• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1254521
審判番号 不服2010-27617  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-06 
確定日 2012-03-29 
事件の表示 特願2000-308003「識別マーク付キャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月10日出願公開、特開2002-104479〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年10月3日の出願であって、平成22年8月30日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成22年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされた。

第2.平成22年12月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年12月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。
[理由]
1.本件補正
平成22年8月2日付け手続補正は平成22年8月30日付けで補正却下されたので、本件補正は、平成22年4月23日付け手続補正により補正された請求項1に
「天板周縁に連接してナールが形成されたスカート部を有するキャップ本体の外周面に、該ナールの凸条を切欠いた識別マークをキャップ成形用金型により形成したことを特徴とする識別マーク付きキャップ。」
とあるのを、
「天板周縁に連接してナールが形成されたスカート部を有する金属キャップ本体の外周面に、該ナールの凸条を切欠いて、ナールの凸条の切欠位置および切欠き数量ならびにこれらの組み合わせによって形成したキャップ成形用金型毎に異なった該識別マークを形成したことを特徴とする識別マーク付き金属キャップ。」
とする補正を含むものである。

2.目的要件等
上記補正は、補正前の請求項1に、「ナールの凸条を切欠いた識別マークをキャップ成形用金型により形成した」とあったのを「ナールの凸条を切欠いて、ナールの凸条の切欠位置および切欠き数量ならびにこれらの組み合わせによって形成したキャップ成形用金型毎に異なった該識別マークを形成した」とする補正を含むが、「識別マークをキャップ成形用金型により形成した」事項が削除されることにより、ナールの凸条を切欠いた識別マークを形成する手段が限定されないものと認められ、当該補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとは認められない。
さらに、この補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明のいずれに該当するとも認められないので、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前の特許法」とする)第17条の2第4項の規定に違反する。
以上より、本件補正は、改正前の特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.独立特許要件
仮に、識別マークをキャップ成形用金型により形成したものと解して、本件補正が限定的減縮であるとしても、以下に述べるように、本件補正後の前記特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるとは認められず、平成18年法律第55号改正付則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

本願補正発明は、本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認める。

3-1.引用文献及び引用発明
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特公平4-46821号公報(以下「引用文献1」という)には、次の事項が記載されている。
(a)「この発明は、びん類の容器蓋に関し、特に天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁の一側縁部に裂取りタブ又はリング部を備え、この裂取りタブ又はリング部の両側縁に沿つて前記スカート壁を横断して天面壁に適宜延在する切取り弱化線を刻設した金属製容器蓋につき、その製造金型の種別を判別し得る刻印の成形とその判別を行うことができる容器蓋に関する。」(第1頁右欄第12?19行)
(b)「しかるに、この種の容器蓋を大量生産する場合、複数の生産ラインを設けることから、一般にこれら容器蓋の生産管理もしくは品質管理等の必要から各生産ラインの種別を判別し得るよう容器蓋の一部に目印となる印刷を施している。
[発明が解決しようとする問題点]
ところで、前述したような簡易開封型容器蓋にあつては、金型を使用して切取り弱化線を刻設するため、各金型を使用した生産ラインごとにそれぞれ種別が判別できれば、生産管理もしくは品質管理上好都合である。
このような観点から、容器蓋に対し切取り弱化線を刻設する金型加工時に所定の目印となるものを同時に刻印できれば便利である。

そこで、本発明の目的は、既設の金型に対して簡単に適用し得る判別刻印を設けると共に判別刻印の成形と判別とを容易かつ経済的に達成することができる容器蓋を提供するにある。」(第2頁左欄第10?30行)
(c)「本発明に係る判別刻印を有する容器蓋によれば、容器蓋部に対して刻設する一対の切取り弱化線の終端部においてそれぞれ非対称となるよう構成するものであるから、前記切取り弱化線を成形する金型の刃部の端部に適宜加工を施すだけでよいため、判別刻印を設けるために新たな金型の製作を要せず、低コストでしかも判別の容易な刻印を行うことができる。また、この場合の刻印の種類も、金型の切削加工を変化させるだけで多種類のものを設定することができ、しかもその判別について熟練を要せず簡便に判定できるという利点も有する。」(第2頁右欄第21?32行)
(d)「本発明においては、第1図に示すように、容器蓋部10に対して所定の金型によりその一側面に切取り弱化線14,16を刻設するに際し、円形容器蓋部10の中心点24より前記切取り弱化線14,16のそれぞれ終端する終端部14a,16aに至るまでの距離l14,l16をそれぞれ異なるように寸法設定することにより、それぞれ成形された容器蓋22における判別を容易化したものである。

このように構成した容器蓋部10は、これを第2図に示すような容器蓋22に成形加工した場合、前記第3図1?6に示すように刻設した判別刻印は、第4図1?6に示すように各容器蓋22の状態で容易に判別することができる。」(第3頁左欄第6?36行)
(e)図2、図4より弱化線14,16は容器蓋部10の外周面に設けられることが見て取れる。
以上の記載及び図面によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認めることができる。
「天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁を有し、金型を用いて外周面に切取り弱化線を成形する金属製容器蓋において、前記金型による前記切取り弱化線の加工を変化させて当該金型を判別する刻印を形成した金属製容器蓋。」

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願平4-51246号(実開平6-80660号)のCD-ROM(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「【0006】【課題を解決するための手段】 本考案のキャッピングマーク付合成樹脂製キャップは、キャップ本体と、このキャップ本体の下方に設けられたピルファープルーフリングと、このピルファープルーフリングと上記キャップとを連結するブリッジとを備えた合成樹脂製キャップにおいて、キャップを容器口部に装着するキャッピング機のキャップ保持部が接触するキャップ本体の一部に、該キャッピング機との接触により付与されるキャッピングマークを設けてなるものである。
【0007】また上記キャッピングマークは、例えばキャップ本体外周面のローレットの一部を切欠いたもの」
(b)「【0009】【実施例】図1及び図2は、本考案の第1実施例を示すものであって、図中符号10はキャッピングマーク付合成樹脂製キャップ(以下、キャップと略称する)である。このキャップ10と前述した図6に示すキャップ1との同一の構成要素には同じ符号を付してある。このキャップ10は、円盤状の頂板2とその周縁から垂下する筒部3とからなる有底円筒状のキャップ本体4と、このキャップ本体4の筒部下方に設けられたPPリング5と、このPPリング5とキャップ本体4の筒部3とを連結する複数のブリッジ6とを具備し、かつ筒部3外面に形成されたローレット11のうち1つ又は複数個について、欠損部12を形成した構成になっている。
【0010】この欠損部12は一見した限りでは目立たず、消費者が気付くことが無いが、欠損部12の存在を知る調査員であれば、肉眼でも充分に確認することができる。この欠損部12は、ローレット11の1つ又は複数個を完全に除去しても良いし、ローレット11の上部、中間部或いは下部の一部を除去しても良い。
【0011】この欠損部12は、充填工場においてキャップを内容物の入った容器に装着するキャッピング工程で形成される。この欠損部12を形成するには、キャッピング機のキャップリリース部或いはキャップ保持用のチャックを所定のローレット11を除去できるように変更することによって容易に形成できる。また同じ製品を複数の工場で製造する場合には、ローレット11の欠損部12の個数や形成位置を代えることで、製品のキャップを工場別に代えても良い。」
以上の記載及び図面によれば、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認めることができる。
「頂板とその周縁から垂下する筒部とからなる有底円筒状のキャップ本体であって、前記筒部の外面に欠損部を形成したローレットを備え、当該ローレットの欠損部の個数や形成位置を製造工場別に代えたキャッピングマークを、キャッピング機との接触で付与した合成樹脂製のキャップ本体。」

(3)新たに引用する実願昭58-199853号公報(実開昭60-113137号公報)のマイクロフィルム(以下「引用文献3」という)には、次の事項が記載されている。
(a)「本考案は、PPキャップの成形に使用するキャップ用金型に関する。」(明細書第1頁第12?13行)
(b)「従来のこの種のキャップは、第1図、第2図に示すように、略円筒状の外型1と中型2との間で、アルミニウム等の素材からなるキャップ3を回転・挾圧することにより、所望の形状および周方向に延びる切目(弱化線を含む)を形成するものである。外型1と中型2とは平行な軸で対向回転する。外型1と中型2との形状は、雌雄の関係にある。外型1には線状に断続する切刃4が突設されている。中型2の形状形成のための構成としては、5がナール部、…である。」(明細書第1頁第20行?第2頁第11行)

3-2.対比
本願補正発明と引用発明1とを比較すると、引用発明1の「天面壁」、「スカート壁」、「金型」、「金属製容器蓋」は本願補正発明の「天板」、「スカート部」、「キャップ成型用金型」、「金属キャップ」に相当する。
そして、引用発明1の「(金型を判別する)刻印」と本願補正発明の「(キャップ成型用金型毎に異なった)識別マーク」は、(キャップ成形用金型を識別する為の)キャップ成型用金型毎に異なった識別マークである限りにおいて一致する。
以上より本願補正発明と引用発明1を対比すると、両者は、
「天板周縁に連接してスカート部を有する金属キャップ本体の外周面に、キャップ成形用金型毎に異なった該識別マークを形成した識別マーク付き金属キャップ。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では、金属キャップが、金型によりナールが形成された金属キャップであり、ナールの凸条を切欠いて、ナールの凸条の切欠位置および切欠き数量ならびにこれらの組み合わせによって識別マークを形成したのに対して、引用発明1では、切取り弱化線が形成された金属製容器蓋であり、当該切取り弱化線の加工を変化させて識別マークを形成した点。

3-3.当審の判断
上記相違点1について検討すると、金属キャップの成形において、金型を用いて、外周面に、開封時に切断される弱化線やナール等を形成した形態のキャップを作成することは引用文献3に記載された事項であり(上記(3)参照)、また、ローレット(本願補正発明の「ナール」に相当)の欠損部の個数や形成位置で(製造元毎の)キャッピングマーク(本願補正発明の「識別マーク」に相当)を形成することは引用文献2に記載された事項であるので(上記(2)(b)参照)、引用発明1において、金属キャップ成形用の金型として前記のようにナールが形成されるものを用いて金属キャップを成形し、その際、形成されるナールを用いて識別マークを構成し、ナールの凸条の切欠位置および切欠き数量によって金型毎に異なった識別マークとすることは当業者が容易になし得たものと認める。また、切欠位置および切欠き数量を組合わせて識別マークを構成することも当業者が適宜なし得た程度の事項にすぎないと認める。

また、本願補正発明の作用効果も、引用発明1及び引用文献2に記載の事項、引用文献3に記載の事項から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものと認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用文献2に記載の事項、引用文献3に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成22年12月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年4月23日付け手続補正書で補正された請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第2」「1.」補正前の請求項1参照)。

第4.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、引用発明は、前記「第2.」の3-1.に記載したとおりである。

第5.対比・判断
本願発明と引用発明2とを比較すると、引用発明2の「頂板」、「ローレット」、「筒部」、「欠損部」、「キャッピングマーク」は本願発明の「天板」、「ナール」、「スカート部」、「切欠き」、「識別マーク」に相当する。
さらに、引用発明2の「ローレット」は「頂板」から連接して下方側に設けられているものと認められ、本願補正発明と引用発明を対比すると、両者は、
「天板周縁に連接してナールが形成されたスカート部を有するキャップ本体の外周面に、該ナールの凸条を切欠いた識別マークを形成した識別マーク付きキャップ。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点2]
本願発明では、識別マークをキャップ成型用金型により形成するのに対して、引用発明2では、キャッピング機との接触で設けている点。

上記相違点2について検討すると、合成樹脂製キャップにおいては、本願明細書段落【0010】に「近時のキャップの成形は、合成樹脂の射出成形の場合で10数個取り、さらには圧縮成形機を用いる場合には数10個に及ぶキャビティを有する金型によって製造されるものであり」と記載され、例えば、特開平7-290827号公報(平成19年8月27日付け刊行物提出書の刊行物3)の段落【0015】、特開2000-43912号公報、特開平9-12046号公報の段落【0033】に記載されたように、キャップを射出成形により成形用金型を用いて成形すること、さらに当該成形の際に、必要に応じてナールも合わせて成形することが周知の技術であり、また、既設の金型に対して金型による加工を変化させて、判別刻印(本願の「識別マーク」に相当)」を設けることは引用文献1に記載された事項であるので、引用発明2においてナールの凸条を切欠いた識別マークをキャップ成型用金型により形成することは当業者が容易になし得たことである。

また、本願発明の作用効果も、引用発明2及び引用文献1に記載の事項、並びに周知の技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものと認められない。

そうすると、本願発明は、引用発明2及び引用文献1に記載の事項、並びに周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項について検討するまでもなく、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-27 
結審通知日 2012-01-31 
審決日 2012-02-14 
出願番号 特願2000-308003(P2000-308003)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉田 和博渡邊 豊英  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 熊倉 強
▲高▼辻 将人
発明の名称 識別マーク付キャップ  
代理人 庄子 幸男  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ