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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 H04N 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04N |
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管理番号 | 1254405 |
審判番号 | 不服2011-6199 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-03-22 |
確定日 | 2012-04-10 |
事件の表示 | 特願2001-158864「情報配信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 6日出願公開、特開2002-354167、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年5月28日の出願であって、平成22年4月12日付けの拒絶理由の通知に対し、平成22年6月21日付けで手続補正がなされたが、平成22年12月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年3月22日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成23年3月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年3月22日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 情報配信装置が提供する各種の紙面に印刷されたコンテンツに係る記事、画像、紙面レイアウトを含む各種紙面情報をオープンネットワークを介して情報受信装置に配信する情報配信システムにおいて、 前記情報配信装置は、 前記各種紙面情報のうち前記コンテンツに係る前記記事と前記画像を複数のオブジェクトに分割する手段と、 前記複数のオブジェクトの各々を、予め用意された対応するカラー変換テーブルによって対応関係を任意に形成することにより、色情報として別に用意された異なる複数のカラーの各々、または前記複数のカラーの各々を番号付けして区別するため任意に用意された順序構造を有する十進法数字に基づく異なる複数のカラー数値の各々、または前記複数のカラーの各々に対応させかつコンピュータでの処理に適するように用意された16進法構造を有した異なる複数のカラーデジタル値の各々に変換する手段と、 変換された前記のカラー、カラー数値またはカラーデジタル値を前記オープンネットワークの上に伝送させる手段とを備える、 ことを特徴とする情報配信システム。」 と補正された。 2.請求人の主張する補正の根拠 請求人は、審判請求書において、本件補正の根拠は、願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0003】、【0005】、【0020】、【0024】?【0025】や図1?3に記載の内容に基づくものであるとする次のような主張をしている。 「この補正の根拠は、出願当初の本願明細書と本願図面に記載された次の内容に基づいている。 1)本願発明に係る情報配信システムは、従来より知られている新聞等の電子配信において、情報量が極めて多大な新聞等の紙面に記載されたテキストデータ(記事、文章等のデータ)やイメージデータ(画像のデータ)等(「各種紙面情報」)を配信する場合に、当該配信を時間およびコスト等の観点から円滑に行うために、配信される情報のうち情報量が極めて多大な記事と画像をカラー等に変換して伝送し、伝送情報量を極小化するということを本願発明の課題(発明の主題)にするものである(本願明細書の段落0003,0005の記載)。 本願発明の特徴的構成を示した本願図面の図2に示されるように、情報配信者側システム構成(10:情報配信装置)から情報受信側システム構成(11:情報受信装置)へネットワーク(8)を経由して「各種紙面情報」(図2の例では「新聞記事原文データ」)を配信するときに、「各種紙面情報」をカラー変換テーブル(13)でカラー数値化データ(14)に変換し、変換したカラー数値化データ(14)をネットワーク(8)を経由して配信し、かつ変換ルールを決めたカラー変換テーブル(13)もカラー変換逆テーブル(15)として、ネットワーク(8)を経由して情報受信側システム構成側に配信するか、または郵送で情報受信側システム構成側に配達される。情報受信側システム構成(11)では、配信等されたカラー数値化データ(14)とカラー変換逆テーブル(15)に基づいて新聞記事復元データ(16)を作ることになる。 2)図2で示した情報配信者側システム構成(10)の内容は、本願明細書の段落0024によれば「本発明に係る情報配信システムも該電子化工程7以降の新聞情報配信に適用されるものである。」と記載され、段落0025によれば「ここで、情報配信者側システム構成10は図1における紙面の電子化工程7に対応し」と記載されている。 従って、本願発明に係る情報配信システムは、図1に示した従来の知られた新聞の電子配信の構成を前提として、「紙面の電子化」の工程(7)以降の工程に対してさらに上記の課題を解決すべく新しい工程を付加したものである。 換言すれば、本願発明に係る情報配信システムによれば、従来の一般的な新聞製作工程を示す図1において示された新聞の電子配信に関する工程(1,2,3,7)を前提として、「紙面の電子化」の工程(7)以降の工程に対して、図2の情報配信者側システム構成(10)内に示された工程が付加された点に特徴を有している。 3)従来の新聞製作工程における新聞の電子配信に関する工程(1,2,3,7)に関しては、本願明細書の段落0020に、「3は記事・画像の組版工程で、編集工程2で編集された記事・画像に見出し等を付して紙面レイアウトに版を組む工程である。」と記載されている。 4)従って、印刷する場合(特に工程4,5,6)と電子配信する場合(特に工程7、ネットワーク8等)とを含む従来の新聞製作工程を一般的に示した図1において、電子配信の場合におけるネットワーク(8)によって配信される前の段階の「紙面の電子化」の工程(7)のさらに前の段階では、「記事・画像の組版」の工程(3)が設けられている。「記事・画像の組版」の工程(3)においては、新聞紙面の記事に係るテキストデータ等の編集レイアウトに係る組版情報も取り出され、データ化される。その結果、次の「紙面の電子化」の工程(7)において、すなわち配信前の段階において、「紙面の電子化」の処理が実行される。従って、本特許出願前の従来の新聞の電子配信においても、情報受信側の端末装置(9)で新聞等を復元できるようにするためには、新聞の記事等を復元するために編集レイアウト(組版)に係る紙面情報も当然のことながら一緒に配信されていたのである。 このことは本願明細書の段落0024の「7は紙面の電子化工程で、近年、盛んになりつつある電子新聞を製作する工程であり、該電子化工程7で電子化された紙面がネットワーク8を介して各端末装置9に配信される構成となっている。」という記載からも自明である。 上記の本願明細書の段落0020の記載は特にそのことを裏付けるものである。 5)さらに、本願発明では、その実施形態について、情報配信者側システム構成(10:情報配信装置)の詳細構成を示した図3においては、新聞記事の原文のデータ(12)のみをカラー変換テーブル(13)によって「カラー数値化データ」に変換する処理の流れ(工程24,25)が記載されている。ここでは、新聞記事の原文データ以外の「編集レイアウト」に係る紙面情報について変換する処理については記載されていない。しかしながら、本願発明の課題が、前述した通り、従来の新聞等の電子配信において、情報量が極めて多大な新聞等の紙面に記載されたテキストデータやイメージデータ等の配信情報をカラー等に変換して伝送し、その伝送情報量を極小化する点にあるので、それに関連する構成のみが記載されており、「編集レイアウト」に係る紙面情報の変換・配信については、前述した通り従来の新聞等の電子配信に基づく前提の構成に含まれていることから、特別には記載されていないのである。 しかしながら、上記の本願発明の前提の構成を考慮すれば、「編集レイアウト」に係る紙面情報も同様に変換されることにより、または同様に変換されることなく、情報受信装置側に配信されることは、本願明細書中に文言として明瞭な記載がないとしても、当業者にとっては自明なことである。 なお上記の補正は、出願当初の開示範囲内の補正であって新規事項を追加する補正ではなく、かつ「各種紙面情報」の内容を限定するという意味において限定的減縮に相当するものである。」 そして、当初明細書等の段落【0003】、【0005】、【0020】、【0024】?【0025】には、次のように記載されている。 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記した従来の情報配信システムは1日分の新聞や1冊分の書籍をそのままテキストデータやイメージデータとして配信する構成であるため、伝送する情報量が極めて多大となり、ブロードバンドネットワーク等の高速通信回線を使用しないと配信に時間がかかり過ぎて実用に耐えないというばかりでなく、仮に高速通信回線を使用したとしても伝送する情報量そのものは何ら変わらないので、伝送する情報量に比例する配信コスト等が膨らむという問題点の他、新たに高速通信回線網を敷設しなければならないという問題点がある。」 「【0005】 本発明は、このような従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、配信する情報をカラー、カラー数値またはカラーデジタル値に変換して伝送することにより、伝送する情報量そのものを極小化した情報配信システムを提供することを意図する。」 「【0020】 3は記事・画像の組版工程で、編集工程2で編集された記事・画像に見出し等を付して紙面レイアウトに版を組む工程である。」 「【0024】 7は紙面の電子化工程で、近年、盛んになりつつある電子新聞を製作する工程であり、該電子化工程7で電子化された紙面がネットワーク8を介して各端末装置9に配信される構成となっている。本発明に係る情報配信システムも該電子化工程7以降の新聞情報配信に適用されるものである。 【0025】 図2は新聞情報配信システムの構成図で、10は情報配信者側システム構成を、11は情報受信者側システム構成をそれぞれ示す。ここで、情報配信者側システム構成10は図1における紙面の電子化工程7に対応し、情報受信者側システム構成11は端末装置9に対応するものである。」 3.補正の目的の適否 本件補正は、補正前の請求項1について、 「情報配信装置が提供する各種の紙面に印刷されたコンテンツに係る各種紙面情報」 とあるのを、 「情報配信装置が提供する各種の紙面に印刷されたコンテンツに係る記事、画像、紙面レイアウトを含む各種紙面情報」 とし、 「前記コンテンツに係る前記各種紙面情報を複数のオブジェクトに分割する手段」 とあるのを、 「前記各種紙面情報のうち前記コンテンツに係る前記記事と前記画像を複数のオブジェクトに分割する手段」 とするものである。 すなわち、本件補正は、「各種紙面情報」が「記事、画像、紙面レイアウトを含む」ものであることを限定した上で、「複数のオブジェクトに分割する手段」で分割の対象となる「各種紙面情報」を「前記コンテンツに係る前記記事と前記画像」とするものである。 そこで、「各種紙面情報」を「複数のオブジェクトに分割する」事項に関連すると考えられる当初明細書等の記載について検討すると、請求人が補正の根拠として主張した上記の段落【0003】、【0005】、【0020】、【0024】?【0025】には、「記事、画像、紙面レイアウト」のいずれをとっても、これらの情報を複数のオブジェクトに分割することは何ら記載されていないし、そもそも「オブジェクト」が何を示すものであるのかも全く記載されていない。また、図1,2の記載をみても、「各種紙面情報」を「複数のオブジェクトに分割する」事項に関しては何ら記載されていない。 一方、請求人が補正の根拠として主張した記載箇所のうち、図3には、「原文データ構文解析部22」及び「オブジェクト自動抽出部23」が記載されており、当初明細書等の段落【0030】?【0031】には、これら「原文データ構文解析部22」及び「オブジェクト自動抽出部23」について、次のように記載されている。 「【0030】 22は原文データ構文解析部で、該原文データ構文解析部22は新聞記事原文データ入力部21に入力された新聞記事原文データ12の文章構成を解析し、新聞記事原文データ12を文字、単語・熟語・慣用句・人名・地名・専門用語・外国語等の各種用語辞典の見出し語または新聞記事原文データ12に出現する頻度の高い文節に分解する。なお、該原文データ構文解析部22で分解される文字は各品詞毎の文字であるが、語形変化のある動詞、形容詞、助動詞等についてはその活用形毎に分解される。 【0031】 23はオブジェクト自動抽出部で、該オブジェクト自動抽出部23は原文データ構文解析部22で分解された文字、各種用語辞典の見出し語または文節を各々のオブジェクトとして抽出する。」 しかしながら、段落【0030】?【0031】及び図3の記載は、「新聞記事原文データ」を入力として、当該新聞記事原文データを文字、単語・熟語・慣用句・人名・地名・専門用語・外国語等の各種用語辞典の見出し語または新聞記事原文データ12に出現する頻度の高い文節に分解することにより、これらの文字、各種用語辞典の見出し語または文節を各々のオブジェクトとして抽出するものであって、補正後の請求項1に係る発明の「記事」を複数のオブジェクトに分割することは記載されているものの、「画像」を複数のオブジェクトに分割することは何ら記載されていない。 また、当初明細書等に記載の「原文データ構文解析部22」及び「オブジェクト自動抽出部23」のように、記事を「文字、各種用語辞典の見出し語または文節」のオブジェクトに分割する事項から、画像を複数のオブジェクトに分割することが自明であるとも到底いえない。 そして、当初明細書等の他のいずれの記載をみても、画像を複数のオブジェクトに分割する事項は何ら記載されていないし、当該当初明細書等の記載から自明ともいえない。 それゆえ、補正後の請求項1において、「複数のオブジェクトに分割する手段」で分割の対象となる「各種紙面情報」に「画像」を含むものとした本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。 4.補正却下の決定のまとめ したがって、当該補正は特許法第17条の2第3項で規定する補正の要件を満たすものではないから、同条同項の規定に違反するものである。 よって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 平成23年3月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成22年6月21日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2012-03-28 |
出願番号 | 特願2001-158864(P2001-158864) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04N)
P 1 8・ 561- WY (H04N) P 1 8・ 536- WY (H04N) P 1 8・ 537- WY (H04N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 橋爪 正樹 |
特許庁審判長 |
加藤 恵一 |
特許庁審判官 |
吉村 博之 古川 哲也 |
発明の名称 | 情報配信システム |
代理人 | 田宮 寛祉 |