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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
審判 査定不服 6項4号請求の範囲の記載形式不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1254490
審判番号 不服2010-3367  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-16 
確定日 2012-03-29 
事件の表示 特願2004- 43872「依頼方法、依頼プログラム、および依頼装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 2日出願公開、特開2005-234922〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は平成16年2月20日の特許出願であって、平成21年8月10日付けの拒絶理由に応答して平成21年10月6日付けで手続補正がなされたが、平成21年11月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされ、その後当審において,平成23年11月14日付けで拒絶理由通知が通知され、それに応答して平成23年12月23日付けの手続補正がなされたものである。

第2 平成23年11月14日付け拒絶理由通知の概要
平成23年11月14日付け拒絶理由通知は、「理由1)」として、平成22年2月16日付けの手続補正によって補正された本願請求項1?6に係る発明については、質問に対する回答依頼業務をどのように管理するかといった人為的取り決めであって、自然法則を利用した技術的思想ということはできないし、また、ソフトウエアによる情報処理を特定しようとするものだとしても、ここでの情報処理ではコンピュータのハードウエア資源を用いて具体的に実現しているとは言えないから、いずれにしても自然法則を利用した技術思想の創作には該当しないことから、特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしていない、とするものである。
また、平成23年11月14日付け拒絶理由通知の、「理由2)」としては、発明の詳細な説明の項には、端末がどのような手段(1項)、プログラム(3項),及び制御手段(5項)によって、・依頼内容に対する回答が可か付加かを判定するのか、・依頼内容の分割を行うのか、及び、・回答が不可と判定した場合に依頼情報を送信する所定の端末を決定するのか、については何ら記載されていない。そうすると、当業者がその発明を実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されているということができないので、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないものであるとともに、請求項1、3及び5の記載は、同条6項1号に規定する要件を満たしていない、とするものである。

第3 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、平成23年12月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
端末が、受信した依頼内容に対する回答を送信する依頼方法において、
前記端末を構成する受信手段が他の端末より依頼内容および他の端末の宛先情報を含む依頼情報を受信するステップと、
前記端末を構成する回答可否判断手段が前記受信した依頼情報に含まれる前記依頼内容を参照して、該依頼内容に対する回答が可か不可か判定するステップと、
前記端末を構成する手段が回答が可と判定された場合には該回答を前記依頼情報に挿入するステップと、
端末を構成する手段が依頼内容に対する回答が不可と判定され、複数に分割する必要があると判定された場合には該依頼内容を複数に分割した依頼内容(追加)を前記依頼情報に挿入するステップと、
前記端末を構成する依頼情報付与手段が依頼内容に対する回答が不可と判定された場合および前記依頼内容(追加)が挿入された場合には前記端末の宛先情報を前記依頼情報に挿入するステップと、
前記端末を構成する送信手段が前記回答が依頼情報に挿入された場合には依頼情報に含まれる宛先情報のうち最初に登録された宛先情報へ送信し、一方、回答が挿入されなかった場合には依頼情報に含まれる宛先情報のうちの末尾あるいは複数に分割された場合には分割された複数へ送信するステップと
を実行することを特徴とする依頼方法。
【請求項2】
前記送信手段から送信された依頼情報を受信した依頼元の端末は、
該受信した依頼情報に含まれる依頼内容あるいは依頼内容(追加)に対する回答が可と判定されていた場合には、該回答を挿入した該依頼情報を、前記依頼情報に含まれる宛先情報の全てに送信を行うことを特徴とする請求項1に記載の依頼方法。
【請求項3】
端末に、受信した依頼内容に対する回答を送信させる依頼プログラムにおいて、
前記端末を構成する受信手段が他の端末より依頼内容および他の端末の宛先情報を含む依頼情報を受信するステップと、
前記端末を構成する回答可否判断手段が前記受信した依頼情報に含まれる前記依頼内容を参照して、該依頼内容に対する回答が可か不可か判定するステップと、
前記端末を構成する手段が回答が可と判定された場合には該回答を前記依頼情報に挿入するステップと、
端末を構成する手段が依頼内容に対する回答が不可と判定され、複数に分割する必要があると判定された場合には該依頼内容を複数に分割した依頼内容(追加)を前記依頼情報に挿入するステップと、
前記端末を構成する依頼情報付与手段が依頼内容に対する回答が不可と判定された場合および前記依頼内容(追加)が挿入された場合には前記端末の宛先情報を前記依頼情報に挿入するステップと、
前記端末を構成する送信手段が前記回答が依頼情報に挿入された場合には依頼情報に含まれる宛先情報のうち最初に登録された宛先情報へ送信し、一方、回答が挿入されなかった場合には依頼情報に含まれる宛先情報のうちの末尾あるいは複数に分割された場合には分割された複数へ送信するステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする依頼プログラム。
【請求項4】
前記送信手段から送信された依頼情報を受信した依頼元の端末は、
該受信した依頼情報に含まれる依頼内容あるいは依頼内容(追加)に対する回答が可と判定されていた場合には、該回答を挿入した該依頼情報を、前記依頼情報に含まれる宛先情報の全てに送信をコンピュータに行わせることを特徴とする請求項3に記載の依頼プログラム。
【請求項5】
他の端末より依頼内容および他の端末の宛先情報を含む依頼情報を受信する受信手段と、
前記受信した依頼情報に含まれる前記依頼内容を参照して、該依頼内容に対する回答が可か不可か判定する回答可否判断手段と、
回答が可と判定された場合には該回答を前記依頼情報に挿入する手段と
依頼内容に対する回答が不可と判定され、複数に分割する必要があると判定された場合には該依頼内容を複数に分割した依頼内容(追加)を前記依頼情報に挿入する手段と、
依頼内容に対する回答が不可と判定された場合および前記依頼内容(追加)が挿入された場合には前記端末の宛先情報を前記依頼情報に挿入する依頼情報付与手段と、
前記端末を構成する送信手段が前記回答が依頼情報に挿入された場合には依頼情報に含まれる宛先情報のうち最初に登録された宛先情報へ送信し、一方、回答が挿入されなかった場合には依頼情報に含まれる宛先情報のうちの末尾あるいは複数に分割された場合には分割された複数へ送信する送信手段と
を備えたことを特徴とする依頼装置。
【請求項6】
前記送信手段から送信された依頼情報を受信した依頼元の端末は、
該受信した依頼情報に含まれる依頼内容あるいは依頼内容(追加)に対する回答が可と判定されていた場合には、該回答を挿入した該依頼情報を、前記依頼情報に含まれる宛先情報の全てに送信を行うことを特徴とする請求項5に記載の依頼装置。」

第4 当審の判断
1.理由1)について
特許法2条1項には,「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規定され,同法29条1項柱書には,「産業上利用することができる発明をしたものは、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と規定されている。

したがって,請求項に係る発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないときは,その発明は特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしておらず,特許を受けることができない。例えば,請求項に係る発明が,自然法則以外の法則(例えば、経済法則),人為的な取決め,人間の精神活動に当たるとき,あるいはこれらのみを利用しているときは,その発明は,自然法則を利用したものとはいえず,「発明」に該当しない。

ただし、その発明がいわゆるソフトウェア関連発明(その発明の実施にプログラムを必要とする発明)である場合には、コンピュータ上で実行されるプログラムが自然法則に基づいた制御等を行っていない場合や、自然法則以外の経済法則などに基づいた情報処理を行っている場合であっても、請求項の記載において、コンピュータで実現される機能要素がソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段として特定され、それによってソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されていることが提示されていれば、自然法則を利用したコンピュータシステムの発明であるとすることができ、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当すると認められる可能性がある。
そこで本願について検討する。

(1)請求項1について
本願請求項1に係る発明は、端末が、受信した依頼内容に対する回答を送信する依頼方法として、下記のa.?f.のステップを実行するものである。
a.前記端末を構成する受信手段が他の端末より依頼内容および他の端末の宛先情報を含む依頼情報を受信するステップと、
b.前記端末を構成する回答可否判断手段が前記受信した依頼情報に含まれる前記依頼内容を参照して、該依頼内容に対する回答が可か不可か判定するステップと、
c.前記端末を構成する手段が回答が可と判定された場合には該回答を前記依頼情報に挿入するステップと、
d.端末を構成する手段が依頼内容に対する回答が不可と判定され、複数に分割する必要があると判定された場合には該依頼内容を複数に分割した依頼内容(追加)を前記依頼情報に挿入するステップと、
e.前記端末を構成する依頼情報付与手段が依頼内容に対する回答が不可と判定された場合および前記依頼内容(追加)が挿入された場合には前記端末の宛先情報を前記依頼情報に挿入するステップと、
f.前記端末を構成する送信手段が前記回答が依頼情報に挿入された場合には依頼情報に含まれる宛先情報のうち最初に登録された宛先情報へ送信し、一方、回答が挿入されなかった場合には依頼情報に含まれる宛先情報のうちの末尾あるいは複数に分割された場合には分割された複数へ送信するステップ。

これらのステップは、端末が依頼内容を受信し(a.)、依頼内容に対する回答が可か不可かを判定し(b.)、可なら最初に登録された宛先へ送信し(c.f.)、不可であって、依頼内容を複数に分割する必要があると判定された場合には分割された複数へ送信する(d.e.f.)ものであって、依頼内容に対する回答をどのように管理するかといった人為的取り決めそのものであって、自然法則を利用した技術的思想ということはできない。
また、上記各ステップは、端末を構成する各手段が実行する機能として記載しており、一応ソフトウエアによる情報処理を特定しようとするものであるが、ここでの各情報処理を見ても、単にコンピュータが果たすべき機能を特定したに留まり、コンピュータで実現される機能要素がソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段として特定され、それによってソフトウェアによる情報処理がコンピュータのハードウエア資源を用いて具体的に実現しているとは言えないから、いずれにしても自然法則を利用した技術思想の創作には該当するとすることはできない。

(2)請求項2について
本願請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に、「依頼情報を受信した依頼元の端末は、
該受信した依頼情報に含まれる依頼内容あるいは依頼内容(追加)に対する回答が可と判定されていた場合には、該回答を挿入した該依頼情報を、前記依頼情報に含まれる宛先情報の全てに送信を行うこと」を限定するものである。
しかしながら、本願請求項2に係る発明についても、本願請求項1に係る発明と同様に、質問に対する回答をどのように管理するかといった人為的取り決めそのものであって、自然法則を利用した技術的思想ということはできない。
また、各ステップは、端末を構成する各手段が実行する機能として記載しており、一応ソフトウエアによる情報処理を特定しようとするものであるが、ここでの各情報処理を見ても、単にコンピュータが果たすべき機能を特定したに留まり、コンピュータで実現される機能要素がソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段として特定され、それによってソフトウェアによる情報処理がコンピュータのハードウエア資源を用いて具体的に実現しているとは言えないから、いずれにしても自然法則を利用した技術思想の創作には該当するとすることはできない。

(3)請求項3?6について
本願請求項3、4に係る発明は、本願請求項1、2に係る「方法」の発明を、「プログラム」の発明とするものである。
しかしながら、上記「(1)請求項1について」、及び、「(2)請求項2について」に記載した理由によって、本願請求項3、4に係る発明についても、自然法則を利用した技術思想の創作には該当するとすることはできない。

また、本願請求項5、6に係る発明は、本願請求項1、2に係る「方法」の発明を、「装置」の発明とするものである。
本願請求項5,6に係る発明の各手段は、質問に対する回答をどのように管理するかといった人為的取り決めそのものであって、自然法則を利用した技術的思想ということはできない。
また、当該各手段を、端末を構成する各手段が実行する機能として記載しており、一応ソフトウエアによる情報処理を特定しようとするものであるが、ここでの各情報処理を見ても、単にコンピュータが果たすべき機能を特定したに留まり、コンピュータで実現される機能要素がソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段として特定され、それによってソフトウェアによる情報処理がコンピュータのハードウエア資源を用いて具体的に実現しているとは言えないから、いずれにしても自然法則を利用した技術思想の創作には該当するとすることはできない。

2.理由2)について
(1)請求項1について
請求項1の記載は前記「第3 本願発明」で示した通りであって、請求項1に係る発明は、「依頼情報に含まれる依頼内容を参照して、該依頼内容に対する回答が可か不可か判定するステップ」を含むものである。

また、発明の詳細な説明には、上記ステップに関連して、下記の記載がある。
「【0013】
端末装置(依頼先1,2,3・・・)2は、処理の依頼を受信する依頼先の端末であって、ここでは、図1の(b)に記載する、受信手段11、回答可否判断手段12、依頼(自社)情報付与手段13、送信先判断手段14、送信手段15などから構成されるものである。」
「【0016】
回答可否判断手段12は、受信手段11で受信した処理の依頼について、回答の可否を判断するものである(図2を用いて後述する)。」
「【0023】
図2において、S1は、調査依頼データを受信する。これは、例えば図1の端末装置(依頼元)1がネットワーク3を介して端末装置(依頼先1)2に処理依頼として、調査依頼を送信し、当該端末装置(依頼先1)2が受信する。受信した調査依頼データは、例えば後述する図3の(b)に示すデータ(基本情報、調査内容、宛先情報)である。
【0024】
S2は、回答可or不可か判別する。これは、S1で受信した調査依頼データ、例えば図3の(b)に示す依頼情報中の調査内容を参照し、当該端末装置(依頼先1)2で回答可か、不可か判別する。回答可の場合には、S3で回答(調査内容に対する回答)を作成し、S4に進む。一方、回答不可の場合には、S4に進む。」

したがって、請求項1に記載の「依頼内容に対する回答が可か不可か判定するステップ」について、発明の詳細な説明の【0024】に「S2は、回答可or不可か判別する。これは、S1で受信した調査依頼データ、例えば図3の(b)に示す依頼情報中の調査内容を参照し、当該端末装置(依頼先1)2で回答可か、不可か判別する。」との記載があるものの、「回答が可か不可を判定するステップ」がどのように実施することができるかについては、【0013】に「回答可否判断手段12」とあるのみで、回答が可か不可かを判定する具体的構成については不明であって、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されているとすることはできない。

(2)請求項3、5について
請求項3、5についても、「依頼情報に含まれる依頼内容を参照して、該依頼内容に対する回答が可か不可か判定するステップ」(請求項3)、又は、「依頼情報に含まれる依頼内容を参照して、該依頼内容に対する回答が可か不可か判定する回答可否判断手段」(請求項5)を含むものである。
しかしながら、上記「(1)請求項1について」にあるように、請求項3、5に記載の「依頼内容に対する回答が可か不可か判定するステップ」又は「依頼情報に含まれる依頼内容を参照して、該依頼内容に対する回答が可か不可か判定する回答可否判断手段」について、発明の詳細な説明の【0024】に「S2は、回答可or不可か判別する。これは、S1で受信した調査依頼データ、例えば図3の(b)に示す依頼情報中の調査内容を参照し、当該端末装置(依頼先1)2で回答可か、不可か判別する。」との記載があるものの、「回答が可か不可を判定するステップ」がどのように実施することができるかについては、【0013】に「回答可否判断手段12」とあるのみで、回答が可か不可かを判定する具体的構成については不明であって、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されているとすることはできない。

第5 むすび
したがって、本願は、特許法29条柱書き、及び、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-25 
結審通知日 2012-01-31 
審決日 2012-02-15 
出願番号 特願2004-43872(P2004-43872)
審決分類 P 1 8・ 1- WZ (G06Q)
P 1 8・ 538- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 誠也  
特許庁審判長 吉村 和彦
特許庁審判官 木方 庸輔
金子 幸一
発明の名称 依頼方法、依頼プログラム、および依頼装置  
代理人 岡田 守弘  

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