘッダ(1)に相当)に結合される端子結合手段である点で、本願補正発明の「端子受容部(7)」と共通する。 引用発明の「前記コネクタの一方側のホルダー内の中間位置に前記雄コネクタ組立体を維持するための、雄コネクタ組立体の可撓性係止片及び可撓性のストッパアームと、ホルダーの可撓性アーム及び前端部を含む仮係止手段」と、本願補正発明の「前記コネクタ(9)のフレーム(4)内の中間位置に前記端子受容部(7)を維持するための係止手段(79)」とを対比すると、引用発明の「コネクタの一方側の」「ホルダー」は本願補正発明の「コネクタ(9)の」「フレーム(4)」に相当し、同様に「雄コネクタ組立体の可撓性係止片及び可撓性のストッパアームと、ホルダーの可撓性アーム及び前端部を含む仮係止手段」は「係止手段(79)」に相当する。 引用発明の「前記中間位置から前記雄コネクタ組立体を解放するための雌コネクタハウジングの突起及び可撓性アームからなる」「仮係止解除手段」は、中間位置から、本願補正発明の端子受容部(7)と端子結合手段である点で共通する雄コネクタ組立体を解放する点で、本願補正発明の「前記中間位置から前記端子受容部(7)を解放するための」「係止解除手段(82)」と共通する。 引用発明の「前記仮係止手段は、前記コネクタの一方側と前記コネクタの他方側とが嵌合している間、前記中間位置内に前記雄コネクタ組立体を前記中間位置に仮係止し」は、端子結合手段(雄コネクタ組立体)を中間位置内に係止する点で、本願補正発明の「前記係止手段(79)は、前記コネクタ(9)と前記相手側コネクタ(10)とが嵌合している間、前記中間位置内に前記端子受容部(7)を前記中間位置に係止し」と共通する。 引用発明の「前記雄コネクタ組立体は、前記コネクタの一方側と前記コネクタの他方側との嵌合が完了したときに前記ホルダーから解放される」は、嵌合が完了したときに端子結合手段(雄コネクタ組立体)が開放される点で、本願補正発明の「前記端子受容部(7)は、前記コネクタ(9)と前記相手側コネクタ(10)とが完全に嵌合したときに前記フレーム(4)から解放される」と共通する。 そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「コネクタの端子結合手段と相手側コネクタの端子ヘッダとを接続するための接続システムにおいて、 - 前記コネクタのフレーム内の中間位置に前記端子結合手段を維持するための係止手段と、 - 前記中間位置から前記端子結合手段を解放するための係止解除手段と、を具備し、 前記係止手段は、前記コネクタと前記相手側コネクタとが嵌合している間、前記中間位置内に前記端子結合手段を前記中間位置に係止し、 前記端子結合手段は、前記コネクタと前記相手側コネクタとが完全に嵌合したときに前記フレームから解放される接続システム。」 そして、両者は次の点で相違する。 (相違点) 端子結合手段が本願補正発明では端子受容部であるのに対し、引用発明では嵌合補助手段を有する雄コネクタ組立体である点。 3-3.相違点の判断 上記相違点について検討する。 上記記載オにあるように、引用発明では、コネクタの嵌合を小さな操作力により可能とする目的で端子結合手段としての雄コネクタ組立体に嵌合補助手段を備えている。 しかしながら、嵌合補助手段はコネクタにとって嵌合を行う上で必ずしも必要とされる手段ではないので、格別嵌合補助手段を設けることなく、雄コネクタハウジングをカバーに一体に固定して雄コネクタ組立体を構成し、本願補正発明の端子受容部に相当するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願補正発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項8に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成22年5月26日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「コネクタ(9)の端子受容部(7)と相手側コネクタ(10)の端子ヘッダ(1)とを接続するための接続システムにおいて、 - 前記コネクタ(9)のフレーム(4)内の中間位置に前記端子受容部(7)を維持するための係止手段(79)と、 - 前記中間位置から前記端子受容部(7)を解放するための係止解除手段(82)と、を具備し、 前記端子受容部(7)は、前記コネクタ(9)と前記相手側コネクタ(10)との嵌合が部分的に進行した後に前記フレーム(4)から解放されることを特徴とする接続システム。」 IV.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。 V.対比・判断 本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、「係止手段」の限定事項である「前記係止手段(79)は、前記コネクタ(9)と前記相手側コネクタ(10)とが嵌合している間、前記中間位置内に前記端子受容部(7)を前記中間位置に係止し」との構成を省き、また、端子受容部がフレームから開放されるタイミングについて、「前記コネクタ(9)と前記相手側コネクタ(10)とが完全に嵌合したとき」と限定されていたものを、「前記コネクタ(9)と前記相手側コネクタ(10)との嵌合が部分的に進行した後」と、より広くしたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 VI.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-10-18 |
結審通知日 | 2011-10-25 |
審決日 | 2011-11-07 |
出願番号 | 特願2008-519801(P2008-519801) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 片岡 弘之、栗山 卓也 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
佐野 遵 長浜 義憲 |
発明の名称 | コネクタアセンブリ |
代理人 | 森 隆一郎 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 棚井 澄雄 |