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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1254513
審判番号 不服2010-19932  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-03 
確定日 2012-03-29 
事件の表示 特願2003-372528「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日出願公開、特開2005-131226〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年10月31日の出願であって、平成22年6月1日付け(発送:6月8日)で拒絶査定され、これに対し、同年9月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成21年10月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。
そして、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
1又は複数の保留球を消化して、遊技者に付与すべき特典を抽選し、該抽選結果の通知に至るまでに、下記の条件で選択される変動時間分の一連の演出を遊技者に提供する遊技を行う遊技実行手段を備えたパチンコ遊技機であって、
保留球の数を非表示にしていることを特徴とするパチンコ遊技機。
条件:消化される保留球数が多いほど変動時間が長くなる一方で、消化される保留球数にかかわらず、同じ変動時間が選択される場合がある条件。」

ところで、上記請求項1における「保留球の数を非表示にしている」という事項については、保留球の数を表示することが前提であるのか不明であるから、保留球の数を非表示にするという事項自体の技術的な意味も不明になっている。
さらに、「保留球の数を非表示にする」条件も全く特定されていないのであるから、本願発明は「初めから保留球の数を表示しないパチンコ遊技機」と区別できるものではない。
しかしながら、上記事項は、一応「保留球の数を表示するものであって、場合によって保留球の数を非表示にしている」という意味に解釈することとする。


3.引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特開2003-265783号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】表示内容に応じて遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行するか否かを示す特別ゲームの表示を行う表示手段と、
所定の信号入力が検出される毎に記憶数として累積的に記憶する検出回数記憶手段と、
前記特別ゲームを前記記憶数に応じた所定回数連続的に表示し、これら連続的に表示される複数の特別ゲーム全体で一回の特別ゲームが表示されたように前記表示手段を表示制御する特別ゲーム表示制御手段とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。
【請求項2】請求項1記載の弾球遊技機において、前記特別ゲーム表示制御手段は、前記複数の特別ゲーム全体で一つのストーリーを表すことを特徴とする弾球遊技機。」
(イ)「【0024】液晶表示装置4の下方には、液晶表示装置4において特別図柄の変動表示及び演出表示で構成される前記特別ゲームを開始させるための入賞口である始動入賞口5が設けられる。ここに遊技球が入ること(「始動入賞」という。)を条件に、液晶表示装置4において特別ゲームが開始される。この特別ゲームが液晶表示装置4で行われている最中に始動入賞があった場合は、その始動入賞毎にメインRAM30c内に記憶している「始動記憶数」に“1”が加算される。そして、メインRAM30c内に記憶している「始動記憶数」が全て消化され“0”になるまで、液晶表示装置4における変動表示及び演出表示が連続して実行される。」
(ウ)「【0028】普通電動役物6の下方には、開閉自在の扉8aを備えた大入賞口(いわゆるアタッカ)8が設けられている。大入賞口8は、液晶表示装置4で表示される特別ゲームが「大当り」を示す表示態様となったときに扉8aが開かれ、遊技者にとって有利な開放状態に変換されるように構成されている。この図2では、扉8aが開かれた開放状態を示している。大入賞口8に遊技球が入賞した場合は、他の入賞口に比べて多くの賞球が払い出され、例えば15個の賞球が払い出される。前述の特別遊技状態は、この大入賞口8の扉8aが開かれた開放状態が所定条件成立(例えば、この開放状態中の大入賞口8へ遊技球が10個入賞したこと、或いは開成してから30秒経過したこと)まで継続する大当り遊技を、所定回数(例えば16回[ラウンド])行える遊技状態である。」
(エ)「【0041】図4は、メインMPU30aが始動入賞球センサ5Sからの検知信号を検出したとき(始動入賞時)に行われる大当り判定用乱数に基づく大当り判定の結果(以下「大当たり判定結果」という。)を格納する「大当り判定結果格納エリア」の一例を示し、これはメインRAM30cの所定領域に形成される。この「大当り判定結果格納エリア」において、大当り判定結果は、その始動入賞時の時点でデータ(大当り判定結果)が格納されていない最上位の始動記憶アドレスに格納される。この図4の例では、始動記憶アドレスの“1”から“9”までに大当り判定結果が格納され、始動記憶アドレスの“10”以降にデータが格納されていない場合を示している。従って、この図4の例では、始動入賞時に行われた大当り判定結果は、データが格納されていない最上位の始動記憶アドレスである“10”に格納される。
【0042】図5は、メインROM30bに格納される「大当り判定テーブル」の一例を示す。これは、始動入賞時において、大当り判定用乱数を抽出して行われる大当り判定の際に参照される。大当り判定用乱数は、“0?334”の範囲内から抽出され、この図5に示すように、当該乱数が“7”のときは「大当り」と判定され、当該乱数が“0?6”又は“8?334”のときは「外れ」と判定される。
【0043】図6は、メインROM30bに格納される「消化数決定テーブル群」の一例を示す。この「消化数決定テーブル群」は、各々テーブルナンバーが付された複数の消化数決定テーブルで構成されており、後述の「特別ゲーム制御処理」のST33の処理において、その時の始動記憶数に応じたテーブルナンバーの消化数決定テーブルが参照される。そして、ST34で行われる乱数抽選による消化数の決定に用いられる。」
(オ)「【0045】図7及び図8は、液晶表示装置4で行われる表示内容を選択するときに参照される演出テーブルの一例を示す。本実施例では、決定された消化数の数だけ図柄変動を連続して行う。例えば、消化数が4と決定された場合は、特別図柄の変動開始及び停止の繰り返しを4回連続して行う。一方、液晶表示装置4の画面4aに表示される演出は、連続して行われる各回の図柄変動毎にストーリーが完結するのではなく、最初(1回目)の図柄変動が開始したときにストーリーが始まり、最後の図柄変動が停止するときにストーリーが完結するように構成される。すなわち、画面4aに表示される演出のストーリーは、連続する各回の図柄変動を通して一つのストーリーで構成される。
【0046】図7は、画面4aに表示される演出のストーリーが「大当り」を示す内容で完結する演出を設定した「大当り用演出テーブル」を示し、決定された消化数分の大当り判定に「大当り」が含まれているときに参照される。一方、図8は、画面4aに表示される演出のストーリーが「外れ」を示す内容で完結する演出を設定した「外れ用演出テーブル」を示し、決定された消化数分の大当り判定に「大当り」が含まれておらず「外れ」しか含まれていないときに参照される。
【0047】図7及び図8に示すように、図柄変動が連続する回数は消化数と同数に設定されており、各回の図柄変動の変動時間は消化数に応じて決められている。ここで、各回の図柄変動の変動時間とは、特別図柄の変動表示が開始してから停止するまでの時間である。
【0048】図9は、図柄変動の変動時間と演出の表示時間の関係を示す。ここでは、消化数が1、2、4、5、6及び10のときについて例示する。」
(カ)「【0049】消化数が“1”のときは、変動時間が10秒の図柄変動を1回だけ行うと共に、10秒で一つのストーリーが表される演出(「10秒の1ストーリー演出」という。)を表示する。そして、消化数分の大当り判定の結果に「大当り」が含まれているときは、ストーリーが「大当り」を示す内容で完結する演出が表示され、消化数分の大当り判定の結果に「大当り」が含まれていないときは、ストーリーが「外れ」を示す内容で完結する演出が表示される。ここで、消化数分の大当り判定の結果に「大当り」が含まれているかどうかとは、例えば、消化数が“1”のときは、図4に示した大当り判定結果格納エリアにおいて最上アドレスである始動記憶アドレス“1”の判定結果のみが参照され、ここに「大当り」が含まれているかどうかである。

中略

【0054】消化数が“10”のときは、変動時間が1秒の図柄変動が10回連続して行われると共に、この10回の図柄変動の変動時間を合計した10秒で一つのストーリーが表される「10秒の1ストーリー演出」を表示する。そして、消化数分の10個の大当り判定結果(大当り判定結果格納エリアの始動記憶アドレス“1?10”に格納されている大当り判定結果)が参照され、「大当り」が含まれているときは、「大当り」を示す内容で完結する「10秒の1ストーリー演出」が表示され、「大当り」が含まれていないときは、「外れ」を示す内容で完結する「10秒の1ストーリー演出」が表示される。」

以上、(ア)ないし(カ)の記載、および図面を総合すると、引用例1には、
「1 始動入賞口5に遊技球が入る(始動入賞する)と、始動記憶数に1が加算され、同時に抽選により当該入賞が大当りか否か決定される(図4、図5)パチンコ遊技機である。
2 始動記憶数が1以上である場合、抽選により前記始動記憶数に応じた1又は複数の始動記憶の消化数が決定される(図6、図16)。
3 前記決定された消化数及び当該消化される始動記憶中に大当りが有るか否かに応じた演出番号が選択される(図7、図8)。
4 選択された演出番号により、図柄の変動時間と演出の表示時間(図7、図8、図9)が設定されており、消化数に応じた変動時間分の一連の演出が液晶表示装置4により表示される。
5 消化される始動記憶中に大当りが含まれている場合、「大当り」を示す内容で完結する1ストーリー演出が表示され、「大当り」を示す表示態様になったとき、遊技者にとって有利な特別遊技状態に移行する。
6 前記変動時間(図9)は、消化数が多いほど変動時間が長い(消化数1、2の変動時間より消化数4、5、6の変動時間が長いことを参照)一方、消化数にかかわらず、同じ変動時間の場合もある(消化数1、2、10の変動時間は同じであることを参照)。」
の発明が開示されていると認めることができる。
(以下、この発明を「引用発明1」という。)


4.対比
引用発明1の「始動記憶」、「消化数」は、それぞれ本願発明の「保留球」、「消化される保留球数」に相当する。
引用発明1の「遊技者にとって有利な特別遊技状態」は、本願発明の「遊技者に付与すべき特典」に相当する。
したがって、引用発明1と本願発明は、
<一致点>
「1又は複数の保留球を消化して、遊技者に付与すべき特典を抽選し、該抽選結果の通知に至るまでに、下記の条件で選択される変動時間分の一連の演出を遊技者に提供する遊技を行う遊技実行手段を備えたパチンコ遊技機。
条件:消化される保留球数が多いほど変動時間が長くなる一方で、消化される保留球数にかかわらず、同じ変動時間が選択される場合がある条件。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明は、「保留球の数を非表示にしている」、すなわち、前記したように「保留球の数を表示するものであって、場合によって保留球の数を非表示にしている」ものであるのに対し、
引用発明1は、始動記憶数(保留球の数)を表示するものであるのか否か不明であり、上記構成を備えていない点。

5.判断
<相違点1>について
始動記憶数を表示することは例を示すまでもなく一般に周知な技術であるところ、原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された特開2003-144708号公報(以下、「引用例2」という。)には、通常表示状態では始動記憶数を表示し、スーパーリーチ、大当り、あるいはデモ中には特別表示状態に切り換えられて始動記憶数が表示されなくなるものが記載されている(段落【0044】、【0047】、【0054】、【0056】参照のこと)。
したがって、引用発明1において、通常は始動記憶数を表示し、場合によって始動記憶数を表示しないようにすることは容易に想到できたと認められる。
仮に、始動記憶数を表示しない場合を、本願明細書に記載された実施例どおり、一連の演出を表示している場合と限定的に解釈したとしても、引用例2には、スーパーリーチ、大当り、あるいはデモ中という通常とは異なる特別な表示状態において始動記憶数を表示しないという技術思想が示唆されているのであるから、引用発明1における一連の演出を表示しているという特別な表示状態において、始動記憶数を表示しないようにすることは容易に想到できたということができる。

なお、本願発明の「条件」を、仮に明細書に記載された実施例どおり、「消化される保留球数(セット数)および消化される保留球の中に含まれる抽選結果等に対応する変動パターン群の中から所定の変動パターンが選択されるものにおいて、消化される保留球の中に含まれる抽選結果等が同じ場合には、選択される変動パターンの変動時間は、消化される保留球数が多いほど長くなる一方、消化される保留球の中に含まれる抽選結果等が異なる場合には、消化される保留球数にかかわらず同じ変動時間の変動パターンが選択される場合がある」ことを意味していると解釈したとしても、引用例1に記載された消化数と変動時間の関係(図7から図9参照)は、段落【0045】の「図7及び図8は、液晶表示装置4で行われる表示内容を選択するときに参照される演出テーブルの一例を示す。」等の記載からみれば適宜設定し得る事項であることは明らかであるから、消化される保留球の数と選択される変動時間の大小関係を本願発明のようにすることに特段の困難性はないと認められる。


6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明1および引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-24 
結審通知日 2012-01-31 
審決日 2012-02-14 
出願番号 特願2003-372528(P2003-372528)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 澤田 真治
瀬津 太朗
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 足立 勉  

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