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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1254529
審判番号 不服2011-3192  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-14 
確定日 2012-03-29 
事件の表示 特願2006-256004「多気筒内燃機関」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月 3日出願公開、特開2008- 75561〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年9月21日の出願であって、平成19年7月20日付けで手続補正書が提出され、平成22年4月22日付けで拒絶理由が通知され、同年6月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月24日付けで拒絶査定がなされ、平成23年2月14日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、さらに、平成23年9月12日付けで当審により書面による審尋がなされたものである。

第2.平成23年2月14日付けの明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年2月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成23年2月14日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成22年6月30日付けの手続補正により補正された)下記Aに示す記載を、下記Bに示す記載へと補正するものである。

A 本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
機関弁が設けられたシリンダヘッド(5,6)と、前記機関弁を開弁作動する動弁装置(3,3)と、前記動弁装置(3,3)が収容される動弁室を前記シリンダヘッド(5,6)と共に形成するシリンダヘッドカバー(7,8)と、前記動弁装置(3,3)のうち少なくとも一部の前記動弁装置を休止させて気筒を休止させる弁休止機構(37,37)とを備え、クランク軸(2)を車幅方向に沿って配置されて自動二輪車に搭載される多気筒内燃機関において、前バンク(Bf)と後バンク(Br)を備えたV型内燃機関であって、前記前バンク(Bf)でかつ左右両端部に位置する気筒を前側で走行風を受ける常時稼働気筒とし、前記後バンクの気筒を休止可能気筒とすると共に、前記前バンクの左右両端部の常時稼働気筒は、左右を流れる走行風を受けるクランク軸方向の両端側の気筒であることを特徴とする多気筒内燃機関。
【請求項2】
前記内燃機関はV型4気筒の内燃機関であって、動作する気筒数のパターンを3種類有し、これらが選択的に切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の多気筒内燃機関。
【請求項3】
前記前バンク(Bf)の気筒間に走行風が通り抜ける開口部(9)を設けたことを特徴とする請求項2に記載の多気筒内燃機関。」

B 本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
機関弁(IV,IE)が設けられたシリンダヘッド(5,6)と、前記機関弁(IV,IE)を開弁作動する動弁装置(33)と、前記動弁装置(33)が収容される動弁室を前記シリンダヘッド(5,6)と共に形成するシリンダヘッドカバー(7,8)と、前記動弁装置(33)のうち少なくとも一部の前記動弁装置(33)を休止させて気筒を休止させる弁休止機構(37,37)とを備え、クランク軸(2)が車幅方向に沿って配置されて自動二輪車に搭載される多気筒内燃機関において、前バンク(Bf)と後バンク(Br)を備えたV型4気筒内燃機関であって、前記前バンク(Bf)でかつ左右両端部に位置する気筒(#1,#4)を前側で走行風を受ける常時稼働気筒とし、前記後バンク(Br)の気筒(#2,#3)を休止可能気筒とすると共に、前記前バンク(Bf)の左右両端部の常時稼働気筒(#1,#4)のピストン(20,20)はコンロッド(19,19)を介してそれぞれ前記クランク軸(2)の左右最外端側に連結され、左右を流れる走行風を受けることを特徴とする多気筒内燃機関。
【請求項2】
動作する気筒数のパターンを3種類有し、これらが選択的に切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の多気筒内燃機関。
【請求項3】
前記前バンク(Bf)の気筒間に走行風」(アンダーラインは補正箇所を示すもので、請求人が付したものである。)

2.本件補正の目的
本件補正は、本件補正後の請求項1については、V型内燃機関を「V型4気筒内燃機関」と限定することを含むものであるから、本件補正後の請求項1に関する補正事項は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.本件補正の適否
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下 、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

3-1.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-9365号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る一実施の形態について図1ないし図4に基づき説明する。
図示されない自動二輪車に搭載されるOHC式4ストロークサイクル内燃機関1は、図1に図示されるように、クランク軸(図示されず)が車幅方向に指向して、車体前方の3気筒のシリンダ列(前側バンクBf)と車体後方の3気筒のシリンダ列(後側バンクBr)とが前後に略60度の夾角をなした6気筒前後V型内燃機関であり、このようなOHC式4ストロークサイクル内燃機関1の本体は、シリンダブロック2と、該シリンダブロック2の下面に一体に装着されるクランクケース3と、該シリンダブロック2の車体前方のシリンダ列および車体後方のシリンダ列の頂端にそれぞれ一体に装着されるシリンダヘッド4,4と、該シリンダヘッド4,4の頂部をそれぞれ覆うヘッドカバー5,5とから構成されている。」(段落【0016】)

イ.「【0021】
この前後バンクBf,Brのうち後側バンクBrの動弁装置には、気筒休止機構15が組み込まれており、気筒休止機構15は油圧により作動して後側バンクBrの気筒を休止させたり、休止解除して稼動させたりする切換えを行っている。
【0022】
後側バンクBrの気筒を休止させたとき前側バンクBfのみ稼動する部分気筒運転状態となり、後側バンクBrの気筒の休止を解除して前後バンクBf,Brの気筒を全て稼動させたとき全気筒運転状態となる。
【0023】
このような前後V型の内燃機関1には、その運転状態を検出する各種センサが設けられており、各センサの検出信号はコンピュータである電子制御ユニットECU20に入力され、処理されて種々の運転制御に供される。」(段落【0021】ないし【0023】)

(2)ここで、上記記載事項(1)ア.及びイ.並びに図面から、次のことが分かる。
ウ.上記記載事項(1)ア.及びイ.並びに図1から、4ストロークサイクル内燃機関は、6気筒前後V型であることから多気筒内燃機関であることが分かり、また、4ストロークサイクル内燃機関は、OHC式であることからシリンダヘッド4に機関弁を有すること、機関弁を開弁作動する動弁装置を有すること、及び、動弁装置が収容される動弁室をシリンダヘッドと共に形成するヘッドカバー5を有することが分かる。

エ.上記記載事項(1)ア.及びイ.並びに図1から、4ストロークサイクル内燃機関は、前側バンクBfと後側バンクBrを備え、後側バンクBrの動弁装置を休止させて気筒を休止させる気筒休止機構15を備えていることが分かり、また、4ストロークサイクル内燃機関は、クランク軸が車幅方向に沿って配置されていることが分かり、さらに、4ストロークサイクル内燃機関は、自動二輪車に搭載されることが分かる。

オ.上記記載事項(1)イ.及び図1から、前側バンクBfに位置する気筒を常時稼働気筒とし、後側バンクBrに位置する気筒を休止可能気筒とすることが分かり、また、前側バンクBfに位置する気筒が前側から走行風を受けることは明らかである。

(3)引用文献記載の発明
上記(1)及び(2)より、引用文献には、次の発明が記載されている。
「機関弁が設けられたシリンダヘッド4と、前記機関弁を開弁作動する動弁装置と、前記動弁装置が収容される動弁室を前記シリンダヘッド4と共に形成するヘッドカバー5と、前記動弁装置のうち後側の前記動弁装置を休止させて気筒を休止させる気筒休止機構15とを備え、クランク軸が車幅方向に沿って配置されて自動二輪車に搭載される多気筒内燃機関において、前側バンクBfと後側バンクBrを備えたV型6気筒内燃機関であって、前記前側バンクBfに位置する気筒を前側で走行風を受ける常時稼働気筒とし、前記後側バンクBrの気筒を休止可能気筒とする多気筒内燃機関。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3-2.本件補正発明と引用文献記載の発明との対比
本件補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「シリンダヘッド4」、「ヘッドカバー5」、「気筒休止機構15」、「前側バンクBf」及び「後側バンクBr」は、それぞれの技術的意義及び機能からみて、本件補正発明における「シリンダヘッド」、「シリンダヘッドカバー」、「弁休止機構」、「前バンク」及び「後バンク」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「後側の前記動弁装置」は、本件補正発明における「少なくとも一部の前記動弁装置」に相当し、引用文献記載の発明における「V型6気筒内燃機関」は、「V型多気筒内燃機関」である限りにおいて、本件補正発明における「V型4気筒内燃機関」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用文献記載の発明は、
「機関弁が設けられたシリンダヘッドと、前記機関弁を開弁作動する動弁装置と、前記動弁装置が収容される動弁室を前記シリンダヘッドと共に形成するシリンダヘッドカバーと、前記動弁装置のうち少なくとも一部の前記動弁装置を休止させて気筒を休止させる弁休止機構とを備え、クランク軸が車幅方向に沿って配置されて自動二輪車に搭載される多気筒内燃機関において、前バンクと後バンクを備えたV型多気筒内燃機関であって、前記前バンク(Bf)に位置する気筒を前側で走行風を受ける常時稼働気筒とし、後バンクの気筒を休止可能気筒とする多気筒内燃機関。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

本件補正発明においては、V型多気筒内燃機関が、V型4気筒内燃機関であって、前バンクでかつ左右両端部に気筒が位置し、前バンクの左右両端部の常時稼働気筒のピストンはコンロッドを介してそれぞれクランク軸の左右最外端側に連結され、左右を流れる走行風を受けるのに対して、引用文献記載の発明においては、V型多気筒内燃機関が、V型6気筒内燃機関であって、前バンクに位置する常時稼働気筒が三つである点(以下、「相違点」という。)。

3-3.当審の判断
上記相違点について検討する。
前バンクでかつ左右両端部に気筒が位置し、前バンクの左右両端部に位置する気筒におけるピストンをコンロッドを介してそれぞれクランク軸の左右最外端側に連結させるような構成を有する自動二輪車に搭載される「V型4気筒内燃機関」は、周知の技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開昭58-167828号公報の第1図ないし第3図等、並びに、特開昭62-107240号公報の特許請求の範囲及び第2図等参照。)である。
引用文献記載の発明及び上記周知技術はいずれも自動二輪車に搭載されるV型多気筒内燃機関であること並びに引用文献記載の発明及び上記周知技術はいずれも走行風による内燃機関の冷却性の向上という課題が内在していることは明らかであることを考慮すれば、引用文献記載の発明のV型6気筒内燃機関の気筒の位置に代えて、上記周知技術のようなV型4気筒内燃機関の気筒の位置を採用することにより、前バンクの左右両端部の気筒が左右を流れる走行風を受けるようにして、相違点に係る本件補正発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到し得るものと認められる。

また、本件補正発明は、全体としても、引用文献記載の発明及び上記周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するとも認められない。

以上から、本件補正発明は、引用文献記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである

よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明の内容
平成23年2月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成22年6月30日付けで提出された手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.[理由]1.Aに記載したとおりである。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開2005-9365号公報)の記載事項及び引用文献記載の発明は、前記第2.[理由]3-1.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本件補正発明は、前記第2.[理由]2.で検討したように、本願発明の発明特定事項を減縮したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記第2.[理由]3-3.に記載したとおり、引用文献記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献記載の発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-26 
結審通知日 2012-01-31 
審決日 2012-02-13 
出願番号 特願2006-256004(P2006-256004)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02D)
P 1 8・ 575- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鹿角 剛二  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 中川 隆司
川口 真一
発明の名称 多気筒内燃機関  
代理人 志賀 正武  
代理人 西 和哉  
代理人 鈴木 三義  
代理人 高橋 詔男  
代理人 村山 靖彦  
代理人 佐伯 義文  

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